……そう、たくっちスノーとは本来『悪役』
かつてはこの世で最も恐ろしく最悪な時空犯罪者として名を馳せてきた、それがどういう事情なのか正義の味方のように振る舞っている。
しかし何故かと言われるとこのたくっちスノーには答えられない、彼からすれば本当に『突然時空監理局に選ばれた』のだから。
しかし……だからといって過去は帳消しにならない。
「私は殺人鬼です、お姉ちゃんが大好きで好きでたまらないし、そんなお姉ちゃんを壊すために数々の人間を殺しました、その事は決してなかったことにはなりませんし私も開き直るつもりまではありません……そして貴方は、そんな貴方よりも罪深い」
奏の衝撃的すぎる告白もそうだが、その内容に対して莫がハッとした顔をする。
「そうか、たくっちスノーは本来『世界を滅ぼす側』でもあった存在であり……その時のことを覚えている者も多い、反省という気持ちがあるにしても目立つほど活躍するのであれば、それ相応の貢献を見せなければ……」
たくっちスノーという存在の前提となるハードルは常人よりも高い、仮面ライダー達だって人によってはやましいことがないわけでもない。
しかしたくっちスノーというものは常人の許容範囲を軽々しく超えているにも関わらずあの体たらくである。
この事実に対してソウゴは意見を刺す。
「……俺にとっては又聞き程度ぐらいの話なんだよね、時が経ってるのもあるけどさ、戦兎ってその頃じゃないの?」
「いやぁ俺や翔太郎の頃はそこまで本気にしてなかったというか……だって考えても見ろよ、時空あらゆる世界を滅ぼしかけた史上最悪の犯罪者なんて、そんな奴が今ここで善人ツラしてたら裏切るか話を盛ってるかって感覚でさ……」
「……お前らそっちの自分のことは知らないがそんな風に思ってたのかよ、まあこの通り自分だってその分巻き返しのつもりはあるからさ、そっちだってそうなんじゃないの?」
「ハァ? 巻き返し? 何をナメたこと言ってるんですか、罪の大小関係なくちょっと立てば風化してもらえると思ってお姉ちゃんや或人さんと組んでたのがたくっちスノーと認めるんですか? どんなに時間が経ってもクズの罪は一生消えないクズのままで、だからこそ彼らは認めてもらえるように善処しているんですよ、私は別にどう思われても構いませんが貴方はそういう立場にいるのなら、なあなあにしてもらおうとしないで……」
「……奏、その辺にしておきなさい、もう掘り下げるだけムダよ、結論だけで語るならね……」
ジークは話題がまとまったところで話を切り上げる。
たくっちスノーのこの立場としての魅力の欠場などは……そもそもそういう役回りにさせるべきではなかった、その上で彼自身にもやる気はあるし、誠意もある。
しかし彼は、仲間たちと同じ目線を向いていなかった……それがあまりにも決定的で、分かり合うにはもう遅すぎた。
だが、だからこそダメで結論付けられない意見もある……津上翔一が、挙手した。
「けどさ、ちゃんとやってはいたんだよな? それにほら、この人が色んなライダー達……もちろんそれ以外の仲間も繋げた側面もあるんじゃないのか?」
しかしそれは響もたくっちスノーも分かっている、これは首を振れるし、ずっと傍観者だった門矢士も口を開く。
「それは俺にも出来る……まあ、確かに俺は特別普段からそれをやることもないのはそうだが、俺が出来るように時空という規模で言えばそれだけ出来るやつはいくらでもいる」
「皆こう思ってるでしょ? せんちゃんがいない時に代わりに発明とかしてくれるならサブ枠とかで便利じゃない? とか……それも出来ないのよ」
「だってりりすた革命団って大世帯なのよ!! たった一つの事件で何十人くらい動員してくるのよ! あたしとあっちゃんの時だってそうだったし!!」
「まあそれだけ人が多いということは、何かしらの専門とする者もいるだけで……なんでも出来るけど基本的に後手に回るぐらいの彼はその……なんというか」
「そこまで必要とされないと……まあ実際それで翔太郎とか戦兎が率先して活躍してるのが事実だもんな……」
「なんなら世界のネタバレを見てそれを報告する役だって貴方以外にいたぐらいなので……」
ただしこの事実に対して莫は驚きのあまり身を取り上げる。
「ちょっと待ってくれよ!? アンタらの組織は1個の世界でほぼ全メンバー駆り出して解決に努めていたのか!? 非効率すぎるし、他に危機がある世界は山ほどあるだろ! なんで何人かに分けて活動とかしていないんだ! そうすれば、たくっちスノーだって……」
「よせセブン! そこを深掘りされたら俺や戦兎、ならびに他の仲間達にまで飛び火してしまう!」
「いやしょーちゃんはほら、逃走中とかに参加してたから普通にそういうものでしょ……」
「……逃走中? おいなんで、あれが出てくるんだ? あれはただのテレビ番組だろ?」
「あれ? もしかしてB世界線にはないのか?」
戦兎がたくっちスノーにとってはただの『テレビ番組』である逃走中の話をする。
世界規模のリアリティショーとして時空規模で配信されており、時空で一番のエンターテインメント。
世界各地から様々な参加者が集まり、響達も参戦したことがある……実はゼロワンの時にも彼の世界で行われていた。
ここでまた莫が止まらず追求する。
「な……なあ!? じゃあつまり、テレビ撮影と進行形で事件が続いていたと!?」
「あ〜……うん、ヒューマギアとか襲ってきたときは参加者も一緒に鎮圧してくれたりしたっけ」
「なんでキャストがそっち側の手助けする側に回ってるんだ!? しかもそれ……赤の他人を巻き込むってとんでもないことをしてるんじゃ」
「うーんそれはあたしもさ……あっちゃんとたくっちスノー達の出会いもそうだったからそういうものなのかなーって」
「毒されてるなお前達揃って……と、まあこんなものだ」
翔一のもっともな疑問に対して予想斜め半回転な答え、これにはもう苦笑いするしかないがそれでも追求を続ける。
「え、えーと……そもそもなんでそんな危機の中でその番組? をしてるの?」
「なんでって……それだけ呑気なんじゃないの? どういう時でも番組進行を止めようとしなかったし、いや1回だけ中止しようとしたこともあるんだっけ……確か殺人事件が起こった時?」
「というよりはですね……私も時空犯罪者の一部からききましたが、味をしめたんですよ、時空各地から人を集められる番組を進行すれば楽して仲間を集められるから」
「あらやだコスパ最高! 自分もB世界線に帰ったらやってみようかな?」
ということで、「主人公陣営としての魅力・見所の欠如」という論点はほぼ組織全体や当人のズレた意識によってもたらされたものであると判断付けられたが、これだけでたくっちスノーから手を引くと結論付けるわけにはいかない。
改めて深掘りされて知った莫からすればちょっと驚いたものだが……。
「ここを話しているとキリないから次に行くけど……奏、次何語ればいいかな?」
「次は……A世界線の未来を見ましたが、終わりを迎えずどんどん肥大化していくあの件」
「……結末の来ない時空か」
戦兎達りりすた革命団の課題でもある、永遠に物語が終わらない時空という問題……響はすぐにカーレッジに勝った未来とされるA世界線で起きた出来事をライダー限定のことでも話すと、一同はあまりのめちゃくちゃ具合に食いついたり驚いたりするばかりだった。
……何より無関係な方のたくっちスノーとしては、別次元の自分が常に中心に立っていることも。
「自分に兄弟? そんでもってパラレルワールド? ……いや、一応身近にも影武者みたいな奴はいるし、多分自分で言うところの『G-rokシステム』みたいなものか」
「G-rokシステムって何?」
「A世界線とやらには無いのか? リアルワールドで言う所の生成AIだよ、自分が開発したもので『もしも』を媒体に色んな作品のパラレルワールドを作り出して呼び出せるんだ、それも黒影に権利を乗っ取られちまったが……いいものだぞ? 望んだ通の話をしっかり最後まで書いてくれるんだからな」
「確かD世界線でお前が居住区としていた電脳空間soraが似たようなモノだったか、向こうだとアニメ映像とからしいが」
「何い自分がアニメになってただと!? 向こうの進化も半端なさすぎだろ!! ……で、その話は結構深掘りしたいがそれどころじゃないんだな」
カーレッジを倒しても永遠に物語が終わらず、止まらない壮大さの中で一本線の話が収拾がつかずにキャラクターは増える一方だった、改めて最終目標を提示する物語の結末を取り戻して『終わり』に辿り着くことだ。
だが問題となるのはその軸になるのは……ずっと死んだ後のカーレッジやたくっちスノーということ。
大体の話に結局彼が絡んでいるなら無駄なだけではないのか? あくまで傍観者目線だからこう言える。
そしてジークが立場もわきまえず口を挟んでいた。
「要するにさぁ、もう物語に関わりたくないって目的のためにエンディングを見たいんでしょ? そんなめんどくさいこと付き合う前にそっちからワンチャンダイブしとけばいい話じゃないの?」
「ああ、それをやって物語から出ていった人もいるにはいますよ、ですが普通に考えてそれは肯定出来る行いですか?」
「まあそうか……だから、真っ当な手段で全部解決すれば終わるはずというゴリ押しか、真面目なものだな」
たくっちスノーもジークも他人事だと思って随分な言い草だが彼らにとってはわりと『結末』自体はどうでもいいので、問題は肥大化……? いや。
「奏はさ、内容が広がっても結局ワンパターンなのが嫌って言ってるのよね」
「いやそれで自分恨まれるのも理不尽じゃない? だって元々黒影が主人公、自分が悪役として最初から作られた空間ならそれが前提の設定で動くだろ、まさか悪役も主役も両方消えるなんてありえるか?」
「だがその結果、一同はあいつに手を貸し続けることは、この『終わらないインフレの茶番』を永遠に肯定し、引き延ばす片棒を担ぐことと同じになっている……ほれだけはとても見過ごせない」
「俺も嫌というよりはそれ聞いているといつまで付き合わなくちゃならないんだ? の方が出てくるな……年だって全然取らないしよ」
どんなに関係があったとしても、冒険があるとしても付き合わされる方としても限界があることすら戦兎が示している……しかしそうなると問題はここで決着をつけるしかないのだ、この分岐点でのみ話せる。
「……実際どうすれば時空が終わるのかよね、A世界線の方はなんかもう手遅れな気がするしD世界線の方で」
そして、D世界線で結末を迎えるには? 恐らく規模は違えど同じ世界として……同じ事を繰り返すだろう。
それをしないためには……というところで、奏は笑みを浮かべる。
あの顔だ、あの悪の総統を彷彿とさせるような邪気しかない気持ち悪いほどの笑い方……もう結論が出てるからこそ、響は牽制して先に莫を見る。
「ねえセブンちゃん……多分奏はあのタイミングでたくっちスノーを切り捨てる選択肢が正しいみたいな言葉言う気よ」
「待て待て待て、他所の自分がくたばろうが別に知ったこっちゃないがそれでカーレッジとやらを止められるのか!? 奏の言い方だと両方死ななきゃ結局クソみたいな支配が続くだけだろ!」
「……残念だがそれは問題ない、たくっちスノーがいなくてもカーレッジは倒せる」
……その証拠となるのが他でもないA世界線。
カーレッジを倒した未来の決定打となった時……その時にたくっちスノーは関与してない!
それどころか、あの敗北で弱体化しているのはカーレッジも同じだ。
「……そういえばカーレッジって不老不死だけど死ねば死ぬほど力が失われていくってあるし、記憶なくてもワンチャンいけるわね」
ということで、カーレッジを倒す分にはD世界線の面々でも割と問題ないという流れの中でたくっちスノーを切り捨てるかどうかを考える。
……ここで彼を今すぐにでも切り捨てることこそが、この歪な時空を正常化する(あるいは幕を引く)唯一の方法ではないか? という流れだ。
「ねえセブンちゃん、たくっちスノーってあっちだと実際どれくらい力を失ってたのか皆にも説明して」
「ああ……俺が見てきた限りだと変身できない、マガイモノの力もほぼ使えない、発明はまだ出来るらしいが……基本的にSoraの中でしか実体を維持できない、短期間しか外に居られない上に入り直すと記憶を失っている、つまり物語が始まる度にリセットされる……ということだ」
「うわ、想像以上にボロボロだな……まあ、しぶとさには我ながら自信はあるほうだが……ん? どうしたよ皆」
莫から語られたD世界線で唯一カーレッジに立ち向かうため生き続けた最後の希望……という役回りのつもりの向こうのたくっちスノー。
この状態に対して開いた口が塞がらない城戸、頭を抱える戦兎、あーみたいな無気力顔のソウゴ、目も当てられない永夢、多種多能なリアクションの中、翔太郎と奏の目が合う。
「恐らく不本意だが、意見が一致してしまったようだな」
「ええ、よければ一緒に復唱しましょうか? 思いの丈を爆発させたらスッキリしますよ?」
「裁判長止めるの?」
「面白そうだからぶちまけちゃっていいよ」
すーっと息を吐いて、本当に胸の内を吐き出すように二人で叫ぶ。
「それはもう死んだのと同義だろうが!!!!」
「なんなんだあいつは!? なんであいつだけマイホームというかマイワールド用意して首の皮一枚繋がったように生きてるんだ!」
「自分首ないけどな」
「他人事みたいに笑いやがって! よりによって生き残ったところで残ったのは戦力未満で本格的に役立たずのまま生きて何の意味があるんだって話をしてるの!!」
「ククク……酷い言われようだな、まあ事実だからしょうがないけど」
改めてD世界線のスペックを見てみるとただの記憶喪失の変なやつが門矢士ごっこしてる上に以前みたいに手助けも出来ないとなれば後に残るのは後は思い出を抱えているだけの……いや、まだ何かある。
「ちょっと混て、Soraってやつも生成AIなんだろ? じゃあそこでマガイモノを作っているんじゃないのか?」
「ああ、その件だったら途中でSoraが具現化出来なくなった上にマガイモノ達からも見切られてきたぞ」
「やっぱアニメ生成AIは無理があったって!! てかD世界線でも人望ねえのかよ自分!?」
……そうしてまた新しく結論付けられていく。
D世界線が終わる鍵は、ここでたくっちスノーを切り捨てたら歪な流れを正常化出来るかもしれない……というものだが何かするまでもなく勝手に朽ち果てたりしそうなくらいにはボロボロなので、わざわざ手を下すまでもない……そういう雰囲気が広がりつつあった。
ここまでの2つの議論が終わった、一同響はたくっちスノーという者への見解を見てみると……。
「……んじゃ改めて、たくっちスノーに手を貸すのやめるかどうか挙手してみる?」
「いえ……いいですよ何回も、君の場合僕らが終わってもまた別の人にこんな話をしていくんでしょう?」
「そう考えると俺はむしろ響達に同情すべきなんだよね?」
なんというか、たくっちスノーから手を引くというか関わりを避けるという同音異義語みたいになってきている状況、それだけ彼の存在がメリットを上回るほど厄介になってきたように認識が変換されていく。
実際響の方もまだこれからというところでため息が漏れそうになる、もしかしたら自分はとんでもない重荷を背負っているのではないのか。
……ココに来て否定派の永夢が挙手する。
「そもそも、僕らがたくっちスノーを見捨ててどうこうしたところで……結局彼女達はどうなるんです? D世界線には居場所がないんでしょう?」
「おじさんが言うにはそうだけどね……そういえば翔ちゃんは知らなかったっけ」
響はこの時に……『自分たちの世界の本当の姿』を打ち明ける、新世界プログラムによって構築された仮想空間……それが本来の流れ、自分達が見ていたもの、現実だと思っていたものは全くのでたらめ。
その事実には翔太郎も狼狽えた、ここまでの出来事も奏の真実を掘り下げたのも彼なのだから。
「そ……そんな馬鹿なことがありえるのか!? 俺はちゃんと調査したはずだ! 二人は超高校級で、優秀なバンドコンビで、奏は60人以上を殺して響の精神を追い込んで……希望ヶ峰学園を卒業している!!」
「……んで、現実じゃもう手遅れ、響は奏のお人形になって新世界プログラムに参加、仮想空間内で知恵袋雪花を殺害しオシオキ……ああそうそう、その世界で希望ヶ峰学園はとっくに崩壊してるぞ、カムクライズルの一件と同時進行みたいなもんだしな、響の言うことは事実だ」
……この真実をB世界線のたくっちスノーはすらすらと言い当てた。
このたくっちスノーは知っている、自分達が『何者』なのか……それと同時にこう思っているだろう、『何でコイツら仮面ライダーになっているんだろう?』とも。
「あたしがあっちゃんと仲良くなってベルトを持ってるって聞いた時びっくりした?」
「まあ、そんなこともあるかと思ったよ……だってそういう時代に自分も生きてたし」
……息が詰まる、響と奏にとって、ずっと知りたかった本望の真実を仲間達にも公開することが出来る。
「ねえたくっちスノー、あんたは言えるでしょ? ……あたし達がどんな世界から来たのか!」
「……『超高校級の才能育成計画』? いや違うな、それが通らずD世界線に取り残されたってことはアレだろ? お前ら普通に『スーパーダンガンロンパアナザー2 希望の月と絶望の太陽』か?」