MNU サモンライド・ラストコール   作:黒影時空

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第6話「新たな物語」

「お姉ちゃん、お姉ちゃん起きて!」

 

「うっ……ああ、やっぱり寝てたのね、悪夢とか言ってたし」

 

 ……ジークと話した後に、また視界が変わって戻ってきた先はクリスタルベース、目の前にはウタ。

 悪夢を自在に……という力があることはわかったし、あれだけのことは夢でなければ説明がつかない。

 しかしまさか、ここに戻ってくるとは思わなかったので状況を確認しなくてはならない。

 

「先に聞きたいんだけどヒューキャニオンはどうなった?」

 

「お姉ちゃんがどんな仮面ライダーの力使ったのか知らないけど元通りになったよ、ゼッツ……だっけ? 不思議な力があるんだね」

 

「ああ……戻ってるならいいわ、メモル達は?」

 

「元に戻ったから仲間を探しに行くって、一応デモンライドさせたビターガヴ軍団を味方につけておいたけど……」

 

「つまり今は、あたしとウタだけ……じゃあ、一旦こう呼ぶわ……奏」

 

「うん、なら私も一旦響って呼ぶけど、何かあったの?」

 

「あたしね……さっき最深部でジークに会ったわ」

 

 オトノはジークに会ったときの事、悪夢の世界で見てきたもの、話してきたこと全てを明かす。

 ……この中で肝心なのは、赤の他人であるはずのジークが自分達姉妹の出自を把握していることだ。

 そして何よりも意味深なのが、自分達は本来は仮面ライダーの世界とは何の関係もないイレギュラーと呼んでいたこと。

 隠しているつもりはないとはいえ、本名まで把握していた。

 

「あいつ、はっきりとあたしのことを『音ノ小路響』って呼んでたわ……時空ヒーローとしてというよりは、ずっと前からあたしのことを知ってるみたいな形で」

 

「どうしてそう言い切れるの?」

 

「今あたし達の年齢って二十歳頃にあっちゃんと会ってからそれなりに経ったでしょ? でもその悪夢に出てくるあたし達はさ、どう見てもそれより前……高校生くらいだったのよね」

 

「確かにそれは……それに、お姉ちゃんの言うことが事実ならそれを未来と言ったんだね、今の私たちより年下なのに……あっ、そういえば」

 

 奏が思い出したように、今更だからと響に聞く。

 どうして自ら『オトノ』と名乗り、自分のことを『ウタ』と呼んだのか、奏は自分で考えるのも何だが確かに時空全土では名の知れたこの世のものとは思えないほどの危険人物で、もしちょっと加減を間違えたらここでも争い合っていたかもしれないし、今こうして組んでいるのもちょっとした気まぐれだ。

 

 ……しかしオトノは名前を隠す必要はあったのか?

 

 

「いや違うわよ奏、隠しているつもりはなくて……この世界に響鬼いるからややこしくなるだけよ」

 

「ああ〜……なるほど……」

 

 つまりそれだけの理由だが、ジークが言うようなオトナの事情が多少あったのも事実である。

 実際自分達がイレギュラーというのも間違っていないかもしれないのだから。

 ……クリスタルベースでオトノとウタはメモル達に大きな隠し事をしている。

 

 彼女達は『仮面ライダーゼロワン』の世界出身ではない。

 

 ────

 

 ……クリスタルワールドに来る以前──、オトノ……及び、音ノ小路響と音ノ小路奏が居た場所は特別な風景が広がっていた。

 いつからそうだったのか、どうしてそんな風になっていたのか分からない。

 時空という大きな海のような空間で……仮面ライダーの世界は数多く存在していた、いや……正確には仮面ライダー以外の世界も何百という数が存在する。

 響達が生きていた時代は、そんな数多くの世界を誰もが当たり前のように超えられる超絶グローバルな空間になっていた。

 

 そう、だからこそ響と奏は……『仮面ライダー以外』の全く異なる世界で生まれている。

 その場所で妹と共にバンドを始めて……生意気で、無邪気で、わがままで……かなりの負けず嫌いで、異常なほどに幼稚だが努力は欠かさない。

 その妹の奏、気性の荒い姉の後ろに回る引っ込み思案で、穏やかで……しかしその一方で本性は世にも恐ろしい、響に屈折したぐちゃぐちゃに歪んだ愛情を向ける殺人鬼。

 この二人は仮面ライダーとは縁のない世界で、無関係に……かなり複雑な過程を得ながらも平穏に? 過ごしていた。

 

 それが大きく変わったのはやはり……仮面ライダーゼロワンの世界にちょっとしたことで招かれて飛電或人に会ったことだろうか?

 そこから彼女のなかで数々のドラマや激闘があり、時に響と奏が命がけの姉妹喧嘩をしたり……侵食されるように、巻き込まれるように数々の経験をして、遂には響が仮面ライダーになるまでになった。

 

 

 そう、なんやかんやの成り行きでライダーになっただけで特別関係ないのが彼女たちである。

 だからこそジークは彼女たちをイレギュラーと答えたのだ。

 しかし気になるのは、響達がクリスタルワールドにいることと……それ以外の仮面ライダーがいないこと、仮面ライダージオウこと常磐ソウゴが2068年までの間に『メモリアルライダー』と呼ばれる歴史に埋もれた数々の仮面ライダーと会ってきているはずだが……ライドフィギュアすら見ていない。

 

 何より奏はどうだ? 1回だけ姉妹喧嘩をした時に滅亡迅雷フォースライザーを使ったことはあるが、あまり変身したことないので部分的には違うくらいの感覚で仮面ライダーなのに、響と一緒にこのクリスタルワールドに転移している。

 ……その上でここから出られず、一度はベルトが壊れており、連絡も取れない。

 そしてクリスタルワールドに来る直前までの記憶が抜け落ちている事まで……。

 

「あのさ奏、今思い出したんだけどマガフォン持ってたりしないの?」

 

「あのさお姉ちゃん、忘れてるかもしれないけど私一応囚人だよ? 連絡手段持ってる方が問題あるって分からない?」

 

「……言ってみただけよ、つまり今考えた所で無駄ってわけね」

 

 どうやら本格的に奏含めて頼りになるものはない、このままクリスタルハザードを乗り越えてこの世界の危機を救わない事には何の始まりも来ないようだ。

 しかし、こちらもこちらでクリスタルワールドの方は大丈夫だろうか?

 かれこれヒューキャニオンの方は結構回っていたのだが、ここまでの間にメモルの仲間がいたような痕跡はない。

 確かに機械化は止まったとはいえ怪人の魔の手が振りかからない保証はないが……。

 

「どうにかしてヒューキャニオンの安全を守る方法とかあればいいんだけど……」

 

「なんというか、今になって『あの人』が途端に恋しくなってくるような」

 

「奏、冗談でもあいつを戦力として考えちゃダメ、冗談じゃないわ……」

 

 姉妹で今後について考えていると……時間が来てガヴのライドフィギュアが奏の腕から外れ……メモルも戻ってくる。

 

「ヒューキャニオンのあちこちを回ったけど、ボクの仲間はどこにも見当たらなかった」

 

「まあ……仕方ないわよこんな状態じゃ、そろそろトレイナやミヌークの世界にも行っておきましょう」

 

「それだったらエンデルガスがいいよ、ミヌークさんのような霊鳥の住処の炎の世界なんだけど」

 

「ええ〜炎かぁ……あたし暑いの苦手なのよね」

 

「でもお姉ちゃん、ミヌークさんはトリだから私たちよりずっと厚着みたいなものだけど」

 

「……言われてみるとそうじゃん、何か涼しくなるコツでも聞いておこうかしら」

 

 こうしてまた、二人はクリスタルワールドを救うための孤独な戦いに駆り出される。

 メモル達の前では響は『オトノ』に、奏は『ウタ』となり……水晶を辿り、世界を巡る。

 赤い水晶から、エンデルガスに向かって行く……。

 

 ──

 

【世界識別:クリスタルワールド ― 霊鳥の領域「エンデルガス」】

 

 マグマが脈動し、大気が灼熱に歪む世界。

 クリスタルハザードの侵食は、熱波を媒介にして急速に変貌を遂げつつあった。

 悪夢のようなジークとの対峙を終え、赤い結晶の光に導かれてオトノとウタがたどり着いたのは、ミヌークのような霊鳥の住処たる炎の世界『エンデルガス』だった。

 

 先ほどまで滞在していたヒューキャニオンのような、無機質な機械化の波は見受けられない。

 しかし、ここを包む異常事態はそれに勝るとも劣らない、禍々しい変貌を遂げていた。

 クリスタルハザード強烈な影響によって、周囲のマグマは激しく活性化し、地割れからは狂ったように火柱が噴き上がっている。

 だが、真に異常なのは、その炎をものともせずに増殖する『植物』の存在だった。

 

 熱波に焼かれるはずの岩肌から、ねじくれた巨大な蔓や木々が、貪欲な生命力をもって猛然と生い茂ってい

 る。

 それらは周囲の炎すら自らの糧とするかのように成長を続け、エンデルガスそのものを侵食し、一体化しようと全域へ広がっていた。

 その天を突くような巨木の上に、傲然と陣取る影があった。

 

 装甲が禍々しい赤黒さに染まり、果実の意匠を宿した鎧を纏う、仮面ライダー鎧武に酷似した悪の怪人──『武神鎧武』である。

 

「天下(テンガ)を取る為、怨み憎しみを宿して甦れ、ヘルヘイムの森よ!」

 

 武神鎧武が掲げた大剣の先から、おぞましい粒子が撒き散らされる…… ヘルヘイムの森。

『鎧武の世界』に繋がる、すべてを喰らい尽くす未知の異世界。

 その森に実る不気味な果実は、決して口にしてはならない禁断の果実。

 なぜなら、それを食した者は理性を奪われ、今も武神鎧武の背後に無数に控えているあの怪物『インベス』へと成り果ててしまうという。

 

 森そのものが歴史の一欠片として、武神鎧武という強大な媒体を通じて再構成され、エンデルガスの生態系を急速に塗り替えていく。

 

 ……しかし、この世界を浸食する脅威はヘルヘイムだけではなかった。

 別の広大なエリアには、クリスタルから変質した植物が、まるで人為的に整えられた不気味な植物園のような景観を形成している。

 クリスタルが深く埋め込まれた異様な土壌から、ぞろぞろと這い出してきたのは、『ギーツの世界』に由来する人型の奇怪植物──『ジャマト』たちだ。

 

 ジャマトの一体が、地表に露出した輝くクリスタルをその醜悪な手で掴み取る。

 その瞬間、植物の身体が金属質の装甲へと再構築され、疑似的に仮面ライダーの姿を再現した『ジャマトライダー』へと変身を遂げた。

 

 現在、エンデルガスを支配するクリスタルハザードの趨勢は

 武神鎧武率いるインベス軍団と、突然変異を繰り返すジャマト群による二大勢力の熾烈な総取り合戦となっていた。

 静寂な霊鳥達の気配など、そこには微塵もない。

 一つだけ確実に言えることは、

 この状況下では、トレイナやミヌークが言っていた仲間たちが無事で生き残っている可能性は、極めて怪しいということだけだった。

 オトノにとって、かつて過ごしたゼロワンの世界では、既に彼女の目線ではほぼ解決したようなものであり、こうした植物や生命の暴走による怪人たちとはあまり縁がなかった。

 だが、時空を超えて怪人と戦うということは、こうした理不尽な絶望の繰り返しに他ならない。

 仮面ライダーと怪人は、常に深刻なハンディキャップを背負って戦うのが常なのだ。

 

 苛烈な環境、圧倒的な物量。だが、今のオトノには、ジークとの激闘の末にゼッツの文字通りのリカバリーによって取り戻した『自分だけの力』があるはずだった。自身の腰に手を伸ばし、確かな勝利の感触を確かめようとした、その時──。

 

「……あれ?」

 

 オトノの指先が、虚空を掴んだ。 無い。 ジークと戦っていた直前まで、確かにそこにあったはずだった。あの悪夢に染まる前、輝かしく変身まで遂げていたはずの、あのベルトが。

 

 慌てて自分の身体を見回すが、どこを探しても見当たらない。

 今になってようやく気付いた。またしても、最悪のタイミングで消え失せている。

 直ったと思った途端に、今度は完全に手元からその存在ごと消滅していたのだ。

 

「あたしの『音ノ小路ゼロディドライバー』がない……! チャーミングラビットプログライズキーしかないじゃない!?」

 

 手のひらに残された、ピンク色の小さなデバイスを見つめながら、オトノは絶望に声を震わせた。

 キー単体で展開したところで、変身を可能にするシステム本体がなければ、ただの硬いプラスチックの塊に過ぎない。

 迫り来るインベスの咆哮と、ジャマトライダーたちの冷酷な足音が近づいてくる。 その傍らで、ウタは焦る風

 でもなく、ただ冷徹に状況を観察しながらポツリと呟いた。

 

「それだけ持ってたところで、どうしようもなくない……? ──いや、使えなくはないけどね」

 

 ウタの瞳に、妖しい光が宿る。 彼女は狂気の殺人鬼でありながら、長年の過酷な経験から、デモンライド以外にも『万が一』の手段を常に懐に忍ばせる狡猾さを持ち合わせていた。ただし、それは本当に困った時、あるいは、自らを破滅させかねない瞬間にしか使えない禁忌の代物。

 

 ウタが衣服の奥から取り出したのは、金属質の擦れた音を立てる、ひどく無骨で禍々しい一基の変身ベルトだった。

 それは、本来のゼロワンの世界において、サイボーグやヒューマギアといった『人間ではない者』

 が使うことを前提として設計された、人道から外れた兵器。

 ──『滅亡迅雷フォースライザー』。

 

 生身の人間が使えば、その強烈なフィードバックと束縛によって、肉体にかかる負荷は計り知れない。

 かつて姉妹喧嘩の際に一度だけウタが用いた、あの呪われた引き金が、赤黒いマグマの光を反射して、鈍く輝いていた……。

 

「ちょっ……それ、あの時のやつじゃない!? 前壊したはずなのにまだ持ってたの!?」

 

「当然だよお姉ちゃん、私にとって思い出の品だからね……あれからちゃんと直しておいたからそれ貸して!」

 

「あっちゃんが言ってたけどそれ人間が使うものじゃないのよ!?」

 

「その或人さんが使ってるのに説得力がない……というか、私が前に使った時だってまだ人間だったから!」

 

『フォースライザー』

 

 滅亡迅雷フォースライザーを撒くと、ベルト部分が禍々しく刺さるように巻かれ始めて変身アイテムというよりは拷問器具ないしは拘束具。

 あの時みたいに血が漏れ始める。

 

「おお“っ痛った!! 或人さんもだけどよくコレを使おうと思えたなぁ……はやくそれよこせよ響!!」

 

「ああもう分かったから!! 見ているだけで痛々しいからさっさと変身しなさい!」

 

「変身!!」

 

 オトノはウタめがけてチャーミングラビットプログライズキーを投げ渡し、フォースライザーに刺さるように受け止めた後にノズルをひねることで強制的にプログライズキーのロックを引っ張って解除し、変身プロセスが進行する仕組みだ。

 

『チャーミングラビット! breakdown……』

 

 そうして……あの時以来、久方ぶりに『仮面ライダー奏』は復活した、ただし今度はチャーミングラビットを使用しているのだが……拘束具のように重々しくあり合わせのような装甲を張り向つけて、001システムを動かして一気に踏み込み移動する。

 

「私がある程度片付けておくからお姉ちゃんはクリスタルでも集めておいて!」

 

「あっちょっと! それ大事なものなんだから壊したら承知しないわよ! ……というか、慣れたものとはいえウタに仕切られるとなんかムカつくような気もする……」

 

 

 

 ウタはこれまでの鬱憤を晴らすかのように飛び上がってインベスに手痛いローキックを叩き込む。

 そしてそのまま跳ねてムーンサルトからの脳天直撃……雑魚相手なら仮面ライダーということもあり一方的に倒せる……のは彼女のスキルのみならず、フォースライザーの仕様も関係している。

 

 元々この道具は非正規品ではなく、旧型の変身ベルト、新世代型の音ノ小路ゼロディドライバーや飛電ゼロワンドライバーと比べて安全性などはこの際考えないようにすることとして、二種と大きく異なる点や特筆する点はもちろんある。

 

 それは極限まで振り切った攻撃性能の特化、まさに肉を切らせて骨を断つような過剰なまでの凶暴性!

 装甲は最低限の形状に留めて機動力で補い、爆発的な一撃で攻撃を受ける前に敵を倒すことを軸に行動。

 

 更にそれを引き上げるのが響の為に或人と衛星ゼア、その仲間達がオリジナルで開発した『チャーミングラビットプログライズキー』の力である。

 

 ライジングホッパープログライズキーを軸にラビットフルボトルを組み合わせて作られたそのアイテム、同じくジャンプ力を上げるアビリティが加えられている。

 

 だがホッパーと違うところは、こちらが足首部分をバネのような機能を加えることで純粋に跳躍力を高めることに対して、ラビットは下半身全体の筋肉に特殊なエネルギーを注ぎ込むことでまるでアスリート選手のように強靭に、それでいて破壊力を人間以上に……はっきり言って旧型のパワードスーツとしては充分な性能をしているが、そこに取り繕うことを辞めたリミッター解除ウタの手にかかれば……。

 

 

「あっ、そろそろ離れないとやばそう!」

 

 オトノは本能でヤバいことになりそうとその場を離れると、空を浮き上がっていたオトがプログライズキーを開閉して必殺技の体勢に入り、今からでもキックをしそうだ。

 

【ゼツメツ!!】

 

 

 操 奏

 奪 心

 

【チャーミングディストピア】

 

 マグマを荒波のように揺れ動かすような強い一撃が周囲を揺れ動かし、オトノも足を踏みしめて耐えるのが精一杯であり……周囲のインベスもジャマトもまとめてマグマの中に落とされて沈んでいき……あっという間に全滅させた。

 ……久々に清々しいほど力を解放して、満足したように変身を解き振り返る奏だったが。

 

「ぶげばっ!!」

 

 やはりというか、フォースライザーの出力と負荷をちょっと身体がゆるい状態の人間になっているウタが耐えきれるはずもなく全身から血を噴き出した後にぶっ倒れてしまう。

 

「なんかそんな気はしてたわよ!! トレイナ強制送還して!!」

 

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