MNU サモンライド・ラストコール   作:黒影時空

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第8話「布石」

 

「後はしばらく様子を見ておけば結果は出るとして……気にならない? ヒューキャニオンがあれからどうなっているか」

 

「まさかあのまま放置する気なの……いや、確かにそっちも気になるけど、あんまり行きたくないのよヒューキャニオン、ジークがまだいるかもしれないし」

 

 なんとこのクリスタルが溶けて見える見える大洪水となったエンデルガスを見捨てるように転移して更に経由するようにヒューキャニオンに向かう、ウタは見向きもせずにすぐに世界を抜けていき、オトノはそれを追いかけるのが精一杯だった。

 

「待って! ちょっと待ってよ! ウタ……止まりなさい奏!! さすがにエンデルガスで起こったことはミヌークに伝えたほうがいいでしょ!」

 

「別に死んでいるか生きているかも分からないし、別にクリスタルワールドが救われる形なんて私達部外者には関係ないことで」

 

「だからってさあ……もうちょっと今後のことを考えなさいというか、かわいそうというか……」

 

「……あのさ、響」

 

 

「なんであんな得体のしれないものに気を遣えるの?」

 

 ここまでの流れのなかで……彼女は元よりクリスタルワールドの面々を信用の欠片もないと思っている。

 見るだけでどういう人物像かまでは分かるのがかつての彼女らしいが、それが人外相手にもどこまで作用するか分からないとして、ウタが見るには……わざわざ自分が救うまでもないタイプの人種扱いしてあるのが見解だ。

 

「自分達じゃなんとも出来ずに、経緯も分からず現れた部外者の響に助けてくださいお願いしますって立場の分際でありながら、クリスタルワールドをちゃんとした形で保護してその上で怪人を殲滅させろなんてわがままを受け入れるつもりなら、時空ヒーローとしても中々おめでたいタイプだよ」

 

「それは……普通に考えて悪者倒すだけで終わりじゃないっていうのは、あっちゃんとかもそうだし」

 

「まあそれならそれで、でもねその一方で私はそう思うんだ、クリスタルハザードから生き残ろうって気があるのか、本当にこの状況を深刻な危機と認識しているのか? 能天気すぎないか? って部外者目線で思うと苛立つ気持ちが分からないかな?」

 

 これまで後ろについてきて思ったのは、あの三人しか生き残りが見つかっていない、ヒューキャニオンやエンデルガスでも手がかりが無し、更に言えば救世主となるのがどこの誰とも分からないお人好しなうえに、力の根源にして相対する元凶が同じ世界の仮面ライダー……普通に考えれば、とてつもなく詰みの可能性が多くて絶望という感情が渦巻いていそうだというのに。

 

 メモル達はこんな時でも余裕そうにしている、足手まといにしかならないからわざわざついてこいとも言う気はないが、とても雰囲気が世界が滅ぶかもしれないというようなノリではないことから……怪しさを感じている。

『こいつは本当に世界が滅びかけて怖いという状況なのか?』のような。

 オトノも思い当たるところはある感じだが、どうにも納得しがたい。

 

 

「う、う〜〜ん……そんなこと今更言われてもさ、それで言ったらこの世界に行く前から能天気にダラダラ会話しながら戦っていたのは馴染みあるでしょ?」

 

「あんなの参考にするな!! この際言っておくけど私は敵対関係とか抜きにしてアイツのこと嫌いなんだからな!?」

 

「そこまで言う!? あたしもそれは……嫌いとかまでは言わないけど、確かに苦手ではあるけど……」

 

「とにかくだよお姉ちゃん、分かってると思うけど私たちは直前の記憶が抜けた状態でこの異世界に力を失った状態で迷い込んでいる、どこかのネットミームじゃないけど危機感持ったほうがいいよ」

 

 ──

 

「……う──ん、メモル達には話すなって、あたしこの事すぐ報告するって思われてるわけね……まあ実際、この後すぐ話そうと思ってたし」

 

 あれから考える時間くらい持っていたほうがいいと言われて追い出された 本当にこういう所で並外れて奏に信用が無いのがこの姉である。

 考えてみれば二人きりだったころは、冷静に考えてみると最終的に主導権を握っていたのはいつも奏のほうであり、自分は一歩後ろを歩かされる、そうやって支配されてリードされて……。

 改めて言われた通り自分にふりかかったこの謎について考えてみる、何故自分がクリスタルワールドに召喚されたのか、仮面ライダーに力を貸してもらいたいのなら、自分よりこのクリスタルの元になった彼らの方が適任だ。

 

 ……いや、それ以前の問題ではないか? そもそもの話、ライドゲートを通って自分が召喚されて即座に戦闘員を対処した。

 いつから自分はクリスタルワールドにいた? もしかしたら、あの時に一緒に自分は召喚されたか? そうじゃないとしてもだ。

 

 自分と奏を召喚したのは誰だ? 奏が自分を召喚した? その場合だったら猶更あんな奴を召喚したのは誰になる? という形になるし奏のあの様子からして人間になったのは想定外で間違いない。

 ……奏はゼロワンの一件以来人間ではなくなったはずなのに。

 何にしてもだ、自分達もまたクリスタルワールドに召喚された、自分を召喚したやつがいる、これは頭にとどめていた方が良いだろう。

 あながち、奏の言っていたクリスタルワールドの面々が信用できないという判断も間違ってないのかもしれない。

 

 だが今はどうにか、クリスタルハザードを突破することを考えよう。

 その上で真実を知る鍵になるのが、あの仮面ライダーゼインだろうか?

 

 ……いや違う、考えれば考えるほどどんどん疑問が出てきてしまう。

 クリスタルワールドそのものがおかしいのだ、この場所に仮面ライダーの世界の歴史から怪人が蘇ってクリスタルハザードが起きている……というのはまだしも。

 

 ここまでの流れ、クリスタルを集めてきて情報を見てきたものとして……最初から仮面ライダー達がこの場所に流れ着いて移住しているとしか思えないほどに根付いているからだ。

 ……もしかすれば。

 

 

「逆……? なんであたし達が召喚されたっていうか、散々召喚された末にあたし達が来たって感じ?」

 

 トレイナの口ぶりではクリスタルハザードは1回ではない、仮に以前にもクリスタルハザードが起きて、その時にあの3つのライドフィギュアのように仮面ライダー達が戦った痕跡が残っているのかもしれない。

 

「でもそうなると、ジークの言うイレギュラーが分からないのよね……というか、結局なんであたし達が召喚されたのかっていうのわかんないままだし」

 

 ぼやけながら星空を見上げると……ブリザードソルベが溶けてようやくガヴのサモンライドの時間切れのようだ、しかし同じタイミングで召喚したリバイは今もこちらを見て目と目が合う。

 

「こうしてみるとあんたは長生きよね〜、最初のやつなんて工場一個壊しただけでエネルギー枯渇したのに」

 

 バリッドレックスのひんやりとした質感を求めて最近もっちりとした頬を近づけた時……脳裏に何かが浮かぶ。

 ……バリッドレックスは、片手で白いクリスタルを握りしめていた。

 

「ゼインのクリスタル!? あんた一番役に立つじゃない! もしかしたら奏より融通が利くんじゃ……」

 

「おい、私がいないからってあまり調子乗った発言しないでよ響」

 

「うおっ!? か、奏……いつからいたの!?」

 

「私のことはいいからさっさと見せてよ」

 

 オトノとウタはまた別の『仮面ライダーゼインだったもの』からクリスタルの映像を、リバイを通して鑑賞する……。

 

 リバイの手のひらから放たれた白い輝きは、まるで凍りついた時を解きほぐすように、歪んだノイズを伴いながら中空へと映像を結んだ。

 それはこれまでオトノたちが目にしてきた、仮面ライダーたちの輝かしい「戦いの歴史」とはあまりにもかけ離れた、昏い絶望の断片だった。

 

 最初に映し出されたのは、不気味に赤く染まった月が浮かぶ夜空。

 オトノの心臓がドクリと跳ねる。それはかつてジークが見せた悪夢の光景に似ている……というよりは、雰囲気としてはそのものだった。

 その禍々しい月光の下で、一人の男が膝を突いている。男の腰に巻かれているのは、間違いなく先ほどオトノたちを少し救った『ゼッツ』と同じ変身ベルトだった。だが、その男に躊躇なく銃口を突きつける影がある。

 

「君は用済みだ」

 

「やめろ────っ!!」

 冷徹な声とともに、引き金が引かれる。

 

【mission failed】

【Lost Seven】

【break】

 

 無機質なシステム音声が夜の闇に響き渡り、男の姿が光の粒子となって消滅していく。

 

 息を呑む間もなく、映像は目まぐるしく切り替わった。

 次に映ったのは、荒涼とした戦場。

 そこにいたのは、腰に特徴的な口の形をしたベルトを巻いた──仮面ライダーガヴの変身者らしき人物だった。

 満身創痍の彼を追い詰めるのは異形の怪人、あの余裕を見せているボッカと同じであろう、人を喰らう族『グラニュート』の巨躯だった。

 

 大剣がギラリと鈍い光を放ち、変身者の頭上へと振り下ろされる。

 

「赤ガヴ、お前は生まれてきたのが間違いだったんだ」

 

 轟音とともに空を横切った飛行機の影が視界を遮り、再び視界が開けたときには、そこにはもう何も残されていなかった。

 

「……なんなの、これ……」

 

 オトノの震える声に呼応するように、クリスタルは激しく明滅する。これまでの法則からすれば、次に映し出されるべきは『ガッチャード』の歴史のはずだった。

 しかし、その部分だけが酷い拒絶反応を起こしたかのように、一向に鮮明な像を結ばない。

 ただ、音だけが聞こえてくる。

 

 かつて見たクリスタルワールドの映像で、黄金の錬金術師・グリオンが鳴り響かせていたような、禍々しく不気味な錬金術の起動音。

 そして──何百、何千という蝗(イナゴ)が、一斉に鳴き喚いているような声。それは叫びであり、同時に、魂を引き裂かれるような凄惨な悲鳴のようにも聞こえた。

 

 クリスタルに眠る「終わり」の形……。

 オトノの脳裏に、一つの恐ろしい仮説が浮かび上がり、確信へと変わっていく。

 これは、クリスタルワールドで再構成された戦いの記録ではない。

 この地に流れ着き、固形化してライドフィギュアとなった仮面ライダーたちが、その『直前』に迎えた生々しい記憶そのものなのだ。

 

 敗れ去った怪人たちの歴史がこの世界に流れ込み、各々独自の勢力として蘇るのが現在の『クリスタルハザード』。

 ならば、同じようにこの世界へ流れ着きクリスタルとなった仮面ライダーたちの正体とは、一体何なのか。

 画面の端々から、無数の「終わり」の概念が濁流のように溢れ出し、オトノの意識に直接流れ込んでくる。

 

『鏡の世界の争いを終わらせたい』というただ一つの願いを抱き、泥泥の戦場の中で孤独に命を落とした龍騎。

 

 救えなかった未来の残骸を背に、最悪の魔王『オーマジオウ』になる道を選んで歴史そのものを強引に作り直した直前のジオウ。

 

 ロイミュード001の冷徹な氷結能力の前に、なす術なく一度完全に殉職したドライブ。

 

 この世に真っ当に生まれ、真っ当に生きることさえ世界から許されなかったアマゾンネオ。

 

 新たな創世王として、暗黒の玉座で生きながら死んでいたに等しい姿を晒していたBLACK SUN……。

 

「正義」の反対側に「悪」があるように。

 輝かしい「未来」の反対側には、必ず凄惨な「終わり」が存在する。

 彼ら英雄たちが最後に迎えた、あるいは選び取らざるを得なかった絶望的な『終わり』の記憶もまた、このクリスタルワールドの底で、静かに結晶となって流れていたのだ。

 

 そして──。

 映像は、オトノにとっての最大の鬼門へと至る。

 

「見たくないなら私一人で見るよ、お姉ちゃん」

 

「いや……あたしはこれを観なくちゃいけないような、そんな気がするの」

 

 そして歪んだ鏡像に目を焼き付け……『仮面ライダーゼロワン』の歴史が始まる。

 映し出されたのは、初めて見る光景だった。だが、オトノの魂はそれを「知っている」と叫んでいる。

 

 画面の中の男は、自分にとって最も大切だった存在が、目の前で跡形もなく砕け散る瞬間を目撃していた。

 それが、世界を滅ぼす大いなる絶望の序章であると知りながらも。その先に待つのが破滅だけだと理解していながらも。

 

 男は縋るように、否、心の底からその闇を求めるように、震える手を前へと伸ばした。

 

(あ……これ、この間あの悪夢で見たばかりの……)

 

 オトノの息が止まる。

 悪意に身を任せ、復讐の化身へと変貌していくその男の横顔は。

 今、自分の隣で冷ややかに画面を見つめている双子の妹──『奏』と、全く同じ顔をしていた。

 

 手段も、力も、もはや選ばない。そこに悪意が存在する限り、どこまででも堕ちていく。

 その禍々しい変身の光景を見つめながら、その音ノ小路奏本人はというと、どこか退屈そうに、それでいて皮肉めいた笑みを唇に浮かべた。

 

「ああ……『アークワン』って本来は或人さんが使っていた形なんだ。ちょっとがっかりしたような、そんな傾向もあったような……でも、あの人があの力を使うのは心底気に入らないね」

 

「……奏、あんた何か知ってるの!?」

 

 オトノは思わず妹の肩を掴み、詰め寄った。

 

「あの、白い……ゼロワン? みたいなの。あれって一体……!」

 

 奏は響の焦燥をあざ笑うように、濡れた髪の隙間から、どこまでも屈折した偏愛の瞳を向けた。

 

「うん、今は持ってないけど私も同じものを使えるから……」

 

 奏は冷たい指先で、映像が途切れたクリスタルをそっとなぞる。

 

「このクリスタルに映っているのは、『私達が介入しなかった時の歴史』だよ」

 

「介入しなかった歴史? それって確か……あたし達の用語でいうところの、本来の流れってやつ?」

 

「そうそう、『はじまりの書』っていう世界全部の情報が書いてある神様お手製の本みたいなのがあるんだけど……そこに書いてあるものとよく似ているような」

 

「な、なんか壮大そうな……よっちゃんがそんなこと言ってたっけ? で、そのはじまりのなんとかっていうのが、あの白いクリスタルのあれこれがはじまりの書の役割を果たしているんだ」

 

 つまりは、仮面ライダー達の本来の歴史……一度は死んでしまうが再起するもの、死んで終わるもの……一度歪んてしまうもの、それら全てが正確な歴史のなかでクリスタルに溶けてこの場所に返った、それが仮面ライダー達とクリスタルワールドの真実だろう、

 

「だったら尚更……なんであたし達が?」

 

「現状は分からないけど……何にしても、仮面ライダー達が力を出せないのはほぼ死人に等しいからというのは今に入れてよお姉ちゃん」

 

「ああもう……覚えることが多すぎて頭が痛くなってきた……ちょっと休みたい、でも休んだら何か変なことしそうで……現にしてたわウタの場合!!」

 

 今こうしてすぐにウタがすぐ後ろにいるということは、ヒューキャニオンで何かしらの用事を済ませてきたことになる……エンデルガスでやったことを考えると凄く嫌な予感しかしないし聞くのも結構怖いが意を決してウタの服を掴み逃さないようにする。

 

「お姉ちゃんの言いたいことはわかるよ、ヒューキャニオンはちゃんと形を留めた上で怪人を抑え込んでおく方法を考えてあるから」

 

「どうにもそれが信用できないから言ってるのよ」

 

「ああ簡単ですよ、エンデルガスが炎の世界の熱を利用してクリスタルを変化させたようにヒューキャニオンの風をちょっと利用しただけだから」

 

 ヒューキャニオンで一体何をしたのか……というと、やはりこれもデモンライド。

 とはいえ残っているものはオトノのガッチャードしかない……というところまで来たので、またヒューキャニオンで時間があるときに掘ってきたらまた見つけてきたらしい、『仮面ライダーカブト』のライドフィギュア。

 ……しかしもう既に使った痕跡があるのでしばらくウタ達は使えないようだが。

 

「一応聞いておくけどあんた何したの? デモンライドで何ができるっけ?」

 

「デモンライドするとね……ダークカブトかと思ったらコーカサスが出てきた」

 

「名前出されてもあたし分かんないからライダー多すぎて」

 

「……一応ヒーローなんだから予習復習くらいはしておいてよ、バカで無知のお姉ちゃんでも猿くらい分かるように説明するよ」

 

「その前に使えないと分かったら舐め腐るような発言は慎みなさいよ? あたしは昔と違ってあんたのお人形じゃないし今なら手も出せるわよ」

 

「ここで喧嘩したらそれこそクリスタルハザードより世界滅ぼせるから後にするとして、それで改めて説明するとね……隕石を落とせる」

 

 要するコーカサスを召喚するとついでに隕石が落ちてくるのだが、風の勢いに任せて隕石を誘導させて落とす位置を多少弄ることが出来る。

 

 そしてヒューキャニオンはその全体構造が浮遊大陸で出来ている、ここから隕石を叩き込んでしまけば……壊れたら一体どうなると思う?

 

 

「ま……まさかあんた」

 

「うん、クリスタルを浮いた大陸から奈落の底に叩き落とせば……誰も回収できなくなるでしょ?」

 

「バカなの!? そんなことしたらあたし達だって下に落ちていったクリスタルを回収できないじゃないの」

 

「お姉ちゃん……話も最後まで聞かずに否定するほうがよっぽどバカみたいだよ? 私がさ、その程度のお姉ちゃんでも分かることを想定してないと思う?」

 

「してるしてないはともかくちょっとベルト抜きの殴り合いに興味がない? ちょっとお姉ちゃんでも堪忍袋が鋏で切られたレベルよ?」

 

 だが姉妹喧嘩勃発している場合ではないようであり……話している最中にも関わらず連絡が入ってくるのでオトノが応対する。

 

「えっ!? エンデルガス今そんなことになってるの!? ……でもごめん、ヒューキャニオンに先に向かわせて!!」

 

「ヒューキャニオンで何があったって!? それを今から調べに行くんだから何もしないで! 来ないでメモル!!」

 

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