私のエッセイでいいんですか   作:あああいい

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エッセイ【前進する力】

 隔週連載!

 普通女子のいろめがね

 

 

【前進する力】

 

 どうも皆さんこんにちは。ヒガ・マシロです。

 

 ようやく退院しました。

 

 編集さんからは「おめでとうございます」と言われましたが、病院の先生からは「ここからが本番です」と言われました。

 

 どちらも正しいと思います。

 

 正直なところ、私は退院すれば以前の生活へ戻れるものだと思っていました。朝起きて、ポケモン達と走り、飛び、泳ぐ。そして夕方には心地よく疲れて帰る。そんな毎日が、当たり前のように待っているのだと考えていたのです。

 

 でも現実は違いました。

 

 身体は確かに動くようになっています。それでも、「前と同じ」ではありません。

 

 身体の使い方も、バランスも、感覚も、全部が少しずつ違っています。その違和感は思っていた以上に大きく、入院中は「あれが出来ない」「前なら出来た」「もっと出来るはずなのに」と、出来ないことばかり数えていました。

 

 そんな私とは対照的に、ポケモン達はまったく気にしていませんでした。

 

 私が遅ければ速度を合わせ、疲れれば立ち止まり、「今日はここまでだね」とでも言うような顔をして隣を歩いてくれます。

 

 私にポケモンが合わせる。

 それを私はポケモンに枷をしていると感じていたのかもしれません。

 

 でも最近は、その見方が少し変わりました。

 

 彼らは私を「待っている」のではなく、私と「一緒に進んでいる」のかもしれません。

 

 人間は未来を考える生き物です。一週間後、一か月後、一年後。復帰や順位、大会のことまで、つい先のことばかり考えてしまいます。

 

 一方で、ポケモン達はもっと「今」を生きています。

 

 今日は走れる。じゃあ走ろう。

 今日は疲れた。じゃあ休もう。

 

 本当に、それだけなのです。

 

 私はそんなシンプルさに何度も助けられてきました。今回もそうでした。

 

 練習を再開した初日、思うように身体が動かず少し焦っていた私とは対照的に、ウインディも、ピジョットも、カメックスも、とても楽しそうでした。

 

「久しぶりだね」

 

 そんな顔をしていたように思います。

 

 前の自分と比べていたのは、私だけでした。彼らは過去ではなく、今の私を見てくれていたのです。

 

 競技の世界では、「昨日より速く」がとても大切です。記録は更新され、順位は変わります。だからこそ、どうしても過去の自分と比較してしまいます。

 

 でも、比べ続けていると、今の自分が見えなくなることがあります。

 出来ないことはすぐ目につくのに、出来るようになったことや積み重ねてきたことには、案外気付けません。

 

 だからこそ、時には立ち止まって振り返ることも必要なのだと思います。

 

 そういえば以前、この連載で「強さとは何か」という話を書きました。

 

 あの時は、「誰かと一緒に進めることも強さなのではないか」という結論で締めくくりました。

 

 それに一つ注釈をつけたいと思います。それは決して早く進むことではないという事です。  

 

 止めないことです。

 歩いてもいい。休んでもいい。遠回りしてもいい。

 

 また歩き出せるなら、それはちゃんと前へ進んでいます。怪我をする前の私は、そんなことを考えたこともありませんでした。

 

 走れなくなって。飛べなくなって。

 

 だからこそ気付けたことがあります。

 

 遠回りも悪くありません。

 

 そこにしか見えない景色がありますし、そこでしか気付けないこともあります。そして何より、支えてくれる人やポケモン達の存在を、以前よりずっと近くに感じられるようになりました。

 

 そしてそれこそが前進する力になっているのです。

 

 競技への復帰は、まだもう少し先になります。

 

 焦る気持ちがなくなったと言えば嘘になりますし、大会のニュースを見るたびに「早く戻りたいなあ」と思います。

 

 それでも最近は、その焦りとも少しずつ付き合えるようになってきました。

 

 焦る日があってもいい。落ち込む日があってもいい。

 それでも翌日また練習を始められるなら、それでいいのだと思っています。

 

 ちなみに先生には、相変わらず「無茶をしないように」と何度も言われています。

 

 私としては全然無茶をしていないつもりなのですが、どうやら先生と私では基準が違うようです。

 

 不思議なもので、世の中には色々な価値観がありますね。

 

 一つ言えるのは……先生の価値観の方が正しいと思います。無茶はしちゃいけませんよ。

 編集さんにも「その一文だけは大きく書いておきましょう」と言われそうなので、繰り返し書いておきます。

 

 無茶をしないように

 

 

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