遂に今回から初代編!
作戦決行の日
「“さて、準備は大丈夫?”」
ワタシは黒いトランシーバーに向けて呼び掛けた。その視線の先はイカスツリーの頂上、今日も先端に巻きつき、ぼんやりと何を考えているか分からない顔つきをしている巨大ナマズの方である。
《“はいっ!”》
《“問題ありません”》
無線の向こうから高い声が2つ届く。イカスツリー近くまで接近して待機している、作戦実行隊のタコゾネスたちだ。
今現在、ワタシはハイカラシティのマンホール横から、オオデンチナマズ拉致のための部隊指揮をしていた。
「“……現在アタリメ司令は日干しの為に離席中、今が一番チャンスかな”」
《“いつでも作戦開始できます”》
「“よし、じゃあ始めて”」
《“了解!”》
指示してから数秒後。
突然オオデンチナマズの姿がかき消えた。
無事に接近して回収できたということだろう。今頃オオデンチナマズは、オクタリアン開発の携帯型四次元格納庫に収められて
……さて、この後実行隊の子たちは本部に設置したビーコンに帰還するので問題ないだろう。
この後考えなければならないのは……
「“……で、結局司令にどう説明するのか”」
これである。
ワタシは司令に日干しの間の見張りを任されていた。つまり今までの間に起こったことに関してはワタシに責任がある。
そういうわけで、大袈裟なカモフラージュは要らないという結論にこそなったが、流石に何かしら
タコゾネスたちと連絡を取るのに使ったものとは別の、白いトランシーバーをベルトから取り外す。
通信を繋ぐと、直ぐに向こうの音が入ってきた。
「“司r…”……んん゙っ、司令、聞こえますか、応答されたし」
……危ない、タコ語のまま話し掛ける所だった。
マルチリンガルだと偶にこういうことが起こる。何故前世で見た多言語を話せる人たちが綺麗に言語を使い分けられていたのかは、未だに不思議に思っていることの1つだ。
《……こちらアタリメ司令、どうかしたかの?》
「こちら副司令……あの、ものすごく言いづらいんですけど……ワタシやらかしたっぽいです」
《ヌ?》
「オオデンチナマズ、居なくなってます」
《…なんじゃと?!》
「はい……あの、ちょっっ…とだけ、ジュース買いに外してただけなんですよ。そしたらそこの隙を見事に抜かれました。多分、知らない間に監視し返されてたんじゃないかな、と……」
大嘘である。1から10まで全部嘘である。
実際はめちゃくちゃ加担しているのである。
我ながらよく回る口だなと思っていると、無線越しの司令に前線基地に戻るよう言われた。
《攫われてしまったモンは仕方があるまい、今からオオデンチナマズ奪還のための作戦会議じゃ!》
「…了解、すぐ行きますねー」
果たして面と向かってもホラ吹きを続けられるのだろうか。バレたら色々な面で終わるが。
ワタシは若干の憂鬱さを感じながらマンホールに潜った。
「にしてもタイミングが悪いのゥ、1号と2号が忙しくて出動できん時に、こんなにもドンピシャで来よるとは……」
「あー、はい。相手も分かってますね、ワタシたちが嫌がるタイミング」
だってワタシだもの、ここって指示したの。
……そんな内心の呟きはおくびにも出さないようにする。
「ってなると、暫くはワタシと司令で回さないといけないんですかね。……一応、ワタシは前線できますけど」
「無理は禁物じゃぞ副司令、おヌシは
「あっはい、了解。……でもそれなら、1号たちが戻るまで待ちます?
思わず出た一言は、司令に釘を刺されたので大人しく撤回しておいた。
そう、それもそうだ。もしワタシが前線メインの活動をしていたなら、自分のコールサインは『3号』だったはず。
わざわざ『副司令』なんて座に就いているのは、原作の『3号』を潰したくないというストーリー愛だけが理由ではないのだ。それだけなら今の時点で存在が確定していない『5号』あたりでも申告しておけばいい。
━━だというのにそれをしないのは、今司令が言った通り、ワタシに他のイカとは違う“特異体質”があるからだ。
それが原因でワタシは、『自分のインクを使えない』。……正確には『使ってはいけない』の方が正しいかもしれない。使えば周りにも自分にも害が出る…といった所だ。
だからバトルには参加しないし、ヒーロー活動も基本無線越しの指揮だけに留まっている。ワタシの持つインクタンクは自分の身体とは繋がっておらず、支給されたものを持ち運んで使っている。
一応、ワタシのヒーロー装備には『インク効率』系のギアパワーがガン積みされているので、それで少ないインクを回してボムラッシュ戦法を取ったり、定期的に周囲のインクを吸引して補充したりと工夫した所はある……が、実用的かと言われれば全く頷けない。
つまるところ今のワタシは、指揮する相手も居らず自分が出ることもできない無職ということになる。自分で言ってて悲しくなってきた。
けれどまあ、本当の立場から言えば今は好機だ、今の内にオクタリアンは迎撃の準備を整えるだろう。ウチのエンジニアは有能だから、何なら更に兵器を強化してしまうかもしれない。もしそうなったら、首が締まるのはヒーロー側になるが……ワタシがおそらくこれから来るであろう『3号』を死ぬほど鍛えて強化すれば、それである程度互角になるだろうからヨシ。*1
「そうじゃのゥ……そろそろ新たな隊員をスカウトする時かもしれん」
「お、新人呼び込む感じですか?」
……丁度司令も人員補充について考えだしたか。何ともタイミングの良い。
「ならワタシの時みたいなやり方はやめてくださいよ? アレ結構怖かったんで」
「分かっておる!」
「本当ですかねー…」
……ワタシがスカウトされた時のアレは、正直かなり怖かった。ゲーム画面越しならそこまででも無いが、実際あの目力でマンホールからガン見されるのは中々恐怖心に来る。狙ってそういう挙動をしたのはワタシとはいえ、二度としたくない体験だ。
新人勧誘にやる気を見せている司令を尻目に、ワタシはまだ見ぬ後輩へのトレーニングメニューについてあれこれと思案する。
取り敢えず置きエイム、雷神ステップ、その他諸々覚えてもらおうか。それから相手への視線誘導のやり方に障害物の使い方、気配の消し方、エトセトラ。……挙げだしたらキリがなくなるな、コレ。
その後も暫く案を纏めていたが、そうしている内に司令から今日は一度解散して身体を休めるように言われ、ワタシは従って帰宅した。
……戻ったら、さっきまでに考えたことはメニューとして紙に纏めておこうと考えながら。*2
今回の描写では勝手に4次元空間に押し込んで圧縮しちゃいましたけど、実際ゲーム本編のオクタリアンはどうやってオオデンチナマズ回収したんですかね?
えっちらおっちら運んでたら絶対司令にバレますよね?
割とこの辺も謎である………