クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
『転移者サイトウ・タカシ及びフジワラ・アヤノについての経過報告、どちらも非戦闘職であるが、サイトウはモンスターテイマーの才能があり、本日スライム、デブスズメ、角うさぎを捕まえていた。ただし非戦闘職らしく本人の戦闘能力は限られたものであり、引き続きサポートが必要と判断する』
『本人達も現状異世界での生活に満足しており、早急に反逆や革命を起こす機運は見られず。生活費を稼げるだけの能力はあるので、引き続き監視を継続する』
「ふう、こんなもんで良いかな」
私の名前はミンナ……見習い宮廷魔道士兼異世界人の監視役を行なっている人物だ。
監視役として報告書を定期的に書かなければならないので、書いているが、サイトウの能力が凄すぎて、とても事実を書くことができない。
サイトウの能力をそのまんま書いて上層部に提出すれば、彼は良くて勇者に同行、悪ければ暗殺も視野に入ってくる。
それだけ弱いモンスターを強いモンスターに変化させて使役できるというのは強い能力である。
それだけでなく、彼は複数の能力を持っており、私たちの常識が通用しない。
それ故に危険と判断する人もいるだろう。
特にこの国の上層部は絶対にそう判断する。
そもそも勇者召喚自体も王はずいぶんと渋っていた。
それでも魔王と対峙している国から悲鳴の様な要請と、支援と称して金や物資を前線国に送り続ける現状は遺憾ともし難いのは私にも分かる。
それに王は勇者を召喚しても、世界を救ってくれるとは限らないと警戒していた。
異世界の住民ゆえにこちらの常識が通用しない可能性、食事が彼らには毒になる可能性、そして強力な能力に酔いしれて、自制が利かなくなる可能性……色々な可能性があり、それでも宰相と宮廷魔道士筆頭が勇者召喚を押し切った。
結果は今のところ成功と言える。
勇者や異世界人達の多くは理性的に行動しようとしており、悲観していた者達も今後の為に切り替えて行動を始めていた。
一部能力を得たことによる全能感を感じて暴走していた者も居たが……そういう者はこの世界に馴染めなければ監視役が処理するだろう。
「サイトウが本人の能力が上がるタイプじゃなくてよかった……。これで本人まで強くなる感じだったらいよいよ手がつけられなくなるけど、本人がそこまでだったら、今私がやっているように上司への情報操作でどうとでもなる」
私は巨大なモンスターを作らないようにとサイトウに忠告を行った。
それは町が混乱するからというのもあるが、サイトウ本人を守るためでもある。
彼が上から危険視されないために……。
「金が稼げる以上、現状は拠点を移動する予定は無し……でも、彼は大農園の主に成りたいって言っていたから、それに見合う場所を提供……いや、場所を得れるのであれば、そこを拠点にするかな。そうなれば、彼のやりたいことは満たされる。増長する様な性格でないのは分かる。仲間に無理やりしたのは驚いたが、それで私に不利益な行動はしてこないから許したし」
報告書を書き終えて、私は透視の魔法で、隣の部屋で休んでいるサイトウのことを見る。
ぐっすり眠っていて、特に変化は無い。
「私も眠るかな……お休みサイトウ」
報告書を金庫の中に入れて、私はベッドに横に成り眠るのだった。
「んん~よく寝た。城って場所が緊張してたからか、そこから解放されたからかいつも以上に眠れた気がするな」
朝起きると、俺は体を伸ばす。
日の位置的に今は朝の6時くらいかと思いながら、廊下にある時計を確認すると、6時15分。
いつもより1時間半くらい長く眠っていたらしい。
異世界でも時間は24時間で、1週間は7日。
ただ1ヶ月は28日で1年は336日しかない。
地球に比べると29日……約1ヶ月1年の日数が少ないが、これがこの世界の流れらしいので従うしかない。
「となるとミンナって18歳表記になってるけど、もしかして歳下?」
いかにもお姉さんぶっているが、実は歳下疑惑が発覚。
まぁ気にする必要は無いかと気持ちを切り替える。
俺はミンナと藤原さんの部屋のドアをノックして朝食を食べに行こうと誘う。
ミンナは既に起きていたらしく、髪も纏めて準備万端。
一方で藤原さんは俺のノックで起きたらしく、部屋の中で慌てて着替えたのか、寝癖で少し髪が乱れていた。
「うう……恥ずかしい」
食堂に移動してご飯を食べる。
今日の朝食はご飯に焼き魚、それに味噌汁と卵焼きという日本風の朝食。
流石に納豆は異世界人の口には合わなかったらしく、一部農村で食べられている以外は作られてないらしい。
「いただきます」
朝食を食べながら、俺は藤原さんに質問する。
「そう言えば、藤原さんレベル18まで寝ている間に上がったわけだけど、どの能力を上げたいとかある?」
「どの能力……うーん……攻撃はスライムに任せるから、死ににくくした方がいいよね?」
「まぁそうだな」
「じゃあHP、ガード、スピード、あとラックに割り振ってくれないかな? 配分は斎藤君に任せるけど」
「あ、そっか〜寝ている間に鍛えるをやっておけばレベル上げられるのか……忘れていたなぁ……私にも今夜やってくれない?」
「良いけど、鍛えるが終わったら自室に戻るの忘れないでくれよ」
「わかってるわよ!」
話は今日のやることに移る。
「最初に昨日購入したステータスの種が育っているかどうか確認をして、それから妖精を捕まえに行くんだっけか」
「そうそう。妖精は町の外の近くにある湖近くで多く湧くからそこに行くと良いわ。ただ妖精弱いけど魔法を使ってくるモンスターだから、気をつけないと怪我するから」
「そこら辺は注意が必要か……まぁキングスライムが居れば何とかなるだろう」
「油断は禁物よ」
「まぁ気をつけるよ。あとは……時間が有れば道具を作るの素材を集めたいんだけど」
藤原さんがレベルが上がって道具を作るの作れる物も増えたのって聞いてきたので、俺は答えた。
「おう、作れる物で繊維、革、粘土、鉄が新しく作れる物に加わったみたいだ。もしかしたら洋服とかも作れるんじゃないかって思ってな」
ミンナが服が作れるのは便利だねって言われる。
どうしても服が作れれば市場で買う必要が減るし、防具の更新にも使える。
あと鉄が解禁されたことで鉄製の道具が一気に広がった。
意外な物で、刀なんかも作れるっぽい。
まぁ剣道をやっていたわけでもないので、扱えるかは微妙だけど。
「あとスライムの合成に鉄が必要だったからそれも試してみたい」
「そしたら建材屋を訪ねてみると良いかもね。鉄のインゴットとかも取り扱っているから。粘土とかも確かあったはずだよ」
「おお! じゃあ今日の後半はそのお店で」
今日のやることも決まったので、朝食をちゃちゃっと食べ終えると、宿の庭に出て、鉢植えを確認する。
するとヒマワリみたいな花が咲いていた。
「ミンナこれって……」
「うん、ステータスの種が育ってできた花だね……私も始めてみたけど。この花を切り取って……」
ミンナが花を取ると、一度部屋に戻り、床に布を広げて、そこの上で花を手で叩くと、ころころっと種がこぼれ落ちていった。
小さな花だったので採れた種は50粒ほどだったが、ミンナ曰くそれでも多いらしい。
「私も又聞き何だけど、ステータスの種を1粒植えて10個収穫できれば上々って聞いたよ。しかも収穫するのに1ヶ月かかるって確か……」
「1日……いや、半日で育ちましたよね……」
「それも凄いけど50粒も採れたのは大きいよ。どうする? 3人で分ける?」
「勇者の園田に分ける……いや、それだと悪目立ちするか……今回は全部食べようか。というか俺に効果あるか分からないから2人で20粒ずつ食べていいよ。残りは収納しておいて、また大豊作のクールタイムが終わったら植えるから」
「それがいい」
というわけで、藤原さんとミンナは1粒種を食べる。
「ステータスオープン」
ミンナがステータスを表示すると、今回上がったのはどうやらパワーのステータス。
力は無いよりあった方がいい。
20粒ずつそれぞれ食べると、2人のパワーは200上昇した。
国が取引を管理している為に売ることはできないが、1粒5万シンクを20粒……100万シンクを一気に食べて能力が200上昇は冒険者なら手を出しても良さそうだけど……。
「ステータスの数値が上がっても、実感できる様になるのは1ヶ月は掛かるからね。食べたら直ぐに上がるわけでもないし」
「昨日ミンナに言われたけど……実際どうなの? ミンナ」
「うーん、変わらないね。力が湧いてくる感じもしないし」
「まぁ、継続して育てるし、またお金貯まったら別のステータス上がるのを祈ってガチャしてもいいもんな」
「じゃあ町の外に行きますか!」
「「おー!」」
町の外に出た俺達は、キングスライム2体に今日も平原のモンスター狩りをやらせて、残りの5体を引き連れ、湖を目指す。
「おいおい、あいつスライムをテイムしてるぜ!」
「絶対アイアンの新人だろ、茶化すのは可哀想だぜ」
湖に行く道中、他の冒険者ともすれ違ったが、若干馬鹿にされた。
「自分より低い人物を見て精神を落ち着けているような連中だよ。無視無視」
「何処にでもいるんですね……」
藤原さんは複雑そうな表情を浮かべながらミンナの言葉に反応する。
言われている俺は別に気にするほどでもないのでほぼ聞き流していたが。
まぁキングスライムの方がなんかぷりぷり怒っている様に見えた。
「俺は普通のスライムじゃないぞってか?」
ポヨンとキングスライムの1体が跳ねてそうだぞって返事をしているみたいに見える。
「なんかコイツら可愛いな」
「ぷにぷにひんやりしていて触ると気持ちいよね〜」
ちゃっかり藤原さんがキングスライムの1体を抱き抱えてよしよしと撫でている。
心なしか淡いピンク色になってないか?
ムッツリスライムめ……羨ましい。
そんなことをしていると湖に到着し、そこにはふよふよとホタルみたいに光の玉がそこら中に漂っていた。
「この光っているのが全部妖精だね。玉の様に見えるけど、一応本体は人型になっているんだ。まぁ人みたいに知能があるわけじゃないけどね」
「へぇ……」
俺は光の玉を目で追いかけながら捕まえるを選択する。
弱いモンスターだからか、弱らせなくても75%と表示されているので、とりあえず捕まえられるだけ捕まえていくのだった。