クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
夕方……雨が降り止み、夕食を食べた後に、墓地へと向かう。
ミンナは勿論、藤原さんも今日の日中のお休みでゆっくりすることができたらしく、心なしか肌がツヤツヤしていた。
「墓地って町の中にあるのか?」
「いや、正確には町の外ね。町の中に墓地がある町もあるらしいけど、この町は人口も多いし、その分亡くなる人も多いから、郊外に墓地があるわ」
町の東側の門に到着すると、衛兵にミンナは、
「墓地に行きたいのだけど」
「分かりましたこちらからどうぞ」
夜になると門が閉じる為、夜に外に出る場合身分証の提示が求められる。
自身のステータスを見せるか、冒険者の場合は冒険者になる際に渡されたプレートを衛兵に見せることで町の外に出ることができる。
門ではなく裏口の扉から出ることになるが……。
犯罪者でもない限りここで衛兵に捕まることはほぼなく、夜に町にはいる際も外で待機している衛兵に声をかければ、町に入る事はできる。
というわけで俺達3人は墓地へと移動。
墓地に到着すると、墓石が並べられていて、綺麗に手入れされていることが分かる。
「思ったよりも綺麗だな」
「墓守り達が管理しているからね。あと墓を綺麗にしていないとアンデット系のモンスターが湧くことがあるから、なるべく綺麗にしているらしいよ」
「なるほど」
モンスターを湧きにくくするための仕組み……というわけか。
墓を歩いていると、ふよふよとゴースト……人魂とも言うべき代物が墓の周りに漂っている。
一見すると妖精と同じように光の玉に見えるが、ゴーストは妖精みたいに魔法で攻撃してくることもなければ、光の色も青白く、人に無害であるとミンナは言う。
「まぁ亡くなった人の無念や未練の感情が死後も現世に魂を残し続けているモンスターだから、墓標に刻まれる名前も無いような冒険者の墓に多いんだけどね」
ミンナが指さすと、墓というより石碑に無数のゴーストが浮かんでいた。
元々冒険者だった魂がここに集まってきているのだろう。
「本当に捕まえるの?」
ミンナは改めて俺に聞く。
「話を聞いていたらゴーストを捕まえて合成すれば片方の未練は消えることになるんじゃないかな。で、最終的に残ったとても未練が強い魂の願いを聞き届けることでも供養になると思うんだけど」
「なるほど……そんな考えもあるのか……」
「俺実は前の世界でもゴーストを観たことがあるんだよ。人ではないんだけど」
牛の世話をしている時に、父親が安い子牛を買ってきたのだが、1頭前脚の片方が悪くて、何度も炎症を起こし、ついには蹄が腐っていく病気にかかってしまい、立ち上がることも難しくなってしまった子牛がいた。
毎日そいつに給仕したり、獣医に付き添って、治療の手伝いをしていたからかその子牛は俺に懐いて、よく俺の服を引っ張って遊んでいたが、ついに限界を迎えて亡くなってしまった。
その日の夜……牛が脱走すると反応するセンサーが鳴った為、牛舎の見回りに行くと、日中に亡くなった筈の子牛の幽霊が俺に近づいてきて服を噛んでからスッと消えていった……という過去があった。
牛でも未練を残す事があるのだから、なるべく現世から解放してやれるのであれば、解放してやるのが優しさだと思う。
それが例え合成という普通のやり方ではなかったとしても。
俺は漂っているゴーストを見つめる。
捕獲率は95%と表記されているので、弱らせることなく、どんどん捕まえては合成をしていく。
墓地を歩きながら、どんどんゴーストの数が俺に捕まり減っていき、辺りが暗くなっていく。
俺はハイピクシーを数体外に出すと、ピクシー特有の光が光源代わりになって、周囲を照らしてくれる。
墓をどんどん進んでいくと、一際大きなお墓がそこにあった。
「王族の墓だね」
時代が時代ならピラミッドとか古墳が作られる王族の墓であるが、この国の王族は周りの墓よりは墓標の材質だったり大きさが豪華であるが、滅茶苦茶大きいとかそういうわけではなく、常識的な範囲内の墓であった。
そこに一際大きなゴーストが漂っていた。
そのゴーストの墓を見てみると、先代の王の娘……現国王の妹の墓と記されていた。
「マリー王女だね」
ミンナは知っているらしい。
「私が小さい時に魔法の天才って言われていた王女だったんだけど、魔力の量が膨大過ぎて、成長するよりも体を蝕む様になって、最終的に魔力が暴走して大きな被害が出る前に自ら命を絶った悲劇の王女って言われていたわ」
確かに魔法がある世界だから、魔力を多く蓄えすぎて体に害が出る病気はあったりするのか……。
享年は15歳……中学生くらいか……可哀想に。
手を合わせた後に俺はたぶんマリー王女のゴーストを捕獲するのであった。
ゴーストを合成するとハイゴースト、ハイゴースト同士を合成するとレイス、レイス同士でハイレイス、ハイレイス同士でリッチへと次々に名前を変えて強くなっていった。
で、リッチ同士を組み合わせるとゴーストの最終形態であるエルダーリッチに到達した。
「ゴースト32体でエルダーリッチか……どんな状態か外に出してみるか」
「大丈夫なの?」
藤原さんは心配そうにするが、俺の支配下にあるし、襲うことはないだろうからと外に出す。
光が放たれ、徐々に体が現れてくる。
豪華な白いドレス、黄色の長い髪、銀色の瞳……病的に青白い肌……若干透けている彼女はキョロキョロと周囲を見渡す。
『まぁ……まぁまぁ……あなたが私の格を高めてくださったのかしら』
上品な口調で、俺に話しかけてくる。
「ああ、俺がゴーストだった貴女をエルダーリッチに格を上げた。名前を伺っても?」
『そうですね……ゲルマ・マリーよ。今から15年前に亡くなったゲルマ王国の第三王女……と言えば良いかしら』
「やっぱり……」
未練が強かったのか、元々ゴーストになっても格があったからか、その両方か……マリー王女をエルダーリッチにしてしまった。
「王女様」
『マリーで良いわ』
「じゃあマリーさん。俺の仲間として協力してくれませんか?」
『うーん、良いけど……出来ればこんな幽霊の格好じゃなくて肉体が欲しいのだけど……肉体を獲れる方法は無いかしら?』
「ちょっと待ってください」
エルダーリッチでゴーストとしての進化は終わっているが、人もしくはホムンクルスを合成することで別の進化に到れる様になっているっぽい。
「合成をもう1度することで肉体を獲れるかもしれないけど……やりますか?」
『やるわ! 肉体を獲れて復活できるなら願ったり叶ったりよ!』
「一応自我が保てるようにモンスターに名付ける事が出来るので、生前の名前で登録しますか?」
『うーん、ただのマリーで良いわ。王族なのは嫌な目に遭ったし……』
「じゃあマリーと名付けますね」
『ええ、ありがとう』
俺はエルダーリッチにマリーと名付ける。
そして彼女とホムンクルスを合成すると……ヴァンパイアへと進化したのである。
「確かにアンデット系統だけど……ヴァンパイアか……」
再び捕獲状態になっていたマリーを外に出す。
「ふう……手の感触や地面の感触がある……よし! 復活できたわ! ……ってキャ!」
今まで来にしたことなかったが、肉体を持った状態で合成されると裸の状態になるらしい。
絹のように白い肌に膨らみかけの胸、つるんとした股まで丸見えであった。
「うぷ!?」
興奮して鼻血が出そうになるのを俺は堪えて、慌ててインベントリにある布で彼女に合う洋服を作り出して、投げ渡す。
「は、早く着て」
「あわわわわ!」
マリーも慌てて服を着替える。
現在のマリーの姿は長袖Tシャツにジーパンといったラフな格好。
エルダーリッチの時のドレスの時に見せていた神々しい感じはすっかり鳴りを潜めた。
「はいはい、仕切り直し」
ミンナが微妙に成った空気を変えてくれた。
こういう時にミンナの切り替えは助かる。
「コホン、改めて自己紹介を……ヴァンパイアという魔人に生まれ変わったマリーです。以後お見知りおきを」
「えっと、モンスターを合成したり格を上げたりできる異世界転移者の斎藤隆史です。サイトウで構いません」
「同じく異世界転移者の藤原綾乃です」
「転移者の監督役兼同じパーティーで魔法を教えている見習い宮廷魔道士のフレック・ミンナです。マリー様の生前の記憶は少々覚えております」
「今の私はただのマリーだから堅苦しい言葉は不要よ。タメ口で良いわ」
「じゃあ遠慮なく……マリーでいいか?」
「ええ、サイトウ。改めてよろしくね。そしてありがとう私を復活させてくれて。ずっと夜にふよふよ周囲を漂うゴーストの時は気が狂いそうだったわ」
「じゃあマリーは15年間、ゴーストになっても意識を残していた……と?」
「ええ、ミンナ。その通りよ」
どんだけの精神力だよ……というより未練がそれだけ強かったのか?
「未練も未練よ……生前の私は有り余る魔力で12歳までは魔法の天才と持て囃されたわ。でも魔力のキャパオーバーで体が蝕まれ始めると父親や兄弟に家臣達は私を魔力タンク扱いして……錬金術で作られた特殊なベッドの上に寝かせられて、魔力をどんどん吸い取り、魔石を生み出すの……役に立てるし延命できるならと協力したわ」
「でも魔力が暴走して危ないと見るや、離宮に隔離の上で毒殺よ……血の繋がった家族にあり得ないでしょ……」
「あの……一般には魔力が暴走しないように自ら毒を飲んで亡くなったことになってるんですが」
「違うわ、飲み物に毒を盛られて、もがき苦しみながら亡くなったのよ……魔力量が勇者と呼ばれる存在並みにあったし、死に方がそんなんだったから成仏できずに15年間も気が狂いそうになりながらゴーストとして意識を保ち続けたわけだけど」
めっちゃ王族の闇を語るやん……勇者の召喚後の扱いもそうだけど、この王国の上層部、結構闇が深いぞ……。
「でもこの体は良いわ。膨大な魔力を宿している私でも特に問題なく馴染んでいるし、生前の頃より扱いやすいかもしれないわ。サイトウ……蘇らせてもらって感謝するわ」
俺的には夜間にレベリングできるモンスターが居れば良かったのだが……。
「うーん、確かに私の体は夜行性になっているわね。日の光でもダメージを受けそう。まぁ肌に光の遮断とダメージ常時回復の魔法をかけていれば日中の活動も問題ない……か」
ヴァンパイアなのに日中も活動する気満々なマリー。
「とりあえずステータスオープン」
マリーはステータスを開く。
名前 マリー
年齢 15
性別 女
職業 ヴァンパイア
HP 2500
MP 557895
パワー 1650
ガード 1090
マジック 3420
スピード 890
ラック 45
「あちゃー、職業がヴァンパイアになってる……これだと冒険者の登録って無理よね?」
「いや、魔族扱いでギリギリ許されるかも……ステータスを見られたら驚かれるかもしれませんが」
「え、冒険者に成れるの!? もしかして!」
「ヴァンパイアだからって迫害されることは無いかと……」
結局話し合った結果、マリーはパーティーメンバーとして俺達のパーティーに加入することが決まり、今泊まっている月風亭にミンナと2人部屋で泊まる様にするという事が決まるのだった。
ミンナ2人部屋に移動。