クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
異世界転移16日目も終わり、部屋でゆっくりしていた。
「あっという間に冒険者になってからも2週間が経過したんだな……」
14日目、15日目、そして今日の3日間を俺は振り返る。
と言っても、この3日間は同じことの繰り返し。
朝のルーティンを行なって、冒険に出て、キングスライム達にスライム狩りの指示を出して……。
女性陣は14日目は町の散策をしていたが、15日目と今日は俺の近くで魔法の練習をしていた。
皆が魔法の練習をしている間に、俺は筋トレをしたり、木材で作った椅子に座って、この世界の技術書を読んだりして時間を潰し、スライムの他の進化について調べたりもしていた。
スライムの合成で分かった事は、例えば鉄を合成して生まれるメタルスライムと普通のスライムを合成した場合どうなるのかと言うと、普通のハイスライムになってしまった。
スライムの合成は通常種の方が強く出る傾向っぽくて、メタルスライムを強くしていきたかったらメタルスライム同士を合成しないといけないって知見を得ることができたり、全くの別種である首刈りうさぎとドデカオオワシを合成するとどうなるのか……という好奇心が抑えられずに、合成してみた結果、何故か分からないがシバテリウムというモンスターになった。
体長3メートルくらいの鹿とキリンを組み合わせた様な動物っぽい生き物だが、図鑑曰くモンスターらしい。
鹿っぽい角に電気を溜める性質があり、電撃攻撃を得意とするって書かれていた。
ミンナに聞いてみたら、遠方で家畜として育てている地域があるのだとか。
ステータスの数値は首切りうさぎよりは下、ドデカオオワシよりは上という順当に進化とは違う合成結果になる場合もあることが判明するのだった。
3日間キングスライムにはスライム狩りに徹底してもらった結果、スライムの魔石の換金額は1日12万シンクにもなり、薬草を売らなくても十分すぎるほどお金を貯める事ができた。
そして16日目の今日、藤原さんのステータスがHP、MP、パワー、ガード、マジックの5種類が1000の数値を超えたので、明日転職の儀式を教会に受けに行く。
変わらないかもしれないが、家事手伝いより上の職業に成れれば魔法も覚えやすくなるらしいので頑張って欲しいところ。
ミンナも藤原さんと同じく職業を貰いに行くし、マリーも今ヴァンパイアだけど、別のに成れるかもしれないからと転職してみるらしい。
どうなることやら……。
「朝だぞー」
17日目の朝、俺は早朝のルーティンを行うが、もうステータスの種を育てるのは怪しまれるかもしれないので、昨日で終わり。
ランニングして、風呂に入ってさっぱりして朝食を食べるために女性陣を起こしにドアをノックする。
「はぁ……おはよう斎藤君」
「おはよう藤原さん」
今日はちょっと眠そうな顔で藤原さんが起きてきた。
魔法で水を生み出して顔を洗ったのか、ちょっと顔や髪の毛が濡れている。
「おはよーサイトウ!」
「おはようございます」
ミンナとマリーも部屋から出てきて、食堂に移動し、朝食を食べる。
今日のご飯は牛肉と玉ねぎをタレで煮詰めた小鉢にゆで卵、味噌汁っぽいスープにご飯とサラダが付いている感じ。
今のところ宿の飯で不味いのに当たったことがないので、ストレスの軽減に繋がっている。
「今日はミンナ、マリー、藤原さんの3人が教会で転職ができるかの確認をして、転職ができたらモンスター相手に慣らしって感じだよな」
「そうだね。本当に転職できるか分からないけど頑張るね!」
藤原さんも転職する気満々である。
朝食を食べ終わって、教会が開く時間まで宿で時間を潰し、中央通りを進んだ場所にある教会へ向かうのだった。
「20年前から何も変わってない」
マリーがそう呟いた。
10歳から15歳で職業を授かることが多い様に、マリーも生前にここの教会で職業を授かったらしい。
「思えば役職を授かってから体の調子がおかしくなっていったようにも思うのだけど」
まだ元気な頃に親と来た思い出の場所であり、自身の不調が始まった場所ともなれば少々警戒するか。
「シスター、これお布施です」
ミンナが代表してシスターにお布施を渡し、用件を伝える。
すると転職の儀式を行うからと別室に案内された。
その部屋には人くらいの大きさの水晶が鎮座しており、光り輝いている。
「では転職を希望する方は1人ずつ水晶に手を触れてください。転職が可能であれば頭に選択肢が思い浮かぶはずです」
シスターの説明を受けながら、まずはミンナが先に転職をしてみることに。
ミンナが触れると、水晶の光が一層増し、そして光が落ち着いた。
「ステータスオープン」
ミンナがステータスを開くと、魔法使いだった職業の欄が魔道士へと変わっていた。
「魔法使いと魔道士って何が違うんだ?」
「魔法使いの上位職で、マジックのステータスが1000以上有れば成れるとされている職業だよ。魔法の威力が上がったり、MPの消費量が軽減したり……効能は色々あるよ」
「そうなのか」
熱弁されても俺転移者だから分からないし……。
でもミンナが興奮しているってことは当たりの役職なのだろう。
続いてマリーが水晶に手を触れる。
しかし、水晶は輝かなかった。
「うーん、私は駄目みたいね」
まぁ今は魔人になっているし、モンスターとしての側面が強かったのだろう。
これ以上マリーが強くなってもあれだけど……。
「じゃあ最後に私行きます!」
藤原さんが水晶に手を触れると、水晶はミンナと同じように光出して新しい役職に転職できたみたいだ。
「ハウスキーパーって役職になれたんですけど、これってどんな職業ですか?」
「えっと、ちょっと待ってくださいね」
シスターが各種役職の効果が載っている辞典を取り出してきて、確認すると、どうやらメイド系の上位職らしい。
家事手伝いからメイドにジョブチェンジする女性は一定数いるらしいが、そこから更に上の上位職に一気に成れる人は珍しいとのこと。
「非戦闘職なので、戦闘系の魔法は簡単なのしか覚えられないと思いますが、掃除、洗濯、料理、それに一般的な非戦闘職の仕事は大抵なんでもこなせる能力を持っています。王族貴族達からも高値で雇われる職業ですよ」
「そ、そうなんですか!」
藤原さんは戦闘はやっぱり無理っぽいが、逆に私生活の面の適性が凄い高いことがよくわかった。
(まぁそうは言っても、宿で1人残すのは可哀想だし、マリーやミンナ、キングスライム達が居れば冒険をしても身を守ることはできるだろう。というか魔法が使えない俺が戦闘能力の面では一番低いしな)
どこからともなく女に護られて恥ずかしくないんか?
て、声が聞こえてきた気がするが、しゃーないだろ……戦闘技能が無いんだし……後方から弓でチクチクするのが適任だろう。
(となると、藤原さんもクロスボウの扱い覚えてもらった方が良いな。万が一の自衛にもなるし)
転職の儀式を終えた俺達は昼飯を食べるために別の場所へと移動するのだった。
近くの飯屋でデブスズメの唐揚げ定食を食べながら、先ほどの転職に関してミンナに質問する。
「なあミンナ、マリーのステータスって他にバレても大丈夫なのか? 冒険者ギルドの時はミンナの知り合いが職員だったから騒ぎにならなかったけど」
「職業決めの水晶は冒険者ギルドの転写の水晶とは違って記録されているわけじゃないから、確認を求めない限り、ステータスは教会側にバレることはないよ。皆行う職業決めの儀式で個人情報を抜かれていたら、貴族とかで望まない役職になった人が困るから、教会側はルールとして求められない限りステータスを見てはならないってなっているのよ」
「なるほど……もし教会に魔人ってマリーがバレても問題はなかったの?」
「うーん、そこら辺は大丈夫だと思うわ。王都は人の出入りも多いからそういう差別も比較的緩いし……ただ他所の国とかは人族以外に関しての差別が強い地域も多いらしいけどね……」
異世界人が国の起こりに関わっていたり、国の仕組みを整えた国がゲルマという王国故に、異種族に関しての差別が薄いらしい。
それに今は人類が魔王と生存を賭けた戦争中ということもあり、過激な意見は鳴りを潜めているらしい。
前の世界では宗教が人種対立を煽っていた歴史があるが、この世界の宗教は一定の権力は持ちつつも、国家間の戦争の仲介を行なったり、役職の選定、民衆のモラル形成、弱者救済等で必要な社会インフラとして機能しているらしい。
おそらく過去の転移者が宗教と政治の分離を相当頑張ったのだろう。
完全とは言えないが、中世と近代のような社会レベルで王よりも宗教権威を下に置くっていうのは異世界系のラノベでもできているところが少ない気がする。
まぁラノベや漫画の場合宗教が徹底的に描写されない場合も多いけど……。
ミンナのおかげでまた一つこの世界について学ぶことができた。
「藤原さんが転職しても非戦闘職ってことは、完全に戦闘に向いてないことが分かったから、藤原さんはモンスターを倒すよりも、自衛のための時間稼ぎができる様になれば十分かな……俺もそうだけど」
「時間稼ぎ?」
「戦闘に関してはマリーやミンナ、捕まえているモンスターに任せる。別に冒険者として強くならなきゃいけないわけじゃないからな俺らは」
俺達の場合キングスライムに任せていれば、ある程度の収入は得られるから、無理に強くなる必要はない。
勇者みたいに使命みたいなのも無いから、豊かな生活が出来れば勝ちみたいなもんだ。
「藤原さんも戦闘職にこだわりがあるわけじゃないでしょ?」
「う、うん……魔法を覚えるのは楽しいけど、戦闘は……」
「ミンナとマリーと強敵を倒すことに意味を見出すタイプじゃないだろ?」
「それはそう。命大事に」
「私も魔法が凄いだけで、それ以外は少女だし……そんな戦闘狂みたいには思われたくないな」
「だろ」
まぁ俺がレベルアップして、皆のレベルも上げて、ステータスを割り振れば強くは成れる。
それで現状は十分じゃないか?
「まぁ俺と藤原さんは自衛の為にクロスボウの練習をしよう。クロスボウなら女性でも扱えるし」
「う、うん! 頑張る!」
昼食を食べ終わって、俺達は郊外に向かうのだった。