【書籍化決定】クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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レベル50へ

 町の外に出た俺達パーティーはキングスライムに乗って、町からある程度距離を取った場所に移動した。

 

 町の近くで魔法の訓練をすると、手加減がまだ上手くできないマリーが周りに被害を出すかもしれないし、土がガラス状になっていたら噂になってしまうので、ある程度離れた場所で練習をしていたのである。

 

 その意味でも、俺が作った薬草の群生地はちょうど良かった。

 

 今はもう少し森に近い場所で練習していて、木々を的代わりにしていた。

 

「じゃあミンナはマリーを見てやってくれ、俺は藤原さんにクロスボウの扱い方を教えるから」

 

「了解」

 

 藤原さんに近づき、俺はインベントリの木材を使って、クロスボウを作製する。

 

 仕組みは腕に固定して、目標に狙いを定めて、引き金を引くだけ。

 

 そうすると引っ張られていた弦が勢いよく矢を放ち、対象に命中する。

 

 再装填はネジを巻く道具を使って約1分ほど。

 

 慣れた人だと馬上でも目標に当てることができるようになるのだとか。

 

 有効射程距離は30メートルから50メートルくらいで、それ以上の距離は殺傷能力が著しく低下する。

 

 利点は発射音が小さい為に気づかれにくいこと。

 

 欠点は再装填に時間がかかる点と威力が魔法のように上げることができない点である。

 

 こればっかりは仕方がない。

 

 俺は木に印を付けて、そこに目掛けて矢を放てるようにしようかと藤原さんに言う。

 

「構えるのこうかな?」

 

「いや、肩にクロスボウの底部を当てると安定するから、それに右脇を締めて、左手を前に出してロックする」

 

 俺は扱い方に困っていた藤原さんの横に寄り添って、クロスボウの構え方を教える。

 

「藤原さん?」

 

 藤原さんの顔を見ると真っ赤になっていて小刻みに震えていた。

 

「斎藤君、近い! 顔が近いよ!」

 

「あ、いや! ごめん!」

 

 しかも支えるために手を添えていたりとボディタッチが激しすぎた。

 

 俺も藤原さんの柔らかい手の感触を思い出して、顔が真っ赤になってしまう。

 

 互いに顔を見合わせて少し照れた後に、仕切り直して教える。

 

「えっと腕をこうで……構えて引き金を引く……」

 

 パシュっと矢が放たれ、木に付けた印から少し外れた場所に命中する。

 

「おしい! もう少し上だね」

 

「う、うん」

 

 俺がクロスボウのネジを巻き直すが、それを見ていた藤原さんが、

 

「ネジを巻くの……この魔法なら早いかも」

 

 と魔法をかける。

 

 藤原さんが掛けた魔法は洗濯物をする際に物体を回転させる魔法で、衣服を洗ったり、服を回転させて脱水する時に使う生活魔法の1つであるが、それをかけると、力を入れずにネジが巻かれ、数秒で矢が再装填できる状態になっていた。

 

「ネジ巻き機要らずじゃん……凄い藤原さん!」

 

「そ、そうかな?」

 

「じゃあさ、放った時にも矢を回転させることはできないかな?」

 

「矢を回転? ……試してみるね」

 

 次の矢を装填して、藤原さんは矢を放つと先ほどよりも狙った位置に矢が飛び、更に矢が木に突き刺さった。

 

「威力が上がった?」

 

 ジャイロ効果……銃とかで銃身に螺旋状の溝が掘られているのは、銃弾に回転力を与えるため。

 

 高速で回転し飛行する物体は姿勢を保とうとする動きが働き、空気抵抗を減らすことにも繋がる。

 

 結果射程距離と命中率、そして威力が上がるという仕組みである。

 

 高校の物理で習うので、藤原さんも覚えていてもおかしくないけど……、

 

「私理科系は苦手で……数学はできるんだけど、何故か物理や化学はさっぱりで……」

 

「苦手科目ならしゃーない」

 

 俺が覚えていたのも理科系が得意だからというより、ラノベで銃を取り扱う作品で細かく解説されていたので妙に頭に残っているからだし……。

 

「でも生活魔法でも活用方法次第では攻撃手段に転換出来るのは大きい。たぶんミンナからも褒められるんじゃないか? 攻撃力も装填時間の短縮もできているわけだから」

 

「そ、そうかな……えへへ……」

 

 藤原さんは持ち歩ける矢の本数に限りがあるから、俺みたいに弓チクのヒットアンドアウェイ攻撃による長期戦は向かないかもしれないけど、装填時間短縮と威力向上で、一撃で仕留められればよし、ダメでも二撃目が高威力で叩き込めるは大きい。

 

「欠点は森の中とか障害物が多い場所は厳しいって感じかな」

 

「そこはキングスライムに守ってもらえれば良くないかな?」

 

「そりゃそうだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 キングスライム達にスライム狩りを任せていたら、キングスライムの使役数が増えたことにより、経験値が溜まる速度が上がり、俺のレベルは遂に50となった。

 

 気力、知力、器用、筋力のステータスがオールCとなり、結構見栄えが良くなった気がする。

 

 知力と器用のステータスが上がったことにより、より大型かつ複雑な道具や機械も作れる様になっていたし。

 

 一番は数日前の39レベルからレベルが11上がったことで、5刻みの新しい技を3つも覚えた事が一番大きいだろう。

 

 新しく覚えた技は釣る、繁殖する、そして剥ぎ取るの3つだ。

 

 順番に紹介していこう。

 

 まず釣るだけど、どんな場所でも釣りをすることができるという技で、釣り竿を作って、糸を垂らせば、それが地中でも何かを釣ることができる技だ。

 

 水中だと魚が釣れるのであるが、試しに平原で釣り糸を垂らしてみたところ、モグラのモンスターが釣れたり、何かよくわからない化石が釣れたり、鉱石が釣れたりとランダムで何かを釣ることができた。

 

 部屋の中で釣りをしたら藤原さんに作ったブラジャーが釣れるという事件が起こってから、宿では釣りはしないと決めたが……。

 

 これ釣り糸を垂らした場所から何かが釣れるという仕組みなので、例えば釣り糸をクロスボウの矢にくくりつけて、モンスターの体に打ち込み、釣り糸を引っ張ると、モンスターの内臓を抉り出す……みたいな即死攻撃ができてしまったりする。

 

 勿論狙うのは難しいが、スライムや角うさぎで試したら出来てしまったので、ヤバい技であるに違いない。

 

 ちなみに釣りという技を見てから、道具を作るでも例えば鉄の斧で木を切っている最中に別の道具に切り替えたら、どうなるのかという実験を行なったら、木が爆ぜた。

 

 変形する最中に不規則な形態になるのが、突き刺さっている部分に大きな力がかかるのか、木の場合は一気に折れたと言えば良いか抉れたと言えばいいか……。

 

 スライムに試したら、接触部分が爆ぜて、スライムは瞬時に絶命。

 

 なので槍とかで刺さった状態で道具を別の物に変形させると挙動がバグって、刺さっている相手に深刻なダメージを与える……ということが判明したのである。

 

 素材が駄目になるので鍬ワープをしながら鍬で相手に突き刺し、変形で大ダメージを与える最後の手段としては使えるかも? 

 

 やりたくはないが……。

 

 釣るのお陰でそんな必殺技が思いついたりした。

 

 繁殖するは『同種の』モンスター同士を掛け合わせると子供が捕獲状態で生まれるというもので、キングスライム同士で繁殖させたら、スライムを複数体生む結果になった。

 

 ちなみにスライムは性別が無いので何とかなるが、性別があるモンスターはオス・メスでちゃんと配合しないと子供は生まれないので注意が必要。

 

 繁殖するを選択すると、選んだモンスター同士でタイマーが起動し、5分間終わるまで選んだモンスターを外に出すことができない仕様になっていた。

 

 これ何がヤバいって、たぶん人間でも短時間で子供ができる点である。

 

 試すつもりは無いが、悪用しようと思えば悪用し放題のヤバい技な気がする。

 

 一番使い道として健全なのは家畜を増やす時だろうか。

 

 スライムで試したが、捕獲したモンスターはこちらの判断で逃がす事ができ、例えば雄雌の牛を捕まえ、繁殖するを選択し、タイマーが終われば子牛が誕生する。

 

 誕生した子牛を逃がすを選択することで、捕獲状態に戻すことはできないが、個体数を簡単に増やすことができる……という増殖技を考えついたり……。

 

 これが健全な使い方というのも終わってる気がするが……。

 

 最後に50レベルで今さっき覚えた技は剥ぎ取る。

 

 これは仲間もしくは自分が倒したモンスターに触れることで、一瞬で解体して素材を入手することができる技だ。

 

 もっと早くに覚えてもよい気がするが、倒したモンスターという制限がかかっているので注意が必要。

 

 ただし、条件を満たせば、普通では採取不可能な素材を得ることも可能である。

 

 例えばスライムの液体……これはスライムが倒されると直ぐに地面に溶けてしまい回収することができないが、キングスライムに弱らせた状態で運んできてもらい、俺が倒すことで、倒した瞬間に素材をアイテムボックスに転送すれば、スライムの液体を入手することができる。

 

 だからなんだという話かもしれないが、何かに使えるかもしれない技なので覚えておいて損は無いだろう。

 

 とりあえずこの3つの技を俺は新たに覚えたのだった。

 

 

 

 

 

 

「さてと、今日も狩りは終了……ミンナ、マリー、藤原さんお疲れ様」

 

「うん、お疲れーそっちも順調そうだったけど、そろそろ森に挑んでみる?」

 

 ミンナが森に挑んでみるかって質問してきた。

 

 ミンナから見て森に挑めるレベルに到達しているのかと俺は聞くと、現状の戦力でも森に挑むは十分だよと言われてしまった。

 

「サイトウが素材を回収できる技を覚えてくれたのも大きいね。本来なら素材を解体したり回収したりする専用の人員を雇わなくちゃいけないんだけど……サイトウのおかげでその必要はないしさ」

 

「確かに剥ぎ取るって技を覚えたし、レベルが50に到達したことで、3トン半強の重量を収納することができるし、アイテムボックスを収納しておけば、更に内容量を増やすことができるからな」

 

「3トン半……普通の冒険者なら十分だけど、私達は普通じゃない冒険者だからここらで一番の大物であるイエローベアーも数狩れるでしょうし」

 

 ただし、ミンナから捕獲するのは良いけど、イエローベアーをまとまった数狩れるって事がバレたら周りから注目されるから注意と忠告を受けた。

 

「スライムを幾ら倒そうが目立たないけど、イエローベアーとかになると別。目立つということはそれ相応の嫉妬ややっかみを受けることになるから、それを気にするなら程々に。まだサイトウやフジワラ、そしてマリーにはやっかみをはね返すほどの社会的な信用が足りてない状態だから」

 

「忠告感謝する」

 

 ミンナからの金言である。

 

 宝くじが当たったとバレれば、周りから凄く嫉妬されるのに近いかもしれない。

 

 それが転移者とか授かった能力由来なら尚更か。

 

「難儀だなぁ……」

 

 とりあえず森での活動は程々に……。

 

 そんな打ち合わせをしてから宿に戻るのだった。

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