クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
迷宮国家ジパングに到着してから8日……俺達は旅の疲れを完全に癒し、ダンジョンに挑む事にした。
一応自分の名前を書けるようになったニャンとカグヤの2人は事前に冒険者ギルドで冒険者登録を行い、アイアンの冒険者となっていた。
「とりあえず今日はあくまで試験的に入るだけで、色々確認していくぞ」
「「「おー!」」」
掛け声をしてからダンジョンに潜っていく。
ダンジョンの入口は冒険者ギルドの中にあり、この塔が結界みたいな役割を担うことで、外にモンスターが溢れ出すことを防いでいるらしい。
地下へと続く石畳の階段を降りていくと、光る苔が生い茂るダンジョンの通路が広がっていた。
「「「おお……」」」
ただの通路なのに、幻想的な光景に感嘆してしまう。
そのまま地図を確認しながら通路を歩いていくが、途中で順路を示す看板もあり、モンスターと出会うことも無く、次の階層へと続く階段にたどり着いた。
「次の階層から本番か」
攻略本にも1階層目にはモンスターは湧かないとされていて、この1階層に5箇所ある2階層に続く階段を降りると、ダンジョン本番である。
「入口が複数あるみたいなものだもんな」
これ以降地下へと続く階段は数箇所ずつ増えていく。
地下に行けば行くほどダンジョンは広くなることを意味する。
攻略本の内容が本によって違ったり、30階層までなのは、階段が無数にありすぎて、全ての順路を追うことができなかったり、地図を記述しながら挑めるのが30階層まで……ということになる。
2階層に到着した俺達は早速モンスターと遭遇する。
「スケルトンか」
動く人型の骨のモンスタースケルトン。
普通であれば亡くなった人の体がモンスター化することで生まれることが多いが、ダンジョンの中だと、冒険者の亡骸だったり、自然発生することがあるらしい。
『えい!』
アリスが装備している鉄の剣(俺が作った)を振るうと、スケルトンは砕けてバラバラになり、小さな魔石を落とした。
「一応骨を拾えば肥料にはなるけど、今は要らねぇな」
「そうだね」
マリーも同意する。
「2階層にはトラップとかも特になくて、5階層までは出てくるモンスターもスケルトン、ドブネズミ、スライムの3種らしいし、スケルトンとスライムの魔石くらいしか売れないから、もう少し下の階層に行かないとな」
「そうだね。となると5階層までは急ぐ感じ?」
「そうなる」
ミンナに確認されて、俺は同意する。
「あと一応ここで確認しておくか……ちょっとクリエイティブモードになるから待ってて」
『はーい!』
俺がクリエイティブモードになり、床をすり抜けると、下の階層に行くことができた。
垂直に降りていくが、特に問題は無さそうである。
「うん、床抜けすると現在地を見失うかもしれないけど、下の階層に行けるな」
俺は直ぐに皆の元に戻り、床抜けできることを説明する。
「床抜けができるんだったら、移動時間を大幅に短縮することができるね……ちょっと待って……地図を重ねてみるから」
ミンナは地図を広げて重ね合わせることで、おおよそどの場所で床抜けすればどこの場所に出れるかを推測する。
「一番分かりやすいのだと、1階層の中央階段から真下に床抜けすると、10階層のボス部屋の前に出れるっぽいかな。そこから更に降りると18階層のモンスターハウスのど真ん中に降りれるっぽい?」
「18階層以下は?」
「うーん、広がっている部屋はなさそうかな? たぶん30階層までどこかの通路に出るか、壁の中ってことになりそう」
「なるほど……最悪壁をくり抜いて、自分達のセーフティエリアにしてしまってもいいか」
「それあり?」
「アリで良いんじゃないか?」
ダンジョンの壁の中に安全な部屋を作るという暴挙を普通に選択肢に入れておく。
まぁ必要なければならないが……。
そのまま歩くこと10分。
3階層に降りる階段を見つけ、下の階層に行く。
特に苦戦することもなく、5階層へ。
5階層の道中、宝箱が湧くエリアでは人だかりができていて、色んなパーティーがそこで休んでいた。
あばよくは宝箱が湧いたらゲットする算段だろう。
その部屋を俺達は素通りして、ボス部屋を目指す。
「先客は……無しか」
「最初にボス部屋が出現するエリアだから、腕試しに挑むパーティーが多いらしいね。まぁそれで大怪我する若者もあとを絶えないらしいって攻略本には書かれていたけど」
「ふーん」
俺はボス部屋の扉を開けると、黒い渦が部屋の中央に集まり、モンスターの姿を現す。
現れたのは岩で体を覆われたゴーレム。
ストーンゴーレムである。
「捕獲は……5%……一応捕まえることはできるのね……」
ただ捕まえるよりは、倒してみてどれだけ強いか確認してみたいので、とりあえずテディベアを1体出して戦わせてみるが……。
「ベアパンチ1発で崩壊するとは……」
テディベアの一撃でゴーレムはバラバラに崩壊してしまい、思ったよりも脆い事が露呈。
これが普通の冒険者なら剣が通じなかったり、魔法で攻撃するしか無いってなるが、許容を超える暴力にはゴーレムも耐えきれなかったっぽい。
ゴーレムを倒すと宝箱がストーンゴーレムの残骸の中から現れ、開けてみると、なまくらの鉄の剣が入っていた。
「まぁそう簡単にマジックアイテムは手にはいらないよな……メタリン」
『んー』
俺はメタリンを出すと、鉄の剣をメタリンに放り投げる。
メタリンは意図を汲んだのか、鉄の剣を飲み込んで、鉄のインゴットにして吐き出した。
『ん、そこそこ美味しかった』
「それはよかった」
そのまま俺達は10階層まで歩いていき、10階層のボスモンスターは筋肉質なカエルだったので、エレキマッスルを出して戦わせてみると、ボクシングみたいに殴り合いになったが、エレキマッスルが殴られてもプルンと自慢の筋肉が揺れるだけで、ほぼノーダメージ。
エレキマッスルのラリアットでマッスルフロッグは壁まで吹き飛んで、死亡。
宝箱からは綺麗なティーカップ型の茶器が出てきた。
「マジックアイテムか?」
マジックアイテムに詳しいアリスが色々触って確認するが、首を横に振り、
『ただの装飾されたカップだね。ガラス以上の価値は無いよ』
「ガラクタか……」
ボス部屋の宝箱は当たりが出るって攻略本にら書かれていたが、それは中身が入ってなかったり、呪いのアイテムだったり、ミミックだったりしないだけで、普通にゴミが混じっている事が実際に冒険してみてわかった。
下の階層に行けば、宝箱の中身の質も上がるらしいが……相当下の階層じゃないと駄目そうだ。
「とりあえず今日はこの辺で終わりにしようか。皆地上に戻るぞ」
俺は一旦メンバーを捕獲状態にすると、クリエイティブモードで上に床抜けを繰り返して、あっという間に1階層まで戻って来た。
周りに人が居ないことを確認してからミンナ達に外に出てもらい、帰還するのだった。
ちなみに初日の換金金額は100シンクだったと言っておく。
地上に戻った俺達は、作戦会議をしようと宿に帰るのだったが、藤原さん……いや、綾乃に抱きついて泣いているホノノカ姉妹の姿があった。
「どうした?」
「実は……」
泣くホノノカ姉妹に代わって綾乃が説明をすると、どうやらホノノカ姉妹の両親が宿の経営の為に借金をしていた事が発覚して、30日以内に利子の膨らんだ借金の1割に当たる200万シンク支払わなければ2人を奴隷として売り飛ばし、宿も質に入れると行政から警告が来たらしい。
「貸し出し業者ではなく行政から?」
「借りているところは真っ当なところ何だけど、両親は借金については2人に説明してなかったらしくて、今日警告としてやってきたらしい」
「そんな大金を借りていたら2人も何か知ってるんじゃないのか?」
「それが……」
遺産相続の際に宿で従業員をやっていたおじさんがいたらしいのだが、彼が両親が亡くなった際にその金を持ち出して逃げたらしい。
元々姉妹と仲が悪かったので、姉妹からしたら勝手に出ていったと思ったら、金だけ持ち逃げしていた事が今日発覚したとのこと。
「闇金じゃなかったから金額も常識の範囲内だけど、それでも総額2000万シンクの借金を2人が払えるわけも無いし……」
「ふーむ……ミンナ」
「なに?」
「ダンジョンガチれば月200万シンク稼げると思うか?」
「もっと下の階層……それこそ30階層近くでモンスターハウスやボス部屋周回すれば稼げない金額ではないんじゃないかな? 今の安全な計画は崩れるけど」
「……でも助けないって選択肢はないだろ。この宿ほど自由にさせてもらえる空間も無いし……」
「それはそうだね」
「……よし、アオイ、アカリ」
「「は、はい!」」
「一旦俺達が借金を肩代わりしてやる。その代わりに2人は俺の仲間になれ、あと宿の経営を一時停止しろ」
「そ、それじゃあ皆さんにお金を返せないんじゃ……」
「でもこんな現状で客とって普通の経営ができると思うか?」
「それは……」
「とにかく今は200万の一時金を支払わないと奴隷にされるんだろ? 俺らなら稼げるから、一旦金に関しては俺達に任せろ」
「どうしてそこまで私とお姉ちゃんに対して良くしてくれるんですか?」
「居心地が良い空間だから。それにちょっと高い支払いになるけど、俺達も長く居住できる拠点を持てるってメリットもあるし、2人は俺達がお金を貯めきるまではこの宿の手入れと食事を作ってくれれば良いから……あと藤原……綾乃の手伝いをしてくれれば」
「それでも200万……いや2000万シンク分働けるとは思いません!」
「だから、その分は仲間になってもらうことで相殺するから……」
「仲間って?」
「俺に捕まれ、アオイ、アカリ……それでステータスを強化して強くなれ! 戦わせるわけじゃないけどもきっと役に立つから」
「……うちらに今選択肢はない」
アオイは覚悟を決めた。
続いてアカリも。
「「お願いします。私達を助けてください」」
「任せろ」
俺は2人を見つめて、捕獲するのだった。