クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
30階層ボスの部屋前の扉で、俺は深呼吸をする。
「ふぅ……」
武器は鍬……鍬ワープが使えるのでこれがダンジョンの中であれば安定する。
ステータスの数値が俺は見えない以上、どれだけ戦えるか未知数であるが……戦えるだけ戦ってみるか!
「よっしゃぁ! ニャン、カグヤ扉を開けろ」
「ええで」
「はいであります!」
2人が扉を開くと、中には下半身が蛇で、上半身が人っぽく、それでいて顔面は化け物と言わざる得ないモンスターがコチラに気がついて襲いかかってきた。
「アリス!」
『うん!』
モンスターの上半身から生える腕がアリスに襲いかかるが、アリスは鉄の剣でガード。
何なら認識阻害の一部を解除して翼を見せると、翼を羽ばたかせて、羽を散弾のように飛び散らせてモンスターに突き刺す。
モンスターは痛みで怯む。
「クワープ!」
鍬を振り下ろすことの反動で高速移動する鍬ワープを駆使して、俺は壁、いや天井を這いずり、モンスターの脳天に鍬を振り下ろす。
「からの変更!」
鍬を剣に変化させて、モンスターの頭に剣が食い込むと、モンスターは悲鳴を上げながら、ぶっ倒れた。
舌を伸ばし、白目を向いてビクビク痙攣しており、もう少しすれば消滅して宝箱に変化するだろう。
捕獲率95%
「強いモンスターだし捕まえておくか……」
もう宝箱で十分に稼げていた俺は気が向いたので、このボスモンスターを捕獲することに。
視線を向けて、捕獲の技を使うと、捕獲に成功して光の玉となり俺の体に吸収されていった。
ステータスを確認してみると、このモンスターはラミアと言うらしく、図鑑説明によると、下半身は蛇、上半身は人に擬態しそこねた化け物であり、凶暴な性格で人や動物を襲うと書かれていた。
一応蛇系モンスターの上位種で、大蛇とゾンビやケンタウロスと合成するとラミアになるらしい。
「ラミアと人やホムンクルスとの合成もできるのか……一応してみるか?」
本当に気まぐれであるが、先ほど捕まえたラミアとホムンクルスを合成すると、ラミア娘という魔人へと進化した。
外に出してみると、まだ体力が回復しきってなくて、目を回して伸びていたので、直ぐに捕獲状態に戻したが、上半身はほぼ人間の女性になり、容姿も化け物ではなく綺麗な女性の姿へと変わっていた。
というかラミアって魅惑的な女性のモンスターが本来なのに、なんでラミアは上半身化け物で、ラミア娘になったら急に美人さんになるのか……これがわからない。
ちなみに赤髪だった。
『剣でも倒せるってことはこのボスモンスターもそこまで強いって感じじゃない?』
「ちょっと待ってな、ステータス確認するから」
ラミアの情報が図鑑に登録されたので確認すると、
HP 1000〜1200
MP 500
パワー 850〜1000
ガード 850〜1000
マジック 600
スピード 550〜650
ラック 40〜50
こんな感じで凄い強いかと言われれば微妙であるが、これが60階層前後のモンスターの基準って言われると、一流と言われる冒険者のステータスは1000が基準って前にミンナが言っていたので、一流の冒険者……経験を積んだシルバー冒険者やゴールド冒険者クラスが戦うモンスターって感じか?
「このレベルが基準だったらうちのキングスライム達なら余裕か?」
ちなみにキングスライムの俺のレベルによるステータス補正込みでだいたいこんな感じ……
HP D 3000
MP D 1250
パワー D 1500
ガード D 1500
マジック D 813
スピード D 2500
ラック D 163
ステータス全部2.5倍されているおかげで、十分勝てるステータスになっていた。
この分を見ると、60階層は大丈夫そうだけど、75から80階層くらいから鬼門になってくるかな?
一応このダンジョン100階層までとされているが、過去に踏破されたのが100階層までで、それ以下があってもおかしくは無いのであるが……。
「キングスライムをベースにしているけど、より深い階層に行くならもっと強いモンスターを捕まえて合成するしかないな。エレキマッスルとテディベアなら75階層くらいもいけそうだけど」
ボスと戦うことでおおよその目安もわかったので、俺達は地上へと戻るのであった。
俺の名前はスズナリ……ジパングの冒険者ギルドで働いている職員だ。
「はぁ……」
受付の仕事をしているが、俺は人気があまりない。
やっぱり受付って綺麗な女性がやるのが一般的で、男の受付は人気がない。
その分仕事を丁寧に行なったり女性の受付よりもサービスで差をつけようと頑張るが、魔王軍との戦争が始まったことで、俺を指名してくれていたベテランや中流の冒険者がごっそりいなくなってしまって、一流は既に専属契約した受付がいるし、新人は強面の俺には近づかないし……。
「はぁ……」
今日も他の受付嬢が休憩の時間に仕事を代わって受付に入っているが、俺の列には殆ど人が来ない。
そうしていると、めっちゃガッチリした体型の兄ちゃんと美少女、美女揃いのハーレムパーティーがダンジョンから出てきた。
いるよなー……ダンジョンをデートスポットか何かと勘違いしているやつ……女性を侍らせて王子様気分かっての……というかそんなに男はイケメンってわけでもないのに、あのパーティーの女性陣は彼をパーティーに入れているのか……。
そんなことを思いながら眺めていると、ハーレムパーティーの男がこちらに近づいてきた。
「買取をお願いします」
「あいよ……素材はテーブルに乗るか?」
「いやぁ……結構多いんですけどいいですか?」
「構わねぇよ」
すると男は異空間からアイテムボックスを幾つも出してきた。
コイツ収納の能力持ちか……それならモテる理由になるな。
1個2個と出されていくが、5個になった時点で、アイテムボックスでも容量が小さいやつで素材を多く取ってきたみたいに見栄を張ってるもんだと思ったが、中を開けてみると大量の素材がぎっしり入っていた。
「久しぶりに腕のなる仕事じゃねぇか! 兄ちゃん名前は」
「サイトウです」
「サイトウ……いい名前だ。20分待ってくれ、全て計算してくるから、椅子に座って待っていてくれ」
「わかりました」
チラリと首に掛けた冒険者プレートの色が見えた。
(アイアン……となると最近冒険者に成り立てか。女性陣が強いのか……それとも……専属契約についての話を少し出しても良いかもな)
俺はアイテムボックスの中身を作業台に並べて状態の確認や値段を付けていく。
(いい腕だ。素材も綺麗に解体されている。初心者冒険者は剥ぎ取りで素材を駄目にするからな。誰か腕のよい解体師でもいるのか?)
ジャラララと魔石の入った袋を計算機の中に入れて、数を数える。
「魔石は4023個で、16万920シンク、モンスターの素材が18万5000シンク……マジックアイテムが20個もか……随分と運が良いな」
マジックアイテムの質的に30階層前後で稼いできたことはわかるが、この数は異常だ。
(どうやってこの数のモンスターを倒したんだ? 普通のアイアンの冒険者は5万シンク稼ぐのがせいぜいだぞ)
アイアンで5万シンク稼げれば期待の新人パーティー、カッパーの上の方で10万シンク、シルバーだったらもっと下の階層で稼いでくるが、それでも2日3日潜って40シンク稼いでくるのがやっとというのが普通だ。
というか生活していくだけなら1人1000シンク稼げればこの町の物価なら週1日休んでも大丈夫くらい貯金ができる。
ダンジョンは比較的稼ぎやすいから他の地域よりも稼げるからアイアンの冒険者1人が1日に稼ぐ平均は2500シンクから3000シンクくらいに落ち着くはず……。
(マジックアイテム20個に4000個以上の魔石、大量の素材……実質1万体くらいモンスター狩ったんじゃねぇだろうな?)
そうなればあのパーティーは期待の新人どころじゃない。
10年に1度の有望株である。
(落ち着け……絶対逃してはならねぇけど、しっかり誠実に仕事をするんだ……)
なるべく手際よく計算を終わらせ、換金用のお金も用意して、15分で先ほどのサイトウを呼び出す。
「集計の結果、売却金は60万2500シンクだ。内訳がこっち」
「おお、マジックアイテムが想定の1.5倍近くで売れてる」
「提案なんだが、俺と専属契約を結ばないか?」
「専属契約?」
「ああ、今日はまだ早い時間だから受付が空いていたが、混んでいる場合順番待ちで1時間近く並んだり待ったりするが、専属契約をしていると、契約した受付がその冒険者を優先して対応するから待ち時間が早く済む」
「専属契約となると幾らか支払ったり?」
「いや、受付側が専属契約できる冒険者のパーティー数が決められていて、俺の場合専属契約していた連中が戦争でこの街を離れたから枠が空いてるんだ。専属契約した冒険者が活躍すれば、俺の方も上からの評価が良くなったり、ボーナス額が高くなったりする恩恵があるからこっちに関しては気にしなくていい。どうだ?」
「そうですねぇ……うん、契約します」
「そうか、俺としても助かる。週何回潜る予定だ? あといつ集計してほしいとかあるか?」
「週6は潜る予定です。逆に受付さんはいつの時間います?」
「俺はスズナリだ。時間は指定してくれて構わない。その時間に合わせるから」
「じゃあ悪いんですけど、戻る時間はどれぐらいになるか分からないので、ダンジョンに入るのが6時半から7時くらいになるので、その時に前日取ってきた素材を換金するんで、次の日に支払いって感じにできますか?」
「ああ、一時的に預かることになるがいいか? それとも口座を作るか? 大金を持つ冒険者向けに、金を預かる仕組みだが……」
「いや、仲間に分配しなきゃいけなかったりするので翌日に現金で受け取ります」
「わかった。これが専属契約の契約書だ。サインできるか?」
「ええ、よろしくお願いします」
俺は滅茶苦茶有望株のパーティーの専属契約を勝ち取ることに成功したのだった。