クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「そう言えばゴーレム軍団ができたわけだけど……松田の奴もゴーレムを作る能力を持っていたよな……」
異世界に来てから1ヶ月半……すっかり松田の事を忘れていたが、ゴーレムを今日作ったことでちょびっとだけ思い出した。
「あいつ何やってだんだろう? ゴーレム使って活躍していれば噂くらいにはなってそうだけど……」
俺の知る由もなかったが、その頃松田は王都でイキりまくっていた。
ゴーレムを作る仕組みに苦労し、素材集めでも時間がかかっていたので、俺が王都にいた頃は全然活躍していなかったが、ウッドゴーレムを作れるようになると、スライム討伐が楽になり、生活に余裕が出てきていた。
しかし、彼はそれを更にゴーレムを強くすることに使うのではなく、生活の質を上げたり娯楽に直ぐに使ってしまうので金は貯まってない。
「まぁ気にする必要はねーな。綾乃を馬鹿にした奴のことなんか」
俺はダンジョンの地図を広げる。
「今日で穴抜けになっていた31階層の地図は埋まったし、地底湖の奥にも行けたけど、下に続く階段があるくらいで隠し部屋や宝箱のある部屋には繋がってなかったな。こればっかりは32階層以下に期待って感じかな。明日は朝に今日の分の成果を換金してからダンジョンに挑む感じの流れになるな」
他にもダンジョン内で実験してみたいことは色々あるので試してみることにするのだった。
「お、レベルが65になった」
翌日、ダンジョンの30階層でモンスターハウス狩りをしていた俺は、キングスライム軍団の頑張りもあり、レベルが65へと上がっていた。
「65レベルになったってことは新しい技をまた覚えたのかな?」
「そうなるな……新しいのは」
ミンナに聞かれたので、俺はステータスを確認すると拠点作成及び拠点指定という技だった。
「拠点作成はまぁ家を作るんだろうなってことはわかるんだけど、拠点指定ってなに?」
「マリーちょっと待ってな……今説明を確認するから」
ステータス画面を拡大して説明欄を見てみる。
拠点作成/指定……自分の生活するための拠点を作成及び指定することができる。
脳内にレイアウトを指定し、材料を揃えることで、一瞬で現実世界に拠点を作り出せる。
指定された拠点にはシンボル(以後レベルアップで製作可能)を設置することが可能になるのと、拠点間でワープすることが可能になる。
拠点の設置できる個数は5レベルごとに1箇所。
とのこと。
ご丁寧に拠点テンプレートなる物も脳内に知識として流れ込んできた。
『拠点間をワープできるってすごくないですか?』
「実際凄いと思う。つまりダンジョンの中に拠点を作れば入口から入らなくても直接ワープできるってことだろ……めっちゃ移動時間短縮できないか?」
「できるんじゃないかな?」
「ヤバいね……」
とりあえず今居る30階層の隠し部屋を拠点化してみることに。
「小さな拠点の材料は木材100に石材100、粘土10、繊維50……か」
木材は十分にあるし、石材と粘土はダンジョンの壁を掘っていれば自然に溜まる。
繊維も余裕があるので指定すると、隠し部屋の中に豆腐型の小屋が出来上がった。
壁や天井に拠点がめり込んでいるのはご愛嬌。
扉を開けて入ってみると、ログハウスみたいな感じで、木材で覆われた床や壁、石造りの台所、簡素なベッドが10台と、シャワールームとトイレが設置されていた。
トイレの便座を開けてみると異空間に繋がっているようで、黒い渦が巻いていた。
拠点だから最低限住めるようになっているっぽい。
まぁ、ダンジョンの中に住めるような拠点ができているのがおかしな話であるが……。
拠点を作るテンプレートを確認していると、池を作るとか納屋を作るとかもあり、壁を設置して家を作るよりも簡単に家を作り出せるようになったっぽい。
大工泣かせだな。
試しに材料も少なかったので池を作るを選択すると、小さな池が出来上がり、釣りをしてみるとなぜが魚が釣れた。
釣れる魚は鯉、フナ、スッポン。
うん、深く考えるのは辞めよう。
「どんどん技が強くなってない? いや、捕まえるとか合成するとかも凄かったけど」
「ミンナの言う通りで、サイトウの技、レベルが上がれば上がるほどどんどん凄くなってるけど……100レベルになったら何ができるようになるんだろうね」
マリーが無邪気にそう質問する。
俺にもわからんよ。
あとここならホノカ亭の庭よりもステータスの種を育ててもバレにくいだろう。
出入り口は壁で覆われているから誰も入ってこれないし……。
というか拠点を作るのテンプレートに畑があるから畑を選択して見ると、硬い石で覆われていた床が、ふかふかで栄養たっぷりの畑に適した土に変わっていたので、もうやりたい放題である。
「とりあえず、この部屋も明るくするために壁に生えていた光るコケを育てるか……レベルが上がったことで大豊作の使用回数も増えているし」
俺は適当に生えていた光るコケをダンジョンの壁から取ってくると、隠し部屋の壁に植え付けて大豊作を選択するのだった。
モンスターハウス狩りも終わって、またモンスターが湧かなくなったため撤収。
でホノカ亭に戻ってから、ホノカ亭を覚えたばかりの拠点指定を選択すると……ホノカ亭の玄関近くに大きめの水晶の柱が建っていた。
「な、なにこれ! なにこれ!」
「なんやこれは?」
アカリとアオイの2人も興味深そうに見つめていると、俺がダンジョンの中に行くことができるワープ装置だと説明する。
実際に柱を握ってみると、頭の中に行き先が浮かび上がり、それを決定すると、その場所に一瞬で転移できる。
「はえ~ダンジョンの中ってこんなんになってるんやな」
「暗いね」
「まだ光るコケが増えてないからな。光るコケが増えればもう少し明るくなると思うが……でだ、これでワープもとい、転移できるようになったから、昼飯を食べにホノカ亭に戻るってことも出来そうだ」
「は〜、便利やな」
アオイも感心して、さっき作ったばかりの木製の拠点をペチペチ叩いていた。
ホノカ亭に戻って、風呂を浴びてから夕食を食べる。
こうして1日が終わっていくのだった。
30階層と31階層を行き来しながら、大量のモンスターを狩ってお金を稼ぐこと1週間……目標金額の200万が貯まった。
「じゃあ返済をしてくるね!」
「おう、いってらっしゃい」
アオイとアカリの2人が俺から200万シンク分の硬貨を受け取り、行政へと走っていった。
「これで最初の借金の10分の1は返済だね」
「ああ、2人も希望が見えただろう」
綾乃の言葉に俺はそう答える。
ただ3時間、4時間待っても彼女達が帰ってくることが無い。
おかしいと思い、気配を探ると、アオイとアカリの反応が遠くに感じた。
「んん? どういうことだ?」
「どうかしたの?」
「アオイとアカリの反応が郊外にある……借金返済ついでに買い物して帰っているのかと思ったら何か様子が違う感じだわ……」
「隆史君……」
「ちょっと見に行ってくる」
俺は移動を始めるのであった。
「アオイとアカリの反応が消えた? ……最後に反応があったのはあっちだな」
走って移動している最中に2人の反応が消えてしまった。
仲間の反応が消えるって異常事態を告げるには十分な理由であり、俺は町中ではあるが、クラリンを外に出すと、背負ってもらって高速移動を開始。
周りから奇妙な目で見られたが、今回ばかりは仕方がない。
クラリンに指示を出しながら郊外に出ると、廃墟となっている砦に到着した。
「クリエイティブモード」
俺は半透明の状態になり、砦に近づくと、冒険者っぽい格好をした男達と役人っぽい人物、その取り巻きっぽい人物達がアカリが財布代わりにしていた袋からお金を取り出して数えていた。
「ひひひ、サージの旦那、ホノノカの一家は本当にマヌケっすね。親も親なら子供も子供」
「それに付け加えるならおじもだろ」
俺は彼らの話を聞きたいが、アオイとアカリの安否の方が大切だと、砦の中を壁抜け、床抜けを駆使して2人の事を探すと、地下に牢屋があることが判明した。
そして、その牢屋の通路にて2人の事を発見したのである。
「2人とも……」
2人は床に転がされており、アオイの頭はかち割られ、大量の血と脳みそが周囲に飛び散り、アカリは首を切断されて、顔はゴミ箱の中に突っ込まれていた。
俺は周囲に誰も居ないことを確認すると、実体化して、ゴミ箱に入れられていたアカリの顔を持ってきて、2人を捕獲状態に戻す。
「……」
2人のステータスを確認すると、ステータス欄に死亡と書かれてしまっていた。
「回復のタイマー表記も出ない……か。クソ……」
思わず声を呟いてしまったが、上で騒いでいる集団には伝わらなかったようだ。
「クリエイティブモード」
再びクリエイティブモードになり、上で騒ぐ集団で、身なりの良さそうな男を見つめる。
捕獲率20%
失敗……失敗……失敗……成功
いきなり目の前の男が消えたことに男達は慌て出すが、もう遅い。
「やれ、キングスライム、ゴーレム軍団」
俺は砦を取り囲むようにキングスライムとゴーレムの軍団を展開させて騒いでいた男達を殲滅しにかかる。
アオイとアカリが死んでいたのはコイツらが絶対に関係している。
情報源を確保しておけば、アリスに記憶を読んでもらえばどうにでもなる。
「行政に向って、行政の役人がこの場にいて2人の財布からお金を奪っている時点で黒……捕まえて行政に引き渡してもどうなるか分かんないからな。捕まえるではなく2人の敵討ちだ」
男達の悲鳴が周囲に響き渡る。
俺がモンスターに指示を出して、人が殺される光景を目の当たりにしたが、旅の道中に賊を殺した時とは違い、なぜが吐き気や罪悪感は湧いてこなかった。
ただ憎しみと嫌悪感だけ……。
5分もせずにその場にいた男達は肉塊へと変化し、キングスライムに食べさせて綺麗にしていく。
跡には何も残らなかった。