クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「死後直ぐだったらまだ肉体に魂が宿っている可能性が高い……というかステータスにも死亡状態だけどちゃんと名前が表記されているってことは……アオイとアカリを蘇生させることは可能なんじゃないか?」
俺は直ちにできそうな手段を探していく。
マリーは死んでゴーストの状態になっていたけど、ヴァンパイアになって蘇生できた。
アリスに至っては化石になっていたけど合成により蘇生することができた。
「肉体とホムンクルスを合成すれば蘇生ができる!」
過去の事例を思い出しながら、俺はアカリとアオイにそれぞれホムンクルスを用意して、合成させる。
「お願い、頼む……何とかなってくれ!」
合成を開始し、2人の体を外に出すと、割れていた頭や切断された首は繋がっているように見える。
そして2人が目を覚ます。
「あれ? ここは」
「お姉ちゃん!」
アカリがアオイに泣きながら抱きつく。
「怖かった……怖かったよぉ……」
「アカリ? ……あれ……そうや! うちら行政にお金を渡しに行ったら別室に呼ばれて……そこから先の記憶が飛んでるんやけど……」
「私達誘拐されたんだよ……それでお金奪われて殺されて……」
「殺された? え? うちら今ピンピンしてるやん」
不思議そうにアオイは自分の体を触る。
すると服にべったり血が付いている事がわかった。
「ありゃ? 本当だ……え? うちら死んだん?」
俺の方を向いて教えてそうにアオイが聞く。
「ああ、2人共……助けに来た時には死んでた。で、誘拐した犯人達を今殺した。一応情報抜く為に1人は生かしているけど」
「はえ……うん、死んだってこんな関係なんやな……全くわからへんかったわ」
「意識や記憶はしっかりしているか! 体に異変は無いか?」
俺は2人に傷跡が無かったり、合成したことにより変化が起こってないか確認をする。
「記憶に混濁はあらへん、アカリは大丈夫かいな?」
「お姉ちゃんが殺される瞬間とか見ていたし、自分が殺されて頭だけになった時に少しだけ意識が残ってたから……薄れゆく意識が凄く怖かったけど……あれ?」
アカリが首を擦るとスポット首が抜けてメラメラと赤い炎が出ている。
「ギャァァァ! アカリの首がもげた!」
アオイ絶叫。
「首が取れたぁ!?」
アカリは直ぐに頭を首に付けると、普通の姿へと戻った。
「ちょっと2人共捕獲状態になってステータス見させてくれないか?」
「うん、ええよ! ぜひそうして!」
「わ、私もお願い!」
俺が確認をすると……2人のステータスが変わっていた。
名前 ホノノカ・アオイ
種族 超人
年齢 14
性別 女
職業 掃除人
健康 良好
好感度 60/100
名前 ホノノカ・アカリ
種族 デュラハン娘
年齢 14
性別 女
職業 家事手伝い
健康 良好
好感度 59/100
「種族変わってるじゃん!」
図鑑を確認するとこう書かれていた。
人族同士もしくはホムンクルスと合成した場合、その人物の現状によって合成進化する場合がある……と。
つまりアカリは首を斬られていたからデュラハン娘になったのはなんとなく理解できる。
アオイの超人って?
超人……人族の力を超えた存在、勇者と同等のステータス成長率を誇る。
超人と他の種族が交わった場合超人が遺伝される。
「実質勇者じゃねぇか! 合成で勇者できるの! ちょっとまってよ!」
完全に人族の上位種族である。
図鑑説明がヤバすぎ。
「落ち着け、とりあえず種族がどうなろうとアオイとアカリの2人が蘇生できたことに喜ぼう。2人共出てきていいよ」
アオイとアカリが外に出てくる。
2人も自分のステータスを見たようで、唖然としていた。
「人族辞めてモンスターになっちゃったってこと!」
「で、種族超人って何かわかったん?」
アカリは生き返った喜びと魔人化したことへの困惑で複雑な表情をしていたが、アオイは超人がまだピンと来てないらしく説明を求められた。
「つまり……勇者と同等の力を得たと?」
「そうなる」
「うひょー! じゃあうちももしかして冒険者やれたり?」
「やりたいの?」
「そりゃこんな事があったんやから自衛できる力は欲しいやん! となるともしかして職業も教会行ったら変わるんかな?」
アオイは逆にテンションがめっちゃ高くなっていた。
2人を落ち着かせて、町に向って歩いて帰るが、道中で拐われた事に対しての心当たりとか何か無いのかと聞くと、アカリが、
「何か拐われている最中にホノノカ亭の土地が何とかという話が聞こえたような……」
「土地……土地かぁ……」
とりあえず、先ほど捕まえた男から情報を引き出さないことには動けないので、急いでホノノカ亭へと戻るのであった。
「そんなことが……でも2人が無事……ではないけど、ちゃんと生き返った状態で帰ってきてよかったよ」
「「フジワラさん!」」
2人は綾乃に抱きつくと、改めて生きているって実感が湧いたのか泣き出してしまった。
綾乃は黙って2人を抱きしめる。
「しっかし行政がグルって……腐敗してるなぁ」
「ゲルマ王国ではこんなことは?」
「あったら担当者ごと族滅だよ」
族滅って言葉が出てくるあたり命の価値観がやっぱり現代日本とは違うな……。
「アリス、俺が捕まえてきた男から情報を引き抜いて欲しい、確かマリー……人を眠らせる魔法が使えたよな?」
「ええ、使えるわよ」
「じゃあ今から出す男を眠らせてくれ」
「わかったわ」
俺は男を出すと、男は困惑した表情を浮かべた後に、マリーに眠らされてしまい、アリスが彼の記憶を読んでいく。
『うわぁ……あぁ……理解したよ』
アリスが語り始める。
行政側は数年前よりホノノカ亭の場所を再開発したいと思っていたらしく、あの手この手でホノノカ亭の経営にダメージを与える嫌がらせをしていた。
そしてホノノカ一家のおじを甘い言葉で誘い出して、ホノノカ夫婦を殺害。
法律上貸し出さなければならなかった資金をおじに回収させて、分前と新しく再開発した際の店の店主にすることで釣っていたが、資金を回収できたため、行政側の悪事がバレることを恐れて闇ギルドに依頼しておじも殺害。
残ったホノカ亭は借金の差し押さえということで抑えてしまえば、実質無償で立ち退きさせることができて、行政側は大もうけで、既に裏で商人と話を詰めていたとのこ。
そしたらホノノカ姉妹が返済金を携えて持ってきたので、慌てて闇ギルドの冒険者と共に口封じに動いたというのが今回の顛末であった。
普通に官僚の汚職が原因の胸糞悪い話である。
『実行犯達も上からの指示でやっているからこの人達を消しても指示者達にダメージは行かないんだよね。告発したとしても揉み消されるし……かと言ってこのままホノカ亭を存続させた場合、現に実力行使をされているから危険だよ』
アリスの言葉に皆悩んでしまう。
行政を困らせるならこのままここにホノノカ亭を存続させるのが一番手っ取り早いが、それだと今度はどんな嫌がらせをしてくるかわからない。
それこそ嫌がらせしてきた人を返り討ちにしたら、逆に俺達が捕まる……みたいな展開も普通にあり得る。
『あと記憶を読み取ったら面白い情報があったよ。これ反撃に使えるんじゃない?』
「というと?」
『ダンジョンの100階層にはダンジョンを機能させている核があるんだって、過去の勇者達は核を引き抜いたらダンジョンの機能が失われてしまうから、この国が成り立たなくなることを恐れて、核を持ち帰るような事はしなかったらしいけど』
「うーん、俺達が核を持ち帰る様な事をすればダンジョンにささえられていたこの国は立ち行かなくなると……そう言いたいのか?」
『うん』
確かにそれをすれば行政側は困るだろうが、それ以上にこの国で生活する人の大勢が職を失うことに繋がる。
それは流石に報復としてはやりすぎである。
「現実的な落とし所としては担当者及び入札に関わった商人の悪評を流すってくらいじゃないかな。この今眠っている男にそれをやらせよう。マリー、こいつをヴァンパイアの力で眷属にして使役できるか?」
「うん、できるよ。となるとこの男もヴァンパイアになるからもう日の当たる場所で生きることはできなくなるね」
「こっちの仲間の命を奪ったんだ。それくらいの報復はさせてもらうよ」
「そうだね」
「ニャン、カグヤ」
「はぁい」
「なんでありますか?」
「2人には関わった行政の人や商人の枕元に不幸の手紙を送ってもらう。錬金術師の店で一時的にラックを下げるアイテムとして売られていたから……似た物をアリス作れないか?」
『勿論作れますよ! ラックを数日間100下げるアイテムでも作りましょうか! アオイとアカリをハメた人達には相応の報いです!』
「そして、アオイ、アカリ」
「「はい」」
「ここにホノカ亭があると危険だから、ホノカ亭を別の場所に建て直す。それでも良いかな?」
「「はい!」」
というわけで各々動いて行くのだった。
アリスが作った不幸の手紙の効果は絶大で、ニャンとカグヤが行政担当者や関わっていた悪徳商人はラックが暴落したことで不幸の連続。
担当していた仕事の失敗、家屋の火災、本人が病気になったりと色々不幸な事が起こり、商人の中には破産してしまった者も出たとのこと。
ホノカ亭は事件が起こった翌日の夜に俺の力で全部解体し、更地にしてトンズラ。
あと中立的な立場である教会と冒険者ギルドに行政側が行なった一連の出来事を記載した告発書を提出し、行政側は悪評や不運が重なり、担当していた人達は離職に追い込まれることになるのだった。
そして解体されたホノカ亭はというと……。
「うん、一応仮の場所としてはいいだろう」
外にあると面倒なので、ダンジョン30階層の隠し部屋を拡張させて、ホノカ亭を隠し部屋の中に建て直したのである。
詳しく言うと30階層と31階層の間の10メートル近くある空間を掘り起こして作ったので、ギリギリではあるが、ホノカ亭は中に入った。
一応町にある安い空き倉庫を1棟借りて、そこを拠点に指定し、地上へも直接アクセスできるようにはしておいた。
こうして一連の騒動は幕を下ろしたのであった。