クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
とんでもない化け物……失敬、モンスターが50階層のボス部屋に居たが、あれが80階層くらいにうじゃうじゃ居るなら正気度が削られそうである。
「変な鳴き声でしたね」
「品の無い姿でしたわね……穢らわしい」
マリーは変な鳴き声と、ニャン的には穢らわしく感じたらしいが、とりあえず宝石系ゴーレム軍団を確認すると、さっきの攻撃で熱せられて光り輝いている個体は居るが、大きなダメージは無さそうである。
カオスゴーレムにいたっては完全にノーダメージ。
流石強そうな石を使っただけある。
その後は50階層のモンスターハウスで狩りを行なっていく。
「そう言えば70レベルで覚えた技ってどんなのだったの?」
「70レベルで覚えた技? ああ、シンボルを作るって技だったな」
「「『シンボルを作る?』」」
「ああ、素材を消費して、拠点や周囲の能力を上げることができる……例えば……」
俺は手持ちの素材を使って鉱脈のシンボルを作り出す。
「人の背丈くらいの大きさなんだね」
「模様の付いた柱って感じ? これには宝石が埋め込まれているっぽいけど」
ミンナとマリーがシンボルの柱を叩きながらそう言う。
色々シンボルはあるが、言ってしまうと、範囲にバフをかける効果がある。
例えば今回作った鉱脈のシンボルは建てた場所の地下に大量の鉱石を出現させる効果があるので、今は地面で釣りをすれば鉱石を釣り上げる事が出来るが、その埋蔵量や質を上げることができるという技であった。
レベルが上がれば作れるシンボルの数も増えるらしいが、これで鉱脈増えるって十分すぎるバグ技だと思うが……。
現状作れるシンボルだとモンスターの湧く数を調整出来るシンボル、周りに結界を張ることが出来るシンボル、太陽光と同じ光を放つことが出来る人工太陽のシンボル、鍛えるの時間を短縮することができるシンボル……なんかが作れる。
「それモンスターハウスの中に設置したらモンスターの湧く数を増やすことができて、効率が更に上がるんじゃ?」
「いや、湧き出る数増やすとクールタイムが長くなるかもしれないし、これはどちらかと言うと農地を作った時にモンスターが湧かなくなる方がデカい。町に魔物が湧かなくなるようになっているのはそう言う結界があるからだろ?」
「そうね」
ミンナが肯定する。
つまりそれを自分で作り出せてしまうというのが大きい。
しかも素材のグレードで範囲も広がるというのがでかい。
これはこれでバグ技が色々できそうだと思う。
75レベルで覚えた地図もありがたかったが、70レベルのシンボル作成はクリエイティブモード並みにぶっ壊れの素質がありそう。
とりあえずモンスターハウスの前に到着してキングスライム軍団が狩ってくれているので、鉱脈のシンボルを設置したことだし、釣りをしてみる。
毎回地面に釣り糸を垂らすヤバい構図である。
仲間以外の人が見たら精神を疑われそう。
「おっ引っかかった。せえの!」
ズボボボボとさつまいもを地面から引き抜くみたいに大量の鉱石に、何か宝箱まで引っ付いてきた。
何階層の宝箱だこれ?
「ニャン宝箱にトラップが無いか確認して」
「ええよー」
「さてと鉱石はどんなのだ?」
とりあえずメタリンに鉱石は食べさせて、全部インゴットに加工していくが、金や銀といった貴金属が延べ棒にできるくらいには釣り上げることができたし、後は宝石……やっぱりダンジョンの中はルビー、サファイア、エメラルドの3種がよく釣れる。
他には大理石だったり、カオスストーン、黒曜石、大粒のダイヤモンドもなんか釣れた。
「黒曜石やダイヤモンドがあるってことは火山近くに下にあったりするのかな? いや、ダイヤモンドは関係ないか……にしても黒曜石は別として、ダンジョンだからか? もっと鉱石っていろいろありそうだし、鉄鉱石や石炭とかが全然釣れないな」
そんな事を思う俺だった。
全部はつり上げられなかったが、いい感じの暇つぶしにもなり、そうこうしていると、モンスターハウスの部屋に大量の亡骸が落ちているため、俺達が慌てて回収をし始めると。
「あれれぇ……ここモンスターハウスの場所だったのにモンスター湧かなくなってるじゃん」
なんかニヤニヤした他の冒険者が現れた。
「お疲れさん、通らせてもらうぜ」
コイツら俺達が倒し終わったのを見計らって通り抜けようと……。
こんな奴もいつかは出てくるとは思ったけど……キングスライム達を回収していたし、素材も殆どアイテムボックスに詰め込んだ後だったから良かったが、大量のモンスターを使役していたら何を言われたことやら。
「おいおい、随分可愛い子が多いじゃねぇか……」
「……」
「なに、なに? 無視するの?」
アリスやマリーが絡まれ始めた。
流石にここまではマナー違反である。
「おい、他の冒険者パーティーに出会ったら素通りするのがマナーだろ。ちょっかいかけるなよ」
「あ?」
俺がそう言うと、冒険者の1人がこちらにやってきて、
「おいおい、お前アイアンかよ! 雑魚じゃねぇか」
いきなり膝蹴りを腹に入れてこようとしたので、俺は両手で受け止める。
「ありゃ? 防がれた……へぇ……50階層のモンスターハウスを殲滅できるだけの実力はあるってか」
チンピラみたいな冒険者の腕がキラリと光る。
冒険者のプレートの色はゴールド。
シルバーよりも上の実力ある冒険者かよ……これが?
「これ以上の攻撃はこちらも反撃させてもらうぞ……最後通告だ」
「へえ、言うじゃねぇか……ククク、せっかくだから遊ばせてもらおうかな!」
剣を抜いてきたので、クリエイティブモードで回避する。
「実態がねぇ? 分身か?」
俺が攻撃されるのを見たマリーは近くでニヤニヤしていた冒険者に向けて指を弾く。
バチンと電撃が男を襲い、白目を剥いて、ぶっ倒れる。
アリスも近くの男の手を掴むと、壁に思いっきり叩きつける。
「お前……俺を殺す気だったよな?」
「シェルジェ! ザッパー! てめぇ!」
俺への攻撃はクリエイティブモードで全て透けてしまう。
この男の仲間達も加勢して、モンスターハウスの部屋で大乱闘が発生するが、うちのメンバーの方が圧倒的に強かった為に直ぐに鎮圧し、俺が作り出したロープで縛り上げる。
「てめぇ! 俺達にこんなことしてクランが黙ってねぇぞ!」
「マリー、眠りの魔法でコイツら眠らせてくれ」
「了解ー」
マリーの手から光の粉が舞うと、騒いでいた男達は眠ってしまう。
その状態でアリスに記憶を読んでもらう。
『なるほど……』
「どうだアリス……コイツらは何なんだ?」
『黒蛇って言う冒険者パーティーだね。構成員はゴールドが5名シルバー3名、奴隷が1名の9人パーティー』
「9人? ……捕らえたの8人しか居ないよな……」
『あそこに隠れてる』
アリスがスッと浮きながら素早く移動すると、奴隷の少年を捕まえてきた。
「ひ、ひい……殺さないでください」
『あなたの態度次第。殺されたくなかったら静かにして』
「は、はい……黙ります」
少年は黙り込んでしまった。
『この子にも眠りの魔法を掛ける?』
「いや、口で情報を言わせたい。アリスの持っている情報と示し合わせながら聞き出そうか……お前、名前は」
「ジョン・バトラー……です」
「じゃあジョンだな。お前は何で奴隷をしているんだ?」
「それは……」
チラリと眠っている男達の方を見る。
「ぐっすり眠っているし、危害加えるつもりないから話せ」
「は、はい……元々冒険者をしている両親の下に生まれたんですが、僕が10歳の時にダンジョンで亡くなって……その時に仲間に大怪我を負わせたとかで、パーティーのリーダーだったお父さんとお母さんの財産で、生き残った人の治療代金に充てられて……」
バトラー君の話によると、両親の財産は仲間の治療費で大半が取られてしまい、残った自分は冒険者として稼ぐ事が当事できなかったので、自分を奴隷として売ることで保護を求めたらしい。
そして買ったのが眠らせている奴らの上の存在らしい。
「冒険者は複数のパーティーが集まるとクランと呼ばれるようになり、相互支援をするようになります。僕はそのクランの荷物持ちの奴隷として買われました」
衣食住を保障するかわりに奴隷として荷物持ち……うーん、これが普通なのかとミンナに聞くと、この国……ジパングの法では合法なのだとか。
ゲルマ王国でももう少し所有者の責任が重くなるが、自分を奴隷として売って誰かに保護を求めるというのは身寄りの居ない子供にとって救済措置として機能しているとのこと。
孤児救済という面では正しいか。
彼の話によると、そのクランのリーダーが70階層前後で活躍する最上位のプラチナランクの冒険者が所属していて、その人物の威を借りて、偉ぶっていたり、トラブルを起こしたりしていたのがこのパーティーらしい。
ギルド側でも問題視はされているらしいが、実害の報告がされてない……される前にダンジョンの中で処分してしまっていたから……ギルド側では処分できていなかったらしい。
『うーん、記憶を読むに、バトラー君だっけ……彼は悪行には加担してないね。それどころか暴力を振るわれて、ストレスの捌け口にされていたり、言うのも憚られる事をされているね』
言うのも憚られること?
気になってアリスに耳打ちしてもらうと、バトラー君は暴力の際に金玉が両方潰されてしまってしまっていたり、それに伴う中性的な容姿故に性的な捌け口にされたりと、酷いことをされてしまっていたようだ。
「すみません、どうか許してはくれませんか……彼らを連れ帰らないと他のクランの人達に何をされるか分からないので……」
眠っている奴らを本当は殺したいほど憎んでいるが、連れ帰らないと何をされるか分からない恐怖で彼は震えている。
『彼らが殺した冒険者は50人を超えていますし、女性に性的暴行を行なった後に殺したりと、人間的に終わっていますが……どうしますか?』
俺は凄く悩んだ後に、マリーに眷属にして操って犯罪を自首させることはできるかとお願いした。
「うん、できるよ……でもその男の子は助からないんじゃないの?」
「まぁここまで事情を見られたり聞かれたりしているわけだし……というか別に逃がしてもいいんじゃないかって思ってな」
「あの……逃がすって……僕達奴隷には逃げ出さないように呪いの首輪が付けられているのですが……」
「ちょっと待ってろ」
俺は少年の首輪を手で掴むと道具を作るを選択する。
すると首輪の形が変わり、鉄の球体へと変化する。
「え? え?」
「よし、首輪取れたぞ。もしよかったら俺達の仲間にならねぇか? 仲間になるんだったら失った生殖能力も直せるかもしれないけど」
「ほ、本当ですか! 首輪が無ければ奴隷としても扱われない! 自分から奴隷になっておいてあれですけど……万歳!」
「あ、ちょっと良いかバトラー君」
「はい?」
俺はバトラー君の捕獲を試みる。
するとバトラー君は光になって捕獲状態へと変わる。
すると治療中という状態にステータス表記が変化した。
奴隷だった少年のバトラー君をとりあえず保護する俺達だった。