クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
ジパングの国に来て1ヶ月半……異世界に来てから2ヶ月半と少しが経過した。
こうして振り返るとまだ異世界に来てから2ヶ月半しか経過していないのかと、濃密過ぎる異世界での生活に驚くと共に、そんな短期間でレベル100に到達することができた俺を褒めて欲しい。
ゲームでも旅を始めた勇者がレベル100になるまでには数年の年月が必要になるだろうが、俺はバグ技、裏技込みとはいえ2ヶ月半で上げきった事を誇りに思う。
そんなレベル100の能力を俺はステータス画面で確認する。
名前 サイトウ・タカシ
種族 人族
年齢 18
性別 男
職業 農家/ファーマー
健康 良好
レベル 100
体力 SSS
気力 S
知力 A
器用 A
筋力 S
技
・捕まえる
・合成する
・鍛える
・道具を作る
・収納する
・大豊作
・図鑑
・名付ける
・範囲を拡大する(レベル1)
・穴を掘る
・鍬ワープ
・釣る
・繁殖する
・剥ぎ取る
・肥料を作る
・クリエイティブモード
・拠点作成/拠点指定
・シンボルを作る
・地図を作る
・スポナーを作る
・自動掘削
・遺伝子組換え
・時間操作
・日本に向かう/異世界に戻る
いつの間にか18歳に年齢が増えていたが、そんな事はどうでもよく、俺の技に神様からのプレゼントと思うべき技がそこに書かれていた。
「日本に戻ることができるの?」
「ああ……見てみろよ……ほら」
綾乃に俺のステータスを見せると、そこには日本に戻るの文字が。
「やっぱり俺のステータスを設定していた神様は技の設定が下手っぴだな」
もう帰ることができない……そう思っていた日本に戻ることができるという事実に、俺は涙が出てきそうになる。
「しかもご丁寧にこの世界に戻ることもできるみたいだ……ちょっと待てよ……俺ってこのステータスの状態で日本に帰国できる……てことか? 神じゃん!」
現代日本でこんな能力を持ってしまったら……やりたい放題である。
「行き来できるんだったらさ……私達もサイトウ達の母国に行ってみることって出来るかな?」
「異世界行ってみたい!」
「この世界とは違う世界ってことですよね! 見てみたいなぁ」
ミンナ、マリー、バトラーの3人が俺と一緒に彼らからしたら異世界である日本に行ってみたいと提案する。
他のメンバーも一度日本という国に行ってみたいと話す。
俺と綾乃は互いに顔を見合わせてから、
「どうする? 他のメンバーも連れて行く?」
「うーん、行き来できるんだったらいいんじゃないかな? 連れて行っても。でも連れて行くってどんな感じで連れて行く?」
「捕獲状態になっていれば連れていけるんじゃないか? というかインベントリの中身も持っていけるかな?」
「どうだろう……」
そんな事を考えながら俺達は日本……いや、地球という世界について皆が分かるように説明する。
この世界にも色々な国があるように、地球にも色々な国があって、日本はジパングやゲルマ王国の過去の転移者も来た国だから、同じ言語や文字を使うことができること、魔法は一切無くて、科学という学問が発展していること、料理がこの世界にも負けないくらい美味しいこと……などなど。
それを聞いて、バトラーは、
「モンスターや奴隷が居ない世界なんて想像がつかないんですけど……」
「そういう世界だからね。勿論他の国には奴隷の名前を変えて現在も奴隷みたいな文化があったり、過去には奴隷の歴史がある国も多かったけどね。日本でも農奴……小作人って言うけど名前は違うけど奴隷制度みたいなのはあったし……」
「なるほど……」
凄い世界なんだなぁって皆なんとなく思えたらしい。
「時間軸が違うなら、俺達が異世界に飛ばされてから地球でも2ヶ月半くらい経過してるってことだよな……親父や母さんに会ったらなんて説明しよう」
「というより……日本に帰ったら私遅れた分、また受験しろって言われるんじゃ……」
綾乃の顔が曇る。
「ま、まぁ……とりあえず俺の家に行こうよ。それでどうすれば良いか判断すれば良いし、俺も家の農園や牧場をどうするかしっかり話し合わないといけないし」
「う、うん……じゃあ隆史君の実家にお邪魔しようかな?」
「おう!」
ただ今日いきなり冒険を休むわけにもいかないので、直ぐに帰りたい気持ちをぐっと堪えて、ダンジョンに潜って金策を続けるが、やっぱり日本に帰ることができるって思うと気が緩んでしまう。
致命的なミスはしなかったけど、何でもない場所で転んでしまったり、素材の仕分けが少々雑になってしまったり……。
「浮かれているねぇ」
ミンナから小言を言われてしまった。
「悪い、やっぱり集中することは難しいわ」
「まぁ仕方がないよ。元の世界に戻れるって知ったのなら……でもそうなると……この世界で主軸を置いた生活はできないよね」
「ああ、そうなるな」
日本で帰って、生活できるのであれば、日本を主軸に生活したい気持ちはある。
ただそうなると他のメンバーが困るわけで……。
(日本で俺が生活を戻すことになれば、異世界での安定の生活はできなくなる。そうなれば俺の仲間になってくれたメンバーへは不義理を働くことになってしまうな……)
帰りたい気持ちと異世界で思ったよりも充実した生活や夢に向って貯めた貯金、他にも色々のどちらが片方しか残すことができない。
皆も最初は日本に行ってみたい気持ちで興奮していたけど、現実が見えてくると、少しずつ、テンションは下がってしまっていた。
微妙な空気の中、モンスター狩りをしているが、まぁ楽しくない。
「やめやめ、こんな空気じゃ絶対にどこかで大きなミスをするから、サイトウ。今日は冒険を切り上げよう。それで明日から日本に行ってみてどうするか決めてこよう。スズナリには1週間冒険を休むって私が伝えておくから」
「……ミンナありがとう」
こういう時に全体を纏めてくれるミンナは本当にありがたい。
早めに切り上げた俺達一行はホノカ亭に戻り、俺は頭を整理するために風呂へと向かった。
「お供します!」
バトラーもせっかく奴隷から助けてもらって、失った生殖能力まで復活させてくれた俺は恩人に思っているだろうが、その恩人が故郷に帰りたいって気持ちがあるっていうのをバトラー的には今のままの生活を続けたいだろう。
しかし、バトラーはその気持ちを押し殺して、俺に対して日本ってどんな国なんですか?
どんな料理や娯楽があるんですかと質問をしてくれる。
俺自身が迷っているのに対して、気持ちを整理するのに付き合ってくれる。
バトラーの人に対して思いやりというか気遣いというか……それがとてもありがたかった。
「だぁぁ! ウジウジしててもしゃあない! 両親や爺さん婆さん、弟に事の顛末を説明してからどうするか決めよう! そのほうが絶対気持ち的にも楽だ!」
「そうです! ウジウジしているのはサイトウさんらしくありませんよ!」
「色々ありがとうなバトラー!」
「お役に立てれば光栄です!」
まだモヤモヤはあるけど、気持ちの整理は付いた。
とりあえず日本に帰って親の顔を見よう!
そう決めて、俺は風呂から上がり、シャキッとした顔で皆に明日日本に行くぞと声をかけるのだった。
翌日。
皆の服装を異世界の服装ではなく、日本らしい服装へと着替えさせた。
勿論洋服は俺が作って皆に渡した。
この世界と別の世界のファッションの違いについて皆少々困惑している。
「裸面積多すぎない?」
「ずいぶんと薄着だよね……これじゃあ上は下着みたいじゃん」
「このつばが前だけにある帽子っていうのも不思議ですね」
俺はファッションセンスがあるわけではないので、綾乃に聞きながらデザインしていって、時期が合っていれば、今の時期はまだ秋で少し肌寒いかもしれない程度。
転移した時期と異世界の時間軸が合ってなければ他の季節もあり得るので、とりあえず暑かった時に大丈夫なように薄着にしておいて、寒かったら上着を直ぐに渡せるように作っておいた。
「さて、じゃあ皆さん捕獲状態になってもらうよ!」
「「「はーい」」」
全員捕獲状態になってもらい、俺は軽く深呼吸をして技を唱える。
「……日本へ向かう!」
するとパーッと床が光り始めて、魔法陣が足元に描かれると、シュンと景色が切り替わった。
「ここは?」
辺りを見渡すとどこかのショッピングモールの中って感じで、フードコートの椅子になぜが座っていた。
「……どこかのフードコート?」
俺はとりあえず場所が分からないので、窓から外を眺めると日本の街並みが広がっていた。
「本当に帰ってこれたんだ……あ、そうだ。ステータスオープン!」
俺は呟くと、ちゃんとステータスの表記は出てきて、異世界の能力は使えるっぽい。
手持ちの欄を見てみると、他のメンバーもちゃんと日本に連れてくることができているようで、捕獲状態なので幽霊みたいな感じで俺の周りを見渡していることだろう。
「まだ出てこないでくれよ」
そんな事を言いながら、とりあえずここが日本のどこなのか探りを入れてみる。
「これで遠くの県に飛ばされているってなったら驚くけど……」
いや、でもそれはありえなくないか……ゲルマ王国から1200キロ以上離れたジパングの国に俺は移動していたから、転移先が移動していたら元の場所から離れた所に居てもおかしくは無い。
とりあえずショッピングモールなので地名は書かれていたりするだろうと電光掲示板に近づくと、そこには見知った地名が書かれていた。
「良かった……学校がある所在地と同じ市内っぽいな」
俺は物陰に隠れながら、綾乃を外に出して、学校の近くにショッピングモールなんかあったっけと聞くと、市内にショッピングモールはあったけど、テナントの中身が全く記憶にあるのと違っていたり、駅までの位置でなんか違和感を感じるって言われてしまった。
「違和感?」
「うん……なんていうか……このショッピングモールがある位置って駅や他の建物で見覚えがあるのと無いのがあるんだけど……なんか学校の所在地に近くない?」
「学校の所在地に?」
とりあえず2人でショッピングモールの外に出て歩くと、確かに学校から歩いて同じくらいの距離に学校の最寄駅と同じ駅が合った。
俺と綾乃は首を傾げながら、近くにある交番へと立ち寄るのであった。