クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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ここはどこだ?

 駅近くにある交番に移動しながら、俺と綾乃は今の状況を整理する。

 

 まず季節は夏。

 

 ショッピングモールの電光掲示板を見た時に日付も確認すると7月22日と表記されていた。

 

 俺達が異世界に転移した日付は9月下旬なので、異世界に行っている間に時間が進んでしまっていたのか、それとも時間が巻き戻ったか……。

 

 あと俺達が通っていた高校があったと思われる場所にあるショッピングモール。

 

 違和感が幾つかある。

 

 あと思ったのが、俺の技にあんなバグだらけだった神様が本当に俺達を元の世界に戻してくれるのかっていう点である。

 

「普通そういう表記なら日本に『向かう』ではなく、日本に『戻る』とか『帰る』って表記になるんじゃないのか?」

 

 現に技の表記には異世界に『戻る』になっているし……。

 

 滅茶苦茶嫌な予感がする。

 

 交番に到着した俺達は勤めている警察に質問をする。

 

 内容は自分達が通っていた○○高校に行きたいんですけど……ということ。

 

 警察官は地図を出して場所を教えてくれたのだが……俺と綾乃が知っている場所とは離れた場所に高校の位置があったのである。

 

「あと○○高校じゃなくて、あそこの高校は男子校だからお嬢さんは違うよね?」

 

「男子校? 共学じゃなくて?」

 

「ん? あそこの高校は昔から男子校のはずだけど……」

 

 噛み合わない会話……。

 

 俺と綾乃は歩いて行ける距離なので、行ってみるが、校舎が全く違う。

 

 違和感がどんどん核心に変わっていく。

 

 俺達は再び涼しいショッピングモールの中に戻り、情報収集を行うと……電気屋のテレビから衝撃の言葉が飛び出してきた。

 

『サッカー日本(ひのもと)代表……ワールドカップベスト4進出!』

 

 見出しには日本と書かれているが、ニュースを読み上げるキャスターはひのもとと読んだ。

 

 俺はふとパラレルワールドという単語が頭をよぎってきた。

 

「隆史君……見て」

 

 綾乃は拾ってきたのか10円玉を俺に見せると、10円玉の表の絵は平等院鳳凰堂が描かれているのが普通だが、別の寺院の絵柄が描かれていた。

 

「おかしいよね! ここ私達が居た日本じゃないんじゃ……」

 

「……本屋に行ってみよう。本屋に行けば色々分かる」

 

 俺達は本屋に移動して、歴史の本だったり、立ち読みできる雑誌を確認していく。

 

 俺が知っているラノベのタイトルが一切本棚に無い。

 

 雑誌を開けど知っているタレントは居らず、知らないタレントがズラリ。

 

 出版社の名前は知っていたが、載っている漫画の内容が一切知らないものだったり……。

 

 知っている単語や社名はある。

 

 しかし人物に関しては一切違う。

 

 今の時代も令和ではなく、順永という知らない年号が使われていた。

 

 そして俺は地元の地図を開いてみる。

 

 しかし、俺の実家の農場があった場所は工業団地と記載されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 フードコートに戻った俺と綾乃の表情は暗い。

 

 せっかく元の世界に帰れると思ったのに、実際来れたのは日本(にほん)ではなく日本(ひのもと)……似ていて異なる世界であった。

 

 勿論この世界には俺や綾乃の家族、友人、知り合いは一切居ない。

 

「私達にとってはこの世界も異世界じゃん……」

 

「日本のような異世界だったな……俺の技やステータスをガバガバの管理をするような存在が与える技が……そんな都合が良い技にするわけないよな……」

 

「「はぁ……」」

 

 覚悟したし、帰れる喜び、今後どうするかとか色々考えたのに……やっぱり神様か悪魔かわからないけど、性格悪いわ……。

 

「どうする? この感じだと私も実家なくなったけど」

 

「この感じだと戸籍……というか日本人と証明できる物が俺達無いよな。そうなるとこっちで生活していくのは不可能だよね」

 

「そうなるな……」

 

「身分証も作れないとなると……何か物を売るってこともできないし……」

 

 現代日本という柵の多さ故にパラレル世界とはいえ、この日本で生活していくのは難しい。

 

 お金も無いしな……。

 

「でも異世界とはいえ、日本の製品とか技術書とかそういう物はぜひとも欲しいな。きっと異世界でも役立てるし、作物の種や苗、それにお米とかも日本のブランド米に比べると、異世界のお米は一歩劣るし……」

 

「隆史君的にはこの状態になってもタダでは転ばない気概がすごいよ……」

 

 若干綾乃に呆れられてしまった。

 

 とりあえず、お金も無いし、異世界の方に戻ることに。

 

「とりあえず、綾乃もまた捕獲状態に戻ってくれ」

 

「了解」

 

 綾乃を捕獲状態に戻して異世界に戻るという技を選択すると、視界が切り替わって、ホノカ亭の中に移動できた。

 

 どうやら転移するときは技を使った場所で固定されるっぽいので、また日本に飛んだら、ショッピングモールの中に飛ぶことになるだろう。

 

「日本って国すごかったね! 大きな建物が沢山あったり!」

 

「大きなお店も凄かった。あれだけ室内に商店が並んでいるのは見たことないよ!」

 

 捕獲状態でも幽体離脱しているみたいに俺の周りを仲間達は見ることができるので、日本の景色を見て、異世界に戻ってきてからバトラーやアオイ、アカリ、マリーは大興奮していた。

 

「私としてはホッとしていたよ。この生活が終わるんじゃないかって……悪いとは思うけど、思った世界とは違ったんでしょ?」

 

 ミンナの問いかけに俺はそうだと答え、拠点は引き続き異世界のこの世界に軸を置くことにする。

 

「まぁ勇者が負けて、異世界が魔王軍に侵略されるってことになったら私達その日本って異世界に逃げ込めるって考えたら良いこと何じゃない?」

 

『それにあの世界じゃないと入手できない作物とか動物とかもいるでしょうし……農園を作るっていうなら悪い選択肢ではないんじゃないんですか?』

 

 マリーとアリスもそう言っていることだし、悪いことばかりを考えていても仕方がない。

 

 俺達の出身地である世界には帰れないって思って今まで生活を続けてきたわけだし、引き続きそれをすればいいだけである。

 

「うん、決して悪いことばかりじゃないな。でもパラレルの日本料理も美味しいだろうし、なかなか食べられない海の幸の料理とかもあるし……どうにかして日本のお金を稼ぐ事ができないかな?」

 

 そんな事を考える俺だった。

 

 

 

 結局日本に長居することなかったので、普通の休日になってしまい、なんならスズナリさんに1週間休むって言ってしまったので、今日を含めて6日半暇になってしまった。

 

「うーん、ちょっと散策がてら、パラレルの日本にもう少し行ってくるけど、綾乃は行く?」

 

「行っても知っている日本じゃないからなぁ……私は残るよ。他の皆もお金が無いから楽しむこともできないだろうし」

 

「それもそうだな……じゃあちょっとパラレルの日本にもう一回行ってくるわ」

 

 俺は再び日本に行くを選択すると、フードコートの中に突っ立っていた。

 

 時刻を確認すると、異世界とこの世界の時刻は連動しているらしく、行き来した時間とぴったりだった。

 

 だいぶ都合がよい。

 

 こういうところの調整ができる神様なら元の世界に戻せよって気持ちも湧いてこなくはないけど、それを胸に仕舞って、ぶらぶら歩き回りながら、周辺の地図を技を使ってマッピングしていく。

 

「義野家……うん、牛丼チェーン店だよな。パチモン感が半端ないな」

 

 町を進んでも似ている店の名前だったり、ロゴが違う店だったりが多く建ち並んでいたし、ジトッとする夏の不愉快な暑さでどんどん汗が溢れ出てくる。

 

 俺は図書館を見つけて、涼む為に中に入る。

 

「学校の図書館以外に入るのって実は初めてかも……」

 

 いつも牛の世話や鶏の世話、畑の手入れで忙しくて、図書館を利用するってことが全然なかったので、結構新鮮だったり。

 

「へぇ……共用のパソコンとかもあるんだな」

 

 パソコンの前に座り、色々検索してみるが、やっぱり俺の学校については出てこず、俺達クラスの集団失踪事件とかも出てこなかった。

 

「やっぱり違う世界で確定か……でもこの世界のサッカー日本代表凄いな、ワールドカップベスト4って、確か元の世界の最高順位ベスト16でベスト8入りが悲願とか言われてなかったっけ?」

 

 パソコンを使うのが久しぶりすぎて懐かしく感じ、元の世界との違いを色々調べていくが……俺の斜め横の椅子に虚ろな目をしたスーツ姿の巨乳の女性が本を読むわけでもなく、ただ虚空を眺め続けていた。

 

(うわ……ヤバい人いるじゃん……)

 

 そんな事を考えたが、俺はパソコンの方で調べ物を続けていたら、あっという間に時間が過ぎて、17時の閉館時間になってしまった。

 

「ふひー、結構楽しかったな……久しぶりにパソコン触れて新鮮だったわ……」

 

 そう呟いて、パソコンから離れると、まだ女性は虚ろな目をして虚空を眺めていた。

 

「……何かの縁か?」

 

 普通ならこんな危ない人に関わらないほうがいいのだが、直感で声を掛けてみようと思い、俺は女性に声を掛けた。

 

「お姉さん、閉館時間ですよ」

 

「……あはは……死のう……死にたい……」

 

「うわ、ガチでヤバい人やんけ……」

 

「誰でもいいや……ねえ君」

 

「あ、はい」

 

「時間あるならお姉さんの愚痴聞いてくれない?」

 

「え、えぇ……まぁいいですけど……」

 

 なんか変なことに巻き込まれたわ……。

 

 

 

 

 

 

 場所を図書館近くの公園に移動して、ベンチに座る。

 

「ねぇ、他人の不幸ってどう思う?」

 

「蜜の味っていう人は居るかもしれないですけど、俺はただ哀れむだけですよ」

 

「そう……いや……まぁ……これから死ぬから何でもいいんだけど」

 

「はぁ……」

 

 彼女の名前は東條りおさん。

 

 高校では高嶺の華、大学も一流の大学に通ってミスコンに入賞するくらい容姿は整っていると自負しているし、実家も太くて将来安泰って思っていたらしいのだが、大学を卒業して会社で働くようになって3年で色々な不幸が重なって死にたくなったらしい。

 

 まず母親が病死。

 

 次に父親の会社が倒産の上で蒸発。

 

 彼氏が社長令嬢ってことで付き合っていたらしく、会社が倒産後には弱った自分に付け込んで、ヤるだけヤッてヤリ捨ての上でヤッているハメ撮りを盗撮していたのをネットに上げてデジタルタトゥー化。

 

 あと働いていた会社で横領を疑われて懲罰解雇されたのでことごとく再就職が上手くいかず、遂に住んでいたアパートを追い出されてしまったらしい。

 

「働かないとヤバいのに就職先見つからないし、こうなったら体を売るしか無いって分かっているけど、その覚悟も出来なくてぇ……でももうお金も無いし……死にたい……」

 

「見知らぬ男性に愚痴言うくらいに追い込まれていたと……」

 

「あぁぁぁぁ! 人生やり直したい! アハハハ何とかなれー!」

 

「何とかしましょうか?」

 

「へ?」

 

「こうして喋ったのも何かの縁ですし、何とかできる力が俺にはあるんで、何とかしましょうかって言ってるんですが……」

 

「君、名前は?」

 

「斎藤隆史。異世界遭難者といえばいいでしょうか?」

 

 どうしようもない同士の出会いだった。




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