クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
昼食を食べ終えた俺は園田に明日にはこの城から出て動き出すことを伝えておく。
「そうか……ごめん、僕にできることが無くて……」
「いや、急に召喚されて、クラスが空中分解しなかったのは園田のお陰だ。これから園田の方が大変だろ」
「うん……まぁ……勇者って役職をもらった以上、地球に帰るために頑張るけど……」
「園田、クラスの事よりもお前のことを優先しろ。結局お前が負ければ他のクラスメイトも破滅だからな」
「うん、できる限り頑張るよ。ありがとうね斎藤」
「おう、じゃあ俺は部屋に戻るわ」
「うん」
園田とも別れて、俺はレベル上げのために再び道具をいじくり回し、藤原さんは食堂に行って、この世界の食材や調理器具について勉強しに行っていた。
するとミンナが何着も服を持ってきた。
「お待たせ、支援金と衣服を貰ってきたよ」
「おお、助かる」
服を確認すると、綿製のシャツやパンツ……ゴム製ではなく紐でとめるタイプの下着類に長袖のチュニック(尻付近まで丈がある上着)にジーパンっぽいズボン。
あと皮でできたジャケットに外套まであった。
「こんなに貰えるのか?」
「うん、余り物だから良いってさ」
下着類は男女別で7日分、上着とスボンが1人3着ずつ、外套は1着みたいな感じであった。
テーブルの上に置いてから、自分の分を先ほど覚えた技である収納で格納できるか試してみる。
「手で触れた状態で念じればいいのかな? ……収納!」
シュンと一瞬で服や下着類がテーブルの上から消えて、ステータスの中にインベントリみたいな表記が追加され、そこに今収納した服が枚数表示されていた。
あと残り重量も書かれている。
「はえー便利だなこれ……」
それとシンクの入った袋も受け取った。
硬貨がジャラジャラ入っていて、銀色に輝いて見える。
ミンナ曰く錬金術師が作った銀に見える偽銀と呼ばれる物で、実際の銀とは違うらしい。
性質を聞くとどちらかと言うとアルミニウムに近いっぽい。
軽くて程よい製造コスト、それの大きさと刻まれている数字で幾らか分かるようになっているのだとか……。
偽銀硬貨で大きいのが1万シンク硬貨らしく、袋の中には入っていないが、お札みたいな板状らしい。
それより大きい金額は本物の銀や金の硬貨になるのだとか。
一般人は基本偽銀硬貨しか使わないらしい。
袋から取り出して、テーブルに並べてみると、1000シンク硬貨が25枚入っていた。
5枚は早期に城から出る故に少し支援金を割増してくれた額らしい。
服を貰うから無いと思ったが、ミンナがちゃんと交渉してくれたらしい。
藤原さんの袋の方にも同額が入っているらしい。
「これで明日には出発できるな」
「ええ、とりあえず私が付いていくのはアイアンの期間まで、その後は要相談ということで」
「ああ、わかった。悪いな付き合わせて」
「いや、楽しそうだし、異世界人を早くこの世界に慣れてもらわないと困るから……ね」
その後俺は筋トレをしても経験値が貯まるか実験をしたり、他にできそうな事が無いか探したり、経験値貯めを行うのであった。
夕食を食べ終え、シャワーを浴びる。
「城だからシャンプーと石けんが使えるのか、それとも一般人も使えるほど石けん類が安いのか……どうなんだろうな」
体を入念に洗いながら、そんなことを考える。
シャワーの仕組みをミンナに聞いたところ、一部モンスターの核になっている魔石と呼ばれる素材を加工することで、水やお湯を生み出すことができるのらしい。
それを使って生活インフラをこの世界は維持し、一定水準以上の文明を築いているのだとか……。
町には大きな魔石が鎮座していて、それでモンスターが入らないように結界を敷くことで安全圏を作り出してもいるらしい。
「一応近場で湧くモンスターも魔石が採取できる奴がいるらしいし、そいつを狩るのがアイアンやカッパーの主な収入源らしいな。そいつを狩れるかどうか……これが鍵になってくるのかな?」
窓から外を眺めると、月が2つ空に輝いていた。
それがこの世界が異世界であることをより強調させてくる。
「藤原さんがどれくらい戦闘できるか分からない以上、迂闊なことはできないが、町周辺に湧くモンスターはそこまでの危険度はないらしい」
ミンナ曰く、異世界やゲームの王道であるスライムが近場では湧くらしい。
スライムは突進くらいしか攻撃してこないらしく、粘液でドロドロに溶かしてくる……みたいな凶悪な攻撃はしてこないらしい。
ただ突進の威力はそこそこあるらしく、それで転んで骨を折ったとかの話は新人なら普通にあるとのこと。
「そうならないためにも……色々考えないとなぁ」
俺はベッドに潜り込んで眠るのだった。
翌朝……まだ早起きの癖が抜けてないので、日の出と共に起き、筋トレをして汗をかき、そしてシャワーを浴びてから木の変化をさせてのレベリング。
筋トレでも僅かに経験値が貰えることが発覚し、俺の仮説が正しければ、筋トレを続けてレベルを上げれば筋力か体力のステータスが伸びるハズだ。
結局のところ肉体労働をするなら体力と筋力が正義となる。
「レベル6にはもう少しかかるか」
朝食の時間になったので、レベリング作業は切り上げて、食堂へと移動するのだった。
食堂ではグループごとに集まって食べている感じで、その中に現地の人が数人混じっている感じだ。
恐らく、俺と藤原さんにとってのミンナみたいに、監視役の人も交えての今後の方針を決めているのだろう。
「冒険者ギルドって何時から開いているんだ?」
「朝の6時には開いているわよ。で、だいたい9時頃までに依頼を受けたりして、1日働く感じ……夜は酒場代わりにもなっているわね」
「なるほど」
とりあえずやることは宿の確保と冒険者ギルドでの冒険者登録。
できれば郊外に出てモンスターと少し戦ってみたいって気持ちはあるが……。
朝食を終えた俺達は貰った服に着替えてから城を出て、町に入る。
「藤原さん、似合ってるよ」
「斎藤君もカッコいいよ」
お互いに褒め合う。
制服姿の藤原さんも良いが、中世ヨーロッパみたいな服装に着替えた藤原さんは別の意味で新鮮だった。
服装1つでガラッと印象が変わるな……。
褒めてはいるけど……正直、俺も藤原さんもゲームだったらモブキャラみたいな見た目だな。
「おお……」
城の窓から見ていたが、西洋風の石造りの家が建ち並ぶ。
舗装された道に活気ある商店が建ち並び、人々が大勢行き来している。
「この国の首都だからね……賑わいはこの国でも1番だよ。物価はその分高めだけど」
「金が貯まらない様なら別の物価の安い町に移動するのもありってことですか?」
「そうだね。フジワラの言う通り。あと地方都市の方が冒険者の依頼は多かったりするよ。発展途上だったり、労働力を欲していたり……」
「なるほど……」
まぁ稼げるなら、別の町に移住は考えなくて良い。
ミンナに町の事を聞きながら移動していき、とりあえず宿に向かう。
『月風亭』
それが宿の名前だった。
ずいぶんと和風な……。
「いらっしゃい!」
宿の中に入ると、おばちゃんが掃き掃除をしていた。
「あらやだミンナじゃない。元気にしていた?」
「ええ、バーバラさん。お客さんを連れてきましたよ」
「あらあら!」
ミンナは女将さんに異世界人なのでここの常識に疎いこと、長ければ半年は滞在することを伝える。
「あら、転移者……うちのご先祖様も転移者だったのよ。まぁこの町に古くからある宿は殆ど転移者の先祖達が建てたのだけど……うちは転移者大歓迎よ。まずは設備の案内をしましょうか」
女将のバーバラさんが色々説明してくれる。
1階は食堂と風呂場、洗い場があり、毎朝6時から8時が朝食提供時間、18時から20時が夕食の提供時間。
風呂は昼間の12時から15時まで掃除で使えなくて、洗い場は洗濯物を洗う場所で洗濯機なんて便利な物ではなく、洗濯板に洗剤を使って洗う感じらしい。
宿泊中はフェイスタオルとバスタオルは女将に言えば貸し出してくれて、浴室内にシャンプーと石けんは常用されているとのこと。
リンスと洗濯物の洗剤は別料金で1回分それぞれ20シンク。
料金は3人部屋なら少し割安で食事込みで1人当たり560シンク。
それぞれ別室なら1人600シンクらしい。
「まだ一緒に寝るところを共有するのは辛いだろうから、1人部屋3室で」
「はーい!」
2階より上が客室になっていて、部屋の広さは7畳ほど。
ベッドと金庫と小さなクローゼットがあるだけ。
部屋の外に共用のトイレが各フロアに3部屋ある感じ。
ちゃんとトイレットペーパーが常備されていて安心した。
「食事は日替わりで食べれない物は残してもらっていいから。外で食事する際には朝伝えてもらえると助かるね!」
「分かりました。藤原さんもここの宿でいい?」
「う、うん!」
「じゃあ3人別室で……とりあえず10日分」
「はいよ!」
俺と藤原さん、そしてミンナはそれぞれの財布からお金を出して10日分の宿代を支払う。
「宿も決まったし、冒険者ギルドに行こうか」
「うん!」
というわけで、またミンナに案内してもらって冒険者ギルドへと移動する。
町は中央に城があって、北に貴族達の居住区及び高級品の商店が並び、東と西に市場と市民の居住区、南に宿場街及び冒険者ギルドや武器屋、防具屋などの冒険者に必要な道具が売り出されていた。
そんなメインストリートを南に進んだど真ん中に一際デカい建物があり、冒険者ギルドと看板が架かっていた。
中に入ると、人の数はまばらで、ラノベや漫画で異世界に召喚された際によく見かける冒険者ギルドがそこにあった。
中央にカウンターがあって、入り口から見て左側に大きな掲示板や依頼を処理する受付、右側は酒場みたいにテーブルが並べられてガタイの良い男達が安酒とつまみを飲み食いしている。
そして2階に続く階段がある……みたいな感じだ。
「あら、ミンナじゃない。城に招集されていたって聞いたけど?」
「相変わらず耳が良いわねマーヤ。異世界人の新人さん」
「ああ、本当に召喚できたんだ……わかったわ。ようこそ新人さん達、冒険者ギルドへ!」
受付の女性は笑顔で俺達を迎え入れてくれた。