クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「たは、疲れたー」
「お疲れ」
俺と東條は今日色々な場所を巡って色々必要な手続きを行なってきた。
一応不動産会社に行ってみて、失業中だけど500万近くの貯金があって、すぐにでも住める場所を探してみたが、なかなか条件に合致しそうな場所が無い。
……と、思われたが、駅近で防音に難があること、事故物件であることの二重苦で安くしても入居者が全然居なく困っていた物件があるらしく、そこから3日後には住めるとのことで、東條のとりあえずの拠点をゲットすることに成功した。
「この際、異世界にメインで住むから、殆ど部屋に居なくて良いし、事故物件くらいじゃないと入居できないのは覚悟していたから……でも今の状況の私でも審査通るって凄いな」
「家賃も駅近で2万円っていうのは破格なんじゃない?」
「うん、正直前に住んでいたアパートよりセキュリティしっかりしているから」
まぁ東條は異世界に住む気満々なので、仮拠点くらいの意味合いが強いだろう。
俺としても日本に拠点がある方が動きやすいし。
異世界に戻る前に、俺と東條はラーメン屋に向ってラーメンを食べていた。
「んん、家系の豚骨醤油ベースのスープにこだわった中太麺……異世界にもラーメンはあるけど、醤油、味噌、塩の基本3種だったからなぁ……」
「異世界にもラーメンってあるんだ」
「異世界も過去に多くの現代日本からの転移者が文化の基礎を作ったらしく、想像しているよりも文化水準は高いよ。現代人だとスマホやゲームができないくらいしかストレスはないんじゃないかな? 伝記とか異世界の小説みたいな感じで読めるし」
「ふーん、まぁ私はネット断ちできる環境の方がありがたいけどね」
チュルチュルと東條がラーメンを食べるが、そういう動作も品がある。
やっぱり元はお嬢様だったんだろう……。
その後の転落ぶりはラノベの小説でも無いくらいだと思うけど。
ラーメンを食べ終えた後は、スーパーに買い物をしに向かう。
買うものはカレールーとかの調味料類を購入していく。
「異世界にもカレーはあるけど、日本のカレーとは別種だったからなぁ……カレールーに醤油、味噌、あとはチューブ系の薬味類も」
わさび、生姜、にんにくとかのチューブも購入しておく。
あと甘いお菓子類。
どうしても甘味の種類は異世界の方が少ないので、アメとかグミとか比較的日数が持ちそうな甘味とジュース系の飲料を購入していく。
2人の両手いっぱいにレジ袋がパンパンに詰まった状態になり、運ぶのも一苦労だけど、人気がない場所でインベントリの中に収納した。
「その収納の能力を使えば物を盗んだりとかもできそうだけだど」
「そういう使い方はしたくないな。悪い使い方をすれば、その分だけ手痛いしっぺ返しくらいそうだし」
「そういうもの?」
「そういうもの」
「ふーん」
東條はそれとは別に、レジ袋パンパンまで買い物をしたのに、思ったよりも袋が軽く感じたって言っていたが、おそらくステータスのランクが上がったことによる補正がこの世界でも通じているっていう証明だろう。
今日やることはそれくらいで、人気のない路地裏とかに移動して、異世界への転移を行うのであった。
「市販のカレールーだ!」
「カレールー? この固形のが?」
「そう、水に溶かすとドロドロのカレーになるの!」
綾乃に買ってきたカレールーとか色々な調味料を渡すと喜ばれた。
やっぱり日本での味が食べられるのは嬉しくなるからな。
昼間にラーメン食べたことも白状することになったが、それはご愛嬌。
あとスーパーで買ってきた物と言えばこれ!
「じゃじゃん! 日本製造のシャンプー、リンス、ボディソープ!」
「おお!」
綾乃は喜んでいたが、他のメンバーはポカーンとしていた。
石鹸とかで錬金術師が作ってくれるシャンプーで十分じゃないかって思うかもしれないが、そこそこ値段のするシャンプーやボディソープは髪質だったり、体を洗った時の感触がどうしても違う。
これはこの世界に来てからも思っていた不満点だったが、今までは体や髪を洗えるだけマシって考えていたが、体臭だったり洗い心地、質感にも拘れるというのは大きい。
実際異世界に戻ってから、バトラーと一緒に風呂に入って、バトラーの背中を洗ってやったが、
「泡立ちが段違いですね……普通の石鹸よりもいい匂いがしますし! 髪もゴワゴワじゃなくてサラサラしていますし!」
「だろ?」
男のバトラーでこれなので、女性陣は滅茶苦茶喜んでいて、
「王宮にいた頃の高級品と遜色ない! これが市販で買えるって異世界の文化レベルは高いわね!」
マリーが言ったその言葉が印象的で、女性陣はいつも以上に髪はサラサラツヤツヤになっていて、大喜び。
流石メイドインジャパンもといヒノモト。
パラレル世界でも技術力は屈指だな。
そしてカレーをいただくが、俺と綾乃は懐かしい味に喜んでいたが、他のメンバーは辛いのに味のコクが奥からどんどん出てきて、汗かきながらカレーとご飯をかき込んでいた。
滅茶苦茶美味しかったらしく、あと異世界の野菜でもカレーの美味さをちゃんと引き出せていて良かったと綾乃は胸をなで下ろしていた。
最後に買ってきたジュースや甘味もバトラーや女性陣は大喜びで、部屋に持ち込んで女子会を開催。
美味しそうにお菓子とジュースを堪能するのであった。
「異世界はすごいですねぇ……こんな美味しい物がこちらの価値だと10シンク程度で買えるなんて……」
「ただこの世界よりも外から来る人への制限が多いのも特徴だけどな。法律が大量にあって、税金を取る制度もしっかりしているから、お金を稼ぐのが難しかったりするんだが……」
「なるほど……確かにこの世界でも冒険者って職業と奴隷制度があるので他所から来ても生きていくだけならなんとか成りますけど……」
「日本だと生きていくための恩恵を受けるだけでも大変だからな……」
「難しいですね」
「まぁ、バトラーがあっちの日本に行くときは観光する時くらいだから安心してくれ。ラーメンの美味しい店とか日本の名物である寿司とか紹介するよ」
「やった!」
そんな事をバトラーに教えながら眠りに就くのだった。
翌日は逆に、東條に異世界を案内してあげた。
勿論東條の格好も異世界の標準的な服装にしてある。
「動くのに支障は無いけど、ずいぶん厚着よね。外って夏じゃないの?」
「ダンジョンの外は梅雨の時期なんですが、日本のジメッとした暑さじゃなくてさっぱりしているんで過ごしやすいんだよな」
「そうなんだ」
「今いる場所がっていうのもありますがね。じゃあこのクリスタルの棒を握ってくれ」
「こう?」
「ああ! 頭の中に行き先が出てくるので、それを選んで飛ぶ意識をすると」
倉庫の中にワープ成功。
東條もワープに成功できて、倉庫から外に出ると、中央の塔以外5階建て以上の高い建物は存在せずに、石造りの建物が建ち並んでいた。
「確かに異世界ね……昔旅行したヨーロッパの街並みに近いかもしれないわね」
「じゃあ色々見て回りますか」
とりあえず近くの市場からどんどん町の中央に進む感じで案内をしていく。
出店が並んでいて、そこで野菜や料理を売っているのは日本では珍しい光景だし、髪色もカラフル。
冒険者らしく武装した者もいれば、甲冑を着た衛兵が立っていたり。
「本当に異世界って感じの異世界ね……ダンジョンはどこにあるものなの?」
「奥に見える高い塔の地下がダンジョンになっています。地上から上層の部分は冒険者ギルドがあったり、腕のよい商店が入っていたり、金持ちの居住区があったりだな」
「そこは日本のビルに近いんだ」
「そうだな」
市場では見たことのある野菜から初めて見るモンスターの肉だったり、料理だったりが売られていた。
「食べたら腹を下したりする感じじゃないわよね?」
「露店で食べても今のところ当たったことはないですね。たぶんラックが凄いことになっている東條も当たらないと思いますよ」
「そうかな……ちょっとあのクレープみたいな料理食べてみていい?」
「じゃあ買ってきますね」
俺は露店に行くと、クレープっぽい小麦粉の薄皮にフルーツとクリームがたっぷり入った食べ物を2つ購入し、片方を東條に渡す。
「あむ……んん、クレープよりもサクサク食感で、あんまり甘くないんだ。いや、フルーツの甘さはあるけど、クリーム特有の甘さは全然ない」
「サクサク食感はアイスクリームのコーン部分に近いですね。フルーツはスイカほどみずみずしくは無いけど……洋梨に近いかな?」
「確かに」
そんな食べ歩きをしながら、冒険者ギルドへと移動する。
「おお、ゲームや物語にあるような掲示板に受付だ……」
「他の場所の冒険者ギルドは酒場も併設されていて、より物語の冒険者ギルドっぽい雰囲気なんですけどね。ここはどちらかと言うと役所に近いかも?」
「なるほどねぇ」
「冒険者ギルドでは身分証の代わりになるプレートを作ってくれるんで、せっかくなので、今作っちゃいましょうか」
「そうね」
というわけで、東條も冒険者登録を行うが、まぁステータスが低いのに、年齢も27歳と冒険者登録するには遅めで、成長余地はあまりないだろうと思われ、職員の対応も事務的。
まぁ、アイアンのプレートをもらって東條は上機嫌だったが。
その後は塔の上の階層に転移できる魔法陣に乗って、上層に移動し、武器や防具を冷やかしで見に行ったり、塔から出て、異世界の服屋で、異世界の服装のチェックをしたりして1日を潰すのだった。
結構楽しいデートっぽくなったんじゃないかな?
東條も異世界を満喫できて満足そうだった。