クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「で、まぁ宝くじを狙うってよりは、継続的にお金を稼ぐ仕組みを作ってしまったほうが絶対良いわ」
東條からアドバイスを受けたが、俺が作る革製品とか服に関して、こっちの世界の錬金術で作られる繊維は日本の化学繊維にも引けを取らない……安物よりも品質は良いと東條は言う。
革製品も、モンスターの革を使っているからか、独特な質感があり、これはこれで売れるだろうと東條は言う。
「材料さえあれば一瞬で何個も作れるのだったら、ハンドメイド工房みたいな感じでネットに出店して販売していくのがいいかもしれないわね」
手順としては、大手フリマサイトで少数の製品を作って販売し、売れるかどうかを確かめる。
売れるようであれば個人事業主として開業し、ネットで出店できる個人店を経営。
そこから事業を拡大していけばいいんじゃないかな……と提案された。
「異世界の方に生活基盤があるのだから、日本で稼ぐのはある程度活動できるだけの金で十分。斎藤の作る製品ならそれくらいは稼ぐ事ができると思うけど」
とのこと。
具体的な計算を東條はしてくれたが、こんな感じ。
ハンドメイドの革財布で計算するが、1個1500円くらいが相場として、売れると10%の手数料が発生する。
売上は1350円。
1日10個売れれば1万3500円にはなるが、フリマサイトのハンドメイド品はそう売れない。
良くて1日3個くらいがせいぜい。
ただ本業としての基準である年収48万のラインを超えてくるようであれば開業してしまったほうがいいとのこと。
そこら辺の開業に関する手続きや書類の作成は東條が詳しいらしいので、問題なくできるとのこと。
ちなみに48万のラインは1日1350円売り上げていれば超える計算になる。
「開業したら帳簿をつけなければいけなくなるけど、そこら辺も私の得意分野だし、異世界でも何かを作って販売していくんだったら覚えておいた方が楽だからね。どんぶり勘定じゃ経営はできないから……」
まさに今どんぶり勘定していた俺達にとって東條は必要な人材だったかもしれない。
これも皆の幸運あっての縁かな?
とりあえず日本に移動して性能のよい電卓を複数個購入。
あと帳簿を付けるための用紙や筆記用具なども購入していき、直ぐに異世界に戻ると、異世界の通貨シンクがどれくらいあるのか全部出して一旦全部計算するからと、東條に教えてもらいながら、皆で帳簿の付け方を勉強することに。
「はえ~電卓便利やな。うちらそろばんを使うことは多かったけど、こんな電卓みたいなマジックアイテムは金のある商店か冒険者ギルド、あと行政の受付でしか見たことないわな」
「そんなにお金が動かないの?」
アオイの言葉に東條が質問するが、動く金額が少額なのと、基本10シンク単位で売買が行われるので計算がしやすいため、そろばんと暗算で事足りてしまうらしい。
逆に大金が動く冒険者ほどどんぶり勘定が多いのだとか……。
「日本で言うなら冒険者はスポーツ選手みたいな存在ね。スポーツ選手も個人事業主だから個人で税理士を雇ったりするみたいだし……って考えると、この世界の場合冒険者って非課税なの?」
冒険者として活動した場合、素材を売却したり、依頼の報酬が支払われる際に税金は徴収されているが、所得税みたいなのを冒険者が支払うってことはないな。
データで管理することができなかったり、アイテムボックスという所得隠しを簡単に行うことができるアイテムや能力で異空間に収納したりすることができてしまうため、性善説に則って税金を回収するのだろう。
たぶんそれ故に財源の関係から社会保障が奴隷制度を続けなければいけない一端があったりするんじゃないかって東條が指摘した。
「なるほど……そんな観点で考えた事はなかったな……」
「でも簡単にだけど藤原が帳簿をつけてくれてて助かったわ」
綾乃が簡単な支出を纏めてくれていたおかげで、1ヶ月の出費は計算できるので、あとは入ってくるお金を計算すれば良いので、2時間程度でまとめ終わることができた。
で、計算してみた結果、俺達は現在1億3895万8500シルクが現金として持っており、ここ最近は冒険者として活動すれば1日4500万から5000万シルクが貯まる計算になっていた。
で支出は食費や消耗品の補充代金等か殆どで月1万シルクほど。
「恐ろしいほどの黒字経営ね」
あとは毎日各人にお小遣いとして1万シンクを支払っているので、それが今までラミーを含めて11人分で1人辺り月28万シルク、11人で月308万シルク払っている計算になる。
「うーん、どんぶり勘定……ここで生活していたらそんなにいらないでしょ」
「うん、だからお金がどんどん貯まっていっていて……」
「毎日あげるんじゃなくて月給制にして、そこから全員帳簿を付けるようになれば、お金の管理はマシになるわよ」
「ふむ、しかし妾とカグヤ、ラミーは足し算引き算しか扱うことができんぞ」
「え? そんなレベルなの?」
東條が驚愕しているが、その3人はモンスターを合成していって魔人化したため、確かに計算はできないだろう。
文字の読み書きも怪しいし。
「よし、そこら辺はお姉さんが教える。この世界でもアラビア数字で統一されているから数字は教えられるからね。3人の他にも算数、数学で教えて欲しい事があったらお姉さんが教えるから」
なんか塾講師みたいな感じになってきたな。
でもありがたい。
たぶんダンジョンに潜るのも最悪俺だけでも仲間モンスターいればなんとかなるから、他のメンバーはここで集中して東條に色々教わるほうがよいかもしれない。
あと俺も70階層までの地図を作ったりしたいし……。
こうしてどんぶり勘定になっていた俺達パーティーは東條の加入で引き締まることになるのだった。
東條が来てから4日目、今日は東條の新しい住居に入れる日で、朝から日本の方に来て、不動産で入居書類の作成と敷金礼金の支払い、諸々の手続きを終わらせて、車で移動。
「お二人はご兄弟かなにかで?」
「そうなんですよ。実家の方で暮らしていて、今度この子も一人暮らしするので、勉強の一環で付き添わせていて」
「ああ、なるほど。弟さん、美人な姉さんが居て良いなぁ」
不動産屋の人が車で目的地まで運んでくれたが、車内でそんな会話をした。
流石東條、口が上手い。
というかなんでここまでできる女性が、自殺寸前まで追い詰められるんだよ……。
到着すると確かに駅近くで、電車の通る音が気になるアパートだった。
ただ中は悪くない。
事故物件らしいので全面リフォーム済みの1LDKかつ2階の角部屋。
10部屋あるが入居者は半数しか埋まっておらず、下の部屋と隣は空き部屋と隣人を気にせずに暮らすことができそうである。
「こんな良い部屋をいいんですか?」
「ああ、1年近く新しい入居者が現れなくて困っていたんだ。こちらとしても助かる。ところで仕事の欄が空欄になっていたのが少々気になるんだが……」
大家さんから突っ込まれたが、失業中だけど、ズラッと書かれた免許や資格があるため、就職はできるかとと言っていた。
「貯金がまだ結構あるので、2年は滞納の心配はないです!」
とも言っていた。
大家のおじさんはとりあえず納得したらしく、あと彼氏連れ込んでもいいけど暮らす人数増すんだったら話してほしいこと、あとゴミの日のルールや10時頃に寝る人多いから電車の音でかき消されるけど、ゲームとか通話で大声は出さないで欲しいこと、お札が貼ってあるけど剥がさないで欲しい事……何かが言われていた。
鍵を貰って、部屋にお邪魔すると、本当綺麗な部屋で、電車の音が気になると言うが、そんなに気にならない。
ちゃんと防音はできていると思うが……なんかいる。
部屋の中に普通に人がいる。
『あれ? もしかして見えてる? マジ? マジかぁ!』
なんか幽霊が見えるってマリーの二番煎じ感があるんだけど……。
『そっちの女性もみえてるん?』
「これ幽霊だよね? 私霊感とかない方だったんだけど……」
「異世界に転移して覚醒した感じかな……とりあえず自我ありそうだし、喋ってみるか……というかお前が前の居住者だろ」
幽霊は俺達に近づきながら、喋り始める。
『当たり。メンヘラクソ女にハメられて刺殺された大学生だよ。ガチであの女許さねぇ』
彼の名前は山本敦……近くの大学生に通っていた享年21歳とのこと。
彼女と付き合っていたらしいが、束縛癖があったらしく、別れてから逆恨みするようになり、感情爆発して山本の部屋に押し入って刺殺するという暴挙に及んだらしい。
『ガチで怖かった。電車の音で部屋の扉の開く音がかき消されて……というかアイツ、いつの間にか合鍵作ってたし……』
なんで俺の周りには可哀想な人が集まってくるんだろうか?
『悪霊扱いされてるけど、別に悪さするつもりはないんだけどなぁ……俺……』
「どうする? 山本だっけ? うちにくる?」
『いや、俺この部屋から出れないんだけど……うちくるって?』
「俺異世界転移者でモンスターとか人間捕まえて合成できる力あるんだけど、異世界で生き返って生活しない?」
『へ? 生き返られんの俺?』
「俺の力だとできるけど……化石化した古代人復活させたりしてたし」
『いやいや、そんな都合の良い話が……でも俺とこんなはっきり喋れてるんだよな……マジなん?』
「マジマジ」
『うっひょーじゃあ頼むわ! ガチで退屈で困ってたから! 異世界行けるとか夢みたいだわ!』
「はい、1名様ご案内」
俺は捕まえるで山本を捕まえるのであった。
パラレル日本で捕獲した2人目の人物は幽霊だった。