クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
翌日、山本はアリスが予備で作っていた片手剣と小型の盾を装備して、10階層くらいのボス部屋の前に来ていた。
「いきなりボスと俺戦わせるのか?」
「今の山本ならこの階層のボスモンスターだろうがダメージ入らないから問題ないし、ここの階層のボスモンスターはストーンゴーレムだから、パワーで叩き潰せば一発だし」
「そ、そうか?」
部屋の中に入ると、3メートルくらいあるストーンゴーレムが動き始めて、山本を襲い始めた。
ズドンと振り下ろされる拳にビビっていたが、やけっぱちでタックルをかますと、ストーンゴーレムの巨体が遠くに吹き飛んでいった。
「あれ? 滅茶苦茶軽い? 発泡スチロールの箱に当たったくらいの感触だったんだが」
「ステータスが強すぎて、パワーがヤバいことになってるな……試しに石をストーンゴーレムに投げてみなよ」
俺は野球ボールくらいの石を山本に渡し、山本が投げてみる。
すると手投げにも関わらず、200キロ近くの剛速球が40メートル近く離れたストーンゴーレムの胸部に直撃し、ストーンゴーレムの岩が弾け飛び、大きなダメージを与えていた。
「すっげぇ……」
「手投げでそれなら、野球のフォームしっかりして投げたらもっとスピード出るぞ」
「滅茶苦茶すごいじゃん! 今から野球習おうかな」
そんな冗談を言っていたが、ストーンゴーレムが再び動き出して、こちらを襲ってくるので、山本はストーンゴーレムの拳を真正面から受け止めるが、ダメージはない。
「すげぇ、スーパーマンみたいだ!」
ストーンゴーレムの手を握ると、岩で出来た手に山本の指がめり込み、そのまま背負投で地面に叩きつける。
バッコーン
ストーンゴーレムは勢いよく破壊されて、宝箱がドロップする。
「な、大丈夫って言ったろ?」
「確かにこれだけ強さに差があれば他のモンスターでも勝てそうだわ」
「じゃぁこのレベルのモンスターが大量に湧いてくる30階層のモンスターハウスに移動するぞ」
「それは……大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫……というより本当は山本も冒険者登録を行いたいんだが、ステータスが強すぎちゃって、登録したら騒ぎになるから無理。だからせめて普通に戦える様にってな」
「なるほど?」
「というか、そのステータスで戦えないほうが困るし……俺と一緒に農業やるでもいいけど?」
「それはそれで楽しそうだけどな。こんな身体なら農作業しても疲れないだろ」
「たぶんフルマラソン全力疾走を3周しても疲れないと思うぞ!」
「うは、人間辞めてるわ! いや、死んで生き返ってるから辞めてはいるんだが……」
「あと閻魔としてなんか魔法頭に浮かんでこないか? 俺は魔法の才能が無いから分からないんだけど」
「んー、ああ。なんか浮かんでくる。これ唱えて放てば魔法になるのか?」
「たぶんな」
俺はクリエイティブモード、山本は霊体になって床をすり抜けて30階層へと降りていき、そこのモンスターハウスの前で預かっていた武器を渡した。
「500体くらいモンスター湧いてくるから、とにかく倒してみてくれ。何なら魔法使ってもいいから」
「やってみるわ」
部屋の中に入ると、モンスターが湧き始め、山本に襲いかかるが、
「えっと……裁きの礫……なんかゲームでもこんな技あったな……」
山本がそう呟くと、彼の体から無数の光が放出されて、次々にモンスターに命中していく。
当たったモンスターは魂が抜かれたかのように動かなくなり、バタバタと倒れていく。
あっという間に部屋中のモンスターが倒されて、10分もすると、モンスターが湧かなくなっていた。
「ちなみにどんな魔法かわかるか?」
俺が山本に聞くと山本もよくわかっていないため、互いに顔を見合わせて困惑。
とにかくモンスターの亡骸が散らばっていたため、キングスライム軍団を外に出して、素材回収を手伝ってもらう。
「ミミックも裁きの礫の攻撃に含まれていたのか、一切出てこなかったな……」
「ドロップした宝箱にもミミック出てくるのか?」
「出てくることがあるな。でもこれ楽だな……どれくらいMP消費した?」
「ちょっと待ってな……ステータスオープン」
山本はステータスを確認すると、だいたい500くらいMPが減っていた。
数値から見ると1体倒すのに1MP消費みたいな感じで、めっちゃ効率がよい。
「すげぇ燃費良いな……魔法に詳しいマリーやミンナ、アリスに聞いてみようか」
素材の回収が終わって、ホノカ亭に戻る。
そこで3人に聞いてみると、アリスが知っていた。
『それ古代魔法ですよ! 上級天使族が仕えていた自身のステータスの合計数値が半分以下の相手を一撃で殲滅できる大魔法ですよ!』
「それって……山本だと殆どの相手をせんめつできるんじゃ?」
『そうなりますね……』
計算したら、ステータスの数値が合計6万6565以下は倒せるとのこと。
ラックを除いた全ステータス平均1万のモンスターでも勝てるとかヤバすぎる。
「それがMP1で放てるとかヤバすぎるだろ」
『まぁ広範囲の殲滅力はMP量に依存するし、思ったよりも広範囲攻撃はできないですがね。ただ1体に対してステータスが半分以下なら確殺できるという恐ろしい魔法ですがね』
とのこと。
ヤバすぎる魔法だな。
「じゃあ……山本、一緒に行けるところのボスモンスター倒してみないか?」
「そんなに強くないのか? ボスモンスター?」
「少なくとも60階層のボスモンスター倒せるようなら、90階層の普通に出てくるモンスターも普通に倒せるし……60階層のボスモンスターは星の戦士ってモンスターが出てくるんだが」
話真面目に聞いた山本はそれなら倒せそうと自信を付け、70階層のボスモンスターもこれなら倒せるかもって感じたっぽい。
というか幽体になった状態で裁きの礫連打していたらこのダンジョン攻略できるんじゃ……。
「山本、とりあえず70階層のボスに今日挑んでみないか?」
「70階層ってまだ未知数なんじゃ?」
「そうだけど、山本なら倒せると思うし、そこから下の階層は不思議のダンジョン形式で、壁やフロアが移動するみたいだから……とりあえず幽体で壁抜けやトラップを無視できる状態で探索しようよ」
「……やってみるか!」
そんな感じで、俺と山本は70階層に向かうのだった。
地図が埋まっているわけじゃなかったので、70階層の地図埋めから始めたが、やっぱり喋り相手がいると楽だわ。
地図埋めが捗る。
「たぶんここが70階層のボス部屋だな……」
「どんなモンスターが出てくるか予想はあるのか?」
「いやぁ……わからないけど……」
山本に聞かれたが、俺も予想はつかない。
ただ傾向としては徐々に人型に近づいているような気がするが……。
「じゃぁ中に入ってみるか」
「幽体の状態で入るぞ」
俺達はボス部屋に入ると、部屋中にはスライムの様な白いゼリー状の塊がそこにいた。
……!
「山本、幽体を解かないでくれ」
「え、いいのか?」
「ああ……俺の予想が正しければ……」
ゼリー状のモンスターは俺達の方を向いて困惑していたが、俺が実体化すると、徐々に変化してきて、俺の姿をし始める。
「コピー能力か……でも!」
俺が手から剣を作り出すが、モンスターは数テンポ遅れて剣を作り出す。
俺が剣を仕舞うと、モンスターの剣も消えた。
その状態で、俺は再びクリエイティブモードになると、捕獲を試みた。
「捕獲率は10%……悪くは無い数字だな!」
何度か弾かれてしまったが、5回目の挑戦で捕獲に成功する。
モンスター名はホワイトマン。
性別は無く、他のモンスターに変身することができる……というモンスターで、図鑑説明を見てみる。
ホワイトマン……他の種族に変身し、他種族のモンスターの個体数を増やせる特殊なモンスター。
「つまり、繁殖用モンスターってことか?」
「そうなる……あと俺モンスターのオスメスが居れば繁殖することができる能力を持っているから……」
「モンスター増やし放題ってことか?」
「そうなる」
エゲツいモンスターを手に入れてしまった。
これ色々悪用し放題だぞ……。
「というか他人に化けるモンスターって……1対多ならそんなに大変じゃなくないか?」
「ちょっと待ってな」
俺は先ほど捕まえたホワイトマンを外に出し、2人揃って実体化すると、ホワイトマンが2体に分裂した。
「クリエイティブモード」
俺がクリエイティブモードになると、ホワイトマンは1体に戻った。
「なるほどなぁ……冒険者パーティーがこの部屋に集まった場合、人数分ホワイトマンが増えて、全部倒さないと終わらないって考えるとめっちゃ悪質なモンスターだな」
70階層のボスモンスターだから100階層の雑魚モンスター……100階層に雑魚モンスターは居ないらしいから、固有モンスターなんだろうが、えげつない。
ボスモンスターを戦わなくていいとはいえ、俺や山本みたいに実体を無くせる奴じゃないと苦戦することは必須のモンスターである。
というか、俺と山本両方実体化していたら、山本をコピーしたホワイトマンに俺倒されていた可能性すらあるし……。
「こっわ……」
そんなことを考えながらも、ホワイトマンの有用性を理解した俺は、湧き直しの時間を操って、再び湧かせて、何体も捕まえるのであった。