クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
船でぐるっと一周してみたが、確かに八の島から魔王軍の姿が見られない。
「変だな……島に何かおるのか?」
「エリーゼ様、島に光の柱が!」
「むむ!」
日が暮れ初め、光の柱がよく見える。
色々思うこともあるが、死ぬのなら八の島で死にたいと志願してくれた兵士や民兵を引き連れ、船で来ていたが、魔王軍からの攻撃も無く、近場まで近づけた事、光の柱などの異常が見られ、私は悩んだ末に上陸を指示した。
光の柱近くに上陸しようとすると、海岸沿いに大量の木材と石材が並べられていた。
「ソフィー、あれは魔王軍が使っていた物質か?」
「どうなのでしょう……申し訳ありません。私にもわかりません」
「うむ……」
船を錨で固定して、小舟で浜辺に兵達が上陸していく。
私はそれを見守るのだった。
兵達が浜辺に戻ってきた。
見慣れない人々を引き連れている。
「そ、空を飛んできてないか?」
「本当だ……」
見慣れない人々の一部が空を飛びながら船に乗り込んできた。
「えっと……初めまして冒険者のサイトウです」
「ヤマモトです……ほら、やっぱりいきなり乗り込んだら困惑するじゃん」
「しゃーねぇだろ、どう説明すれば良いか分からないし」
サイトウとヤマモトと名乗る冒険者の2人が船に乗り込み、私達に挨拶をしてきた。
どうやら魔王軍ってわけではなさそうだ。
「単刀直入で言うと、俺とヤマモトの2人でこの島に居た魔王軍は全て殲滅した。まだ隠れてる奴は居るかもしれないが、組織的な抵抗はできないくらい壊滅させてる」
「ほ、本当か? ふ、2人でそれができるのか?」
「にわかには信じられませんが……」
「ヤマモト、ステータスを見せてやれ」
「おう、ステータスオープン」
ヤマモトという男がステータスを表示し、周りの兵士達が恐る恐る見に行くと、悲鳴を上げた。
「姫様……ステータスが凄いことになっています……どの数値も5000とか8000とかの普通の人とは違うステータスをしております!」
「あのステータスなら確かに魔王軍を殲滅したっていうのもわかります……」
「そ、そうなのか?」
「姫様ってことは王女様とかでいいのかな? 一応冒険者ギルドの依頼で、島を解放した者にその島を与えるって書かれているけど、それ遵守してくれるよな?」
サイトウという者がそう言ってくる。
つまり八の島の統治権が欲しいってことか?
いや、そういう理由で冒険者に依頼を出すとは聞かされていたが、本当に……うむむ!
「エリーゼ様……」
ソフィーが不安そうな顔をして私を見つめる。
いや、騙されたとしても八の島で死にたいと思って来たのだ。
それよりそんな強い冒険者なら、他の島の解放も手伝ってもらったほうが良い。
よし、これでいこう!
「八の島の島長代理のエイト・エリーゼだ! 冒険者として依頼を達成された事を認める。ただ統治者となるのであれば新しく島長になる必要がある! ……それ故にリーダーは、わ、わ、私と結婚しろ! あとソフィーとも!」
「え、エリーゼ様!?」
いきなり褐色銀髪の同じ歳くらいの女性から求婚されたんだが?
「すみません、リーダーは俺なんですけど、彼女居まして……」
「な! そ、それならば妾でも良いぞ! ヤマモトという男はソフィーを娶ってくれないか?」
「エリーゼ様!? 何を言っているのですか!」
「ソフィー、こやつらの話が本当なら島に居た魔王軍を2人で殲滅できる能力を持っているのだぞ、それにヤマモトは実質ステータスが高いのは確認済み。嘘の可能性は低い。私達は島長代理ではあるが立場はスライムよりも低いのだ!」
エリーゼという女性が、想像力豊かというか頭が回るというか……普通権力者だったら俺達を褒めた後に、島の権利を取り返したいって気持ちが強いと思ったが……。
どうやら俺達の実力を過剰評価してくれて、恐れているっぽい?
「あーいや、俺としては島の全権が欲しいってわけじゃないんだけど……」
「そうなのか?」
「いや、冒険者の俺に統治者になれって言われても困るし……俺は大農園が作れれば満足何だけど」
「だ、大農園?」
「うん! 大量の農作物や家畜を飼育して、スローライフを送りたいんだ。それで魔王軍倒せば自由に使える土地が貰えるってことだから、俺はこの島に来て、魔王軍を殲滅したわけだけど」
「はへ……」
エリーゼ様や周りの兵士達もポカーンとしていたが、状況を徐々に飲み込めてきたのが、エリーゼは笑い始めてしまった。
「あは、あはは! 大物だ! 私達の常識では測れない上位者の意見だ……あー、笑った。改めて……」
エリーゼ様は船の甲板に膝をついて頭を下げる。
「八の島代表として、いや、人類側の代表として頭を下げさせてもらう。魔王軍に押され続けていた人類に僅かながら希望が見えた。八の島を解放してくれてありがとう。人類に希望を見せてくださりありがとう。願わくばヤシマ王国にまだ蔓延っている魔王軍を討伐してくださることを依頼したいが……」
「山本、お姫様にこんなこと言われたら物語の英雄は断らないよな?」
「ええ、俺またお腹タポタポになるまでポーション飲まなきゃいけないのか?」
「いや、マリーやミンナ、アリスにも手伝ってはもらうが」
「……やるよ! やればいいんでしょ!」
ヤマモトも了承すると、俺は船の上で寝るのもあれなんで、皆さんに食事と寝るところを用意しますよと伝えた。
「船に乗っている人100人くらいですよね?」
「ああ、80人だ」
「わかりました。じゃぁ山本、俺は先に戻って、皆さんが宿泊できる場所を用意するから、案内を頼むわ」
「了解」
俺はクリエイティブモードになって船から離れるのであった。
海岸に来ていた他のメンバーに80人のお客さんが来るから、その人達分の料理を作って欲しいこと、あとミンナ、マリー、アリスの3人は明日ヤマモトと一緒に他の島に行って魔王軍を殲滅していくぞと伝える。
「捕虜とかは捕らなくていいから、人類の敵だし、侵略者だから殲滅しちゃっていいから」
「「「了解」」」
俺はキングスライムやゴーレムを外に出すと、海岸沿いに積まれている石材や木材を島の内部に運ぶように指示を出す。
マリーとミンナにも、物を浮かせる魔法で手伝ってもらい、技の拠点建設のテンプレにある中型の宿Aという木材と石材で作れる物件を建てていく。
上陸した姫様とかはモンスターを使役して、次々に建物を一瞬で建てていく俺を見て、目をキラキラさせていたのだった。
綾乃が指揮をして、アオイ、アカリ、バトラー、ラミーの5人でカレーを作っていく。
一応エリーゼ様に宗教的に食べれない物が無いか聞いたら大丈夫って言われたので、豚肉をじゃんじゃん、野菜ゴロゴロ入れたカレーがどんどん出来上がってくる。
なんならホノカ亭の台所では場所が足りないとして、キャンプ場の炊事場みたいな場所を作って野外で炊事を行った。
鍋の数も足りないので、俺が鉄鍋を作って、綾乃に渡していき、それを使って米を炊いたり、カレーを作っていく。
出来上がった物を皿によそって、兵士達に渡していくが、兵士の殆どが女性か幼い男性だった。
「姫様、大人の男性とかは?」
「皆、魔王軍が侵攻してきた時に私達を逃がすために命懸けで戦ってくれた。私の両親もそれで……」
「そうか……俺達がもっと早く来ていれば……」
「いや、たらればを言っていても仕方がないだろ。名前的にここらの者でもないのだろ?」
「ああ、俺は勇者召喚に巻き込まれた異世界転移者だ」
「転移者……なら尚更間に合わんな。この国が魔王軍に侵攻されたのは半年も前だ。その頃であれば、サイトウだったか? お主達はこの世界に来ていないのだからな」
「エリーゼ様は凄いな……両親を失ってなお、民衆を導くように振る舞うなんて」
「凄くはなかろうて、泣く暇が無かっただけだ……でも……肩の荷が降りた……あれ……」
エリーゼ様からポロポロと涙がカレーに落ちる。
「おかしいな……何だがしょっぱく感じるぞ……」
「エリーゼ様……」
横に座っていたソフィーさんがエリーゼ様の背中を擦る。
「私達にとってお主達が勇者だ。英雄だ。それは変わらん。勇者は強大な力を持ち、恐れられると言う者もいるが、私からしたら解放者でしかない! 一応最初に私が言った妾の話は考えておいて欲しい。この島で生活するのであれば私と子供を作ることが、周りの民衆からどう見えるかを」
「いやー……いきなりそんなことを言われてもなぁ……まぁ互いのことを知ってからでいいんじゃないかな?」
「あと私のことはエリーゼでいいから。様付けは不要!」
「じゃぁお言葉に甘えて……エリーゼ」
「は、はい!」
何か雌の顔になってないか?
「俺は君のことを何も知らない。そして君も俺のことを何も知らない。互いの事を知るために、今は時間が必要だと思う。そして失った人々の事を弔う時間も……あと、できればで良いけど、これから俺は色んな島を解放していくと思うけど、俺は国の統治者になりたいわけじゃない。のんびり農家として生きていきたいから八の島以外の島は管理者がいるんだったら元の住民に返してあげてほしい」
「逆に私からもお願いします。八の島の復興はサイトウの力が絶対に必要だ! 民のために改めてお願いする!」
俺とエリーゼは互いの顔を見つめ合った後に、握手をするのだった。
こうして俺の八の島での生活が始まるのであった。