クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
ある日、息抜きと八の島に必要な素材を買い足しにジパングに戻っていると、見知った顔が見えた。
「園田達だ!」
勇者である園田達がこの町に来ていたのだ。
俺は声を掛けるか悩んだ末に、せっかくクラスメイトに会えたんだし……声を掛けていくかと、園田一行に声を掛けた。
「お~い、園田」
「ん……ああ! 斎藤! 君もジパングに来ていたのか!」
久しぶりの再会に俺と園田だけでなく、園田の周りにいた岡部、服部、森本、福浦とも挨拶をするが、少し気まずそうな顔をしていた。
彼ら彼女らからすれば、自分達は魔王軍と戦うとはいえ、王国から潤沢な支援を貰っていた側だ。
あっちからすれば、追い出される形になった俺達が恨んでいてもおかしくはないって思っているかもしれない。
「悪かったね斎藤」
「何も悪くないよ園田。勇者としてやらなければならないことをしているんだろ? ダンジョンには潜るのか?」
「うん、まだ慣らしの段階だけど……」
「……ちょっとここじゃぁあれだから場所を変えよう。食事代くらいは俺が出すから」
「いいのかい? ……いや、割り勘にしよう」
園田は俺も苦しい生活をしていると思ったのか、割り勘を提案されたが、十分に稼いでいるんだがな……。
まぁ事情を知らなければそんなもんか。
俺はスズナリさんがオススメって言っていたレストランに入っていった。
「悪いな場所を変えてもらって……勇者ってことはどれぐらいこの町の人にバレているんだ?」
「冒険者ギルドの職員にはバレているけど、それ以外には特に……」
「ならよかった……俺もジパングに居たけど聞かなかったから」
「勇者は戦地に向かっているって表向きには言われているからね……そうじゃないと士気が崩壊してしまう場所もあるのだとか……」
「そうか……」
話を聞くと100階層にあるとされる伝説の剣を園田達は手に入れて、今後の戦局を有利にしたいとのことだが……100階層のエルキドゥを捕まえたからか、伝説の剣がドロップするようなのは見てないけど……アイツを倒せば伝説の剣がドロップするのだろうか?
(俺は裏技を使ったとはいえ、エルキドゥはそう簡単に倒せるモンスターじゃないし、場合によっては周りのメンバーは全員死ぬぞ……)
勇者が死んだとなれば人類は一気に窮地に陥る。
ここは多少手助けをした方がいいかな。
「どこまで必要か分からないけど……園田達……これは同じクラスメイトだから提供するけど……」
俺は園田の前に紙束をインベントリから取り出して渡す。
「これは……」
「50階層までは地図が手にはいるけど、そこから下……51階層から70階層までの完璧な地図だ。これは俺が足で稼いで記録したから確かな情報だ。あと70階層までのボスモンスターの情報も記載してある」
「こ、こんなの受け取れない! これを失えば君が困るんじゃないのか?」
「いや、それよりも……斎藤は70階層まで行ったのか?」
「調べれば分かるけど……俺のパーティーは70階層までは行っている。そこで金稼ぎをして億り人になっている」
「そ、そんなに稼いでいたのか……」
「どうやってそんな……」
園田以外のメンバーは信じられないって感じで俺のことを見るが、園田は資料を読むと、少なくとも自分が行ったことのある10階層のボスモンスターの情報は正確であることから信じることにしたらしい。
「僕は信じるよ」
「園田!」
「園田君!」
「皆、これは斎藤君なりの好意の印だ。それに同じクラスで生活していて嘘を付くような人物には思えない。彼は誠実な人だ」
そこまで園田は俺のことを評価していたとは……ちょっと意外だが、園田に死なれると困るため、ここは誠実に対応する。
「ありがとう斎藤。これで僕達は先に進むのを早めることができる」
「ああ、あと園田、宿ってどこに泊まっている?」
「リジェネの宿だけど……」
「リジェネの宿だな……覚えておくよ」
その後は俺の言える範囲……といってもダンジョンの内部の事が殆どで、あとは綾乃のことを少し話すくらいで、園田達の近況を聞いて、食事をして別れるのであった。
俺のことを園田の監視員の人達がじっと見ていたが、気にしないことにする。
俺は直ぐにダンジョンに向かい、100階層へと向かう。
「今の園田であれば何回死ぬか分からないからな……悪いけどバグ技を使わせてもらうぞ」
再び出現したエルキドゥ。
俺はクリエイティブモードでホワイトマンを複数体召喚して、エルキドゥを物量で追い込んでいく。
10分ほどエルキドゥは複数体のホワイトマンによるコピーされて、自身と同じステータスの敵に立ち向かったが、多勢に無勢……最終的にエルキドゥはホワイトマン達に串刺しにされて力尽きた。
エルキドゥが倒れると、そこに一際デカい宝箱が出現し、空けてみると伝説の剣に相応しい宝剣と魔法の杖に使われる触媒の宝玉が数個、伸縮する如意棒といった伝説の武器が幾つか入っていた。
俺はそれらを回収すると、奥の壁が無くなっている事に気がつく。
「行ってみるか……」
俺は奥の部屋に行くと、そこはダンジョンの中枢とも言える、ダンジョンの核だったり、ダンジョンの設計図と言える壁画かびっしり壁一面に描かれていた。
「なるほど……エルキドゥを倒すことがこの部屋が開く条件で、ここは実質異空間みたいなものだから、俺が壁抜けをしても見つからなかったのか……」
まぁ、今の俺は自由にダンジョンを作ることができるので、この設計図は要らないのであるが……。
「参考になる部分はあったし、台座に日本に戻る際に警告するような文を刻んだ人物と、このダンジョンを造った人物は別人っていうのが分かった。というより警告文を書いた人物って一度パラレルワールドの日本に行ってからこの世界に戻ってきた俺みたいな人物だから……ヤバいな」
少なくともこのダンジョンを造った人とは別人だろう。
部屋の隅にダンジョン製作者の日記と思われる物が落ちていて、ジパングを統治することになったが、産業が何も無いからダンジョンを作ることにしたってノリノリで書いている人物が台座に警告文を書くとは思わないからである。
「あれ? ダンジョン攻略も制作もできる俺ってやばいのかな?」
そんなことを考えながらも、俺はホワイトマンを回収してダンジョンを後にするのだった。
その日の夜、俺はローブを着込んで、園田の滞在する宿に乗り込んだ。
勿論クリエイティブモードの壁抜けを使って。
俺は園田が滞在している部屋に到着すると、静かに園田を起こす。
「園田、園田」
「んん……だ、だれ!?」
俺は手で園田の口を塞ぎ、右人差し指を口に当ててシーっと静かにするように伝える。
そしてローブを捲り、俺の顔を出す。
「斎藤!? なんでここに?」
「今の状態だと園田はダンジョンで死ぬと思ってな……これを渡しておく」
俺は床に100階層から持ってきた宝箱を置く。
「開けてみろ」
園田は恐る恐る開けてみると、中に宝剣だったり色々な武器が入っていることを確認した。
手に持つと力が湧いてくるって言っている。
「100階層から取ってきた」
「斎藤……君は一体……」
「詮索はしないでくれると嬉しい。ダンジョンの70階層のボスモンスターなんかは100階層のボスよりも手強かったりするから、実力を上げるだけならボスモンスターとは戦わないほうが良い。その武器を仲間達にも装備させてやれば大抵のモンスターには勝てるようになる。魔王軍でも70階層クラスのモンスターを楽に倒せるようであれば、雑魚の魔王軍には苦戦しないと思うから」
「なんでそこまでしてくれるんだ?」
「訳あって、俺と綾乃……藤原はこの世界に永住しなければならなくなった。だから勇者の園田には魔王を討伐してもらいたいんだ」
「……深く詮索はしない方がいいんだよね?」
「ああ」
「分かった。こっちとしては滅茶苦茶助かる。ちなみに100階層のボスモンスターはどれぐらい強いんだ?」
「今の園田だと絶対に勝てない。魔王がそれ以上に強いとすると、100階層のボスモンスターには勝たなければならないけど……それ以外のボスモンスター……特に70階層のボスモンスターは殺しに掛かってくるから、入らないほうが良い」
「分かった。忠告として受け入れるよ」
「頼むぞ園田」
俺は床をすり抜けて居なくなるのであった。
「ふう、俺からできる園田への支援はこれぐらいかな? ……勝ってくれよ園田」
八の島に戻った俺は自宅で綾乃に園田と出会ったことを話し。
「園田君、私が妊娠してるってことを知ったら驚くかな?」
「驚くだろうな……」
そんな会話をするのだった。