クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「やっぱり日本の米って凄いんだな……」
ヤシマ王国の米も日本と同じく短粒米……うるち米に近い米が育てられていたが、やっぱりゲノム解析や品種改良を繰り返している日本の米に比べると、異世界の米は一段落ちると同条件で育てた上で食べ比べてみて思った。
異世界の人達の舌でも日本米は美味しく感じていて、好評だった。
「ただ収穫量的には日本米よりも異世界の米の方が多いんだよな。これを両方の良いところを組み合わせることができれば」
米だけでなく、やっぱり異世界の作物は遺伝子プールが違うのか、日本で育てられている作物と同種であっても、味や食感、植生、収穫量、病気の強さ、倒れにくさとかが色々違う。
一番違いが分かりやすいのは小麦だろう。
パラレルワールドの日本……というか米国でも緑の革命と呼ばれる米や小麦の国家ぐるみでの品種改良や栽培の改革が行われていて、日本由来の小麦が世界中に広まって、小麦の背丈が半分以下になっていたのだが、異世界の小麦は背丈が高い。
どれぐらい高いかと言われると、普通に成人男性の背丈を超えるくらいの位置に穂が実る。
これを品種改良で腰当たりまでしか伸びないようにして、コンバインで収穫しやすくしたのが現代の小麦だ。
なので異世界の小麦だけでなく、大麦、ライ麦とかの麦系(ライ麦は正確には麦系ではないが……)は皆高く伸びていた。
俺は真っ先にこれを品種改良を施して、小麦や大麦、ライ麦の背丈を米と同じくらいの高さに調整。
将来的に導入予定のコンバインこと収穫機を俺だけでなく、この世界の技師達が製造できるようになれば、大規模に投入したいとと思っていたのでその布石である。
あと背丈が低い方が風で穂が倒れる心配が無くなるのと、日光が満遍なく当たるので、成長不順が起こりにくくなる。
茎を伸ばす分、穂に栄養が向かうので、味も収穫量も上がると人間にとってはいいことづくめでだ。
(品種改良の能力のお陰で、時間がかかる作物の改良が1ヶ月単位で終わる。日本の優れた品質の作物は結構F1種が混ざっているけど、そのプロテクトの破壊もこの能力ならできる)
F1種というのは、農作物が1世代しか最高の状態で収穫できないように劣等因子を意図的に組み込んだ作物のことで、通常の作物の様に、世代が変わっても味や収穫量が落ちないのが普通だが、F1種は劣等因子を組み込んでいるので、世代が進めば進むほど味や収穫量が落ちるのである。
種を製造している穀物メーカーが継続的に種を売るための仕組みであるが、現代の様に穀物メーカーが安定供給できるならまだしも、この異世界は技術水準は比較的高いけど、大量生産技術が現代に比べると大幅に遅れているため、F1種を作ること自体が生産性を落とすことに繋がってしまう。
日本の業務用スーパーで売られている作物は大抵F1種なので、一度このプロテクト(劣等因子)を破壊するところから品種改良は始まる。
それでも日本の作物の品質は世界水準でも高いため、この世界の作物と組み合わせることで、大幅に味も収穫量も多くすることができるだろう。
というか今年2回目の収穫では、現に改良が進んで作物が大きく実ったり、稲穂が多く実ったりと着実に進歩が見られた。
穀物の生産が安定する3回目の収穫が終わればそろそろスライム以外の家畜……特に鶏とかを飼うことを始めていいかもしれない。
「鶏を飼育していた経験がある人物をエリーゼに集めてもらったり、安定してひよこを孵化させるための孵化器を作ったり、鶏小屋(大型)の建築もしなければか……やることがとにかく多いな!」
俺は気合いを入れて活動を続けるのであった。
一の島にダンジョンを作って1ヶ月が経過した。
俺は八の島で相変わらず農地を広げたり、用水路を敷設したりと頑張っているが、一の島の王族や冒険者のギルド職員も頑張ったらしい。
ダンジョンの内部がこの1ヶ月で50階層までは地図の共有だったり、内部構造の解析が進み、1億ベルクの稼ぎをする者が現れ始めていた。
まぁ1億ベルクは1000万シルクなので、ジパングの億り人に比べると、10分の1の稼ぎではあるが、即死トラップが無い事、モンスターの湧きがジパングのダンジョンより良い事、ダンジョン内の光るコケの発光量が高いため、ジパングのダンジョンよりも中が明るくモンスターの奇襲に対処しやすかったりとジパングダンジョンで不便だった部分が大幅に改善されていた。
あとは兵士が定期的に見回りをすることも実施して、悪質な冒険者狩りをするような奴が出てこないように注意したり、25階層と50階層に兵士の詰所とセーフティエリア(キャンプを張れるエリア)を作り出したことで、休憩をしっかり取ったり、割高ではあるが、暖かい食事を取ることができるので、格段にダンジョン探索がやりやすくなっていると好評であった。
それでジパングより稼ぎは悪いとはいえ、そこそこの金持ちになれるくらいには安全に稼げるとなれば、世界中から集まっていた一流半……大多数がシルバーランクの冒険者からすれば夢の様なダンジョンであり、ジパングを知っている冒険者からも一の島のダンジョンのほうが長く稼ぐことができるとのこと。
死ににくく、キャンプがしっかりしている、兵士が見回りをしていて治安が良いということで、気に入ってダンジョンで稼いだ金で、ダンジョンの近くに物件を建てて定住をする冒険者が相次いだ。
人口が大幅に減っていたヤシマ王国からすれば、現代で言う外国人労働者みたいな存在であるが、難民よりは遥かに扱いやすいし、シルバーランクの冒険者が多いので、最低限のモラルは持っている連中である。
それ故にヤシマ王族が狙っていた様に、復興予算を稼ぐ重要産業に僅か1ヶ月で指定されるくらい大きな影響になっていた。
(ダンジョンから出てくるモンスターの傾向とか! モンスターの出てこないエリアを広げてほしいとか湧き水が出るスポットの追加とか色々要望があったけど……なるほどなぁ……兵士を巡回出来るようにして、ダンジョン内の治安を維持するとは考えたな)
ジパングのダンジョンでは俺がであったバトラーの元雇い主の様に悪い奴らが一定数いたが、冒険者同士で解決することを求められて、悪質で自白がない限り行政側も動くことができなかったのを比べると、即死トラップが無いことと詰所が設置されたことで、甲冑を着込んだ兵士が滞在できるのは治安維持の観点から大きい。
なんなら25階層と50階層の広いセーフティエリアにダンジョンの素材を買い取る場所を今後作るらしいので、多少は買い叩かれるが、換金をそこでしてしまうことで、帰りに重い素材を持ち運ぶ事なく冒険者は帰れる。
俺みたいに異空間に収納できる能力持ちがアイテムボックスで素材を圧縮してから兵士に守られながら集団で地上に運ぶことで、素材回収率も上げられると、ジパングのダンジョンで足りてない部分を徹底的に改善していた。
ダンジョンが作れるって教えて、数日でここまでダンジョンの改善案を出せるヤシマ王国の役人がすげぇわ。
それを聞いて、俺も八の島に作るダンジョンの改善案を思いつくし、とてもありがたい。
そんな話が一の島から聞こえてくるが、俺の方はと言うと……
「サイトウさん、うちとアカリとバトラーの3人で付き合うことにしました」
「サイトウさん……女って凄いですね……」
アオイとアカリがバトラーとおねショタを決めて捕食したらしく、バトラーは2人と付き合うことになった。
「おめでとうバトラー……よかったな可愛い嫁さんができて」
「はい、それもこれもサイトウさんが僕の金玉を直してくれたお陰で……あと聞きたいんですけど、もし超人のアオイと鬼の僕が子供を作ったら、どっちの種族が生まれてくるんですかね?」
「うーん、魔人で繁殖は試してないからなぁ……なんとも……」
俺の能力を使っての繁殖は母親の種族が優先されるのであるが、自然繁殖の場合はどうなるかわからない。
というより俺的にはアオイとアカリにナイスって言葉を送りたい。
バトラーの好感度的に俺に抱かれたいとかトチ狂ったことを言い出すんじゃないかって……。
一緒に風呂を入りたいとか度々俺と綾乃の家に訪ねてきて、食事を共にしたりすることがあったので、若干恐怖を覚えていた。
これでバトラーも俺にではなく、アオイとアカリの2人との時間を優先するだろう。
というか……してくれ(願望)。
「いやーでも目出度いね。3人共がそういう関係になったのは喜ばしいよ」
「ありがとうございます!」
アカリは満面の笑みを浮かべながら俺の賛辞を受け取っていた。
「そう言えばホノカ亭は結局宿として再開するのか? まだ宿に泊まりに来る人は少ないだろうけど」
「ミンナやマリーといった今住んでいる人達がちゃんと住める場所が決まって、八の島にダンジョンができて、冒険者が泊まる場所に困るようになったら再開しようかなってお姉ちゃんと話していて……」
基本アカリが宿のことを回して、アオイとバトラーはダンジョンで稼いだり、ホノカ亭の裏に広がる畑で野菜を作ったりしながら、生活していこうかなって考えているらしい。
(3人の方が俺よりスローライフできてねぇか?)
そんなことを俺は思ってしまうのだった。