クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
幽霊達が話し合いを始めた頃を見計らって、東條が俺に小声で聞いてきた。
「でもこれって悪い人とかも異世界に呼び寄せてしまうんじゃないかしら?」
「確かに、強い力を持つことで傲慢になってしまったりするかもしれないが……そこは仕方がないと割り切るし、東條を連れてきたのは悪い人物を弾くためでもある」
「弾くため? そんな能力は私ないけど」
「いや、そこは直感で選んでくれて構わない。というか東條の直感がこの場では一番信用できるから」
レアリティアップにより東條のラックは700に迫るほどあるので、直感で選んでくれればなんとなく上手くいくと思われる。
というかそうじゃなかったら冬の寒い夜にわざわざ東條を墓地まで来させないし……。
幽霊達に一応こっちにも審査基準があるからと言っておく。
そうすると家族っぽい幽霊がやって来た。
「私達家族で異世界に連れて行ってもらうことはできませんか……交通事故に巻き込まれて家族全員親族に供養はしてもらったのですが……娘と息子が7歳と5歳で何もわかってないのに未練で幽霊として一家が現世に残り続けているのは忍びなくて……異世界でもやり直せるのであれば娘と息子だけでも連れて行ってあげてはくれないですか? お願いします」
「大丈夫です。家族全員連れていきますから……気持ちを楽に、俺に身を寄せる感じで」
俺は子供の幽霊から順に捕獲をしていく。
他の幽霊達は成仏したんかと騒いでいたが、生き返りたいと未練が強い人から集まってくる。
近隣の火災に巻き込まれて亡くなった人、若くして病気で亡くなった人、過労でぶっ倒れて亡くなった人、孤独死したが、生き返って今度こそ幸せな家庭を作りたい人、亡くなって夫婦一緒に墓に入っているけど、どうしても未練がましく地上に残っていた人……生き返りたい、異世界に生きたい人はそれぞれ。
東條に確認をしながら、直感的に嫌な感じがする人には、東條が俺の背中をトントンと指で突いて、残念ながら連れていけないと説明する。
大抵そういうやつはヒステリックを起こすので、天国に供養することはできますがと教えると、天国に行けるならって納得する。
まぁ山本にそういうやつは裁きの礫を当ててもらって消滅させるのであるが……。
そんな感じで、予定では30人程度にするつもりが、80人も良さげな人や意欲がある人が集まったので、この墓地でのスカウト活動はこれにて終了。
墓地を出て、適当な場所で東條と山本も捕獲状態にして異世界に戻る。
そして翌日に連れてきた幽霊達も合成して蘇生を試みるのであった。
「さてと」
俺は集めた幽霊を1人1人ステータスや異世界に来たことによる能力を確認していく。
「凄い強力なのは居ないけど、あれば便利そうな能力持ちが結構居るな」
例えばモンスターテイマー。
たぶん俺の技の捕まえるをモンスターだけ効く様にした能力で、何体使役できるか分からないけど、牧場系やダンジョンで活用できそうな能力だった。
他にはどこでもキッチンという、異空間からキッチンを出して調理をすることができる能力だったり、食べた人の体の不調部位を治癒する料理を作ることができる能力。
地脈を読んで地下の鉱脈を探し当てる能力や、異空間に収納する能力だったり様々。
「さてと、どのモンスターと合成することにしようか」
ゴーストをエルダーリッチにしてからっていう方法は1人2人ならゴーストを集められるが、実体が無いため、スポナーも生み出すことができないし、繁殖も不可能なのでゴーストをエルダーリッチにしてから肉体を与える……というのは不可能であるが。
「ダンジョンの100階層でちょうどいいモンスターを手に入れたからなぁ」
俺は幽霊達の肉体にエルキドゥを使うつもりでいた。
エルキドゥの繁殖及び個体数を増やすのは上手くいっており、一応エルキドゥにも性別があるので、男女別にゴーストの性別に合わせて合成をすればどうなるか……少々楽しみである。
「一応名付けを再度行っておくか……えっと副島隼人さん、菅原ゆずりさん、遠藤歩さん、寺門北斗さん……」
俺は連れてきた80人に名前を再度付けていくと、その人達に合成を始める。
「さてどうなるか……」
合成を完了すると、俺は合成した人物の種族を確認しながら、図鑑を脳内で開く。
(新人類……か。凄い種族だな)
天使とか超人とか色々濃いのが出てきていたので、ここで出てくる種族が新人類っていうのは普通に驚いた。
新人類……エルキドゥと人間、ゴースト、人間の死体のどれかを混ぜると生まれる種族。
泥人形から生まれたエルキドゥと泥から生まれたアダムの逸話を掛け合わせている。
普通の人類に比べると少し寿命が長く、ステータスの能力はおおよそ平均10倍。
子供が生まれる時は普通の人族と新人類が交わると、新人類の子供が生まれる。
HP 2000〜15000
MP 2000〜15000
パワー 2000〜15000
ガード 2000〜15000
マジック 2000〜15000
スピード 2000〜15000
ラック 30〜90
うーん強い。
最低ステータスでも2000は超えていることが確定か。
人類側の普通が、1000超えていれば一流だから、このステータスだとエグいことになるな。
まぁせっかくだしレアリティアップも1段階か2段階して、ラックとかを上げておこう。
若く亡くなった人ってラック絶対低いし……。
「レベルアップは……様子を見てからすれば良いか。このステータスなら必要ないかもしれないからなぁ……レアリティアップはしなくても、レベルアップでラックだけランク上げておけば良いか」
俺はそんなことを考えながら、連れてきた幽霊達を新人類に合成進化及び蘇生していくのであった。
「んん……」
俺の名前は伊達尊(ダテ・タケル)……前世はトラックの運転手をしていたんだが、小さい会社だったから休日出勤が当たり前で、そのストレスで暴飲暴食をしていたら、30歳で頭の血管がぷっつり逝って、部屋で誰にも助けを呼べずに、社宅でそのまま息を引き取って、親族に供養されて、地元の霊園で幽霊として過ごしていた。
ぽっくり死んだから成仏できるもんだと思っていたが、未練がましく、幽霊になってまで、墓地周りで徘徊しているのはなんとも情けない。
両親も亡くなっていて、先に成仏していたから会えなかったし、一人息子の俺が早死にしたもんだから、親父の家系は俺で断絶。
本当に申し訳ないことをしたと思うわ……。
でもなんか若い3人の人達が俺達を異世界で蘇生してくれるって話をされて、悩んだ末に飛びついた。
結果俺は生き返って、床に足が付く感触だったり、体を触ってしっかりとした肌触りで体温を感じることができた。
「おお、すげぇ……本当に生き返ってる……でもなんか肌質というか背丈が小さい様な……」
俺が周りを見てみると、そこには素っ裸の15歳前後の少年達が並んでいた。
「えっと遠藤さんか?」
「えっと……伊達さんかい?」
幽霊になってお互いに毎日顔を合わせていたメンバーなので、なんとなく顔の感じで特徴を掴んで、聞いてみると合っていた。
俺が声を掛けた遠藤さんは70過ぎで体質的に子供が出来なかったのが心残りで、夫婦で成仏出来なかった可哀想な人だけど……幽霊の時も相応の老人だったが、今じゃ筋肉質な好青年じゃないか。
「生き返るだけでなく若返らせてくれるとは……」
「遠藤さん、俺も若返ってますか」
「ああ、10代中盤の中高生くらいにしか見えないよ」
20人ほどの男達が集まっていたが、俺達を生き返らせてくれた男である斎藤が話始めた。
「えー、捕獲されたことにより俺の名前くらいはわかると思うけど、斎藤だ。皆さんを異世界に連れてきて、今さっき蘇生した。年齢が没年の頃と違うのは蘇生するために使ったモンスターの肉体が若かったことに由来するから気にしないでくれ」
「どんなモンスターを使ったんだ? というかモンスターって?」
「その前に服を着てもらっても良いか? 用意しているから」
俺達は用意された服を着用すると、斎藤が詳しく説明を始めた。
ステータスオープンと叫ぶとステータスが表示されること。
この世界の住民の平均ステータスは500前後、高い人でも数千であること。
仮住まいの住居は提供すること。
魔王軍との戦闘で、島民の人口が激減しており、数ヶ月から1年は食料の配給制が続くということ……。
「仕事に関しては、それぞれ得意分野があると思うから、与えられた能力もしくは経験から今島内で不足している職業に就いてもらう。お金も10万ベルク……日本円にして10万円を支給する」
住居の他にも最低限の衣服と配給される食料の受け取りについての説明や各種職業についての説明が行われていく。
「あの、なんで俺達20名が真っ先に蘇生さろたのでしょうか?」
「いや、蘇生自体は全員完了しているけど、蘇生直後で衣服を身に着けているわけじゃないから、着替えられるように男女別にしたのと、色々質問とかがあるだろうから20名ずつにしただけだ。じゃぁ質問タイム。答えられる範囲で答えよう」
俺達を蘇生した理由や異世界とはどんな世界なのか、魔法とは、与えられた能力とは……色々聞くが、とりあえず一通り聞いた後に、俺達は役場へと案内されて、元々行なっていた職業についてや得意なこと、趣味、そして与えられた能力について色々聞かれた。
学歴に関しては聞かれなかったけど。
「職業に関しては後で就けるものをリストでお渡しします。ではお腹が空いていると思うので、食事をお楽しみください」
そう言われて、宿っぽい場所の食堂に移動すると、髪色鮮やかな娘さんと角が生えた少年が働いていて、ご飯にみそ汁、そして唐揚げの定食が出された。
死んでから5年以上ぶりの温かい食事に俺達蘇生した人達は美味しさに涙を流して喜ぶのであった。