クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「お! お! おお!」
案内された住居だけど、想像していたのより過ごしやすそう。
確かにテレビやラジオ、パソコン、スマホといった家電製品が無いのは少し寂しいけど、金を稼いでいけば日本の漫画とか雑誌を取り寄せることができるって聞いているから、後々調達すれば良い。
「シャワールームにトイレ、キッチンか。せっかくだし自炊の勉強もしてみれば良いか?」
ベッドはふかふかで寝心地がよさそうだ。
部屋の広さはリビングダイニングを別として10畳ほどの部屋が2部屋。
両方個室になっている。
するとピンポーンとチャイムが鳴った。
「はーい」
俺が出ていくと、赤毛で顔に褐色肌の、今の俺と同じくらいの年齢の少女が立っていた。
「初めまして! 英雄様……サイトウ様から連れられて異世界から来られた方ですよね!」
「あ、あぁ」
「申し遅れました! 私、異世界から来た方々の生活を慣れてもらうために一緒に生活することになるリリンです! 何卒よろしくお願いします」
「お、おう……俺は伊達だ」
「ダテさんですね! 今日からよろしくお願いします!」
部屋に入ってきたリリンという少女。
女っ気の無い職場で働いてきたので、どう対応すれば良いか分からないけど、とりあえず常識的な部分や給料は発生するのかなどを聞いてみると、
「お給料は後ほど纒めて支払われる予定です。えっとメイドと同じ感じで働けば良いって言われているので、掃除、洗濯、料理は任せてください。その代わりダテさんはしっかり働いてくださいね!」
バチンとウインクされたが、若い子の可愛いウインクは凶悪だな。
他の家にも同じ感じで派遣されているのか聞くと、教会で育てられた孤児の年長者が中心に派遣されているとのこと。
「異世界から来て不安かと思いますが、何卒よろしくお願いします!」
可愛い女の子と共同生活できるのでもおじさんにとってはご褒美なのに、頼られたら頑張るしかない。
彼女がアイテムボックスという、色々な物が沢山入る軽い箱(アリス製)から食材を出して、料理を作ってくれた。
詳しく聞くと、魔王軍の侵攻で壊滅的な被害から復興途中なのは斎藤からも聞いたが、職業が農家か漁師が殆どで、他の職業の人がとにかく少ないらしい。
(俺はどんな職業に割り振られるのやら……)
「ダテさんの能力ってどんなのですか? 異世界から人って色々能力を持っていると聞くのですが」
「俺は……物を異空間に収納する能力だな。アイテムボックスって道具があるならそんなに有用な能力じゃないか?」
「いえいえ、たぶん輸送業に配属されると思いますよ! アイテムボックスも軽いとはいえ、纒めて運ぶとかさばるので、収納能力を持っているなら色々な運搬に引っ張りだこです! 当たりの能力ですよ!」
「そ、そうか?」
前世の職業が関係しているのか、異世界でも運送業をやる感じかもしれないな。
翌日、事前に8時頃に集まるように言われていた、指定された場所に向かうと、子供の転生者を除いて、約65人の大人……まぁ全員15歳前後の姿の少年少女達が集まり、役人から職業を割り振られていく。
何かを作っていた経験や能力がある人は職人や料理人。
事務職で働いていた人や適性がある人は役場職員や東條という女性が担っている日本と異世界の物資やりとりの補助。
営業職をしていた人は交易船に乗り込んでこの世界の交易についての勉強。
農業や畜産、剪定(街路樹の伐採とかをする人)の人々は即戦力として、自前の牧場、農場を用意されて、経営を任せられていた。
俺や他5人くらいが収納能力持ちだったりして、輸送業に割り振られて、各自に軽トラックが支給された。
「ナンバープレート無いけど、異世界に似つかない軽トラックだ……」
「皆さんにはこの軽トラックに補助者と一緒に作業をしてもらいます」
「補助者?」
役人は困った顔をしていたので山本という男が説明を変わると、
「この島では車を作れる施設や能力がある人はいるんだけど、車を運転できる人はごくごく僅かで、皆さんは運転経験が豊富だから、助手席に荷下ろしや積み込みを手伝ってくれる若い子を付けるので、その子たちにも運転の仕方を仕込んでほしいんですよ」
「ああ、なるほど」
つまり輸送業しながら運転教官の真似をしろってことか……できるか不安だな……。
「ちなみに助手席に乗っている人は治癒魔法が使える者を選抜しているので、皆さんは彼らから魔法を習ってください。この世界の住民は日本人より頑丈ですが、車と衝突したら怪我するので、治癒魔法を使えれば死亡事故は減らせるので」
「なるほど……」
色々説明されたが、補助者に魔法を教えてもらいながら、こっちは運転技術を教えればいいってことか。
「給料はどうなるんだ?」
「とりあえずこの島のお金であるベルクを月に10万と日本円を5万ほど支給します。とりあえずそれで半年仕事をお願いします。半年経過したらこの島の経済も回り始めるので、絶対給料を上げることを約束します」
とのこと。
配給制をしている非常時だから文句は言えないか。
他にも燃料はどうなっているとか、日本と同じ交通ルールでいいのかなどを確認し、俺は軽トラックを受領するのだった。
仕事が始まって3週間……俺が思ったよりも仕事は楽だ。
まず俺が輸送するのは、ゲームでしか見たことがなかったメタルスライムが大量にいる牧場で産出される鉄のインゴットが入ったアイテムボックスを異空間に収納し、そのまま近くの農家の収穫物の入ったアイテムボックスを回収。
それを町に届けて、町からは肥料の入ったアイテムボックスを農家に届けるだけでいい。
アイテムボックスって言っても、段ボールくらいの大きさの四角い箱だし、ご丁寧に横に持ち手がついている。
何より内容面積以内ならどれだけ詰め込んでも1キロ未満の軽さなので、トラックで重い荷物を運び続けていた俺にとっては楽で仕方がない。
運ぶ量も1日でアイテムボックス50個から100個以内なので、早い日には午前中に運び終えてしまう。
「ダテさん! 今日も作業おわりましたね! お昼ご飯にしましょうよ!」
「そうだな!」
俺に付けられた少年のジョニーというこの島の人特有の褐色肌をした銀髪の子を横に乗せて仕事をしている。
よく働くし、物覚えが良いので、午後の空いた時間は、俺が助手席に乗って、ジョニーに運転の練習を教えているが、初心者にしてはなかなか上手。
そんな俺とジョニーの楽しみは昼飯に俺と同じく転生者の店に行くことである。
「よぉ遠藤の大将やってるかい!」
「伊達さん! 今日も来たのか! 今日はジョニー君と一緒か!」
「こんにちはエンドウ大将!」
「こんにちはジョニー君」
遠藤さんは無事奥さんと一緒に転生できて、元々寿司の職人だったからこの世界でも寿司屋を開いたらしい。
この世界特有の魚でも美味しい寿司はできると、1週間ほど具の研究をした後に、漁師と契約したり、鮮度を保つための冷凍庫や冷蔵庫をこの世界に呼んだ斎藤にお願いして作ってもらったり、寄生虫予防などできる限りのことをして、寿司屋をオープンさせた。
この世界の人からは最初生で食べるのはどうなのかと思われていたらしいが、この島の英雄である斎藤夫婦がほぼ毎日通ったことで、噂が広まり、十分に経営できるだけの稼ぎをすることができるらしい。
島民は色々な魚を店に持ってきて、これで寿司を作ってくれって言われるので試されているみたいで楽しくて仕方がないとのこと。
というかまた寿司が握れるし、老化で震えで上手くさばけなくなった廃業した未練もあったらしいが、若い身体だから、熟練の技が若い身体でやれるのが楽しいらしい。
墓で奥さんとぼーっとしていた遠藤さんがここまでかっこよく仕事している姿を見ると、なんか他人なのに涙がこみ上げてくる。
「伊達さん、今日は少し前に斎藤さんが来てな、ノルウェー産のサーモンを数尾卸してくれたから、今日はサーモン尽くしができるけどどうする?」
「じゃぁサーモン尽くしを10貫、ジョニーも同じでいいか?」
「あとかっぱ巻きください!」
「あいよ!」
「ジョニーはかっぱ巻き好きだな〜」
「似た料理を家族が生きていた頃食べていたんです」
「そうか……」
これ以上は言わなかったが、俺は久しぶりに食べるサーモンの寿司をわさび醤油に付けて食べると……サーモンの油の旨さとわさび醤油で口の中が幸せで溢れる。
「あぁ! これよ! これこれ! 最高」
「他にはアゴナシとかエレキスズキとかあるけど握ろうか?」
「お願いします」
「あいよー」
昼休憩は大抵転生者がやっている店に行く。
と言ってもやってる店は遠藤さんの寿司屋に天ぷらとうどんが食べられるお店、ラーメン屋(まだ醤油、みそ、塩のシンプルのしか無い)、焼肉屋(肉屋ど併設されていて、現状島で唯一腹一杯肉が食べられるお店)、蕎麦屋の5店しか無いけど、それぞれ店主も良い人で、島民で賑わっていた。
「今の給料だと貯金に回せる金額は少ないけど、リリンに好きな服を買ってやれるくらいには稼ぎたいな〜」
ちなみにそんな俺と一緒に住んでいるリリンの趣味は日本の漫画の回し読みで、互いに意見を言い合って楽しんでいた。