クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
15日後、俺は再びジパングに行くと、スズナリがちゃんと待っていてくれていた。
「待たせたな」
「いや、さっき移動希望を出したメンバーが集まったところだ」
スズナリが集めたメンバーは旬の過ぎた受付嬢だったり、閑職に追いやられていた人達だったり……合計10人ほど。
こっちの冒険者ギルドの長に挨拶をした方が良いか聞いたら、引き抜き事案なのでめっちゃ怒っていたから挨拶は不要とのこと。
「というか俺達は事実上退職をしたことになるから……それで? どうやってジパングからヤシマ王国に移動するんだ?」
「勿論速攻移動するけど……ちょっと皆をテイムさせてくれ」
「テイム?」
俺はそう言うと、集まっているギルド職員達を捕獲状態にしていく。
全員捕まえた後に、俺は職員が持っていたアイテムボックスを回収して、ヤシマ王国に繋がっている転移クリスタル経由でジパングから離れるのであった。
ちなみに、俺は素材や食料を買うために時々ジパングに行くことは続けたが、年月が経過する事に活気が少しずつ失われていった。
勿論ダンジョン国家として一定の権威はあったものの、利益が減少したことでゲルマ王国の介入が止められなくなり、属国から自治領へと格下げとなり、迷宮都市ジパングとして再出発することになる。
迷宮都市になってからのほうが、行政の腐敗も一掃されて、風通しがよくなったのは皮肉かもしれないが……。
俺がギルド職員を引き抜きした時、勇者の園田達はダンジョンの70階層辺りで足踏みしており、毎日変わる不思議のダンジョン形式の71階層から下が難しいらしく、100階層到達はまだ先になりそうだとスズナリから後々聞くことになるのだった。
「ここがヤシマ王国」
「おお、海がこんな近くにある!」
「転移の装置があんなところにあるなんて……」
ヤシマ王国に到着したギルド職員達を俺は捕獲状態を解除し、あと逃がすも行なって外に出す。
彼ら彼女らには、最初に島長であるエリーゼの元に挨拶してもらう。
「よく来てくれた。職員の方々! 歓迎するぞ!」
エリーゼもご機嫌で、冒険者ギルド職員のスズナリ達を歓迎する。
エリーゼは現状の島についてと、ヤシマ王国の状態、あと一の島との密約で八の島に作るダンジョンの規模は一の島のに比べると小さくするなど色々話していく。
「ダンジョンは半年後くらいを目処に建設予定で、今一の島の冒険者ギルドに職員見習いを十数名派遣しているから、その者達が帰ってきた頃合いにダンジョンを建設して始動しようと思っている」
「わかりました。その間ギルドは準備期間として捉えますけどよろしいでしょうか」
「うむ、期待しておるぞ」
冒険者ギルドとして予定していた建物はエリーゼ達が行政機関として使っているので、スズナリ達を呼ぶ前に別の場所に冒険者ギルド予定の建物を建てていた。
内装は至ってシンプル。
受付と掲示板がある場所、酒場として提供するスペース、ギルド幹部が仕事をする2階エリア、職員の休憩室や酒場で提供する料理を作るエリア、倉庫、離れに冒険者のダンジョンの素材を買い取りする場所が作られた。
それを見たスズナリ含めた職員達は、
「冒険者ギルドの鉄板みたいな建物だな……ここを職場にしてもいいのか?」
「ああ、使ってくれ」
その後、冒険者ギルド近くにある空き家に彼らを案内して、住む場所を決めてもらう。
「結構広いな」
「そりゃあジパングの町割りがしっかりしてるところに比べればな。土地余りしているし」
「お金は使えるか?」
「ジパングのシルクは使えないから役場で両替してベルクと両替してくれ。1シルク=10ベルク。今島では配給制が敷かれているけど、徐々に買えるものが増えているから、不便は無いと思うが」
「配給の品は俺達も貰えるのか?」
「勿論。これが配給の品一覧だ」
だいたい肉以外の食品と生活雑貨が殆どである。
「確かに、頑張れば配給品だけでも食っていけそうだな」
「これでも初期に比べると改善したんだけどな」
その後、回収していたアイテムボックスを彼らに渡し、引っ越し作業の手伝いを終えて、俺は滞っている別の仕事をするために移動するのであった。
「サイトウさん〜」
ある日バトラーが俺に泣きついてきた。
理由を聞くとアオイとアカリの2人がバトラーを毎晩搾り取っているらしい。
ちなみに勝率はバトラーの全勝らしいが、毎日10回戦以上ベッドの上で戦うので、疲れるとのこと。
「フジワラさんが子供を産んだのを見て、アオイとアカリの2人も自分達も子供が欲しいって気持ちが強くなったらしくて……毎晩搾り取られるんですけど」
「何だ惚気か? よかったじゃんか」
「いや、楽しいは楽しいんですけど、サイトウさんと話す時間とかが減って少し寂しいです」
「家庭を持つってそういうことじゃないか? 嫁さん優先してあげないといけないし」
「それはそうなんでしょうけど……」
バトラーも色々あって早熟気味ではあるが、まだ14歳。
日本の年齢換算だと13歳で中学1年くらいである。
まだ遊びたい盛りでもあるので、家庭どうこうよりは同性で兄の様に慕っている俺との時間を大切にしたい気持ちも分からなくはない。
(とはいえ、俺もやらないといけないことは沢山あるんだよなぁ……)
冬の間に農地を更に広げておきたいし、鶏や牛、豚の飼育施設の建設、街道の整備だったり、モンスターが湧き出てこないようにシンボルの設置、第二の町の建設予定地の整地など……やることは多い。
(かと言ってバトラーの不満を溜め込ませるのも悪いからなぁ……どうしたものか……あ、そう言えば)
「バトラー、気分転換として、島に沸き始めているモンスターの捕獲をてつだってくれないか? まぁ実質散歩みたいなものだけど」
「良いんですか! お供します!」
というわけで、俺はクリエイティブモードになって低空を浮遊しながら、バトラーは俺の横走って、八の島の探索に行くのだった。
「全く……なんで幹部の私がこんな僻地の戦線に……」
魔王軍では60万体以上の兵士を動員して行われたヤシマ王国攻略の失敗を受けて、責任者だった私……高貴な悪魔であるビアトリスの立場は揺らいでいた。
(侵攻は順調に行われていたはず……それがある日を境にばったり反応が消えるなんて……魔王様が恐れている勇者がこの地に来たとでもいうの?)
分からないが、魔王様よりヤシマ王国に向かい、情報を探ってくるように言われたのも事実。
私はヤシマ王国の八の島と言う島に降り立つと、魔王軍の反応は無いのに、人間の反応があることには気がつく。
(やはり、魔王軍は消滅しているようね……でもこの人数の人族であるなら、私の判断で消し炭にしてあげましてよ)
そんなことを考えていると、勢いよく近づく存在が。
「サイトウさん、誰か居ますよ?」
「本当だ……青紫色の肌……魔人族か?」
「あら、魔人族なんかと一緒にしないでくださらないかしら。私は魔王軍幹部上位悪魔のビアトリスですわ!」
魔王軍という言葉を聞いて警戒を始める人族であるが、もう遅い。
私の攻撃は始まってましてよ。
「スパーク」
とりあえず情報を聞き出さなければならないので、1人は殺して、もう1人はゆっくりと痛めつけることにしましょう。
少年っぽい子は結構好みの顔ですから奴隷として飼ってあげてもいいかもしれませんね。
「いきなり攻撃とは、魔王軍幹部は品が無いな」
「なに?」
男に魔法はすり抜けて、後ろの木々に直撃する。
「交わされた?」
「バトラー、援護するから、この悪魔を捕まえるの手伝ってくれ」
「はい!」
(なんなんですの!?)
すると私の懐に一瞬で距離を詰めた少年のパンチが私のみぞおちを直撃する。
「かは!?」
(人族のパンチかこれが? こいつが勇者か!)
空中で体勢を立て直して、着地する。
「ふふ、どうやらお前が勇者のようね?」
「勇者? 何を言っているんですか?」
「魔王軍幹部として危険はここで排除しておきますのよ! くらいなさい!」
煉獄の炎!
周辺を燃やし尽くす勢いで漆黒の炎の塊を放出する。
「これなら!」
「危ないなぁ……」
少年の姿は見えないが、もう1人の男は無傷で立っていた。
「なんで貴方はダメージを受けていないのよ!」
「いや、攻撃全般効かないし……バトラー出てきて大丈夫だよ」
男がそう言うと、私の背後にいきなり気配がして、背中をぶん殴られた。
(どこに隠れていたというの!? いや、どうやって避けた!?)
「サイトウさん、ありがとうございます。今捕獲率は」
「まだ3%試してるけど、もう少し弱らせないと」
「サイトウさんとの連携ならこの人にも勝てる気がします!」
(……どうやら勇者と思った少年よりも、あの空中に浮いている男が何かをしているっぽいわね……)
魔法を放ってみるが、当たらない。
近づいて近接攻撃をしてみても当たらない。
(実体がない! これは幻影……ということは本体は別の場所に!)
「ていりゃぁ!」
「うぐ!」
少年の蹴りが腹部に突き刺さって、地面に叩きつけられ、私は勢いよく落ちて、地面にクレーターが出来上がる。
「やるじゃないの……」
「うーん……バトラーどうする? 続ける?」
「なんか僕の攻撃だとあんまりダメージが入ってない感じがするので、時間掛かりそうですよ」
「そうだな……バトラーと散歩の予定だったのに……ちゃっちゃとケリつけるか?」
「ずいぶんと舐めているわね! 魔王軍幹部のビアトリス様の前で!」
しかし、私が吠えられたのもその瞬間までだった。
空中に浮いている男は空から1体のモンスターを召喚する。
周囲の空気が重くなるのを感じる。
「何……この……なに……プレッシャーは……」
まるで魔王様の前にいるかの如きプレッシャーを感じるのは、仮面を付けた人型の何か。
私が反応できない速度で鎖がとんできて、私の手足を切断する。
「うぎゃぁ!?」
こうなると私に今までのような余裕はない。
(嘘でしょ……こいつら勇者じゃないの? 何者なのよ……と、とにかく魔王様に情報を伝えな……)
私の意識はそこで刈り取られるのだった。