クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
俺が転生させた技術者の爺さん方(肉体は15、16歳くらい)は今日も元気にハッスルしていた。
「添島さん、今日も元気だな」
「おお、斎藤さんか! いやぁ、肩こりや腰痛が無い体というのは最高だね! 皆も生き生きとしているよ」
「前に機関車とかいう凄いの作ってましたけど、また皆で何か作っているんですか?」
俺が声をかけた添島さんは技術者達の中でもリーダー格の1人で、元々は会社経営にも携わっていた人物だ。
暴走気味な技術者達をそれなりにコントロールする役割を担っている。
「いやぁね、機関車が作れたってことは、蒸気機関で動く機械やある程度構造の簡単な動力は作れるんだよ。だからこの島で必要だとしたら自動織機とかなんじゃないかなって思ってね」
「おお、それはありがたいです」
糸から布にする工程で俺はそこまで知らなかったが、まず紡績機(糸紡ぎ機)で原料……この島の場合シルクスライムから採れる糸だったり、コットンスライムの毛糸玉を産業に使える糸に加工する。
次に職人の爺さん達曰く、強い糸や糸の質を高めるためには精紡機という機械を噛ませる必要があるらしく、俺の技では作れなかったので、紡績機の自動化と共に自動精紡機も作ったのとこと。
そしてその作った糸を布に加工するのが織機であり、手の空いた島民が1枚1枚織っていたが、それじゃあ時間がかかり過ぎるとして、職人の爺さん達は短期間で自動織機を作り出してしまったのである。
どれも動力に魔石を有し、1つの魔石で72時間連続稼働することができ、(勿論メンテナンスと人の就労時間の関係で72時間ぶっ通しで作業なんかしないが……)今までよりも質の高い布や糸を、今までの数十倍の量をごく僅かな労力で生産が可能となり、古代人のアリスをもってしても、魔法より魔法のようだと職人達を手放しで褒め称えた。
「でも添島さん含め、職人の皆さんのお陰で糸や布の生産量は大幅に伸びて、エリーゼも喜んでいたからな……で、技術者の連中が暇になったってことは、何か作ろうと企んでるんじゃ」
「酷いなぁ斎藤さんは……僕らがそんなことするように思える?」
「機関車作っておいてどの口が……」
実際に聞き出してみると、魔石の性質変化で、電気変換してから電波で飛ばすことができることがアリスとの解析で判明したらしく、これを使えばラジオが作れるんじゃないかと盛り上がっているらしい。
現在は日本(ひのもと)から実物のラジオを買ってきて、それを参考にしながら、魔石で動くように改造をしているとのこと。
将来的には一家に一台ラジオが普及すればいいなぁと職人達は思っているとのこと。
「いや、魔法っていう最高の娯楽はあるけど、やっぱり音楽とかの娯楽は必要でしょ。僕ら爺さん世代から若者まで、ジャンルは違えど、音楽を愛してきたのは変わらないし……斎藤さんは分かるんじゃないかな?」
「ああ、わかりますよ。やっぱり音楽は大切ですからね」
「そうだろ、そうだろ」
ただやっぱり、魔石の魔力が絡んでいるためか、魔石をそのまま電気に変換して……というのだと、電圧が強すぎてしまうらしく、安定して送受信するには工夫が必要だとのこと。
上手くいくことを願おう。
数日後に添島さんは俺のもとに来て、発電用のダムを作らないかと提案してきた。
「魔法だけじゃなくて、科学分野もせっかくわかる人が居るんだから、進めないか? 特に電化」
「魔法や魔石によるエネルギーじゃダメなんですか?」
「ダメでは無いけど、電気が使えれば日本の家電製品が普通に使えるようになるけど」
「むむ、確かにそうですね」
というわけでダムとは言わなくても、発電装置を作ることになったが、無限水源をせっかく作れるんだから、それを活用した発電をしてはどうかと添島さんは提案してきた。
曰く、無限水源から落下する水の勢いで水車を回して、その回転で発電する水力発電方法を提案してきた。
「1箇所無限水源を設置して、そこからは水を流すことで、歯車は回転を続けるし、直列で発電することができる」
最上部に無限水源を設置し、段々畑の様にちょっとした段差を作って、下に水が下る勢いで水車の歯車を回転させての発電……理科が詳しくない俺でも発電の要領は分かった。
電気系が強い技術者の爺さん曰く、水車1基で風力発電1基と同等の電力を生み出せるし、無限水源は一定の水量で安定するから、雨で増水する心配もしなくていい。
それ故にどんな状態でも一定の電力を生み出し続けると爺さん方は言っていた。
とはいえ、作ってみたはいいものの、魔石による産業構造が出来上がっていたので、魔石を取り付けることで、電気を生み出す発電機ができてしまうと、水力発電装置は無用の長物になってしまい、水車で生み出した電気で脱穀機や製粉機を直接動かす場所として活用されることになる。
技術者の爺さんと俺のちょっとした失敗談である。
「そろそろダンジョンの構造設計を始めるか」
一の島にダンジョンができて半年……冬の寒さも和らいできて、春がそろそろ始まる。
春になれば農業がまた忙しくなるので、時間がある今のうちにダンジョン建造の下準備をしておこうと思った俺は、ギルド長になったスズナリや技術顧問としてアリス、ゲームでダンジョンとかに詳しい細田、冒険者視点としてミンナ、お目付け役のソフィーの6人で新造するダンジョンについて語り合う。
「一の島のダンジョンで良い点から洗い出そうか」
一の島のダンジョンで一番良いシステムは冒険者ギルド職員と兵士がダンジョン内に主張所を作り、その場で素材を換金できるシステムを作ったことだとスズナリは主張する。
「だからそれはこの島のダンジョンでも取り入れるべきなんだが、素材を運搬する冒険者の確保が難しいと思う」
どうしても後発のダンジョンなのと、島民が優先して稼げるようにとエリーゼが言っているので、一の島のダンジョンとは客層が差別化されてしまっている。
なので、少人数でも利益が出せるダンジョン……というのが八の島のダンジョンのコンセプトになってくるかもしれない。
「ダンジョンの規模は一の島のダンジョンよりも小さくする約束なんだろう。となるとどれくらいの階層が適切だ?」
細田の質問に俺は75階層……いや、切りよく80階層にしようと思っていると説明する。
あとダンジョンの難易度も高める。
即死罠は勿論外すが、ジパングでは70階層に居たモンスターを50階層前後で出るようにすると俺は言う。
「コンセプトとしてダンジョンじゃないと入手できない素材が多いダンジョンにしたい。正直魔石なんかは俺が自動回収場を作ってしまえば、数十万人程度なら賄えるだけの回収ができるから」
俺が言う自動回収場というのはジパングでも作っていた地下にモンスタースポナーとモンスターの討伐及び散らばった魔石を回収するゴーレムを設置して、永遠と魔石を回収する場所である。
勿論八の島でも可動を始めており、1基で日産1万個近くの魔石を回収できていた。
ちなみに八の島の魔石使用量は1日5000個なので倍の量を生産できている。
「あとは鉱石系のモンスター……ゴーレムだけど、それもうま味は少ないんじゃないか?」
ゴーレムで各種鉱石や宝石を回収することができるので、スポナーからゴーレムが出てきたら床に設置されている粉砕機が動き続けて、ゴーレムを一瞬でバラバラにする装置が添島とアリスの元で開発が進んでいた。
これが完成すればゴーレムにできる金属(鉄はメタルスライム牧場の方が効率が良いので除外)……銅、銀、金、プラチナ、各種宝石(ルビー、サファイア、エメラルド、ダイヤモンド)、ボーキサイト、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン等は一定量手に入れられる計算だ。
なのでモンスターの素材でゴーレム系統とダンジョン内を清掃してくれるスライム以外の魔石をドロップするモンスターは湧かなくてもいいという意見である。
あとはマジックアイテムも一の島との差別化の為に無くていいだろう。
「それだと冒険者のうま味が減らないか?」
「あくまで今回作る八の島のダンジョンは産業に与する。だからマジックアイテムで一攫千金っていう感じじゃなくて、モンスターを倒して素材で稼ぐ、普通の冒険者と同じ感じのほうがいいでしょう。それにここのダンジョンに潜る人らはこの島の防衛を担う兵士予備軍だ」
俺がそう言うとソフィーも頷いていた。
ただ一の島で好評だったダンジョン内の通路の幅を広くしたり、セーフティエリアの拡大、モンスターの湧く数の調整は八の島のダンジョンでも取り入れる。
『せっかくですし、ダンジョンの移動と素材の輸送に機関車をダンジョン内に走らせませんか!』
アリスがとんでもないことを言い出した。
アリスの説明によると、ダンジョン内に鉄道を通し、10階層くらいの位置に駅を設置することで、冒険者のダンジョン内の移動時間の削減、素材を運ぶ人員の削減による輸送コストカット、線路があれば安全地帯だってことを分かりやすくすることができるんじゃないかと言う。
アリスに技術的に可能なのかと聞くと、可能と断言。
なので八の島のダンジョンには、ダンジョン内に機関車と列車が通ることになるのだった。
基礎コンセプトが出揃ったことで、あとは細部についてだが、それはスズナリと冒険者として意見が言えるミンナ、ゲームで詳しい細田の3人と詰めることになった。
ダンジョン完成まで残り半年……。