超闘争ALT プロジェクト・ファンタズマ -i 作:独立傭兵月兎(仮)
星を眺める者。
あるいは、世捨て人、とも。
それは数日前の事。
あと少しでこの研究所が潰れるかもしれないというのに、職員は誰一人として絶望していなかった。
寧ろ、誰もが情熱と野望に燃えていた。
「ダメだ、どうあがいても15秒で処理落ちしちまうッ!」
「やはりエフェクトを削るべきでは?」
「そうするだけなら簡単だ。
だがそれで九朗のヤツが喜んで戦うと思うか?」
「バーカ♡」
「…これを人の身で使おうと思ったのは何故ですか?」
「ちょっと質問の意味が解らない。
使っちゃ駄目なの?」
そんな軽口を叩きながら火薬庫の技師と烏丸研の職員達が「規格外兵装」を調整する傍らで。
何時ものように特訓に明け暮れる私たちは、少し休憩を挟んで談笑していた。
「…そういえば、「FUSHI」って、かぐやの作った「犬DOGE」の未来の姿なんだっけ?」
私の何気ない質問に、FUSHIが答える。
「そうだぞ。ボクはもともとおまえが作ってくれたこの犬っころだったんだ。」
「へぇ~…面影、殆ど無いですね…。」『ワフッ』
カヨコの目線の先に居る犬DOGEは何も知らずに、芦花の膝の上で身を預けていた。
芦花はそんな犬DOGEのお腹を撫でながら、何気ない一言を漏らす。
「にしても、8000年もの記憶をよく保存できてたよね…」
そんな他愛もない会話を聞き流していたレイが、ボソリと呟いた。
「…この演算、
その犬DOGEってのにやらせられないか?」
「「「…それだッ!!」」」」
「…へ?」『?』
─────────────────
犬DOGEの中に眠っていた最後の武装が、目を覚ます。
『オーバードウェポンの接続を確認』
それは私の右腕に絡み付き、その姿を現した。
『演算コスト、及び上限値再設定』
右腕より伸びるは、赤熱する6本の刃。
目の前の黒い鳥を喰らわんと、唸りを上げるそれは。
『出力オーバーロード状態を維持』
私を救い出してくれた、最強の力。
『稼動可能時間、残り60秒』
───これがかぐやの、グラインドブレードだ。
「こうなるか!新しい、惹かれるな…!
来い、かぐやッ!!」
「行くよッ、九朗!!」
啖呵を切ると同時、私は「タメ」の動作に入る。
このツクヨミには似つかわしくない、あまりにも鈍重で物々しい武装。
でも、だからこそコレが、九朗に追い縋れる可能性なんだ。
起動方法は彩葉に言ってなかったけどね?
「…っ!」
九朗の動きが、より激しく、捉えにくくなる。
グラインドブレードは隙が大きい。
ひとたび避けられてしまえば、あとは木偶の坊になってしまう。
だから、狙うんだ。一瞬の隙を、九朗の「癖」を…!
私は、その瞬間を待って、待って、待ち続けて──
「──ぁ。」
いつの間にか、私の前から九朗以外の全てが消えていた。
唸りを上げるブレードの爆音も、彩葉の声も、九朗の撒き散らすジェットの音も聞こえない。
まるで世界から色が抜け落ちたようだ。
だけど、透明で、すごく気持ちがいい。
嗚呼。これが、九朗の───
「…ふふっ」
九朗は嗤っていた。
きっと同じ顔を、私もしているのだろう。
九朗…やっと並び立てたよ。
だから私が───かぐやが、九朗を墜としてあげる
─────────────────
決着はたった一瞬だった。
飛び回りながらも、確実に弾丸を当てる九朗と、構えたまま微動だにしないかぐや。
そうしてかぐやの体力が底をつきる瞬間に───
あの日とまったく同じように、
ターミナルアーマーがかぐやを包んだ。
その瞬間、九朗の思考が切り替わる一瞬を、かぐやは待ち望んでいた。
「ぅぁぁあああああああッッ!!!!」
限界まで熱され続けた刃は解き放たれ、
空に炎の道を描き。
「…終わり、か」
高く跳んだ月の兎は、ついに鴉の翼を捥ぎ取った。
次回でオシマイです。