杖と剣のディストピア   作:超高校級の小説家(笑)

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一振りの剣のように

 この魔導社会において、魔力を持たない者は人間ではない。

 ただの「家畜」か、あるいは「無能者」だ。 

 魔導士たちの世界の天頂にそびえ立つ、白き「塔」。

その光を浴びることすら許されない地下ダンジョンの暗がりのなかで、ウィル・セルフォルトは血と泥にまみれていた。

「はぁ、はぁ……っ!」

 手にあるのは、魔導士の象徴たる杖ではない。重く、無骨な、一本の大剣。

 魔導士を育てるリガーデン魔法学院において、杖を持たずに剣を振るうウィルは、文字通り異端であり、忌むべき底辺の存在だった。

 誰も、ウィルのことなど見やしない。

 かつて隣にいたはずの少女――コレットでさえ、今や教室ではエリートたちの輪のなかに身を置き、ウィルが通りかかってもゴミを見るような一瞬の冷たい視線を向けるだけ。関われば自分の評価が下がる。だから、徹底的に空気として扱う。それがこの学園の、ひいては世界の絶対的な規律(ディストピア)だった。

 群れる仲間など、一人もいない。

 それでもウィルが折れず、ただ一振りの剣のように真っ直ぐ、孤独に耐えて泥をすすり続ける理由は、たった一つしかなかった。

(エルフィ……)

 脳裏に浮かぶのは、あの雲の上、塔の天頂で自分を待っている幼馴染――エルファリア・アルヴィス・セルフォルトの姿。

『一緒に夕日を見る』

 あの日交わした幼い約束だけが、暗闇を這うウィルの心を繋ぎ止める、唯一の命綱だった。

 

 

 

「グアァァァッ!!」 

思考をかき消すように、ダンジョンの奥から凶悪な咆哮が響く。

 現れたのは、通常の階層には存在しないはずの、巨大な上位魔物。冷酷な学園の誰かが、ウィルを合法的に「処理」するために仕組んだ罠かもしれない。

「くそっ……!」

 孤立無援。大剣を構えるが、多勢に無勢だ。迫り来る爪がウィルの視界を覆い、死の予感が背筋を駆け抜けた、その時だった。

 

 

――ズガァァァン!!!

 空間そのものがガラスのようにひび割れ、見たこともない七色の光が溢れ出した。

 ダンジョンの強固な理(ことわり)を完全に無視した、圧倒的な密度の『未知の熱量』。

「な、んだ……これ……。魔力、じゃない……!?」

 光の裂け目から、凄まじい速度で何かが落下してくる。

 爆煙と共に這い出てきたのは、黒い三角帽子を被り、奇妙な形の金属器――「ミニ八卦炉」を握りしめた、一人の金髪の少女だった。

「あだだだ……! クソ、紫の奴、境界の調整をトチりやがったな!?……って、おいおい、歓迎会にしちゃあ随分と不気味な面連れじゃないか」

 少女――霧雨魔理沙は、周囲を囲む魔物たちを見回し、不敵にニィと笑った。

 杖も持たず、詠唱もしない。ただその手にある道具に、狂気的なまでの輝きが収束していく。

「おい、そこの下級魔導士っぽいお前! 巻き込まれたくなけりゃ、耳を塞いで地べたに伏な!」

「え――」

「恋符『マスタースパーク』!!」

 直後、放たれたのは極大の光の奔流だった。

 それは、塔の上級魔導士たちが放つ洗練された「魔導」とは根本的に異なる、ただ純粋で、圧倒的な、世界を焼き尽くす暴力。

 

 

 ズドォォォォォン!!!

 

 

 ダンジョンの壁を消し飛ばし、ひしめき合っていた魔物たちを一瞬で塵へと変える。

 光の残滓が冷たい空気の中でパチパチと弾ける中、ウィルは地面にへたり込んだまま、驚愕のあまり声を失っていた。

(嘘だろ……。杖も詠唱もなしに、これだけの『魔法』を……!?)

 その理不尽なまでの輝きに、ウィルは再びエルフィの姿を重ねていた。

 「――おい、生きてるか? 派手にやりすぎちまったな」

 魔理沙はふわりとウィルの前に降り立つ。そして、彼が持つ大剣を一瞥し、不思議そうに首を傾げた。

「お前、魔法使いのくせにそんな物騒なもん振り回してんのか? 変わった奴だな」

「ぼくは……魔法が使えないんだ。だから、剣で戦うしかなくて……」

「あん? 魔法が使えない?」

 魔理沙は驚いたように目を丸くする。彼女の知る幻想郷では、魔法を使えない人間などごまんといる。だが、目の前の少年が浮かべる表情には、まるで『人間失格』の烙印を押されたかのような、深い悲壮感がへばりついていた。「……変な世界だな。使えないなら、使わなきゃいいだろ」

「それは、ダメなんだ」

 ウィルは泥に汚れた大剣を、折れそうなほど強く握りしめ、天を仰いだ。

「約束したんだ。彼女と、一緒に頂上で夕日を見るって。だからぼくは、どんなに無能と言われても……あの塔を登り詰めなきゃいけないんだ。この剣だけで」

 誰も味方がいない世界で、ただ一振りの剣として生きる少年の、狂気的なまでに一途な光。 それを聞いた魔理沙は、帽子を少し持ち上げ、不敵にニカッと笑った。

「へえ……いいじゃねえか。そういう無茶な目的は嫌いじゃないぜ」

 魔理沙はウィルに向かって、ポンと手を差し伸べる。

「よし、決まりだ! 私が元の世界に帰る方法を見つけるまで、お前のその『約束』、ちょっと手伝ってやるよ!」

 誰もいないはずの暗闇の底で、孤独な剣の少年に、初めての「異分子の相棒」ができた瞬間だった。




息抜きで書いたやつです!!!!!

続くかどうかは知らん!!!
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