運動会の疲れもまだ
「おっ、とんかつ屋のねえちゃんにネコチャン!おはようさん!」
もはや「とんかつ」は王都では立派な
「おはようございます。今日はなにか珍しいものでもあるんですか?」
「へへ、よくわかるな。今日からこれを取り扱うことになったんだ。見てくれ」
店主はさくらときなこに、大きな袋に入ったものを
「わぁ、
「そそ。ベイ・ピースで
「わかりました。試しに十キログラムください」
「よっしゃ!まいどあり!」
さくらは新たに大豆を仕入れることに決め、これでまた新しい挑戦ができると考えた。
「さくら、大豆ってなんだにゃ?」
「とても栄養が豊富な食べ物だよ。いろんな料理に支えて、いろんな加工品も作れちゃうの。ただ煮るだけでも美味しいんだよぉ?」
「へぇ、たのしみだにゃ」
大豆の加工は非常に幅が広く、それでいて
自宅へ戻った二人は、店の地下にある『倉庫』にて論議を交わしていた。ここは普段、食料や飲料を保管するのに最適な場所で、温度と湿度が常に一定に保たれている。日当たりもないため、これから来る暑い季節にも涼しく保てる
付け合わせの
まず一階の調理場で、さくらときなこ、そしてフリーゼにも手伝ってもらい豆を炊く。それを今度は三人で一生懸命すりつぶし、さらに叩いていく。米の
「ふう……ここでよろしいか」
「はい、ありがとうございます。でも、こんなに多くなるとは思わなかったな」
「そろそろ教えてくれにゃ、さくら。これはなんなのにゃ」
「『疲れがとれる』
さくらは、本来なら出来上がるまでに一年近くかかるものだが、早ければ三ヶ月ほどで取り出せるものもあるし、発酵を進めれば色が変わり、それはそれで味わい深くなるのだと説明した。
「それが、なぜ三日後に出来上がってしまうのだ」
当然、フリーゼは疑問に思う。眉を八の字にし、頭の上にはてなマークを浮かべていた。
「まあ、きなこの何かの力なんでしょうね」
さくらも言い
「ところでフリーゼ様、今日の夜は空いていますか?」
「うむ、私は常に何かしら用はあるのだが、空けようと思えばいつでも空きはできるのだ。それに私はぼたんちゃんであり」
「よかったにゃ。今夜は宴会が入ってるにゃ。よろしく頼むにゃ」
「承知した!」
フリーゼは
「父上、帰っていただけないでしょうか?」
「なぜだ。我はお前の働きぶりが見た……
なにやら国王パルデスブレイディオは、うんぬんかんぬんと、ゴチャゴチャと理屈を並べているが、一言でまとめれば『飲みながらフリーゼの働いている姿を見たい』という、実にわかりやすい理由であった。
この日の夜は「とんかつ さくら」の二階にある座敷にて、先日の運動会の学校教師たちが打ち上げとして、弁当の代金とともに、たっぷりとお金を落としていく予定が入っていた。
そのためフリーゼは、昼間にさくらときなこに頼まれ、宴会をサポートするべく夜の部のアルバイトに入っていたのだ。だが、その話をどこからか聞きつけ、パルデスが
「父上、ほかのお客様が
「気にすることはなかろう」
「気にするに決まっていると申し上げているのです」
二階には校長先生をはじめ、多くの教師たちが美味しい揚げ物を
店の外には警備にあたるエリック以下、大勢の警察が配備され、周囲は事件でもあったのかと噂されるほどの物々しい雰囲気に包まれている。
そこでフリーゼは、逆にお酒を飲ませてしまおうと考えた。
その
またある日の夜には、アオーウィックとカナタディバウスの家族、ハイドライト家とザナディア家が集まり、二階の座敷の半分を貸し切って宴会を開いていた。両家は仲がとても良く、酒や食べ物も次々と注文し、
「へぇ、『ベイ・ピース帝立高等学校』っていう学校なの」
「さぞかし、二人とも頭の出来が良いのであろう」
「いえいえ!そんなそんな!」
この日も宴会が入っているため、夜の部にはフリーゼが手伝いに来ていた。二階を任されているフリーゼと、たまに客と話をするのが好きなさくらは、アオとカナタから学校の話を聞いていた。
「そんなに学力が高いんですか?その高校は」
「うむ。ベイ・ピースの中では特に魔法の学力が最も高く、センチュリオンを見渡せば『
『
一つはリゼロッテやフリーゼが通う『エクレール女学院』。
次に、アオとカナタの通う『ベイ・ピース帝立高等学校』。
そして『グラン・パレス防衛大付属高校』である。
「いえいえ!僕たちは、たまたま入学できた外部進学者ですから!」
アオとカナタは、しきりに
「何を言っている。外部から進学したのなら、なおのことすごいではないか」
「そうだよ。過度な謙遜は時に
フリーゼとさくらに諭され、アオとカナタは一瞬顔を見合わせ、「ありがとうございます」と頭を下げるのだった。
「でも、この間は死んだ魚の目をして歩いてたって、きなこが言ってたよ」
「あはは。いつも『
「それに、そなたたちの家からでは学校は遠かろう」
「そうなんですよ。僕たちの
学生の悩みは尽きない。だからこそ毎日は変化に
「こう……なんていうか……自分で
さくらはグルグルと何かを回すようなジェスチャーをして、アオとカナタに問いかける。
「何でしょう……よくわかりませんが、今の歩行速度より速く移動できるなら嬉しいですね」
「うん。昔の魔法に『はやがけ』っていうのがあったらしいけど……今、使える人はいるのかな?」
アオとカナタは、さくらの思い描くものを自分たちなりに
「さくらちゃーん、一階が大変なのですぅ。早く降りてきてくださいなのですぅ」
階下からリゼロッテの
「あ、ごめんなさーい、今行くね~!それじゃそろそろ下に降りるね。フリ……ぼたんちゃん、あとはよろしくお願いします」
「うむ!任せておけ!」
「あ……行っちゃうんだ……」
こうして『とんかつ さくら』の夜は、また