「さくらちゃん、三日目だぞ」
そう、今日で『
「うふふ、出来てるかな?楽しみですね」
「早く見たいにゃ」
はやる気持ちを抑えながら、さくらは店の鍵を開け、荷物をがさっとテーブルに置いた。まるで
「これが……三日経った亀壺……」
フリーゼはごくりと喉を鳴らし、その時を待つ。さくらは亀壺に手をかけ、きなこは壺が置いてあるテーブルに乗って、
「さあ……いきますよ……」
さくらは低い声でそう言い、ゆっくりと蓋を開けた。
「うおお……こ、これは……」
「うにゃにゃ……なんということなんにゃ」
仕込んだばかりの頃からは想像もできないほどに変化した色合い。独特な香りと
「うまくいったかな?じゃあ、きなこ。ちょっと食べてみよっか」
「う……さくら、これはまずさくらが食べてみてにゃ」
まあしょうがない、とさくらは思う。一目見れば、決して食欲をそそるような
「さっき買ってきたきゅうりで試してみよう」
さくらはきゅうりを水洗いし、
「……うん!大成功だね!」
「にゃにゃ!?本当にゃ?よし、ボクも」
「ず、ずるい。私もいただくぞ」
さくらの
「うぐぅ!」
「むにゃあ!」
フリーゼときなこは、これまでに何度も見たことのある
「また、なんてものを生み出してしまうんだ……さくらちゃんは」
「えへへ、大成功ですね。これは『お
「これはまた今まで味わったもののなかでも
「そうでしょう?味だけじゃなくて、本当に色々なことに使えるんだから」
三人はみずみずしいきゅうり味噌をパキパキと齧って食べたあと、フリーゼに亀壺を一階まで運んでもらい、そのまま調理場へと向かった。
そして以前から仕込んであった、魚の骨や
「ズルズル…………はぁああぁぁ……………………」
「ゾゾゾゾ…………にゃぁあぁぁ……………………」
二人の肩はがくりと落ち、首はうなだれ、大きなため息とともに小さな声が漏れる。
「どうですか?」
「はぁ…………なんとも言えない味わいだな……これは……」
「さくらが言っていた『疲れがとれる』って、本当だったんだにゃ…………」
「よかったぁ。おいしく出来たね」
さくらは、目を閉じたまま「ゾゾゾ……」と音を立てて飲む二人に、簡単な説明を加える。
味噌は
「それほどまでに『魔法の調味料』なのか。これは是非お店で出すべきであろう」
「さくらの手間がまた増えるにゃ。大変じゃないかにゃ?」
「ああ、これはもうすでに一つの『メニュー』にしてもいいくらいだぞ」
フリーゼときなこは、これほど珍しくて美味しいものを追加するなら単価を上げるべきだとさくらに
「確かにお味噌を作るのは手間だけど……お味噌汁を作ることは全然大変じゃないよ?具は余った材料を入れればいいし」
「そうか、味噌は保存ができるし、味噌汁も一度作ってしまえばあとは提供する時に
「そうです。値上げは一切考えないですよ。むしろこれを売りにして、もっとお客様が来てくれればいいなって」
「それもそうにゃ」
サイドメニューや付け合わせはメインを盛り立てる材料にすぎないが、定食というのは全体の
さくらはさっそく、ダイコン、ニンジン、タマネギ、ジャガイモを薄切りにして煮込み、ランチ用の仕込みを始めるのだった。
「ゾゾゾゾゾ……………」
「ズルズルズルズルズル…………」
この日のランチもディナーも、その音だけでほぼ
「さくらちゃん、このお味噌汁、とても美味しいのです」
リゼロッテもすっかり気に入ったようで、営業終了後の二階で、残った味噌汁をやはり
「野菜の栄養もたっぷり染み込んでるよ」
「とても嬉しいのです」
野菜嫌いなリゼロッテにとって、ゴロゴロとした煮物は苦手だが、このように煮込まれた味噌汁なら美味しくいただけるとのことだった。
「他の具は、なにがおすすめなのですか?わたくしのお家でもメイドさんに作っていただきたいのです」
「そうだなぁ……お酒が好きなお父さまだから、翌朝のお味噌汁に『
「貝ですか?気持ち悪いのです」
「うふふ。パカっと開けば美味しいんだよぉ?それに、栄養もたっぷりなんだから」
「そうなのですか?どんな効果があるのですか?」
「
「わわ、それはすごいのです。さっそくメテオ様にお願いして仕入れましょうなのです」
さくらとリゼロッテが話す間にも、こうして新たなアイデアが生まれていく。意見交換とは実に有用なものだと、さくらは改めて実感していた。
とある日、『グランデ・マルシェ』内の
「ねえちゃんとこの『味噌』なんだけどよ。もしよかったら、俺んとこで
ベイ・ピースの
「あ、こちらこそ是非よろしくお願いします。よかったら、作り方もお教えしますよ」
「ええ?マジか?教えちゃっていいのかよ」
「はい、大丈夫ですよ。どうせお味噌は、環境や人の手によって絶対に同じものは出来ませんので!」
さくらは片目を
「そういうものなのか?」
「そういうものです!それに、自分のところのお味噌が一番おいしいって思ったりもします。これが『
「て……ま……?なんだか分かんねえけど、そいつは助かるぜ。さっそく教えてくれ」
こうしてミンチェスティやベイ・ピースを中心に味噌は広がり、人々の生活に、またひとつ
もっとも、さくらは自分たちだけで作る味噌には限界があると感じるようになり、各地の店で売られる味噌を
さくらの商売は、決して