SAO~黒の剣士と遊撃手~   作:KAIMU

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 一度走り出したら、意外に早く形になりました。


百七話 決着

 クロト サイド

 

 倒れ伏したキリトを背に、オレは初めてぼろマントと向き合う。隻腕となったヤツが握る針の様な剣―――エストックや、髑髏仮面の奥で怪しく発光する赤い目。

 

 「やはり、お前か。遊撃手(・・・)

 

 SAO時代の二つ名を呼ぶ、切れ切れな口調。我を忘れた相棒の絶叫と、身に覚えのある殺気。ぼろマントとこうして相対して、確信した。

 

 「テメェだったのか、ザザ」

 

 闇風を倒しここに駆け付けるまでの間に浮かんだ、外れてほしかった予想が的中してしまったのが忌々しい。

 

 「ク、ク、ク。目の前で、お前を倒せば、キリトはより一層、怒り狂うだろう」

 

 弾が半分程残ったP90を足元に落とす最中、耳朶に届いたザザの声には隠し切れない喜色が混じっていた。

 

 「現実世界の、腐った空気を、吸い過ぎたキリトは、もう黒の剣士では、ない。弟の死、だけでは、まだ、足りない。まだ、戻らない(・・・・)

 

 「へぇ……随分と相棒にご執心だな」

 

 一瞬だけ、後ろで蹲ったままの親友を見る。心身を削り続けたSAO(デスゲーム)から解放され、ALO(べつの世界)に囚われた想い人を取り戻した先の日常を謳歌していた彼の心は、やっと癒されていたというのに……コイツの所為で、過去の古傷を―――ラフコフ討伐戦の記憶(トラウマ)穿(ほじく)り返された。

 

 「だが、お前を倒し、あの女を、殺せば、今度こそ、黒の剣士に……あの時の、真に猛り狂った姿に―――!?」

 

 地を駆ける。記憶の限りではかつてないほど饒舌に語るザザに肉薄したオレは、ヤツの心臓部目掛けてナイフを振るう。

 

 (……浅いか)

 

 狙い通りの位置に刻まれたダメージエフェクトこそ派手に赤い飛沫を上げたが、一方でザザの残り七割程あるHPゲージはさほど減らない。ギリギリのタイミングで半歩程避けられたらしい。どうやらSAOの頃よりプレイヤースキルが向上しているのは事実なようで、腐りきった性根であってもキリトを打倒せんとするコイツの執念の強さだけは本物だと実感する。

 

 「貴様っ……!」

 

 (うるせぇな。とっとと死ねよ)

 

 遅れながらエストックを振るい、間合いを取ろうとするザザ。しかし一度捕らえたオレの距離から逃がしてやる理由は無い。両手に握ったナイフと、今まで培ってきた体術を駆使してヤツにピッタリと張り付いて攻め立てる。狙うは首筋と心臓で、それらを狙う隙を作る為のフェイントも織り交ぜる。

 

 「グッ……何だ、この殺気は……!?」

 

 ハラワタが煮えくり返る程に感情は滾っているのに、どこまでも冷静に澄んだ思考は一歩ずつ確実に相手を追い詰め殺す事だけを考えている。

 エストックを叩きつけ、間合いを取ろうとするザザ。迫る刺剣をナイフで受け流し、飛び退るぼろマントを追って踏み込む。

 

 ―――足りない……もっとだ。余分を削り、突き詰めろ。敵を始末する事に全てを注げ。

 

 完全にあの頃の化物に堕ちた(もどった)つもりだったが、まだまだ甘いようだ。冷め切って温度を感じなくなった筈の全身において、先程から右手だけが仄かに温かい。ここでザザを放置すれば、キリトだけでなく、桜達にまでSAOの亡霊として悪夢を振りまく。それを止める為なら……奈落の底まで堕ちたって構うものか。

 大切な人達を想う心も、人として真っ当な感情(ねつ)も全て……全て、捨てろ。レッド共を殺戮した―――アノトキノヨウニ。

 刻一刻とザザの胸元や首回りには小さな傷跡が増えていき、そのHPゲージが五割を下回った。こちらもヤツの悪あがきで振るわれたエストックをナイフで逸らしたり、体に掠らせたりして、ジリジリ削られたのでHPの残量は同程度だが、ダメージレースはオレの方が勝っている。

 そもそも普段と重心が異なる隻腕の状態で剣を十全に振るえなくなっていたのに、さらに本領を発揮できない超近距離で張り付かれた時点でザザのエストックはただの棒切れと大差なくなっているのだ。四肢の部位欠損は確か数分で治る筈だが、仮にザザの左腕が復活しようとも―――殺せる。

 決して油断できないが、それでも勝算が見えている一方で……意識が、かつて死の雨を降らせたあの頃に移りきらない(・・・・・・)。あの時は体だけじゃなく心すら冷え切って、不要と切り捨てた命を殺す、人ならざる機械が如き冷たく静寂な状態だったのに。右手の仄かな温もりも、胸の内に宿る感情(ねつ)も、今だけは不要だと思うほど……決して消えない灯のように残り続ける。

 

 「……何故だ……何故、貴様にすら勝てない!?」

 

 「っ……」

 

 逸らしきれなかったエストックの切先が、左の頬を掠める。ザザに付け入る隙を見せてはダメだと己を叱咤し、精神が少しでもあの頃に近づくように努める。

 

 「おれは、違う!恐怖に駆られ、殺した事を、忘れた、貴様ら卑怯者と―――」

 

 「―――テメェらゴミを幾ら殺そうが大差ねぇよ。いいから死ね」

 

 苦し紛れに突き出された剣の腹、ダメージ判定の無い箇所を左腕で受け流し、ザザの胸に右手のナイフをグサリと突き立てる。次いで左のナイフを首筋に突き立てるべく踏み込むが、そこで頭部に衝撃を受けた。

 

 (頭突きか……ヤツも形振り構ってられねぇってか―――!?)

 

 一瞬揺れた視界が正常に戻った時、眼前にはエストックの切先が迫っていた。咄嗟に首を逸らしたが、その切先は右の頬骨を滑って耳をちぎり飛ばしていった。

 仕留め損なったうえに、間合いを離されてしまった。右手にあったナイフはザザの胸に刺さったまま手放してしまったし、刀身を一瞥した左手のナイフは目に見えて刃毀れしている。耐久値が半分以下の状態だ。あのエストックが超高性能なレア物なのか、普段よりも消耗が速すぎる。

 

 「……随分と必死だな。仮にも命の恩人だぞ?」

 

 「っ、黙れ……!」

 

 キリトに執着するザザがいつオレを無視して相棒を襲うか分からないので、注意を引く為にとついた軽口に思いのほかヤツは食いついた。一度追い込んだザザが冷静さを取り戻す時間を作らぬよう、ヤツの地雷であろう事柄で煽る。

 

 「ハハッ、そうだよな。恐怖の象徴たる殺人者(レッド)サマが?いたぶるつもりの獲物に殺されかけて?挙句の果てに命を救われたとか、お笑い(ぐさ)もいいトコだもんなぁ?」

 

 「黙れ、黙れぇ!!」

 

 いい具合に向こうの逆鱗に触れられたようだ。激情に支配されたぼろマントの殺意がオレだけに集約され、キリトから意識が外れたのが肌で感じられた。

 

 ―――これでいい。

 

 なに、相棒は今ちょっとばかり休憩(・・)しているだけさ。何度打ちのめされても、傷つけられても……然るべき時にはちゃんと立ち上がる。それがキリトだ。

 

 「おれは、真の殺人者(レッド)だ!恐怖を、与える者だ!怯えるなど、あっていい筈が無いんだ!!」

 

 「……」

 

 叫び、突進系上位ソードスキル『フラッシング・ペネトレイター』を繰り出すザザ。何となくヤツの動機が分かった。コイツはただ、あの戦いでキリトに砕かれた矜持を取り戻したかったのか。遍くプレイヤー達の恐怖の具現たるレッドプレイヤーとして君臨していたところを打ち負かされ、逆に殺されかけた自分が死の恐怖に怯えた事実を払拭する。それがザザの殺人者(レッド)に拘る理由か。

 

 (……クソくらえだ)

 

 道端の石ころよりも価値を見出せない。だが己の心臓へと迫る切先に宿る殺意や闘志、歪んだ執念の果てに磨かれた技量は間違いなく脅威だ。

 避けれない、というのは向こうが砂を蹴った瞬間に悟っていた。ザザが全力でオレを狙うように挑発した時から、こうなるのは予測済みだ。HP残量は三割で、ザザの一撃を受けてから全損するまで一秒あるか無いかだが……それだけあれば充分だ。野郎の喉笛を掻っ切るには。

 目を凝らせ。意識と感覚を研ぎ澄ませ。ザザがオレに勝った、と確信した瞬間の……極僅かな隙に刃を突き立てる為に―――

 

 ―――クロト!

 

 名前を呼ばれた、気がした。冷え切っていた全身が、右手を起点に熱を取り戻す。刺し違える覚悟で踏み出すつもりだった体が、気づけば後ろへと倒れ込んでいく。

 視界の端から、華奢な腕が伸びる。昨日今日とよく目にしたその手を、何度傷だらけになっても立ち上がる決して大きくない(この上なく頼りになる)その背中を、見間違う筈が無い。

 

 「―――キィリトォォオオ!」

 

 「ありがとう。アスナ、ユイ」

 

 それは、いつかの焼き直しのようだった。違うのは、少年が憎悪した者相手に穏やかな心を崩さず……いや、今は見てすらいないところか。ザザが放った渾身の刺突はキリトの左手一つに呆気なくつかみ取られ。発狂するぼろマントが次の行動に移るより先に、相棒の右手から終焉の音が―――銃声が響く。

 連続して起こるマズルフラッシュ。ぼろマントへ瞬く間に刻まれる点状のダメージ跡。相棒の傍らに、彼を守護する白騎士を幻視した。

 マガジンに残っていた弾丸全てを吐き出したP90の向こうで、HPゲージが空になったザザが崩れ落ちる。

 

 「……まだ、終わら、ない……終わらせ、ない……!」

 

 「終わりさ。ハルは生きている。俺にはもう、お前を憎み続ける理由がない」

 

 地に伏したぼろマントを一瞥すらせずに背を向けるキリト。彼が最後に告げた、「もうお前なんてどうでもいい」という意の言葉が幻影の一撃となったのか、ザザは苦し気に息を吞んだきり沈黙した。遅ればせながら表示された死亡タグを確認し、オレは尻餅をついていた体を立ち上がらせる。

 

 「また、お前に助けられちまったな……親友(キリト)

 

 「それはお互い様だろ?親友(クロト)

 

 揃って体中のあちこちにダメージ跡を刻まれたオレ達は、いつも通り軽く拳をぶつけ合う。分厚い雲の隙間から差し込んだ月明りに浮かんだ相棒の姿は酷く痛々しかった。

 

 「悪い、オレがケリつけるって啖呵切ったってのに、結局無理させた」

 

 「いいさ、あいつと因縁があったのは俺だし。ちゃんと自分の手で決着をつけるべきだったんだ」

 

 傷つけられた左目の再生がされていない顔で微笑まれても、オレ自身の力不足を痛感するだけだった。

 

 「行こう、シノンが待っている」

 

 「……そうだな」

 

 キリトに促され、歩き出す。今回のザザの凶行から守る事ができた、心を凍らせていた少女の許へと。

 

 「ぁ……れ……?」

 

 「おっと」

 

 しかし数歩も進まない内に、相棒がよろける。先程の戦闘の最中で髪留めを失ったのか、解けた髪が左右にふらふら揺れる様が見ていられず、オレは彼を支えるべく肩を貸す。糸が切れた人形のように脱力しているのが、触れた感覚で分かった。精神的にはかなりクタクタなキリトを支えて歩き続ける。

 

 「……強いな、皆」

 

 「何だよ、藪から棒に」

 

 「だってさ……シノンは死ぬかもしれない状況だっていうのに、立ち上がって戦う事を選んだ。お前は、ずっと恐れていた一面と向き合って、ザザと対峙した……なのに俺は……俺だけが、過去に囚われて、自分を見失った。アスナとユイがいてくれなかったら、ずっと蹲ってた」

 

 「……オレだって、大した事ねぇって。その、お前が助けてくれた直前で、サクラの声が聞こえた気がしてな……あれが無かったら、ザザと刺し違えるつもりだった……つか、それ以外考えてなかった」

 

 そう言って、やっと右手の温もりの正体に気づく。どうやって現実世界のオレ達がいる場所を知り、やってきたのかは分からないけれど……化物に堕ちるギリギリの所で繋ぎとめてくれたこの温もりは、紛れもない恋人(サクラ)のものだ。そしてキリトも同じだろう。

 

 (アスナとユイがいてくれなかったら、って言葉はそういう事か……)

 

 正直あそこで相棒が来てくれなかったら……是が非でも相打ちを果たすつもりだったが、冷静に考え直せばオレだけ地に伏していた恐れも、四割ほどはあった。そう思えるくらい、ザザはSAOで戦った頃よりも強くなっていた。もし……もしも、第二のザザともいうべき元ラフィン・コフィンがまた現れた時、果たしてオレだけで打ち破れるだろうか……?

 

 (もっと強くならねーとな……)

 

 心はサクラや皆に支えてもらえばいい。彼女達が元ラフィン・コフィンと戦わなくていいように……オレ一人で―――

 

 「―――違うぞ。俺達二人で(・・・・・)、だろ」

 

 「……人の考えを読むな」

 

 顔に書いてあったからな、と悪びれる様子の無いキリト。考えを読まれたのがちょっと悔しいような、それでいて言葉にせずとも伝わるくらい親友がオレの事を理解してくれているのが嬉しいような、複雑な気分になったのでつい顔を俯ける。

 そのまま歩き続けていると、オレの肩を借りるキリトが足を止めた。つられてオレも足を止め、俯いていた顔を上げると、そこにはシノンがいた。いつの間にか合流できたらしい。

 彼女の代名詞ともいえる大型ライフルはスコープが失われていたが、得物を抱える彼女自身は無事のようだ。貸した肩越しに、キリトが安堵する様子が伝わる。

 

 「……終わった、のね?」

 

 「ああ。死銃(デス・ガン)は倒したよ」

 

 「そう……」

 

 シノンとキリトはそう言葉を交わすと、互いに張り詰めていた糸が緩んだように、どちらともなく微笑みあった。二人の弛緩した空気を感じて、漸くオレも肩の荷が下りたような気分になる。

 

 「死銃(デス・ガン)……元ラフィン・コフィンの連中は、自分の手で決めたルールに則って殺すのに拘りがあっからな。ゲーム内で標的を撃つ役目のぼろマントが倒れた以上、お前ん家の共犯者はもう逃げるしかできねぇ筈だ」

 

 「あぁ。でも念の為、警察には連絡した方がいいと思う」

 

 「でも……何て言えばいいの?VRMMOの内と外で同時殺人を企んでいる人がいる……って言っても、すぐには信じてもらえないでしょう?」

 

 「うぐぐ……確かにそれもそうか……」

 

 客観的に考えて、何も知らない警察がシノンの言った通りの通報を受けたとして……素直に信じてもらえる、とは思えない。が、それはオレ達が現実世界では何の権力も無い一般人だからってのも大きい筈だ。

 

 「説得はあの眼鏡役人に丸投げしようぜ?もう考えんのメンドイし疲れたし」

 

 「その手があったな……あんな胡散臭い奴でも公務員だし……けど、ここでシノンの住所を聞き出すわけにもいかないだろ?」

 

 「じゃあシノンに役人の電話番号言えばよくね?オレ達の名前だせば、向こうも無碍にはしないだろ。そんでオレ達からもメール送れば何とかなるって」

 

 「それはそれで時間かからないか?もしその間にシノンの身に何かあったら……」

 

 うーむ……回転の鈍った頭では、他によさそうな案が浮かばない。まさかこんな所で詰まってしまうとは……

 

 「……いいわ、教えてあげる」

 

 「え、いいの?」

 

 「マジで?」

 

 思考が堂々巡りに陥りかけた時、目の前の少女は何でもないかのように許可をくれた。

 

 「何だかもう、今更って感じするもの……自分から、誰かに昔の事件について話したの、初めてだったし……」

 

 「それも……そうだな。俺達だって、自分の意思で誰かにSAO内の事を言ったの初めてだったな」

 

 お互いに現実世界での顔や本名すら知らない筈なのに、自分の根幹を為す出来事や傷跡を晒し合っていた事に、揃って苦笑する。確かにこれなら、現実世界の自分の情報を知られても今更気にしないって彼女の言葉に頷きたくなる。

 そんな事を考えている内に水色髪の少女は抱えていた大型ライフルを肩にかけ、空いた両手でオレ達を引き寄せる。

 

 「私の名前は、朝田(あさだ)詩乃(しの)。住所は―――」

 

 引き寄せたオレとキリトの頭の間に顔を突っ込むような状態から告げられた、彼女の住所。それが何かの偶然か、オレ達がダイブしている病院のすぐ近くだった。

 

 「驚いたな……俺達がいるの、千代田区の病院なんだ」

 

 「えぇっ!?目と鼻の先じゃない」

 

 「いっその事、俺達がログアウトしたらすぐ行った方が早そうだな」

 

 確かに今のオレ達は精神的な疲労こそあれど、現実世界の肉体はさほど消耗していない……と思われる。だったらリアル側でやる事が一つ増えたって、大した事ではない。

 

 「う、ううん、大丈夫。近くに信用できる友達も住んでいるから」

 

 「って言っても聞かねぇぞキリトは。一度関わったら自分が納得するまで世話焼くヤツだし」

 

 「おいおい、何だかんだ最後まで付き合ってくれるお前も大概だろ?」

 

 「本当に仲がいいのね……来てくれるっていうなら、少しは期待して待っててあげる……で?まさか私だけ個人情報を開示して終わりかしら?」

 

 微笑を浮かべるかと思いきや、少々不満そうに半眼になるシノン。それに気圧されたワケではないが、ちょっと礼節を欠いたかとキリトは慌てて本名を告げる。

 

 「あ、ごめん。俺は桐ケ谷(きりがや)和人(かずと)、ダイブしているのはさっき言った場所だけど、家は埼玉県川越市」

 

 「(くろがね)大和(やまと)だ。んで家は東京都御徒町」

 

 「キリガヤカズト、クロガネヤマト……どっちも本名を短縮しただけじゃない。ネーミングセンスまで一緒って、生き別れた兄弟とかって言われてもおかしくないんだけど……」

 

 んなアホな。なんて言おうと思った時、今の今まで存在を忘れかけていた中継カメラが視界に映る。音声の届いていない観客の大半が、いい加減に決着つけろとブーイングをしていそうだ。

 

 「―――そろそろ、大会を終わらせねぇとな」

 

 「でも、どうやって決着をつけるんだ?二人だったら、昨日みたいに決闘スタイルもできたけど……今は三人だしなぁ……」

 

 じゃんけん等で勝敗を決める、なんて事をすればそれこそギャラリーが「ふざけんな!」と大爆発必至だし、ここにきて人数がアダとなるとは思いもしなかった。

 

 「貴方達ねぇ……一度鏡を見たらどう?そんなボロボロな人をいくら倒したって自慢にならないわ」

 

 「妙な所でプライド高いな、お前……」

 

 もう何でもいいから終わらせたい。そんな気持ちが宿った溜息をキリトと同時に零すと、眼前の少女はクスクスと笑みをこぼしながら自身のポーチを漁る。

 

 「ところでキリト、これあげる」

 

 「ん、何を?」

 

 完全に気の抜けていたキリトが言われるがままに右手を出すと、そこに拳大の球体を乗せ―――ポチった。

 

 「げぇ!?」

 

 「え?コレってばくだ―――」

 

 「―――フフッ、わぁーい♪」

 

 肩を貸し続けていたオレの左手は首に回っている相棒の左腕を掴み、右手は彼の背中を支えている。つまり塞がっているため対応ができない。

 キリトは完全に気が抜けていたため反応が致命的に遅れ、渡された球体―――プラズマグレネードを捨てられないよう、笑顔の悪魔(シノン)に腕ごと抱きかかえられていた。

 

 (おいおい、これってまさか……)

 

 オレ達三人ともVIT(耐久)は低いため、この爆発で等しくHP全損は確定。同時に生存者はゼロになる。第一BoBのラストを飾った「お土産グレネード」の単語が脳裏をよぎった瞬間、オレ達は眩い閃光に飲まれるのだった。

 

 ―――第三回バレット・オブ・バレッツ本大会優勝者【Sinon】、【Kirito】、【クロト】

 

 三人同時優勝という、優勝者数の最多記録が破られる事は長らく無かった。

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