SAO~黒の剣士と遊撃手~   作:KAIMU

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 お待たせしました。

 未だにスランプから抜け出せた気がしませんが、何とか仕上げました。


百十二話 氷城突入

 クロト サイド

 

 トンキーとロッキーに乗ったオレ達の前に突如現れた巨人の女性―――泉の女王ウルズから、彼女や同胞である丘の巨人族とそれを害するスリュムをはじめとした霜の巨人族、そして聖剣エクスキャリバーを巡る話を聞き、流れでクエストを受けた後。そのまま目的地のダンジョン、スリュムヘイムの入り口に到達しトンキー達から降りた所で、アスナがぽつりと呟いた。

 

 「なんだか…すごい事になってきたね」

 

 「これって普通のクエスト……なのよね?でもその割には、話が大がかり過ぎるっていうか……動物型邪神が全滅したら、今度は地上まで霜巨人に占領される、とか言ってなかった?」

 

 彼女の呟きに乗っかるように、尻尾を揺らしながらシノンがそう言うと、腕組みしたキリトが頷く。だが、運営から告知されている最新情報はもっぱらアインクラッドの二十一層から三十層までがクリスマスあたりに実装された事についてであり、ヨツンヘイムやアルンに関わるような情報は見覚えが無かった。

 

 「んー……つまり、トンキーとロッキーの仲間が全滅した場合、圏内にある筈の街が人型邪神やその親玉に攻められるって訳だろ?そういった襲撃イベントやそのルート分岐を含んだクエストが、運営の告知無しに実装されるか普通?」

 

 「クロの字の言う通りだな。一般的には一週間くらい前には告知がある筈だぜ。今の運営だってそこら辺は良心的だったしよ」

 

 クラインの言葉に全員が頷き、次いで納得がいかないとばかりに揃って首を傾げる。するとキリトの肩に乗っていたユイが全員の中心にとなる位置まで飛んできた。

 

  「あの、これは百パーセントの確度ではない憶測なのですが……恐らくはカーディナル・システムが自動生成した可能性があります」

 

 「自動…生成?システムが?」

 

 目を瞬かせるシノンの呟きに頷くユイは、そのまま続ける。

 

 「はい。シノンさんがプレイしていたGGO等、現在稼働しているザ・シード規格のVRMMOに使用されている機能縮小版のカーディナル・システムと異なり、このALOにはオリジナルの複製品……旧ソードアート・オンラインに使用されていたシステムと同じ機能・権限を持つフルスペック版が用いられています」

 

 元々ALOは須郷(ゲス野郎)のクソみたいな研究の隠れ蓑として、SAOサーバーを丸々コピーして作られた経緯がある。故にオレやキリトが初めてログインした時には不完全ながらもSAOでのスキルや資金が引き継がれた事だってある。

 

 「そしてシュリンク版では削除されている機能の中に、クエスト自動生成機能があります。これは接続しているネットワークを介して世界各地の伝説や伝承を収集し、それらの固有名詞やストーリー・パターンを利用・翻案してクエストを無限に生成(ジェネレート)し続けるのです」

 

 ナニソレ、とばかりに唖然とするシノンに対し、旧SAO組の面々は思い当たる節がある為か揃って遠い目をして当時の事を振り返る。あの時はデスゲームの中で生き抜く事が日常と化していた為に非日常に対する感覚が麻痺していたが、今思えばおかしなモノだった。

 

 「おれ達がアインクラッドでさんざんパシらされたクエ達……ベータん時を除いた全部がシステム様が自動で作ってたってコトだったのかよ……」

 

 「どうりで多すぎると思ったのよ。七十五層時点で情報屋のデータベースにあったのだけでも一万個を軽く超えていたもの」

 

 「ですね……それにわたし達が一度調べつくした筈の所からも、後になって新しいクエストがしょっちゅう見つかってましたし」

 

 ギルドの運営資金の調達やメンバーのレベリングの為にと効率のよいクエストを常に探していたギルド所属組が身を震わせ、その横でシリカが俯く。

 

 「あたしも……三十層あたりだったかな。変なマスク付けてノコギリ担いだオーガを倒すクエ、倒しても倒しても翌週にはまた掲示板に張り出されてたんですよ。何のお話を元にしたんだか……」

 

 「ま、まあ皆さん!SAOのお話は一旦置いておきましょうよ。ユイちゃんもまだ言いたい事がありそうですから」

 

 パン、と手を叩いて全員の意識を現在に引き戻したセイに促され、小さなピクシーは何かを恐れるような表情で話を再開する。

 

 「ストーリーの展開次第ではスリュムヘイムが上昇してアルンを破壊、地上でも邪神級モンスターが出現するようになる……その場合、行きつく所まで行きつく恐れがあります」

 

 「行きつく所?」

 

 ぶっちゃけ伝承や伝説にさほど詳しくないオレがユイの言わんとする事が掴めずオウム返しに聞くと、彼女ははっきりとした声量で告げた。

 

 「このALOの元となった北欧神話における最終戦争……神々の黄昏(ラグナロク)です」

 

 「ま、待って!それってヨツンヘイムやニブルヘイムの霜の巨人族だけじゃなくて、さらにその下のムスペルヘイムにいる炎の巨人族まで現れて……世界樹の全部を焼き尽くすっていうやつでしょ!そこまで行きつくなんて、そんな……そんなゲームシステムが、ALOのマップ全部を崩壊させるような事、できる筈が……!」

 

 堪らずリーファが声を上げるが、ユイはそっと首を左右に振る。

 

 「可能です。オリジナルのカーディナル・システムには、ワールドマップ全てを破壊する権限があります。何故なら……旧カーディナルの最後の任務は、浮遊城アインクラッドを崩壊させる事だったのですから」

 

 皆が一様に絶句する。最悪のパターンが起こりえる状態である事を突きつけられた中で、それでもとシノンが尻尾を震わせる。

 

 「仮に神々の黄昏(ラグナロク)が起こったとしても、それが運営の意図していない事だったなら、サーバーを巻き戻すとかできないの?」

 

 「運営サイドが手動で全データのバックアップを取り、別のメディアに保管されていれば可能でしょうが……カーディナルの自動バックアップ機能を利用していた場合、設定によっては厳しいかと」

 

 「なら、すぐ運営に伝えれば!」

 

 名案とばかりにフィリアが声を上げ、すぐさまクラインがウィンドウを操作し始める。しかしそれも数秒後にはダメじゃん、の呟きと共に項垂れて徒労に終わった。

 

 「人力サポート時間外でやんの……」

 

 「年末の日曜の午前中ですからね……」

 

 今の時間帯を再確認するセイの呟きに、全員が肩を落とす。

 

 「……こうなったら、やるしかないよお兄ちゃん、皆」

 

 「そうだな。元々エクスキャリバー入手のために集まったんだ、護りが薄いっていうのなら好都合だ」

 

 空元気でも雰囲気を盛り上げようと努めて明るい声色と共に、相棒が二振り目の剣を装備する。彼の二振りの剣はそれぞれハルとリズが新たに打ち上げた渾身の作品で、かつてのエリュシデータとダークリパルサーに負けず劣らずの活躍を新生ALO内でみせてきた。

 

 (二刀で、あの眼……本気も本気ってヤツだな)

 

 命懸けではないただのゲームに過ぎないけれど。心持としては旧アインクラッドの時と変わらずに行く事をオレも決意する。女王ウルズから渡されたメダリオンはリーファの手の中で既に六割程黒く染まっていて、タイムリミット的には楽観視できないのだ。どんな強敵が居座っているか分からないが、死に戻りで再攻略、なんて時間は無い。

 

 「元SAO攻略組でもトップ張ってた面子がそろってるんだもん、聖剣エクスキャリバー(最高級のお宝)だって絶対ゲットできるわよ」

 

 「フィリアも現金ねぇ……ま、あたしも店の心配よりはそっちの期待の方が大きいけど」

 

 「へへっ、何ならMトモの一面飾ってやろうぜ、'エクスキャリバー獲ったどー!'って感じでよ」

 

 冗談めかしたクラインの発言に茶々を入れる者はおらず、逆に合意するようにおー!と拳を突き上げる。今年最後となるであろう冒険が、始まるのだった。

 

 ~~~~~~~~~~

 

 氷の居城スリュムヘイムに殴りこんで二十分、オレ達は第二階層のボスに少々手こずっていた。

 

 「お兄ちゃん、金色の方、物理耐性が高すぎる!」

 

 「分かってる!けどここでセイに触媒を使わせる訳にもいかないだろ!」

 

 立ちふさがるのは黒と金、二体のミノタウロス型邪神。どうやらこいつ等はそれぞれ物理耐性と魔法耐性が極振りという特徴があるらしく、セイ以外の攻撃手段が物理一辺倒なオレ達は金ピカの方に有効打を与えられずにいた。

 元々は互いに得意な属性の攻撃に対してはヘイトを無視して相方を庇うという、相手にするには厄介この上ないコンビネーションを披露し、それならばと数人で金ピカを無理矢理抑えている間に黒色を倒すプランで挑んだ。しかしあと一歩の所で金ピカが大暴れして仕切り直しを余儀なくされ、その間に下がった黒色が瞑想行為―――回復行動をとってきやがった。さらに金ピカは弁慶が如く黒色を守り、オレやシノンの矢ですら一度の取りこぼし無く全て防ぐか弾くかしやがる。

 

 「―――衝撃波攻撃、二秒前!」

 

 現在は金ピカに唯一ダメージを与えられるセイがタゲられないように気を付けながら、彼の中級魔法で地道にHPを削る作戦にシフトしていた。黒色が復帰するまでに金ピカが回復行動をとる程に追い込めれば、金ピカの援護防御の無くなった黒色の方を始末するのはこのメンツならば容易い。

 

 「来ます!」

 

 ユイの警告に従ってキリト達が左右に飛び退く。誰も直撃こそ避けたが、広すぎる攻撃範囲と邪神らしく凶悪な攻撃力によって彼らのHPは一気にレッドゾーンまで減少する。超高性能AIたるユイのアシストという反則技に近い手段を解禁してなおこの有様であり、セイの魔法で削るまで肉壁の役割を続けるキリト達が持つかは……加速度的に怪しくなってきている。

 

 (キリトだけなら多分持つ……けど、他の皆は……何人かは死ぬな)

 

 前衛を務めるキリト、リーファ、クライン、中衛にいるリズ、シリカ、フィリア、後衛にシノン、アスナ、サクラ、セイ、オレ。削りダメージだけで瀕死、直撃したら即死の状況で時間稼ぎに徹する前衛と中衛からは恐らく四人程落ちるだろう。感情抜きに味方の損害予測をしてしまう事に慣れたあたり、自分の意識が冷酷な方へと大分傾いている自覚はあったが、キリト達の消耗を察してなおセイに超火力の上級魔法を使わせるのには反対だった。

 

 (ここのラスボスが金ピカと同じだけの物理耐性を持っていたら、セイの触媒が尽きた時点で詰む)

 

 高火力の魔法は相応に長い詠唱と高いMP、さらに専用の触媒を多量に要求される。高位の魔法であればあるほど使い捨ての触媒アイテムも高価で希少な物となり、安易に使うわけにはいかないのだ。

 金ピカのHPは残り六割。上級魔法なら一発で仕留められるが……その一発がラスボス攻略の明暗を分けると理解しているから、セイも大人しく中級魔法で戦っている。

 

 「キリト君!今のペースだと金色を倒す前にMPが切れる!」

 

 「メダリオンも七割くらい黒くなってるよ!これ以上時間をかけるの、良くない気がする!」

 

 けれど、現状維持をよしとしない事態が発生する。パーティー唯一のヒーラーであるアスナのMPと、女王ウルズの眷属達の残量を示すメダリオンという二つのタイムリミット。それらが何か打開策をとる事をオレ達に迫ったのだ。

 

 「……セイ、触媒は?」

 

 「一回分なら、オブジェクト化してあります。ですけど……」

 

 今回のクエストにおけるリーダー役たるキリトの判断やいかに、といった所か。決して潤沢にある訳ではないセイの上級魔法を使うのか、あるいは別の方法で金ピカのHPを吹っ飛ばすのか―――

 

 「セイの魔法は温存!上級ソードスキルの一斉攻撃で金色のHPを削りきる!」

 

 「おっしゃあ!その言葉待ってたぜキリの字ィ!」

 

 相棒の決断に、クラインが真っ先に答える。他の前衛・中衛組も声こそ上げなかったものの、同意するように各自の得物を握り直す。

 SAOの象徴たるソードスキル。その中でも高威力かつ技後硬直の長い上級のものは、ALOでは物理属性と魔法属性を併せ持つ代物として新生アインクラッドと共に実装された。故に物理耐性極振りの金ピカであろうとも、上級ソードスキルを喰らえば内包された魔法属性分のダメージは通る。

 

 (そうか……奥の手(アレ)込みなら、削り切れるな)

 

 ALOにはSAOのように二刀流スキルは存在しない。射撃スキルは弓スキルとして落とし込まれたが、他のユニークスキルは削除された状態で新生アインクラッドと共に実装されたのだ。故にALOで二刀流状態になってもメリットは薄い……はずだった。

 

 「シリカ、カウントで泡を!―――二、一、今!」

 

 「ピナ、バブルブレス!」

 

 シリカの上空を舞う小竜が、主の指示通りに動く。放たれた泡が金ピカの鼻先で弾け、その幻惑効果で足止めされる。

 

 「ゴー!」

 

 相棒の合図に従い、オレは大技の『エクスプロード・アロー』を放つ。炎九割、物理一割の攻撃が目に見えて金ピカのHPを削る。一方シノンは熟練度がギリギリ足りず『エイム・シュート』を選択した。オレの火矢が金ピカの頭部から胸元にバラけて命中したのに対し、彼女の一射は爆炎を突っ切って鼻先を貫いて見せた。やはりスナイパーであるシノンの方が照準の精密さは上だ。

 ピナの泡、オレ達の矢と続けて硬直を課せられ無防備な姿を晒す金ピカに、キリト達の剣技が炸裂する。各魔法属性を示すエフェクトを纏ったそれぞれの剣が、刀が、メイスが次々と筋肉質な体へと叩き込まれていく。いかに金ピカが巨体であるとはいえ、一度に攻撃できるのはせいぜい二人か三人だ。事前の取り決め無しに順番にソードスキルの発動タイミングをずらして互いの邪魔をしないのは、長らく連携をとってきた賜物といった所か。

 

 「う……おおっ!」

 

 総攻撃のトリとして、炎を纏った相棒の剣が高速の五連突きを繰り出す。次いで斬り下ろし、斬り上げと共に跳躍し、大上段からの縦斬りを放つ。片手剣八連撃『ハウリング・オクターブ』だ。攻撃に参加した全員がここで長い硬直を課せられ、動けるのはサクラ、アスナ、セイの三人のみとなる。しかしサクラとアスナはそれぞれスキルと魔法によるバフと回復の後方支援に徹している為前線には手が届かず、セイは硬直した仲間を巻き込む恐れから攻撃魔法を撃てない。

 硬直が解けるよりも、金ピカがノックバックから回復し、反撃を繰り出す方が早い。このままでは前衛、中衛組が死に策は失敗する―――

 

 (やっちまえ、相棒!)

 

 左手の刀身を輝かせ動き続ける親友の姿が、全滅の未来を覆した。

 

 ~~~~~~~~~~

 

 キリト サイド

 

 『ハウリング・オクターブ』の八撃目。俺は右腕から意識を切り離し、左腕のみに集中する。

 

 (……ここだ!)

 

 システムアシストによって金色のミノタウロスを斬り裂く右手の剣と並行して、左手の剣がソードスキルのライトエフェクトを纏う。許容される誤差はコンマ一秒以下のタイミングで発動した左側の剣技が、出し切った『ハウリング・オクターブ』の硬直を上書きして俺の体を動かし続ける。左右の体―――脳がそれぞれ別の行動をとる強烈な違和感に気合で耐え、剣を振るう。三連重攻撃『サベージ・フルクラム』が氷の欠片を散らしながら金色の巨躯を抉り斬りる中、今度は右腕のみに意識を集中させる。一度輝きを失った右手の剣が再び煌くと、『サベージ・フルクラム』の硬直を上書きして更なる連撃を見舞う。

 三か月程前に左右交互にソードスキルを発動すれば硬直無しで技が続くというシステムの抜け穴じみた現象を偶然発見してから練習を繰り返して尚、三度目の成功率は五割未満だったのだが……GGOでの一件以来、『ハウリング・オクターブ』から始まる四つのソードスキルのコンボは確定で成功できるようになった。

 

 「ら……あっ!」

 

 一度背を向けていた金色へと振り返りながら、垂直方向に四連撃を繰り出す『バーチカル・スクエア』。それと同時に皆の硬直も解け、四撃目を放った俺の横をまずクラインが駆け抜けて刀を一閃。そこからさらに金色の両腕、両足、頭とリーファ達が色とりどりに輝く得物を叩き込んでいく後ろ姿を見ながら、俺は『バーチカル・スクエア』に続く最後のソードスキルを発動させる。

 

 (……?)

 

 第二の一斉攻撃の中で相棒の矢が放たれた気配が無いのが一瞬気になったが、些細な事として左腕に意識を集中させ続ける。大方自分が攻撃しなくとも金色を倒せると判断して、黒色の方に備えているのだろう。二刀流上位ソードスキル『スターバースト・ストリーム』に届く連撃数を誇る今のコンボだが、あちらよりも遥かに危険な綱渡りであるが故に、目の前の事以外を気にする余裕は無い。

 

 「これで……トドメだぁ!!」

 

 ジェットエンジンじみた轟音と共に、赤黒い炎を纏った左手の剣が引き絞っていた腕から打ちだされる。『ヴォーパル・ストライク』の爆炎によって視界がゼロとなるが、左腕には筋骨隆々としていたミノタウロスの巨体へと剣が突き刺さった、確かな手応えがあった。前衛・中衛組とシノンが長い硬直を課せられる中、突き出した左腕の先の視界が晴れていく。

 

 「な……に……!?」

 

 剣は確かに突き刺さり、相手の巨体はノックバックで体勢を崩していた。その色は―――()

 

 (庇った!?今まで専念していた、自分の回復を中断してまで!?)

 

 HPがまだ八割に届かないでいた黒色の邪神が金色を押しのけるようにして俺の一撃をその身で受け止め、瀕死の相方を窮地から救ったのだ。『ヴォーパル・ストライク』はダメージの七割が魔法属性である為、その魔法属性に極めて高い耐性を持つ黒色には有効とは言い難い。

 一様に無防備な姿を晒す俺達に対し、受けた技の衝撃に堪えながらも「してやったり」と言わんばかりに口角を上げる黒色。その横では相方に守られた金色の邪神が、勝ち誇った笑みで悠々とバトルアックスを振りかざす。

 

 ―――硬直は、未だ解けず。

 

 既に切り札を切った俺には、この状況を覆す手段は無い。倒しきれなかった悔しさは勿論あるが、それ以上にシステム上のものとはいえ互いに助け合う見事な連携……絆への賞賛の方が大きかった。

 だが、お前達も何か忘れていないか?俺には無くとも、俺達(・・)ならば……まだ手はあるって事を。

 

 「任せて!」

 

 右側を、青い閃光が駆け抜ける。その事を認知した頃には彼女が握る細剣の五連突きが金色に打ち込まれ、数ドットしか残っていなかったHPを吹き飛ばす。一拍遅れて『ニュートロン』のフィニッシュエフェクトが邪神の足元から吹き上がり、俺達への攻撃は阻まれた。

 

 ―――え……?

 

 護った筈の相方が消失した事を理解できないのか、さっきまでの笑みはどこへやら。黒色は呆然とさっきまで金色が立っていた方を眺めていた。

 

 「やああっ!」

 

 その無防備な脇腹にサクラの『レイジスパイク』が突き刺さると、情けない鳴き声と共に黒色が派手にたたらを踏んだ。

 

 「安心しろよ……すぐ相棒に会わせてやらぁ」

 

 いつの間にかクロトが背後から黒色に取り付いており、少々物騒な言葉と共に握っていた短剣でその喉笛を掻っ切った。

 

 「ブルアアァァ!?」

 

 黒色の悲鳴に悲しみが混じっていると感じたのは、俺の気のせいかもしれない。その後は硬直が解けた俺達も混ざって、幾らか黒色に同情したくなるくらいボコボコにした末、金色と同じ結末を辿らせるのだった。




 スケルツォ楽しみです。
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