展開遅いってタグもつけたほうがいいですかね?
クロト サイド
エギルがキバオウを論破した後、会議が再開された。
「さて、先ほどエギルさんが言っていた例のガイドブックだが……実はボス攻略編として最新版が発行されていたんだ」
ディアベルのこの発言に、会議に参加していた全員が驚いた。ディアベルはポーチから最新のガイドブックを出し、その内容を簡潔に読み上げる。
「ボスの名前は【イルファング・ザ・コボルトロード】で、【ルイン・コボルトセンチネル】という取り巻きが、最初とボスのHPが一段減るごとに三体ずつポップする。ボスの武器は片手斧とバックラーだが、四段あるHPバーの最後の段がレッドゾーンに入ると、曲刀カテゴリのタルワールに持ち替える。取り巻きの方はポールアックスを使用する……とのことだ」
オレはディアベルの話を聞きながら、ベータ時代の記憶と照らし合わせていた。キリトの方も同じ事をしていたらしく、情報が記憶していたものと同じだと分かると互いに小さく頷きあった。
「この情報を基に、今から各パーティーの役割を決めようと思う!場合によってはメンバーを入れ替えるかもしれないから、連携をとれるようにしてくれ!」
ディアベルはそう言うと、各パーティーを見て回った。その過程でステータスタイプが似た人がまとまるようにメンバーを入れ替え、タンク隊を二つ、アタッカー隊を二つ、長物のサポート隊を二つ作った。ここまではボスと直接戦うパーティーだ。
残りの二パーティーは上記の六パーティーがボスに集中できるように取り巻きを排除する役割を任された(キバオウ達がメインで、オレ達はサポートだと言われた)。
「最後に、金はシステムによる自動均等割り、経験値は敵を倒したパーティーのもの、アイテムはゲットした人のものとする!異存は無いな!」
分配方法に異議を唱える者はいなかった。そのまま解散となり、全員が三々五々に散って行った(全員道具屋で最新のガイドブックを貰っていた)。ちなみに、再集合は明後日だ。明日はディアベル達がガイドブックと実際のボスに違いがないか確認を取るため、一日空けたのだ。
「明日はセンチネルを想定したスイッチとPOTローテの練習だな~」
「そうだな。二人もそれでいいか?」
伸びをしながらオレが明日の予定を決めると、キリトはすぐに賛成し残る二人に同意を求めた。
「……すいっち?」
「ぽっと……ろーて?」
……え?
「……もしかして……知らないのか?ここまでコンビ組んでたんだろ?」
いち早く復帰したキリトが二人に問いかける。
「えっと……実は……わたし達、ゲーム初心者なの……」
「ああ、そういう事か……」
片手剣使いがゲーム初心者であることを教えてくれたので、キリトは納得した。しかし、それはオレ達がパーティープレイのレクチャーをしなければならないと言う事でもあった。コミュ障のキリトには大変だ。今もオレに対して「説明よろしく」的な事を目で語ってくる。
(あ~メンドクセー………よし、ハルに手伝ってもらうか。アイツコミュ力高いし)
「キリト、ハルに手伝ってくれるように説得よろしく」
「は!?何でだよ!」
「コミュ障のお前じゃアテにならんし、オレ一人でやれる気がしないからだ」
「うぐっ!!」
ハルを巻き込む事にキリトは驚くが、オレはハッキリと理由を告げる。
「あの~、誰が何を手伝うの?」
「私達にも分かるように説明しなさいよ」
渦中の外だった二人が聞いてきた。
「気にすんな。明日お前らにどうやってスイッチとPOTローテを教えようかって話してただけだ。手伝いってのは、二人に教えるのをオレ達の仲間に手伝ってもらおうって事」
「ああ、そういう事」
さっきからトゲトゲしかった細剣使いが、納得したようにうなずいた。
「んじゃ、明日はこの街の酒場に十時に集合って事で」
「ええ、また明日」
「明日もよろしく」
オレが集合場所と時間を思いつきで決めてしまったが、二人は特に問題は無かったようで、すぐに了承してくれた。そのまま二人は自分達の宿屋へと向かって行ってしまった。丁度その時、キリトにメッセージが届いた。
「クロト、ハルが先に風呂使ったって―――」
「「今、何て!?」」
アレ?さっきまで十数メートルくらい離れた所でこっちに背を向けて歩いてたハズだよな??それなのになんでオレの横にいるキリトに二人して掴みかかっているんだ???
「……あ、あの……お二人は、何に反応なされたので……?」
顔を引きつらせながら、キリトは恐る恐る訊ねた。
「貴方、さっき何を使ったって言ったの?」
「へ?それは俺じゃなくて―――」
「いいから、さっき何を使ったって言ったか答えて!」
鬼気迫るってのはこういうことだろうか?二人の雰囲気がとてつもないほど真剣だった。正面にいるキリトは冷や汗ダラダラだ(仮想世界で汗って掻いたっけ?)。
「あ~、いや……ふ、風呂……ですけど……?」
「「貴方が泊まってる宿って何処(何処なの)!?」」
どうやら二人は風呂に食いついていたようだ。オレとキリトは無くても平気、ハルは習慣として入りたがっていたがどうしてもという訳ではなかった。だが、女の子には死活問題だったらしい。できれば二人の希望を叶えてやりたいが……
「俺達が泊まってるの、NPCの家の二階なんだ。だから空き部屋は無いし、他の民家も全部使われてると思うんだ」
キリトが無慈悲に、二人に現実を突きつける。キリトよ、もう少し言い方ってモンがあるだろ……
「ど、どうしましょう?」
「仕方ないわ……覚悟を決めましょう」
「え!?でも、それは……!」
がっかりしていると思っていたが、二人は小声で真剣に話し合っていた。何についてなのかは全く分からないが、相当迷っているらしい。
(そろそろ、キリトに掴みかかったままだってのを注意した方がよさそうだな……)
「おーい、二人とも―――」
「貴方の部屋のお風呂」
「貸して……!」
「……はい?」
オレが注意しようとしたら、二人は有無を言わせない口調で風呂を貸せって言ってきた。キリトは呆気にとられ、間の抜けた声を出してしまう。つーかそれであんなに悩んでたのか?アホくせぇ気が……
「「何か失礼な事考えてない……?」」
「イイエ、ナンデモアリマセン!」
二人から睨まれた。女って怖ぇ!
あの後、風呂を貸す事にしたオレ達は、宿にしている民家に二人を招いた。
「ただいま」
「あ、兄さんお帰り……ってその二人誰?」
ハルがオレ達の後ろにいる二人を見て驚いた。
「おいキリト。ハルにメッセージ送ってなかったのか?」
「アホか!何て説明すればいいんだよ!?」
……そりゃぁ、オレもわかんねぇよ。と、
「兄さんって、どういう事?」
ハルの兄発言に、細剣使いが質問をする。
「すみません、自己紹介がまだでしたね。僕はハルといいます。キリトという、こちらの片手剣使いの男性の弟です」
と、営業スマイルを………って相手は女だぞ!!ショタコンに目覚めたらどうすんだ!!
「そ、そうなの。よろしく」
「よ、よろしくね」
二人とも一瞬固まったが、すぐに平静に戻れたようだ。
(よかった。変な扉を開かなくて済んだみたいだな)
「えっと、お二人の名前は何ですか?」
「アスナよ」
「わたしはサクラっていうの」
ハルが二人の名前を聞いてくれたので、オレはようやく細剣使いがアスナで片手剣使いがサクラなのだと分かった。
「ところで兄さん、どっちを釣ったの?」
「「ぶふぅ!?」」
オレとキリトは同時に吹いた。キリトよ、釣るってあれか?お前はリアルで女の子に手を出しまくっていたのか?マジ引くわぁ。
「ハル!誤解を招くような事言うな!ボス戦で暫定的にパーティー組んだだけだって!!」
「ふ~ん、まあいいや」
ハルはキリトに対して、まるで信用していない声で返事をした。と、ソワソワしているアスナ達をみて事情を察したらしく、確認するように聞く。
「もしかして、お風呂に入りたいんですか?」
「「!!?」」
何も言っていないのに気づかれ、ものすごく動揺しだした二人。それに対してハルは落ち着いた声で続ける。
「大丈夫ですよ、今は空いてますから。覗かれるのが心配でしたら、一人が見張りで残ればいいんじゃないですか?」
あ……覗きに関してはオレも考えてなかった。流石ハル、キリトとはえらい違いだ。
「え、えっと」
「アスナさん、先に入ってください」
「…いいの?」
「はい。覗かれないようにしっかり見張ってます」
「……じゃあ、よろしく」
そう言ってアスナは風呂場へ直行し、サクラは風呂場の扉の近くの椅子に座って見張りを始めた。オレはここでする事が無い。
(暇だし軽業スキル上げに行きてぇな……ん?今ここでハルとキリトにレクチャー任せりゃよくね?)
ハルもキリトも、今日は特にする事は無い筈だ。なら、見張りをしているサクラに二人がレクチャーすれば自分はスキル上げができると考えた。我ながらナイスアイディアだ。
「キリト、ハルと協力してサクラにレクチャーしとけ」
「は!?お前は!?」
「スキル上げしてくる」
そう言ってさっさと部屋を出る。逃げるが勝ちってヤツだ。キリトが「裏切り者ぉ!!」とか叫んでるみたいだが、知~らない。
キリト サイド
クロトが出て行ってしまい、部屋にいるのは俺、ハル、サクラの三人になった。
(クロトのヤツ、ボス戦が終わったら覚悟しとけよ……!)
「兄さん、何のレクチャーをするの?」
「ん?ああ、サクラとアスナがゲーム初心者だから、スイッチやPOTローテとかのパーティー戦のレクチャーをな」
「ああ、そういう事だったんだ。分かったよ」
ハルはすぐに理解してくれて、サクラにレクチャーを始めた。まずはスイッチだ。
「この世界のスイッチは、前衛と後衛の入れ替わりの合図みたいなものなんです」
「入れ替わり?」
「はい。いくらパーティーと言っても、一度に攻撃できるのは一人か二人までなんです。それ以上だと味方が邪魔になって、ソードスキルが満足に発動できません。ここまでは分かりますか?」
「ええ、なんとなく」
相変わらず、ハルの説明は分かりやすいな。俺、必要ないんじゃ―――
「ソードスキルのメリットとデメリットは、兄さんが教えてくれますよ」
「へ?」
突然話を振られ困惑していると、ハルに目で急かされた。
「ええっと、ソードスキルのメリットは言わなくても分かってるよな。デメリットとして挙げられるのが、発動するのに高い集中力が必要なのと、発動後に硬直時間があることだ。だから、メンバーがソードスキルを発動したら、硬直時間をカバーするために―――」
「スイッチで入れ替わるって事?」
「その通りですよ、サクラさん」
途中で遮られてしまったが、スイッチについては分かってくれたようだ。続いてPOTローテだ。
「まずPOTですが、これはHP回復用のアイテムの事です。今のところはポーションの事だと思ってください」
「POTは回復アイテムっと。それで?」
「POTローテとは、POTローテーションを略したもので、交代で回復することです。簡単に言えば、スイッチして回復する時間を稼いでもらう事です」
「確かに、ポーションってすぐには回復しないもんね……」
「ああ、SAOのポーションは時間をかけてゆっくり回復する物だからな。必ず誰かが時間を稼がなくちゃならないんだ。まあ、すぐに回復する物であっても使用する瞬間は無防備になってしまうから、POTローテは他のMMOでもよく使われるんだ」
俺達の説明で、理解してくれたようだ。かなり噛み砕いた説明だったので、本来の意味を完全に教えたわけではない。しかし、今の説明でもボス戦は大丈夫だろう。
サクラへのレクチャーを終え、しばらくするとアスナが出てきた(フードまでしっかり装備していた)。
「サクラ、待たせてごめん」
「いえ、気にしないでください」
そう言ってサクラは風呂場へ入っていった。そしてアスナはクロトがいない事に気づく。
「もう一人は?」
「あぁ、クロトならスキル上げに行ったよ」
「ふぅん」
アスナはそれっきり、こちらに話しかけてこなくなった。こうなってしまっては、コミュ障の俺にはどうする事もできない。なのでハルに助けを求めようと思った時
―――ぼすっ
隣にいたハルが、俺の膝の上に倒れこんできた。丁度膝枕だ。
(いつの間にか寝てたのか。まあ、接客は大変だろうし、街で一人っていうのも心細いだろうから仕方ないか)
そう思い、ハルの頭を優しく撫でる。
「……貴方達……仲、いいのね」
「ああ。この世界で、たった一人の家族だからな」
アスナの言葉に答えながらでも、俺の手は自然とハルを撫で続ける。こういう事は今まで何度もあったから慣れっこだ。
本当なら、アスナにもサクラと同じようにレクチャーしなければならない。だが、コミュ障の俺一人では無理だと分かっているし、ハルを起こしたくない。まあ、レクチャーなら明日でもできるし、最悪サクラから教えてもらえばいいだろう。
―――コン、ココン、コン
特徴的なノックが聞こえた。本来なら、誰が来たのかすぐに分かる筈だった。だが今の俺はハルの方ばかり気にしていたので、
「アスナ、頼む」
と言ってアスナにドアを開けさせてしまった。
「アレ?ここってキー坊達のねぐらじゃなかったカ?」
「あ、アルゴさん!?」
ここでようやく俺は自分の失態に気づく。
(しまったぁ!初対面の女性をねぐらに連れ込んだってアルゴに誤解される!!)
今この状況をどう説明しても、アルゴの誤解を解く自信がない。しかし、誤解されたままでは脚色された情報をばら撒かれ、俺の居場所がアインクラッドからなくなってしまう!つまり―――
(あぁ……俺、終わったな……)
あっという間に、俺の心は絶望一色に染まっていく。
「ホウホウ、アーちゃんとサーちゃんはキー坊んトコのお風呂を借りにきたト?」
「あ、いや、別にそんなんじゃ―――」
「照れるナ照れるナ。オネーサンだって二日に一回は借りてるゾ?」
おいバカやめろ!そんな根も葉もない事を言うな!アスナが信じたらどうすんだよ!
「キー坊もそんな慌てた顔すんなヨ。別に恥ずかしがる事でも……」
ん?俺をからかうために近づいてきたアルゴが突然黙ったぞ。一体何だ?
「おいアルゴ、どうし―――」
「なんとまア、気持ちよさそうに寝てるナ。これじゃオネーサン、キー坊をからかえないヨ」
ハルを眺めてニヤニヤしていた。少しの間そのままだったが、
「仕方ないナァ。ハル坊の寝顔に免じて、ここで見た事は黙っておくヨ」
ため息混じりにそう言った。……あれ?俺、助かった??
「まア、オレっちが来た理由は分かるよナ、キー坊?」
ホッとしたのもつかの間、どうやらここからが本題らしい。まあ、予想はできるが。
「俺の剣を買いたいって話だろ?」
「そうだヨ。今日中なら、三万九千八百コルだって依頼主が言ってたヨ」
「サンキュッパか……」
思っていた以上の値段だ。少し驚いてしまう。
「どうダ?」
アルゴが問いかけてくるが、俺の答えは決まっている。
「売らないよ。あれはハルが鍛えてくれた大事な剣なんだ。誰かに渡すつもりは毛頭ない」
「そうカ。じゃあ依頼主には無理筋ダって伝えとくヨ」
これでアルゴの用件は済んだが、依頼主が気になったので彼女に交渉する。
「アルゴ、依頼主の口止め料は?」
「千コルだヨ」
「なら千二百出す。依頼主の名前を教えてくれ」
俺が金額を言ったあたりから、アルゴはウインドウを操作し始めた。多分依頼主に確認を取っているのだろう。一分くらい待ったところで、返事が来たようだ。結果は―――
「教えても構わないそーダ」
「そうか。それで、一体誰なんだ?」
オブジェクト化した千二百コルをアルゴに渡しながら、依頼主の名を聞く。
「キー坊も知っているヤツだヨ。今日の会議で大暴れだったからネ」
そう言われて、当てはまる人物が一人だけいた。
「……キバオウ、か?」
「ご名答だヨ」
依頼主の正体は分かったが、新たな疑問が生まれた。
(一体何がしたいんだ?四万コル近い金があるなら、俺の剣と同じくらいまで強化された武器を用意できる筈だ。それなのにどうして俺の剣を?)
今の俺の剣、『アニールブレード』は序盤でこそ優秀な剣だが、決してレアな剣ではない。プレイヤー間でも一万数千コルで取引されているし、強化素材や強化の費用を合わせても、トータル三万五千コルぐらいかければ六回強化できるはずだ(俺の場合は六回とも成功している)。
「まア、今そんな難しい顔してもいい事ないと思うゾ」
考え込んだ俺を見て、アルゴが言う。
「そうだな……」
今はボス戦に集中するべきだろう。詳しい事はその後だ。
「それとキー坊、装備を変えたいから隣の部屋借りるゾ」
「分かった」
アルゴにそう答えた後、俺はハルに意識を向ける。
「アルゴさん待って!そっちにはサクラが!!」
「ニャハハハ。ジョーダンだヨ、アーちゃん」
どうやらアルゴは風呂場で着替えようとしたらしい。それをアスナが慌てて止めるが、冗談だといってアルゴは笑い、寝室に入った。
その後着替えたアルゴは出て行き、サクラも風呂場からフル武装状態で出てきた。アスナへのレクチャーはサクラに丸投げし、明日の集合場所と時間を確認した後は帰ってもらった。
二人が帰ってしばらくしてからクロトが戻ってきたので少し文句を言い、それからハルを寝室へ運んでそのまま一緒に寝た。
アルゴのノックってこれであってましたっけ?いまいち分かりません……
プログレッシブは立ち読みで済ませていたので、アニールブレードの価格や費用はうろ覚えです。
捏造設定のタグありますし、もしものときはそれで押し切っていいですよね……?
誤字、脱字、アドバイス等ありましたら、感想にてお願いします。