SAO~黒の剣士と遊撃手~   作:KAIMU

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 お久しぶりです

 仕事で一カ月近く離れると書き方ど忘れして全然進まないですね……

 直近の癒しというかリフレッシュ要因がグリッドマンユニバースでした。アニメだけ追ってたけど期待以上に胸熱でした。特撮版まで網羅している人はもっと楽しめたんでしょうね。


百十五話 雷槌と聖剣

 クロト サイド

 

 フレイヤがトールだった。その事実に誰もが驚く中、最初に反応したのは―――騙された本人たるスリュム。

 

 「小汚い神めぇ!よくも儂を謀ってくれたな!!」

 

 ヤツの手にはいつの間にか氷の戦斧が握られており、ソレを猛然と振り上げて雷神へ突進していく。

 

 「その面切り離して、アースガルズに送り返してくれようぞ!!」

 

 巨大な槌と斧が激しくぶつかり合い、部屋が軋むと錯覚する程の衝撃が発生する。客観的に掛け値なしの美女だったフレイヤがゴリマッチョ化する等という想定外なイベントの精神的ショックはあまりにも大きく、ボス戦の最中で誰も彼もが呆然と突っ立ってしまった。そんなオレ達そっちのけで繰り広げられる巨人スケールの戦いは余波も凄まじく、うっかり当たればこちらのHPなぞ一撃で消し飛ばされそうだった。

 

 ―――もうコレ、オレ達いらなくね?

 

 などと思考が現実逃避しかけた時、シノンが声を張り上げた。

 

 「トールがタゲ取っている間に、全員で攻撃しよう!」

 

 「っ……ああ、全力攻撃(フルアタック)!大技のソードスキルも遠慮無く使ってくれ!!」

 

 すぐさま相棒が指示を出すと、オレ達はようやく我に帰って走り出すが、オレ一人が少々出遅れてしまった。戦闘中に呆けるなど、アインクラッドにいた頃なら絶対にしなかった筈だ。

 

 (まだ、あの時ほどの本気になれてなかったか……)

 

 二刀を構えて霜の巨人へ肉薄する背中を追いかけながら、内心で歯嚙みする。ザザのようなSAO当時の相手がいなければ、全盛期の自分を完全には引き出せないでいるのが悔しい。

 

 「―――!」

 

 セイの大魔法によって生じた特大の爆炎が、トールへ攻勢を仕掛けていたスリュムを飲み込む。堪らずたたらを踏んだ巨人へ、最初にたどり着いたのはクラインだった。

 

 「フレイヤさああぁぁん!」

 

 煩悩が籠った悲痛な叫びと共に彼の目元で何か光った気がしたが、繰り出された技の冴えは変わらない。業火を纏った刀が大上段から振り下ろされ、巨大な脚を大きく斬り裂く。他の皆も次々に己が得物をスリュムの両脚へと叩き込んでいき、遅れながらオレもそこに加わる。色とりどりのライトエフェクトが煌く乱舞に、後衛に徹していたサクラとアスナまで参戦すると、ついにその巨躯を支えきれなくなった霜の巨人が片膝をついた。

 

 「ここだ!」

 

 全員が正念場だと理解し、出し惜しみ無しで最大ダメージを狙える大技を繰り出していく。その中で一際輝くのはやはりキリトのスキルコネクトだ。金ミノタウロス相手に使用した二刀による連携が、絶え間なくスリュムを斬り裂いていく。

 

 (オレだって……!)

 

 相棒といえど、キリトにばかり活躍させるのは悔しい。彼に負けじと巨人の背中を駆け上り、無防備な首の後ろへと『アクセルレイド』の九連撃を叩き込む。

 

 「ぐ、むぅ……!」

 

 皆の猛ラッシュが効いたのか、スリュムは立ち上がる事叶わず四つん這いになる。

 

 「地の底に還るがよい!巨人の王!!」

 

 丁度頭を差し出すような姿勢になった所を、雷神は見逃さなかった。トドメとばかりに渾身の力で振り下ろされたミョルニルがスリュムの頭を床へと叩きつけ、彼の王冠を破壊しながらHPゲージを消し飛ばした。その様子を取り付いた巨躯から飛び降りている途中で見届け、仲間の傍に着地する。

 

 「ふっふっふ……今は勝ち誇るがよい、羽虫どもよ」

 

 HPを失いつつもポリゴン片に変わらないどころか氷結していきながら、スリュムは低い笑い声を漏らす。

 

 「だがな、アース神族に気を許すと痛い目を見るぞ……彼奴らこそが真の、しん」

 

 そこから先は続かなかった。意味深な事を言うスリュムのセリフを遮るように、半ばまで氷結していた彼の頭蓋をトールが踏み潰したからだ。その直後に霜の巨人の王は大量のポリゴン片へと爆散し、消えてしまった。

 

 「やれやれ……礼を言うぞ、妖精達よ。これで余も宝を奪われた恥辱をそそぐ事ができた。どれ、褒美をやらねばな」

 

 遥かな高さからそう告げたトールがミョルニルに左手をかざすと、装飾として取り付けられていた宝石の一つが音も無く外れ、光り―――

 

 「え、わわ!?」

 

 ―――プレイヤーサイズの黄金のハンマーとなってセイの手元に落ちてきた。

 

 「雷鎚(らいつい)ミョルニル、正しき戦に使うがよい。では、さらばだ!」

 

 ほぼ間違いなく伝説武器(レジェンダリーウェポン)であろう代物をポンと授けた雷神は、オレ達が目を白黒させている間に閃光を放って去ってしまった。その後静かにトールの離脱とスリュム戦のリザルトを知らせる通知が表示され、ようやくこの城のボス戦が終わったのだと理解する。

 

 「……何はともあれ、伝説武器(レジェンダリーウェポン)ゲットおめでとう」

 

 「う、うん。ありがとう兄さん……でも、嬉しさより畏れ多いって気持ちがおっきいや……」

 

 「何いってんの。あの時のセイのおかげで勝てたんだし、もっと誇っていいと思うよーお姉ちゃんは」

 

 兄と姉に労われたセイが、照れくさそうに頭をかく。普段大人びている分、こういった時の彼は何だか見守りたくなる衝動にかられる。その証拠に全員が穏やかな眼差しでセイを見つめ、彼が伝説武器(レジェンダリーウェポン)を手にした事を僻んだり羨ましがったりする者は誰もいない。

 

 「うぅ~~っもう!皆してそんな目しないでください!何だか恥ずかしいですからぁ!!」

 

 赤面しだしたセイが叫ぶと、和やかな笑いが広がった。

 

 ―――瞬間、激しい揺れがオレ達を襲った。

 

 驚きから叫び声や悲鳴を上げながら全員が姿勢を低くすると、何かに気づいたシノンが声を張り上げた

 

 「う、動いている!?いや、浮いてるわ!!」

 

 「っ、お兄ちゃん!クエストまだ続いてる!」

 

 反射的にメダリオンを確認したリーファの声に、オレ達は一瞬凍り付く。この城の主たるスリュムを倒した筈なのに、何故クエストが続いて―――

 

 ―――妖精たちよ、スリュムヘイムに侵入し、エクスキャリバーを要の台座より引き抜いてください

 

 「エクスキャリバーだ!ウルズはエクスキャリバーを引き抜いてくれって言ってただろ!スリュムを倒せとは一言も言ってねぇ!!」

 

 クエストを受ける際にあの女王が最後に告げたセリフを思い出して叫ぶと、全員が合点がいったとばかりに表情を引き締める。

 

 「パパ、皆さん、玉座の後ろに下り階段が生成されています!」

 

 ユイの声を聞いた瞬間、一斉に玉座へと走り出す。巨人サイズの玉座はちょっとした小屋ぐらいの大きさを誇り、全力でその裏へと回り込む。するとプレイヤーサイズの長方形の穴が床に空いているのが見つかり、そこに下り階段が確認できた。揺れも先程よりかは大人しくなっているので、今のうちに駆け降りるべきだろう。

 躊躇わずに飛び込んだ相棒を先頭に、オレ達も足を止めずに階段を駆け下りていく。恐らくエクスキャリバーに断ち斬られたであろう世界樹の根を囲うように設けられた螺旋階段を可能な限り素早く駆け下りていく最中、リーファが思い出したように叫ぶ。

 

 「あのね、確か本当の北欧神話だと。スリュムヘイム城の主人はスリュムじゃないの!」

 

 「えぇ!?同じ名前を冠しているのにですか!?」

 

 「あー!あたしも思い出した!スィアチよスィアチ!!本当の主っていうのは!」

 

 スリュムがこの城のラスボスだと信じていた者を代表してシリカが仰天すると、フィリアも声を張り上げて応じる。

 

 「それって例のスローター系クエのNPCの名前だったよね!?夏休みの時みたいに依頼主が本当の敵ってパターンなの!?」

 

 アイテムの買い出しの際に情報を集めていたサクラの言葉に、彼女と同行していたアスナも同調するように頷く。すると先頭を走る相棒の頭上から、ユイが外部ネットで検索したのか補足説明してくれた。

 

 「はい。神話に於いて、ウルズさんが言っていた黄金の林檎を欲していたのはスィアチであってスリュムではありません。そして例のスローター系クエストを出しているNPCは大公スィアチと名乗っていて、提示された報酬がエクスキャリバーという根拠もクエストを受注したプレイヤーには画像データを示して『これを報酬とする』、との事だそうです」

 

 「エクスキャリバーの見た目だけなら、公式サイトで表示されてっからなぁ……んで、偽剣カリバーンってのがモノホンとそっくりな見た目だっつうウルズさんの言葉を信じるなら……」

 

 「僕達プレイヤーの勘違い、って強弁できますよね!ほぼ詐欺ですけど!!」

 

 「全くよ!『エクスキャリバーあげる』って明言してないのがあくどい!」

 

 商人として客の信用を重んじる二名がクラインの言葉に憤慨して拳を振り上げる。嘘を言わない事と、騙そうとしない事はイコールで繋がらない。という事をNPCがしてくるなんて、クエスト進行の影響で敵対でもしなければ普通はありえない。ゲームである以上、敵でもないNPCがプレイヤーに不利益を被らせるのが当たり前になれば即クソゲー認定されるだけで運営側にメリットが無い筈だ……それこそ世のプレイヤーを屠る目的の死にゲーオブ死にゲーや、マゾい仕様を売りにでもしていない限りは……多分。

 

 「皆、出口だ!」

 

 螺旋階段を下りきった先は、氷を正八面体にくり抜いた空間―――玄室だった。キリトに続いて皆が部屋の床を踏みしめると、殆ど目と鼻の先に突き立てられた黄金の剣に目を奪われる。

 精緻な文字が彫られた鋭い刀身が突き立つ先には氷の立方体が鎮座しており、透けて見えた先では世界樹の根が綺麗さっぱりと断ち切られていた。間違いなくこれこそがウルズの言っていた要の台座であり、ここから黄金の剣エクスキャリバーを引き抜く事こそが彼女の真の依頼だ。

 

 「……ッ」

 

 全ALOプレイヤーが一度は手にする事を夢見たであろう最高峰の剣を前に、息を吞んだのは誰だったか。きっと、実物を目の前にした全員だろう。だが、この場で誰が最初にこの剣に触れるべきかと言えば―――

 

 「キリト」

 

 ―――今回リーダーを務めた、相棒がふさわしいだろう。

 

 「クロト、皆……おう!」

 

 黒衣の背を軽く叩けば、ハッとしたように振り返る彼が驚いたのは一瞬で、アスナ達を見て表情を引き締める。台座の前に立ち、黒革を編み込んだ柄を静かに握ると、彼は力いっぱいエクスキャリバーを引き抜こうとした。

 

 「ぐ……お、ぉ……!」

 

 しかし相棒の全力をもってしても、黄金の剣は微動だにしなかった。一瞬手伝うべきかと思ったが、この手の展開では一人でやるのがお約束というか、直接手を貸す事が野暮だと考え踏みとどまる。

 

 「がんばれ、キリト君!」

 

 「パパ、頑張って!」

 

 「お兄ちゃんファイト!」

 

 「兄さんならできるよ!」

 

 手伝えないならば声援を。すぐさまそれを選んだアスナ達に続いてリズ、シリカ、シノンも思い思いの応援を送る。

 

 「ほらもうちょっと!」

 

 「あと少しですよ!」

 

 「根性見せて!」

 

 ―――剣が僅かに震え、台座に一筋の亀裂が走る。

 

 彼自身は剣を引き抜こうと唸るばかりだが、皆の期待に応えるべく力を籠め続けるのをやめはしない。

 

 「ちょっと動いたよ!」

 

 「そうだ、気張れキリの字ぃ!」

 

 「諦めないで!」

 

 台座の変化に気づいたフィリア、クライン、サクラが声を張り上げるが、剣は未だ抜けない。

 

 「信じろ!お前ならできるってオレが……オレ達が信じたお前を、お前も信じろ!!」

 

 「うぉ……ぉぉぉおおおお!!」

 

 ―――突如台座が割れ砕け、そこから眩い光が迸る。

 

 エクスキャリバーを放さぬままキリトは勢い余って背中から倒れ込むが、すぐさまアスナが抱き留める。しかし一人では流石に無理があったのか、彼女ともども横たわる事は避けられなかった。

 

 「いたた……アスナ、ごめん。無事か?」

 

 「うん、大丈夫。それよりお疲れ様、キリト君」

 

 リーファやリズの手で助け起こされた二人が互いを労わりあうと、今度こそクエストが完了したんだとオレ達に弛緩した空気が広がっていく。

 

 「パパ!」

 

 ユイが何かを指さして叫んだのと同時に、玄室全体が揺れた。何だと彼女の指先に目を向けると、先程までは決して幅広とは言えないエクスキャリバーの刀身で遮れる程度の太さしかなかった筈の根が急速に太く、長く膨張……いや成長していた。それも自分を閉じ込めていた氷を一切の情け容赦無く砕きながら。

 

 「崩れるぞ!階段に―――」

 

 「―――もう根っこが壊しちゃったよ!」

 

 急いで脱出を促そうとしたが、帰り道が無くなったとサクラが首を振る。

 

 (マジかよ……)

 

 やり切った、と思ったらまだ続きがあった。これが二回も続くとは……。聖剣獲得にはもうひと波乱ありそうだな、とどこか達観した思考がぼんやり浮かぶのだった。




 最近、「映画版のプログレにクロト達が居たらどうなるかなぁ」とか、「アインクラッド編のラフィン・コフィン討伐戦後、一度逃げたクロトがキリトの手を取っていたら……」なんてもしも、な展開を妄想してしまう事が(汗)
 今書いているのを進めろよって話ですけど。
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