SAO~黒の剣士と遊撃手~   作:KAIMU

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百十九話 迷走

 大和 サイド

 

 「―――大和、進路はどうする気だ?」

 

 冬休みも残り僅かとなったある日の夕食の最中、唐突に親父から聞かれた。仕事優先で一緒に食卓を囲う事も無く、仮にあっても特に話す事が無かったというのに、何故今そんな事を聞いてくるのかと首を傾げる。

 

 「どうって……一応、進学のつもり」

 

 「なら志望校と学科は?今の成績で狙えるのか?」

 

 親父の眉間に元々あった皺が幾何か深くなる。どうやらオレの回答が気に入らなかったらしい。

 

 「まだ決めてねぇけど……何だよ急に」

 

 「今の学校は二年で卒業だろう。つまり四月からお前は受験生になるというのに……進学先を明確にしていないのはどうなんだ?」

 

 受験。中学の時はSAO事件ですっぽかしていた訳で、実質初めてになるソレに対する意識が低いと親父は苦言を呈する。

 

 (うるせぇな……)

 

 向こうの言い分が正しいだろう事は理屈で理解はできるが、それとは別に苛立ちが募る。じいちゃんやばあちゃんに言われるならともかく、目の前にいるこの人から言われるのはムカついて仕方がない。

 

 「ぼちぼち決めておくっての」

 

 「まったく……少しは桐ケ谷君を見習ってほしいものだ」

 

 「……なんでそこで和人が出てくんだよ?」

 

 唐突に親友の名が出た事に顔を顰め―――

 

 「桐ケ谷君はVR技術に関連する仕事に就くため、そして社長……もとい彰三さん夫婦に認めてもらえるように海外留学も視野に入れているんだろう?お前よりずっと先を見通しているじゃないか」

 

 「は?」

 

 親父の言葉に、殴られたような衝撃を受けた。だってあいつは

 

 「……聞いていなかったのか」

 

 あいつは将来の事なんざ、何も話さなかった。リアルでもALOでも、一度としてそんな事を話題にしなかったのだ。

 

 (オレだけ、だったのか……?)

 

 親友がいる。仲間がいる。そして最愛の恋人がいる。そんな’今’が続けば良いと、続くようにさえしていれば良いと思っていたのは。

 

 「大介、その辺にせんか。メシが不味くなる」

 

 「……父さん」

 

 「大和の進路は今月中に決める。それでいいだろう」

 

 静かな、しかしはっきりとした爺ちゃんの言葉に、オレと親父は揃って首を縦に振る。決して多くを語らないけれど、爺ちゃんの言葉には不思議と逆らう気が起きないのは親子揃っての事らしい。

 

 「ふふっ、進路が中々決められない所は、昔の大介そっくりねぇ……」

 

 「か、母さん。今は関係ないだろう……」

 

 「今まで構ってあげられ無かった分、心配になるのは分かるわ。でも大丈夫よ、この子はきっと自分の道を決められる……昔のあんたみたいに、ね」

 

 大分硬くなっていた雰囲気が、婆ちゃんの言葉と共に和らいでいく。それっきり食卓で言葉が交わされる事は無かったが、居心地の悪さは感じなかった。いや、感じる事が出来なかった。

 

 (進路……オレは何がしたいんだ……?)

 

 今後の人生を左右する選択で、頭がいっぱいになっていたのだから。

 

 ~~~~~~~~~~

 

 「―――ここの大学は……んー、何かピンと来ねぇなぁ……」

 

 翌日、オレは朝から自室のPCで大学について調べ始めていた。爺ちゃんによって今月中、と期限が設けられた以上、のんびりなんてしていられない。学校にいる時に廊下ですれ違った人や、クラスの誰かが口にしていた名前の学校について片っ端から調べてみているものの、どれもこれも決め手が無い。

 

 「つか、多くねぇ……?大学だけで何でこんないっぱいあるんだよ……」

 

 とりあえず進学、なんて漠然とした考えしかなかった自分に非があるのは分かっちゃいるが、それはそれ。理屈では理解できても、感情の方はそう簡単に納得はできず愚痴をこぼしてしまう。

 

 「学部だの偏差値だの、校舎の設備だの……余所の学校と差別化したいんだろうけど、択が多すぎるんだっての……」

 

 他にも国立や私立やらで、全くもって進学先の候補が定まらない。昼食を挟んで調べ続けても、一向に決められなかった。

 

 「あ~、訳わからんくなってきた……」

 

 一旦PCから離れ、ベッドに身を投げ出す。その際に視界の端にアミュスフィアが映る。

 

 (二時半集合、だったっけ)

 

 確か明日奈が絶剣との辻デュエルに挑むと言っていた。数日前にオレと相棒を打ち負かしたあの闇妖精(インプ)の少女を打倒した猛者はまだいないらしい。約束の時間が近づいてきているものの、オレの手はアミュスフィアに伸びようとはしない。

 

 (いや、それより皆は……進路、決めてんのかな……?)

 

 もし、今からALOにダイブして、皆に進路の話題を振ってみたとして。キリト……和人以外の面々も、既に自分の道を決めていたのだとしたら。

 

 「……っ!」

 

 何も決められず宙ぶらりんな状態でいる自分が、酷く情けない。今まで通りにあいつらと一緒にいられる気がせず、アミュスフィアから無理矢理目線を逸らした。

 

 ―――悪い。野暮用できたから休む

 

 その言葉を携帯端末で桜に送る。心苦しさを紛らわせる為、そして自分の進路を決める為、オレは身を起こして再びPCへ向き直る。

 

 (やりたい事……やりたい事って、何だ……?)

 

 オレは何をしたいのか、そして何になりたいのか……答えが見えない。今の学校で専行しているメカトロニクスコースだって、元を辿れば和人にあわせて選んでいただけだ。自分の意志だけで決めたとは言い難い。

 

 「……最低限の指標にはなる、か……?」

 

 和人がユイを現実世界へ展開する方法を模索する一環として、学校の課題を利用し作っている物を手伝う事にやりがいは感じていた。その時に学んだ知識を活用できそうな職業につながる進学先に絞ってみよう。

 

 「うげぇ、それでもこんなにあんのかよ……」

 

 最初よりも大分減ったとはいえ、それでも辟易する数の大学に気が滅入る。しかし各学校を詳しく調べて比較しなければ、後で泣きを見るのは他ならないオレ自身だ。

 

 「まずは一つ、キッチリ調べるか……」

 

 あまり時間が無いとはいえ、期日は今月中。今日という一日だけで進路決めを終える必要は無い。とりあえずは目についた大学について公式ホームページや関連のサイト、口コミ等を片っ端から見る事に一日を費やすのだった。




もう今年も半分が過ぎてしまいましたね

そのくせ今回は普段の半分いくかどうか程度の文章量ですみません……

言い訳をさせていただきますと、区切りが良かった事や、クロトの進路について考えた際に作者兄弟ですら明確な道を定めていなかった事等が災いし、遅々として筆が進みませんでした。

読者の皆様は気長に待っていただけたら幸いです。
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