大筋はお互いに分かっているんですが、どうも…………
例
兄「ここはキリトが―――」
弟「いや、クロトに―――」
兄「それ無理だろ」
弟「いやイケるって。でないと原作そのまんまだし―――」
てな感じでお互いに妥協できず、結果書きあがるのが遅くなってしまってます。
キリト サイド
「兄さん……その、ごめんなさい!」
今、俺とハルは作業場にいる。さっきまでは居間でスキルウィンドウを開き、二刀流スキルの説明を読んでいた。今まで聞いたことの無いスキルだったのでゲーマー魂を刺激され、我を忘れて熟読していたのだが……ハルが戻ってこないので不審に思い、作業場に入ったところで当のハルに冒頭のセリフを言われたのだ。
「ど、どうしたんだハル?」
ハルが謝ってくる理由に心当たりが無い俺には、どもりながら「どうした?」と訊ねることしかできなかった。
「実は……兄さんの剣、当分使えなくなっちゃったんだ」
「へ?」
使えなくなったと言われて反射的に金床に視線を向けると―――
「……ぁ」
―――一振りの片手直剣が置かれていた。刀身も、鍔も、柄でさえも漆黒で、装飾など一切無い。機能性のみを追及したような剣が、置かれていた。
俺はただただその剣に見とれ、無意識に小さく声を漏らした。だがハルは俺ががっかりしたと勘違いし
「ごめんなさい!ごめんなさい!!」
ひたすら頭を下げていた。そこでようやく俺は意識を剣から離し、慌ててハルをフォローする。
「いや、ただ見とれてただけなんだ。怒ってないって!」
「……ホント?」
涙目で見上げてくるハルを見ていると、罪悪感で精神HPがゴリゴリと削られていく。弟を泣かせるなんて……本当に俺はダメ兄貴確定だな……
「本当だよ。ちょっとステータス見ていいか?」
「……うん」
頭を撫でながら問いかけると、ハルは頷いてくれた。改めて金床に近づいて、置いてある黒剣に目を向けステータス画面を開く。
(名前は……エリュシデータ!?これってさっきのLABだよな?一体どういう事だ?)
名前に驚きつつも、さらに読み進める。
(何だこの性能は!?六十……いや、七十層でも通用するレベルじゃないか!!あ……でもSTRが要求値に届いてないか……)
剣が予想以上に高性能だったので内心舞い上がっていたが、装備できないと分かるとそれも一気に醒めてしまった。
そこでようやくメンテを頼んだ筈の愛剣が見当たらない事に気づいた俺は、ハルにそのことを訊ねた。
「この剣がさっきのLABと同名なのは気になるけど……俺の剣はどこにいったんだ?」
「……それ」
「へ?」
「その剣の……素材にしちゃった」
なんという事だろうか。これでは俺は戦えない。これからどうしようか頭を抱えたくなったが
(いや、それよりも―――)
先に気になった事を聞いてみた。
「何で素材にしたんだ?」
「えっと、それは……」
視線を泳がせ言葉を濁していたハルだったが、やがて申し訳なさそうに頬をかきながら話し始めた。
「エリュシデータは他の武器と合成する事ではじめて使えるようになる武器だったんだ。しかも、合成した武器のカテゴリや性能によってスペックが決まるみたい」
「ええっと、つまり?」
「片手剣と合成したら片手剣に、両手斧と合成したら両手斧になるんだよ。加えて言えば、スモールソードみたいな弱い武器と合成したら弱い武器に、強力なレア武器と合成すればさらに強力な武器になるんだ」
つまるところ、ハルは俺の剣を強化するつもりでエリュシデータと合成したのだ。
「せめて一言言ってからにしてほしかったよ」
「それは……鍛冶屋としての性というか……」
俺で言うところの、ゲーマー魂を刺激されて周りが見えなくなったようなものだろう。それにハルは俺の為にやってくれたのだ。感謝こそすれ怒る事はない。
「ありがとう、ハル。今は無理でも、必ず使えるようになって見せるさ」
「うん……でも、代わりの剣は…………あ!ちょっと待ってて」
何か思いついたのだろうか?ハルは作業場から売り場へと走り、少しして戻ってきた。
「前の剣よりはちょっと弱いけど、最前線で十分通用すると思うよ」
そう言って差し出してきたのは、売り場で最も高い剣だった。これは俺も驚いてしまう。
「本気か?店一番の剣だろ?」
売れればしばらくの間生活に困らないくらいのコルが手に入るほどの剣だった筈だ。
元々ハルの店は良質な武具がウリなのだ。そのため価格は他の店よりも高いが、確かな性能で信頼され、リピーターや開業以来ずっと利用してくれる固定客を獲得してきた。
だがその分数が少なく、売り物一つタダで譲ってしまうだけでかなりの赤字になってしまう。
「いいんだよ。兄さんの剣を勝手に合成しちゃったんだから。これはそのお詫び」
「でも「じゃあ他にアテあるの?」……ございません」
ハルに痛いところを突かれ、受け取らざるを得なくなってしまった。こうなったら素直に受け取るしかない。
「大事に使わせてもらうよ」
「うん。その剣……デボルポポルならきっと兄さんの役に立ってくれるよ」
その後ハルに鞘を見繕ってもらい、その間に新しい剣のためし振りをした。重さは前の剣と大体同じなのですぐに慣れたが、灰色の刀身の根元がとても細くなっているのが意外と気になる。ゲームなので部分的に細くなっていてもそこが弱点になる事は無い。そのため特に問題は無いのだが……やはり折れやすくないかと不安になってしまう。
柄や鍔には華美な装飾は施されていないので、耐久値だって問題ない。使っていけばその内気にしなくなるだろう。
「ただいまぁ~」
大分げっそりとした表情でクロトが帰ってきた。
「お帰り、クロト」
「お帰りなさい、クロトさん……サクラさんとはまだ付き合わないんですか?」
「ブフォ!?」
早速ハルが爆弾を投下する。……最近、このネタでクロトをいじるのが楽しくなってきたので、便乗する。
「今日はまた大胆だったよなぁ……レイドメンバー全員の目の前で抱き合ってさ」
少し胸が痛むが、それさえ我慢すればどうって事はない。むしろ普段は見れないヘタレなクロトが面白い。ハルとアイコンタクトで連携する。
「それ本当!?もう外堀埋まってるんじゃない?」
「ああ、アルゴに売りつければもうカップル確定だな」
などと俺達二人で言いたい放題言えば、分かりやすいくらいにクロトが暴れだす。
「ちょ、アルゴはやめろ!絶対脚色されてばら撒かれるに決まってる!」
「それなら開き直って付き合っちまえよ」
「いや、それは……その……」
俯き、う~、とか、あ~、とか唸るクロトにトドメを刺す。
「「やっぱりヘタレだな(ですね)!」」
「ガフッ!?」
その場でorz状態になるクロト。そんな彼を見て、俺とハルはしばらく笑っていた。
「そういえば、こんなスキルが出てたんだが……」
そう言って俺はスキルウィンドウを開き、可視化して二人に二刀流スキルを見せる。
「「…………ええぇぇぇ!?」」
……やっぱり驚くか。確かにデフォルトで攻撃速度と武器防御の性能がプラス五十%、クーリングタイムが二十%短縮な上デメリットが無いなんていうチートじみた物だからな。
「……まさか今回のLABってそのスキルなんじゃ―――」
「いや、それはコイツ」
そう言ってエリュシデータを指差す。クロトはそれを一瞥すると、また二刀流の出現条件を考える。
「キリトは何か心当たりは無いのか?お前一人でやったクエの報酬とか……」
「それが全く無いんだ……俺だってさっき気づいたんだから」
俺には心当たりが無い。そう答えると二人は黙ってしまった。だが俺の中にふと、一つの仮説が浮かんだ。
「……クロトには何も無いのか?」
「オレ?んなモン都合よくある訳…………あった」
二刀流がもし、五十層をクリアする事で開放されるエクストラスキルだとすれば、俺以外のプレイヤーにも出現している筈だ。SAOの攻略も折り返し地点なのだ。ここでプレイヤー側に何かしらのボーナスがあっても不思議じゃない。
他のMMOでもそういった事はあった……まぁ、後半の難易度が鬼のように設定されていたが。
そしてクロトも’あった’と言った。もしかしたら俺の仮説が合っているんじゃ―――
「―――射撃ってスキルが」
「「…………はい……?」」
待て待て待て。落ち着いて状況を確認しよう。
ここはどこだ?―――SAOの中だ。
どんなゲームだ?―――手に武器を持ち、近接戦闘をするゲームだ。
クロトに出たのは?―――射撃。FPSとかでよく聞く言葉であり、SAOの世界観には相応しくない。
結論―――クロトに出たスキルはおかしい。きっとバグだ。
「いいですかクロトさん、きっとそれバグです。セットしたら危険です」
「ああ、このデスゲームでバグスキルなんて使ったら命に関わるぞ」
ここで相棒を失うわけにはいかない。是が非でも射撃スキルに手を出さないように説得しなければ!
「お前ら落ち着け!まずは説明読め!」
クロトがウィンドウを可視化したので、彼の両側から俺とハルは射撃スキルの説明を読む。
「……投剣とかの遠距離攻撃にボーナスがつくのか」
「でも兄さんの二刀流に比べたらたいした事ないですね……」
名前はSAOにそぐわないものだが、バグでは無い事が分かった。ただ、投剣とは元々牽制やタゲを取る以外では圧倒的に火力が足りないのだ。十%前後のボーナスしか与えない射撃スキルを入れても、大した恩恵は無いと思う。
もしかしたら専用の武器か投剣スキルを大幅に強化したソードスキルが習得できるのだろうか?
「それで、そのスキルは使うのか?」
「おう、射程が延びるのがありがたいからな」
今まで届かなかった所にも届くぜ!とクロト本人は喜んでいるので、俺から言う事は無い。それに使っていけば何か分かるかもしれない。
「兄さん達のスキルは公開しない方がいいと思うよ。二人とも違うスキルが出たって事は、同じスキルを持っている人がいる可能性が低いから……」
「神聖剣みたいなユニークスキルかもな……」
神聖剣?ユニークスキル?クロトの口から聞きなれない単語が聞こえたので聞いてみた。
「ほら、ヒースクリフのおっさんが一人でボスの攻撃耐えてたろ?アレ普通に考えたらありえないだろ」
「確かにな……」
思い返せば異常な光景だった。いくら高い防御力を誇るタンクでも、単独でボスに攻撃され続ければ、一分も持たない。それに今回のボスは攻撃力が異常に高かった。
だがヒースクリフは一人で十分間耐えた。それもHPを半分近く残して、だ。彼の防具や十字盾は他のレイドメンバーの物よりもレアリティの高い物だが、それでもあんな硬さは手に入らない筈だ。
「そのありえないを可能にしてたのが神聖剣っていうスキル。そしておっさん以外は習得したヤツがいないから、暫定的にユニークスキルって呼ばれてんだ」
しかもヒースクリフ曰く、気がついたらスキルウィンドウにあった、との事。……俺達とほぼ同じだ。
「しばらくはコッソリ熟練度上げだな……」
俺の言葉にクロトも頷く。ビーターとして目立っているが、これ以上目をつけられると流石に街での買い物とかが不便になる。
それに、いつどこで何が起こるか分からない。そういった時に自分達を守るための切り札は多いに越した事は無い。
こんなどうしようもない俺達を気にしてくれるクライン達に秘密が増えるのは申し訳ないが、仕方ない。
(二刀流……必ず使いこなして見せるさ……!)
デボルポポルは、PS2ゲーム「ドラッグオンドラグーン」に登場する剣です。
外見イメージは、レベル3の状態です。
誤字、脱字、アドバイス等ございましたら、感想にておねがいします。