SAO~黒の剣士と遊撃手~   作:KAIMU

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 シリカ編が終わらなかった……今回で終わらせる予定だったのに……


 そして最近上手く書けなくなってきている気が……


十九話 花を求めて

 キリト サイド

 

 翌日、俺達の部屋で眠ってしまったシリカや、俺に泣きついたハルが赤面してパニックを起こして朝から大変だった。

 そんな二人を落ち着かせて、身支度を整えてから四十七層に転移してきた。

 

 「わぁ~」

 

 視界いっぱいに広がった花畑を見たシリカが歓声をあげ、近くの花壇へと走り寄った。

 

 「この層はフラワーガーデンとも呼ばれていて、フロア全体が花で覆われているんだ」

 

 シリカに近付きながら説明する。とはいえ、肝心の彼女が目の前の花達に夢中で聞いていないだろうけど。

 

 「……兄さん、早く行かない?」

 

 ハルが俺の手を握り、思い出の丘に行こうと催促してきた。

 

 (ハルには、バレてるか……)

 

 この層はデートスポットでもある。現に、この転移門前広場でも多くのカップルがそれぞれの世界を作り上げ、それにどっぷりつかっている―――もとい、イチャついているのだ。

 ここにいるのがクラインなら血涙を流して地団太を踏むだろうし、クロトなら適当なカップルに自分とサクラを投影して赤面するだろうけど……俺達は違う。

 ハルの場合、木綿季の体を考えると普通のカップルのようなやりとりはまずできないし、俺の場合、そもそも相手が現れる事自体無いだろう。つまり―――

 

 (届かない理想ってヤツだよな……)

 

 結局のところ、周りが羨ましくて仕方がない。こうしてハルと手を繋いでいなければ何かに当り散らしたいくらいに。

 

 「シリカ、行こう」

 

 「ひゃ、ひゃい!」

 

 なるべく平静を装って、シリカに移動を促したつもりだが……驚かせてしまっただろうか?彼女の動きがぎこちないし、顔も赤い。周りの空気にあてられたのだろうか?

 

 「大丈夫か?」

 

 「だだ、大丈夫です!」

 

 うーん、やっぱりシリカの動きが不自然だ。早くここから離れた方がよさそうだな。

 

 「じゃ、行こう」

 

 「あっ……はい」

 

 手を握った瞬間こそ驚いたものの、シリカは大人しく手を引かれるままについてきた。

 

 (ハルと合わせると弟妹を連れた兄……ってところか?)

 

 フィールドに出るまでの道中、カップル達から向けられた生暖かい視線が、答えのような気がした。

 

 ~~~~~~~~~~

 

 「キ、キリトさん助けて!見ないで助けてぇぇぇ!」

 

 「ゴメン、それは無理……」

 

 フィールドに出てしばらく歩いてたところ、シリカがmobから不意打ちを喰らってしまった。と言っても、ツタで両足を掴まれて逆さで宙吊りにされただけ……

 だが俺達は彼女を助ける事ができない。何故なら―――彼女がスカートを履いているからだ。

 

 「僕達は後ろ向いてるから自分で何とかして!」

 

 スカートで逆さ……後は、察してくれ……とにかく今シリカの方を向いたら、見てはいけないものを見てしまうのは確実だ。そのため俺達にできるのは、後ろを向いてシリカを見ないようにする事だけだ。

 幸い敵は一体だし、シリカの声を聞く限り、宙吊りにしただけで何もしていない。その証拠に、視界の左上に表示された彼女のHPバーは減少していない。

 

 「こん、の!いい加減に、しろ!!」

 

 シリカが珍しく荒っぽい口調で叫ぶ声の後に、ソードスキルのサウンドエフェクトが聞こえ、間をおかずに破砕音が響いた。そして最後に何かが着地した音が聞こえて……その十数秒後に、俺とハルはゆっくりと振り返った。

 

 「……見ました?」

 

 「「見てない」」

 

 何を、とは聞いてこなかったが、それくらいは分かる。そのためハルと共に即答したが、シリカは赤面したままで……しばらく気まずい空気の中で進むしかなかった。

 

 「うぅ……今はメイスじゃなくて剣が欲しいよ……」

 

 気まずい空気が少しずつ無くなり、雑談ができるようになった頃、ハルが珍しく愚痴をこぼした。

 

 「確かに、打撃武器は相性が良くないからなぁ」

 

 「……違うよ」

 

 「へ?」

 

 ハルは拗ねたようにそっぽを向いてしまった。シリカを見ると首を横に振っており、ハルが何を言いたいのか分からないみたいだ。俺も分からないので考えをめぐらせているが、武器の相性以外に思いつくものは無かった

 

 「ハル君、何が違うの?」

 

 「二人はああいうmobを殴った事ある?」

 

 シリカが聞いたようだが、ハルは質問で返す。

 

 (ん?殴った事??)

 

 何かが俺の頭に引っかかったが、答えにたどり着く前にハルが爆発した。

 

 「グチャってするんだよ!殴る度に中途半端に軟らかくて気持ち悪い感触が手に伝わってくるんだよ!?そっちはスパっていくから分からないだろうけどさ!」

 

 もうヤダー!と喚くハルには普段の大人しさはかけらも無く、駄々をこねる子供にしか見えない。隣でシリカがオロオロしているが

 

 (あ、今のハルって何か木綿季っぽいな)

 

 俺は一人、そんな事を思いながら和んでいた。

 

 ~~~~~~~~~~

 

 「―――キリトさん、妹さんのこと聞いてもいいですか?」

 

 「え?」

 

 思い出の丘を半ばまで進んだところで、シリカがそう聞いてきた。

 

 「リアルの事を聞くのはマナー違反ですけど……あたしに似てるって言ってたじゃないですか。だから…その、気になって」

 

 SAOは曲がりなりにもネットゲーム。だからリアルの事を聞くのは一種のマナー違反と言える。

 だが、さして困る事でもないので―――

 

 「仲は……そんなに悪くなかったよ」

 

 俺はスグの事を話すことにした。ハルもシリカも、口を挟む事無く聞きに徹してくれているので、思いのほか話しやすい。

 

 「妹って言っても、本当は従妹なんだ。いろいろあって本当の兄妹みたいに育てられたんだけど、そこら辺は割愛させてもらうよ」

 

 俺達が桐ヶ谷家に引き取られた経緯は、そう軽々しく言えるものでもないので適当に濁す。

 

 「ある事がきっかけで引きこもりがちだった俺を、呆れもせずにずっと世話を焼いてくれたんだ。もしあいつがいなかったら、今頃碌に人と話せなかったかもな……」

 

 あの時の俺は、両親の死が脳裏に焼きついていたため人と話すのが怖かった。そんな俺の隣で、スグは俺が少しでも話しやすくなるように気遣ってくれた。それなのに俺は―――

 

 「ずっと迷惑掛け続けて、何も返せてないまま……俺はSAO(ここ)に来てしまったんだ」

 

 俺はさらに迷惑を掛けている。現実世界(向こう)でスグはどうしているだろうか?まだ俺を思ってくれているだろうか?それとももう呆れているのだろうか?スグの事を思い出す度にそんな考えが頭を埋め尽くす。そして何もしてやれなかった後悔が胸を刺す。

 

 「君を助けようとしているのは、妹に何も返せなかった事に対する代償行為なんだろうな……ゴメンな、シリカ」

 

 何の関係も無いシリカを助けて、スグに何かしてやった気になろうとしている自分に嫌気がさす。そんな事しても、無意味だというのに……

 

 「きっと妹さん、キリトさんが大好きなんですよ」

 

 俯いた俺の顔を覗き込むようにしながら、シリカはそう言った。突然の事で俺もハルも呆然としてしまうが、彼女は続けた。

 

 「上手く言えませんけど、その……なんとなく、妹さんの気持ちが分かる気がするんです」

 

 「……シリカも兄さんや姉さんがいたりするの?」

 

 ハルがもっともな疑問を口にした。確かに彼女が’妹’であれば、スグに共感できるところがあるかもしれない―――

 

 「ううん、一人っ子だよ」

 

 「へ?じゃあ何で……分かる気がするの?」

 

 兄や姉がいるならともかく、そうではないシリカが何故スグの気持ちが分かるのかが、俺達にはよく分からない。そのため俺は、ハルの疑問に重ねてシリカに聞いてみた。

 

 「だって、好きでもない人のために世話を焼くなんて普通はしませんよ。それに……好きな人や大切な人に笑っていてほしい、そのために何かしたいって思うのは当たり前ですよ?」

 

 彼女は曇りの無い笑顔で、そう答えてくれた。しばらく呆気にとられていたが、やがて彼女の言葉の意味が伝わってきた。そしてそれと同時に、俺の心が幾らか軽くなった。

 

 「また慰められちゃったな……でも、ありがとう。お陰で大分楽になったよ」

 

 シリカにお礼を言うと、何故か彼女は顔を赤くして背を向け

 

 「とととにかく行きましょう!」

 

 と一人歩き始めてしまった。それにつられて俺も歩き出すが、

 

 「……本当に兄さんはタラシなんだから……」

 

 何故か後ろからハルの呆れた声が聞こえた。何を言っていたのかまでは聞こえなかったが、俺が何か悪い事をしたのだろうか?解せぬ……

 

 ~~~~~~~~~~

 

 その後も何度かmobとエンカウントしたが、HPがイエローゾーンに落ちる事は無かった。加えてシリカのレベルが一つ上がるなど順調だった。まあ、エンカウントする度に何故かシリカがダメージのほとんど無い不意打ちを受けていたのだが。

 

 「うう……何であたしばっかり……」

 

 「ほら元気出して。もうすぐだからさ」

 

 気が滅入っている彼女を、ハルが励ました。実際ゴールは目前で、もう一頑張りしてほしいというのが本音だ。

 

 「顔を上げてごらん。あの台座に、蘇生アイテムがあるはずだから」

 

 俺は右手でシリカの頭を撫でながら、左手で台座を指差す。すると彼女はハッとしたように顔を上げ、台座を見た途端走り出した。本来は危険だが、台座の周辺ではmobがポップする事は無いので大丈夫だ。

 

 「うわぁ……」

 

 シリカが台座に近づいた途端、そのてっぺんから芽が出て、早送りのようにすくすくと生長していくのが見えた。そして俺達が台座に着いたのと同時に花が咲いた。

 

 「綺麗……」

 

 「そうだね。ほら、手にとって」

 

 シリカは蘇生アイテムである’プネウマの花’に見惚れていたが、ハルに促されて恐る恐る手にとった。

 

 「これで、ピナが生き返るんですよね?」

 

 「ああ。でも、圏外じゃ何が起こるか分からない。だから安全な街に戻るまで、生き返らせるのは我慢してくれ」

 

 蘇生してまた死んだ、なんて事になったらシリカへのダメージは計り知れない。それにこの後に依頼をこなさなければならないので、できるだけ彼女へのショックを少なくしておきたかった。

 昨日出会ったばかりの俺達を信じてくれたシリカを騙して囮として利用するような事に罪悪感を覚えるが、それでもやらなければならない。

 

 ―――キリトさんはいい人です

 

 昨日の彼女の言葉が思い起こされ、罪悪感がより一層強くなる。

 

 (でも……絶対に守ってみせる……!)

 

 もうサチ達のような事は起こさせない。そんな決意を胸に、俺達は帰路についた。




 なんとか五月中に投稿できた……


 次こそはシリカ編を終わらせたいです。
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