SAO~黒の剣士と遊撃手~   作:KAIMU

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 拙い文章かもしれませんが、これからもよろしくお願いします!!


二十六話 捜査開始

 クロト サイド

 

あの後、オレ達は広場に集まった人達の中に事件の目撃者がいないかを確認した。すると、殺害されたプレイヤーの友人だという女性―――ヨルコさんが、怯えた表情をしながらも名乗り出てくれた。

 サクラとアスナが怖がらせないように注意しながら事情を聞くと、以下の事が分かった。

 

 ・殺害されたのは’カインズ’というプレイヤーである事

 

 ・ヨルコさんとカインズさんは、かつて同じギルドの所属していた事

 

 ・ギルドが解散してからも、二人は時々交流があった事

 

 ・今日は観光とレストランでの食事が目的でこの層に二人で来ていた事

 

 ・広場ではぐれ、塔から吊るされ刺されていた彼を見て悲鳴を上げた事

 

 ・カインズさんが落ちてきたとき、塔に一瞬誰かが見えたが、その人物に見覚えが無かった事

 

 ・そもそも、カインズさんは誰かに命を狙われるような事をする人ではなかった事

 

 さっきの事のせいでヨルコさんは一人で下層に戻るのが怖いという事なので、サクラ達がこの層にある宿屋の一室を手配して泊まらせた。その間オレ達は野次馬の中にいた攻略組の知り合い達に、圏内PKの手段があるかもしれないという事を伝え、注意を促した。大手ギルド所属のヤツが情報屋にも知らせておくと言ったので、注意喚起は問題ないだろう。

 

 「―――んで、どっから手をつけたもんかねぇ……」

 

 野次馬も居なくなり、適当なベンチに座ったオレ達はこれからの方針を話し合っていた。とはいえ情報が少なすぎて何からはじめればいいかよく分からないのが現状だった。

 

 「手持ちの情報を検証しましょう。特にロープと武器―――スピアをね」

 

 「PCメイドなら、作成者から犯人を追えるかもしれないよ」

 

 なるほど……動機が不明なら物的証拠って訳か。即座にそこまで頭が回るなんて、本当に脱帽ものだ。オレとキリトだけじゃそこに行き着くまでどれだけ時間がかかったのやら。

 

 「って事は鑑定スキルが必要か……キリト、ハルに―――」

 

 「―――却下だ。あいつに余計な心労はかけたくない」

 

 言い切る前に断るとは……兄弟そろってブラコンめ。

 

 「ハルはお前が思ってるほどヤワじゃねーだろ。兄貴なら弟を信じてやれ」

 

 「あのなぁ……あいつはまだ十三なんだ。PKの話はショックがデカ過ぎる!」

 

 ……え?マジで??

 

 「SAOは元々十三歳以上推奨のゲームだろ!お前はあの日十二歳の弟をログインさせたのかよ!?」

 

 「いやぁ、自分もやりたいって珍しくねだった弟にダメとは言えなかったんだよ……」

 

 親からも、お前が管理しろって言われてさ、と目を逸らしながら頬を掻くキリト。こいつ等のブラコンはもう重症だな。

 

 「年不相応にしっかりしてるなぁって思ってたけど……」

 

 「ログイン当時まだ小学生だったなんて……」

 

 サクラとアスナがやや呆然としながら零した言葉には、正直オレも同意する。

 

 「とりあえず話を戻すけど、そっちはフレンドとかに鑑定スキルのアテはあるのか?」

 

 「う~ん、あるにはあるけど……」

 

 「リズさんもハル君と同じで武器屋だから、今すぐには無理かなぁ」

 

 少し強引に話を戻したキリトの問いに、二人は申し訳なさそうに答えた。

 

 「なら……熟練度が不安だけど、アイツだな」

 

 答えに落胆するでもなく、キリトは淡々とメッセージを打ち始めた。

 

 (ハル以外で鑑定スキル持ち……まさか?)

 

 キリトがメッセージを送ろうとしている人物が想像できたので、確認の意味を含めて聞いてみた。

 

 「アイツって、ガングロスキンヘッドの斧戦士兼雑貨屋?」

 

 「そうだ」

 

 しれっと答えるキリト。なんかため息つきたくなってきた。

 

 「えっと、それってエギルさんだよね?」

 

 「雑貨屋も、この時間は換金とかで忙しいんじゃ―――」

 

 「―――知らん」

 

 サクラとアスナにそっけなく返しながら、キリトは無慈悲に送信ボタンを押すのだった。

 

 ~~~~~~~~~~

 

 「うーっすエギル、来たぞ」

 

 「客じゃないヤツに’いらっしゃいませ’とは言わん」

 

 キリトの突然のメッセージの所為か、エギルの対応はややそっけなかった。

 

 「相変わらずボッタクリな取引ばっかしてんだろ?」

 

 「安く仕入れて安く提供するってのがウチのモットーだって何度言わせりゃ気が済むんだよ?」

 

 嘘付け、今さっきボッタクられてしょんぼりしたプレイヤーと路地ですれ違ったぞ。なんてのは口にせず、取りあえずよろしくの意味をこめてオレとキリトはエギルと拳を軽くぶつけ合う。

 

 「んでキリト、鑑定して欲しい物ってのは―――」

 

 「―――エギルさ……あれ、兄さんどうしてここに?今日は迷宮区に行ってないよね?」

 

 「ハル!?何でここにいるんだ?」

 

 本題に入ろうと思ったところで、店の奥からひょっこりとハルが出てきた。

 

 「僕はエギルさんに装備を幾つか委託販売してもらおうと思って取引してたんだけど……兄さん達は何か面倒事?」

 

 アスナさん達がいるんだし、と相変わらず鋭い指摘だった。キリトは早々に誤魔化すのは無理だと悟ったらしく、このまま本題を切り出す事にしたのだった。

 余談だが、サクラ達を確認したエギルはすぐにお茶を用意するという紳士な対応を見せていた(ニヤける事も無かった)。

 

 「圏内でHPがゼロになっただぁ?デュエルじゃないのか?」

 

 「ウィナー表示が見つからなかったんだ。俺一人ならともかく、十数人規模の人達が見つけられなかったから、見落としたって事は……無いと思う」

 

 キリトは、店じまいをしたエギルに事の経緯を話した。エギルは半信半疑な様子だが、実際に起こった事なのだ。信じてもらうしかない。

 

 「つー訳でハル、このロープと槍を鑑定してくれ」

 

 オレは現場に残されていたロープと武器―――一見すると片手剣みたいだったが、実は短槍だった―――をオブジェクト化し、テーブルに置いた。

 

 「じゃあ、ロープからいくね」

 

 メニューを操作し、ハルはまずロープの鑑定を始めた。

 

 「う~ん、どこにでも売ってるNPCメイドだよ。耐久値が半分くらいになってるだけで、特に珍しいところはないよ」

 

 「そりゃあんなフルプレのプレイヤーぶら下げてたらなぁ」

 

 ロープの方からは何も解らなかったが、元々そこまで期待していなかった。次の槍が本命だ。

 

 「…………ハァ……PCメイドだよ。何でこんな武器作るんだろ……」

 

 逆棘がびっしりと付いたこの槍は、間違いなく対人用―――はっきり言えば人殺し用―――の武器だ。

 元々槍等の貫通(ピアース)系の武器には、刺さっている間’貫通継続ダメージ’を与えるという特徴がある。だがそれは感情を持たないmobにはほとんど意味が無い。理由はいたって単純で、刺さった次の瞬間には躊躇う事無くそれを引き抜いてどっかへ放り投げてしまうからだ。

 人ならばじわじわ減っていくHPによって死の恐怖を味わい本来のスペックを発揮できずに終わってしまうが、mobにはそれが無い。いくら逆棘を増やしても、引き抜くのに多少時間がかかるだけだ。

 鍛冶屋であるハルはそれをよく知っており、これを作ったプレイヤーは自らの意志で人殺し用の武器を鍛えたという事になるのだ。同じ鍛冶屋として、それがとても残念な様子だったが、鑑定結果を読み上げるのを中断する事は無かった。

 

 「作成者はグリムロック。綴りは’Grimlock’…………聞いた事ないなぁ……エギルさんは?」

 

 「おれも無いな。少なくとも一線級の刀匠じゃあねぇ……もしかしたら自分用の装備を鍛えるために鍛冶スキルをとったプレイヤーじゃないか?」

 

 「ですね。ステータスもあくまで中層クラスのものですし……」

 

 期待していた槍からも大した情報が得られなかったので、オレはどうしたものかと頭を捻り始める。

 

 「でも、その槍を鍛えた人が中層クラスのプレイヤーだって事は解ったわ。あとはその辺りのプレイヤー達に手当たり次第に聞いてみれば、グリムロックさんとパーティーを組んだ事のある人が見つかる筈よ。ソロや極一部の人としか組まないような少数でのプレイだけで、中層クラスになれるとはとても思えないし」

 

 「おう、コイツ等みたいにコンビかソロでしか攻略しないアホがホイホイいる筈ないしな」

 

 「「うぐっ!!」」

 

 アスナとエギルの容赦の無い言葉が突き刺さり、オレとキリトは揃ってテーブルに突っ伏してしまった。確かにボス戦の時以外はキリトと―――どちらかが参加できない時はソロで―――攻略していたのだが、堂々とアホと言われれば傷つくのは当たり前だ。

 

 「よしよし」

 

 「元気だして、兄さん」

 

 サクラがオレの頭を撫で、ハルがキリトの背をさすってフォローしてくれた。

 

 (あぁ……何か癒される……)

 

 不思議だ。さっきのダメージが無かったかのようだ。少しの間そのまま撫でてもらい、オレとキリトは何とか起き上がる事ができた。

 

 「ところでハル君、その槍の名前も教えてくれない?」

 

 「あ、はい」

 

 若干呆れを含んだ声でアスナがそう言うと、ハルは再び鑑定結果のウィンドウを見た。

 

 「えっと……’ギルティソーン’ですね」

 

 「罪のイバラってとこか……どっか不吉な感じの名前だな」

 

 罪のイバラ、か。確かに逆棘がびっしり付いた刃はイバラのシルエットに見えなくもないし、赤黒い色合いが何だか処刑器具を連想させる。グリムロックというプレイヤーは何を思ってこんな武器を作ったのだろうか?という疑問を抱かずにはいられなかった。

 

 「試してみるか……」

 

 しばらく槍をもてあそんでいたキリトが、不意にそんな事を呟いた。

 

 「試すって、何を?」

 

 サクラが訊ねるが、考え込んでいるキリトには聞こえていないようだった。やがておもむろに槍を左手で逆手に持つと、そのまま右手めがけて―――

 

 「待ちなさい!!」

 

 ―――突き刺す前に、アスナに止められた。

 

 「……何だよ?」

 

 「何だよじゃないわよ!バカなの!?それで死んだ人がいるのよ!!」

 

 仮に刺さったとしても死ぬようなダメージにはならないだろ、とどこ吹く風のキリトと、珍しく激昂するアスナ。確かにキリトが行った事は褒められるような事じゃないが、いずれは試さなければならない事だったのだ。それに最前線で戦うオレ達のHPが、中層クラスの槍が手に刺さったくらいで全損するとはとても思えないので、どうしてアスナがあそこまで怒っているのかがオレにはよく解らなかった。

 

 「……に……に……にい…………!」

 

 だがしかし。キリトに対して怒っていたのは、アスナだけでは無かった。というか、この状況で怒らない方がおかしい人物が一人いる。

 

 「……兄さんの……バカアァァァ!!!」

 

 重度のブラコンであるハルが、キリトの自傷行為を許す筈がないのだ。その怒りは年相応の爆発であるが、規模が噴火した火山もかくやというレベル。故にオレはサクラをつれて部屋から脱出し、エギルも便乗した。そして噴火が収まるのをひたすら待った。

 

 ―――結局ハルの怒りが収まったのは、それからおよそ三十分ほど経ってからだった。部屋から避難していたオレとサクラとエギルが見たのは、ひたすらハルをなだめすかしているキリトと、部屋の隅で何かに怯えるように縮こまっていたアスナ、あからさまに不機嫌な表情でちょっと刺激すればまた噴火しかねない様子のハルだった。




 本作の圏内事件は、原作とアニメのごっちゃです。
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