SAO~黒の剣士と遊撃手~   作:KAIMU

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 最近は何とか時間を見つけてペースが上がるようにがんばってます


 ……シルバーウィークってなんですか…………?

 作者兄弟は今日から普通に仕事です……

 五十六層の主街区名を捏造しました。


三十話 事件捜査その四

 クロト サイド

 

「なぁ……さっきの話の意味、解るか?」

 

 「いや、オレだってよく解らねぇよ」

 

 おっさんと別れて店を後にしてから、オレ達は首を捻ってばかりだった。と言うのもおっさんの話は何だか禅問答みたいな物で、イマイチ意味が解らなかったからだ。

 だがそれはオレとキリトの場合である。サクラとアスナは今も一緒にいるので、おっさんが言いたかった事を理解できているのか聞いてみようと思った。ギルメンとして常日頃からおっさんと言葉を交わしている二人なら、オレ達が気づかなかった事に気づいてくれているかもしれないし―――

 

 「……やっと解ったわ。醤油が無いからあんな残念な味なのよ」

 

 「でもこの世界に醤油は……」

 

 「だったら私が作ってみせるわ!」

 

 ―――前言撤回。アスナが何だか男前な事を言っているが、今の彼女の頭の中はおっさんの話とは別の事しか考えてなさそうだ。

 

 「……変な料理を食べさせた事は謝る。だからさっきヒースクリフが言ってた事の意味を教えてくれ」

 

 「え?あぁ……確かにキリト君達にアレは解りづらかったかも」

 

 「団長、あんな言い回しをする事が多いですもんね」

 

 わたし達は慣れたから大丈夫だけど、とサクラ達が苦笑しながらオレとキリトの方を向いてから、おっさんの言葉の意味を教えてくれた。

 

 「団長が言いたかったのは、信じられるのは自分で見聞きした一次情報だけであって、他人から聞いた二次情報を鵜呑みにしちゃダメって事だよ」

 

 「ええ。今回の事で当てはめれば、ギルド’黄金林檎’の過去の話……指輪事件の方ね」

 

 「「な!?」」

 

 これには驚かざるをえなかった。昨日友人を失ったばかりのヨルコさんを疑えと、二人は言っているのだから。

 

 「ヨルコさんを疑えって言うのか?指輪事件の事は今更裏づけがとれないって’お前’が言ってただろ!?」

 

 キリトの抗議はオレも同じだ。昨日ショックを受けた筈の人すら疑うってどんな鬼畜だよって言いたくなる。

 

 「……ねぇ、その’お前’っていうのやめてほしいんだけど」

 

 だが、今のアスナにそれは届かなかったようだ。呼び方を直してほしいと、キリトに微笑みながらやんわりと言っているけど…………何だろう、有無を言わせない圧力みたいなのが感じられた。キリトも同じ様で、急遽呼び方を直し始める。

 

 「じゃ、じゃあ……貴女?……副団長?…………閃光様?」

 

 キリトが候補を挙げると、そのたびに彼女から感じられる圧力は増し、彼の表情は必死なものに変わっていく。やがてキリトが候補を思いつかなくなると、ついにアスナは吹き出して

 

 「普通に’アスナ’って呼べばいいじゃない。クロト君だってそうしてるんだし」

 

 キリトに名前で呼ぶ事を許すのだった。だが肝心のキリトはハトが豆鉄砲を食らった様な表情で少しの間ぽかんとして、それから脱力するようにため息をつくのだった。

 

 「あーもう、さっさと次行こうぜ!」

 

 「次って?」

 

 「あのチキンタンクんトコに決まってんだろ。昨日槍を巻き上げてきた礼をしなきゃなんねぇし」

 

 今のオレは、間違いなく悪人がするような笑顔になってると思う。リアルの方ではケンカが絶えなかったからよく浮かべていた笑みではあるが、SAOに来てからはご無沙汰だった。

 ただ、サクラが若干引いているから内心では早くも後悔しているが。

 

 「手荒な事は反対だけど……小心者の彼なら、単刀直入に言えば何かぽろっと漏らすかもしれないわね」

 

 アスナのもっともらしい言葉によって、オレ達の次の目標は確定するのだった。

 

 ~~~~~~~~~~

 

 五十六層 主街区’カーパレス’

 

 「いつも思うけどよ……KOB以上にでっけぇホームだよな」

 

 「全くだ。いったい何処にこんな馬鹿デカイ物件を買う金があったんだ?」

 

 早速シュミットが所属するギルドDDAのギルドホームにやってきたのだが……主街区で一番大きな城砦を拠点としている事に愚痴を零してしまうのは大目に見てほしい。オレ達のねぐらはもっと小さいので、つい一言言いたくなってしまうのだ。

 ……別にDDAの連中が、戦闘で役に立たない事につぎ込める金がある事をひがんでる訳じゃねぇぞ?

 

 「DDAにはKOBの倍以上の人数がいるし……経理のダイゼンさんが効率良い狩場を幾つも独占してるんだろうなって言ってたよ」

 

 アスナ達も苦笑しながら答える辺り、攻略会議でいつも向こうの自己中心的な考えと折り合いをつける事に苦戦しているようだった。

 攻略組のツートップといえるKOBとDDAだが……実はこの二つ、主張が若干異なるのだ。可能な限り被害を抑えつつも迅速なゲーム攻略をするKOBに対し、アインクラッド最強ギルドの栄誉を得ようとするDDA。ボス戦でのLAに固執するプレイヤーが多いのは当然DDAであり、戦力アップの為にオレ達への勧誘も二回ほどあった。

 当然オレ達は断ったし、LAだってほとんどオレとキリトで奪い合ってきた……オレ達に必要ない物はエギルに売りつけて市場に流したから、独占はしていないぞ。ただ、いつも目の前でLAを掻っ攫っていくオレ達の事を快く思っていないだろうってのは容易に想像でき…………あ、オレはサクラの事もあるからKOBもか。

 アレ?オレってもしかしてどっかで誰かに刺されてもおかしくない立場にいるんじゃないか……??

 

 「とりあえずシュミットさんを呼んでくるから、クロト達はここで待ってて」

 

 「お、おう」

 

 そう言ってサクラ達は、門番よろしく入り口付近に立っているDDA団員へと向かっていった。確かにオレやキリトよりも、彼女達が行った方がいいだろう。だが頭ではそう納得できても、感情はそうはいかない。

 

 (落ち着け……アスナがいるんだし、変な事にはならないだろ……)

 

 昨日木陰でキリトと話してから、オレはサクラへの想いを抑えるのはやめる事にした。だがその分、彼女が別の男性と話しているのを見ると……レイの時と同じくらいモヤモヤしてくるようになってしまった。我ながら本当に小さな男だと思う。

しばらく待つと、サクラ達が何事も無くシュミットを連れてきた。彼自身も、命を狙われているだろうって事は自覚しているようで、鎧とがっちりと着込んでいるのにやや青い顔をしていた。オレ達が姿を見せても驚くような事は無く、どこかにいるかもしれない自分を狙う誰かにひたすら警戒していた。

 

 「……誰から聞いたんだ?」

 

 適当に選んだ人気の無いNPCショップに入った所で、シュミットはようやくそう言った。主語が無かったが、十中八九指輪事件の事だろう。別に隠す必要は無いと思ったので、答える事にした。

 

 「元黄金林檎のメンバー……ヨルコさんからだ」

 

 「……ふうぅぅ……」

 

 シュミットから零れたのは、安堵のため息だった。彼女が自分と同じ売却反対派だった事を知っているからこその反応だと思えた。

 その後も少しばかり話をした所、シュミット自身も今回の事件が売却派の誰かによる反対派への制裁という可能性にたどり着いていた。だからこそ仮病を使い、ギルドホームから一歩も外へは出ていなかったとか。

 

 「なぁシュミット、グリムロックが何処にいるか知らねぇか?」

 

 「し、知らん!ギルドが解散してからメンバーとは連絡を取っていなかったんだ。誰が何処にいるとかは全く知らないんだ!!」

 

 ……なんつーか、情報を聞き出すためにどう会話を誘導しようかとか考えていたのが馬鹿らしく思えてきた。今のシュミットはとにかく怯えていて、嘘が言える状態じゃなかった。

 一つだけ条件を出してきたが、それを承諾するとアッサリ情報を提供してくれた。

 

 ~~~~~~~~~~

 

 「お互いに武器は装備しない事、そしてウィンドウは一切開かない事……いいですね?」

 

 アスナの言葉に、ヨルコさんとシュミットは黙って頷いた。シュミットが情報提供の代わりに出した条件は、ヨルコさんと会って話がしたい、という事だった。ヨルコさんに確認を取ったところOKだったので、今こうして彼女が泊まっている宿の部屋にオレ達四人はシュミットを連れてきた。

 キリトがシュミットを、サクラがヨルコさんを、アスナは両方を監視しており、オレはヤタの索敵で部屋の外から盗聴しようとしている人がいないかをチェックしていた。

 

 「……昨日殺されたのは、本当にカインズなんだな?」

 

 鎧を着たままのシュミットはさっきから落ち着きが無く、片足がずっと貧乏揺すりを続けていた。昨日オレとキリトから聞いたことをヨルコさんに聞く辺り、事実を受け入れたくないというか、聞き間違いだったと信じたいという感じだった。

 

 「……本当よ。それも、グリムロックさんの槍でね」

 

 ヨルコさんも声が震えていたが、シュミットよりは幾分マシな状態みたいだ。だがその落ち着いた感じがシュミットには逆効果だったようで、彼は喚くように声を荒げた。

 

 「何であいつが殺されるんだ!あいつが……カインズが指輪を奪ったのか!?いや、グリムロックはおれやお前も殺すつもりなのか!?」

 

 「まだグリムロックさんの復讐と決まったわけじゃ無いわ。彼に槍を作ってもらった他の誰かの仕業かもしれない……ううん、きっと殺されたリーダー自身の復讐なんだわ」

 

 「っ!?」

 

 ヨルコさんが言った事は突拍子も無いが、怯えてばかりのシュミットには刺激が大きすぎた。彼は息を呑んだ後、しばし口をパクパクさせる事しかできなかった。そんな彼に構わず、ヨルコさんはソファから立ち上がると何かに憑かれたように喋りつづけた。

 

 「……私、夕べ寝ないで考えたの…………結局のところ!リーダーを殺したのは私達全員でもあるのよ!指輪がドロップした時投票なんかしないでリーダーの指示に従えばよかったんだわ!!」

 

 さっきまで静かに話していたヨルコさんが突然金切り声で叫びだした事にオレ達は少なからず驚き、誰も彼女を止めようと動き出す事ができなかった。

 叫びながら後ろに下がっていたヨルコさんは、窓に当たった事で幾分落ち着いたのか、少し前の落ち着いた声に戻った。だがそれがかえってなんともいえない不気味さを漂わせていた。

 

 「ただ一人……グリムロックさんだけは最初からリーダーに任せると言っていたわ…………だからあの人には、私達全員に復讐する権利があるんだわ……!」

 

 「……冗談じゃない……!冗談じゃないぞ!半年も経ってから、何を今更……!」

 

 (……どっちも感情が高ぶって冷静さを欠いてるな……ここは一旦落ち着かせるべきだな)

 

 このまま続けてもよい事は無いだろう。そう思い、キリト達に目配せをする。

 

 「お前はいいのかよ!?こんな訳の分からない方法で殺されても―――」

 

 興奮しているシュミットの腕ををキリトが掴む。そのお陰でシュミットは言葉を止め、ハッとしたように口を噤んだ。

 ヨルコさんの方を見れば、サクラがなだめようと近づいて―――

 

 ――――――トン

 

 「え……?」

 

 何かが当たったような乾いた音と共に、ヨルコさんがぐらりと揺れた。そして彼女が窓辺に手をついたその時風が吹いて―――

 

 「なっ!?」

 

 ―――なびいた髪の隙間から、彼女の背中に深々と突き刺さったダガーの柄と傷口から噴出するダメージエフェクトが見えた。

 だがオレ達がそれを視認した次の瞬間、ヨルコさんは窓から外へと落ちてしまう。

 

 「ヨルコさん!!」

 

 サクラが叫びながら手を伸ばすが、無慈悲にもヨルコさんには届かなかった。オレは急いで窓に近づき、落ちたヨルコさんを助けようと身を乗り出した。

 

 「……嘘だろ……」

 

 けれど。オレが見たのは、ヨルコさんが地面に叩きつけられると同時に大量のポリゴン片を撒き散らして消える瞬間だった。




 原作の雰囲気は壊したくない……でも全く同じじゃダメだし……

 お話を考えるのは楽しいんですけど、実際に文章にしてみると思うように行かない事が多いです。
 上手く書けてるかどうかは自分達じゃよく分からないです。


 あと余談ですが、作者弟の職場には、エギルのような出会いをして結婚・退職した方がいたらしいです。
 ネトゲで知り合って結婚した人って、本当にいたんだなぁって思いました。
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