SAO~黒の剣士と遊撃手~   作:KAIMU

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 作者弟が12日間ぶっつづけで働いたり、兄が4日間出張したりと色々あって中々更新できませんでした……


 最近スランプ気味なのか、描写が雑になってきた気がします……


三十四話 今、できる事を

 クロト サイド

 

 「うおりゃあぁ!」

 

 右手に握った短剣を、正面の相手に突き出す。だがそれはあっさり避けられ、今度は相手が剣を振り下ろす。突き出した右腕は引き戻しても間に合わず、回避できる距離でもないので、普段のオレならこれで終わりだろう。

 

 「なんの!」

 

 だが今は違う。左手に逆手で握っている短剣で、迫り来る剣を受け流し逸らす。そのまま相手を斬り付けようと左手を前に―――出そうとした瞬間、オレの眼前には刃が存在していた。とっさに体を捻っても大して避けられず、結果として剣先が左肩に突き刺さってしまう。それがクリーンヒットと認められ、デュエルのウィナー表示が浮かび上がる。そこには相手の……キリトの名前が堂々と載っていた。

 

 「あ~くそ、また負けた……やっぱお前のスキル反則だろ」

 

 その場に座り込み、愚痴をこぼしながらポーションを飲む。

 

 「よく言うぜ。お前だって反則級のスキル持ってるくせに」

 

 射撃とかもうチートだろ、なんてキリトは言ってくるが、オレとしてはキリトの二刀流の方がチートだと思っている。

 攻撃速度及び武器防御スキルの効果がプラス五十パーセント、ソードスキルのクーリングタイムが二十パーセント短縮……スロットにセットするだけでこれほどの恩恵を得られるうえ、専用のソードスキルもある。加えて、専用ソードスキルはどれも破格の威力と連撃数を誇る、まさに’攻撃は最大の防御’と言うべきスキルだ。

 一撃の威力を重視して重い剣を使っているキリトに、手数が加わる二刀流は相性が良すぎだ。それはもう、鬼に金棒って言葉がしっくりくるほどに。現に二刀流のキリトと接近戦をしても勝てた試しが無い。

 オレの射撃スキルは遠距離攻撃を可能にするもので、この世界では十分にチートなスキルなのだが……いかんせん使い勝手が悪い。弓のソードスキルは他のものより技後硬直とクーリングタイムがやや長く、かといって一撃必殺というほどの威力でもないのだ。

 つまるところ、秒間ダメージは二刀流に劣っている。まあ、大型mobの高所にある弱点を直接狙えるから、一概にどっちが優れているかなんて言えねーけど。けれども使っている側からすると、どうしても短所に目が行きがちなのだ。

 

 「それにしても……」

 

 「ん?」

 

 「いつまでそんなロマンスキル使うつもりだ?」

 

 そう言ってキリトはオレのメインアーム―――鏡写しのような一対の短剣を一瞥する。

 

 「他のスキルと合わせりゃ結構使えるぜ。それに短剣よりもこの双剣の方が、お前の二刀流の相手になるだろ」

 

 エクストラスキル’双剣’。短剣スキルを使い続けることでスキルウィンドウに出現するスキルだ。専用の二刀一対型の短剣とソードスキルがあり、より攻撃に特化している。

 

 「そう言えるのはお前がセオリー無視のビルドしてるからだろ……」

 

 「うっせ」

 

 ……実はこの双剣、使用しているプレイヤーは極少数しかいないのだ。ぶっちゃけオレ以外にガチで使おうとする奴はいないんじゃないだろうか?

 

 「二本で耐久値を共有してるから摩耗が激しいクセに短剣より一割増しくらいの数値しかないし、一発のダメージがが八割程度にまで落ちてるのに……複合スキルが無かったらほとんど役立たずだぞ?」

 

 「オレは使えてるから良いんだよ。武器だってハルのお陰でボス戦でも十分耐えられるし」

 

 キリトが指摘した通り、双剣スキルは短剣スキルより攻撃に特化していると言っても欠点の方が多い。ハイリスクローリターンであるため、デスゲームのSAOではオレみたいにビルドとかみ合っていたり、それこそロマンを求めたりしている奴しか使わないのだ。

 

 「軽業(アクロバット)、疾走、体術、跳躍……複数のスキル熟練度が一定なってやっと使えるスキルが主力で、偶然お前はどれも持ってたってだけだろ」

 

 スキルは基本、一つ一つが独立している。だが片手剣・体術複合ソードスキル『メテオブレイク』の様に複数のスキルをセットしていて初めて使用可能になるソードスキルや、チャクラムの様に投擲と体術の二つのスキルが無ければ装備できない武器もある。

 双剣スキルは単独で使用できるソードスキルが少なく、使い勝手にクセがあるのだ。そして何より……

 

 「結果オーライだろ……にしても二つの武器を振り回すってのは思ってたより簡単じゃねぇな……」

 

 「そうだな……俺もお前も、最近になってやっと慣れたからなぁ……」

 

 両手に別々の武器を持ち、互いに干渉しないようにする。言うのは簡単だが、実践するのは中々難しい。特にキリトはオレよりもリーチが長い片手剣二本。初めの頃は二人して両手の武器をぶつけたり攻撃する手が偏ったりと苦労したものだ。

 

 「それにしても……エリュシデータだったか?それ」

 

 「ああ。ようやくSTRが要求値に届いたんだ」

 

 エリュシデータ―――五十層ボスのLABの金属の塊と、当時キリトが使用していた剣を合成してできた漆黒の剣。ステータスはまさに魔剣クラスで、最前線が六十層を過ぎた今でもトップクラスの武器だ。

 その代償にSTR要求値がバカみたいに高く、今まで装備できなかったのだ。

 

 「……けど左手の剣がなぁ……」

 

 「そんな剣がホイホイできるかよ……」

 

 だが今はエリュシデータの性能が高すぎるために同等クラスの剣が見つからず、二刀流の使い勝手が非常に悪くなっている。

 通常攻撃は左右の剣の性能がそのまま攻撃力になるため右での攻撃をメインにすればいいかもしれなが、ソードスキルとなると話は別だ。二刀流のソードスキルの一発当たりの攻撃力は左右の剣の平均がベースとなるようで、片方が強くてももう片方が弱いと与えられるダメージがガタ落ちするのだ……とはいっても一線で普通に通用するダメージが出せる辺り、呆れてしまうが。

 

 「つか、お前はコートも新調したんだから少しは我慢しろよ」

 

 「お陰で懐がスッカラカンだけどな……」

 

 苦笑するキリトが身を包んでいるのはブラックウィルムコートと呼ばれる漆黒のコート。前のコートと比べると装飾が大分抑えられており、機動力を優先しているようだ。さらにキリトは今までコートの下に申し訳程度につけていた金属製の胸当てを外している。一撃でも食らったらまずいのではと思わなくもないが、これでも前よりも硬くなっているのだから驚きだ。

 最も、コートの生地は二週間ほど前に最前線で倒したボスモンスターのドラゴンの皮を素材にアシュレイが仕立てた物だし、装飾だって最高級クラスの素材をハルが妥協せずに加工してくれているので当たり前といえば当たり前なのだが。

 

 「それにしても、早くしないとな……」

 

 「そうだな……」

 

 ヨルコさん達が起こした圏内での偽装殺人を初めとした一連の事件から一か月が経った今、攻略組ではラフィン・コフィンの討伐が急務となっていた。

 というのも、ヨルコさん達が起こした一連の事件に於いてシュミットが襲われたからだ。彼はタンクとして状態異常攻撃に対するレジストスキルを鍛えていたが、ラフコフはそれを超えるレベルの麻痺毒を使用していた。つまりラフコフの連中は、多少の条件を整えれば攻略組を殺せるだけのレベルを備えているという事になる。

 このまま放置すればいずれ攻略中に背中から刺される事は間違いない。後顧の憂いを絶つためにもラフコフを倒さなくてはならないのだ。

 

 「アルゴ達情報屋も必死になって探っているんだ……そろそろ見つかってもいいはずなんだがな」

 

 「……サクラ達、倒れなきゃいいけど」

 

 日々情報屋が得てくる情報を精査したり、自らのギルドからも調査員を派遣したりとサクラ達はこの一か月間とても忙しい。ちゃんと休めているのか時々メッセージを送ってみた事が何度かあるが、ほとんど返信が来なかったので、そういう暇すらないみたいだ。

 

 「そう心配するなら会いに行けよ。ついでに告ってこい」

 

 「決めたんだよ……付き合うのはラフコフを潰してからってな」

 

 あくまでオレの身勝手な決意で、サクラには伝えていない。死亡フラグだっつー事も分かっている。でも、それでも……PoH達とケリをつけてからじゃないと、オレはサクラとまともに付き合えそうになかった。

 

 ―――貴様らは必ず血祭りに上げてやる。貴様らの大事なヤツを目の前で殺した後でな……

 

 あの時のPoHの言葉が、頭にこびりついて離れない。ただの’血祭りに上げてやる’ならどうって事無かっただろう。けれどもPoHは、’大切なヤツを目の前で殺した後に殺してやる’と言った。それはつまり、サクラが狙われている事に他ならない。

 その為彼女にPoH達の凶刃が迫る前に、一刻も早くラフコフを倒しておきたいという思いが日に日に強くなっていく。

 

 (クソッ……)

 

 敵の居場所が分からない以上、戦う事しかできないオレ達には何もできない。今はそれがどうしようもない程もどかしかった。

 

 「気負うな。俺達は今できる事をすればいい」

 

 そう言われて意識を戻すと、目の前にデュエル申請の表示があった。今のオレ達にできる事……それは対人戦の経験を積む事であり、オレ達の’切り札’をもっと上手く扱える様になる事だ。だからこそオレ達は、二、三日の間に一日はデュエルに没頭するようにしていた。視線を左上へと向けてHPバーを確認すると、先程のダメージが回復しているのが分かった。

 

 「……うし!もういっちょやるか」

 

 初撃決着モードで受諾し、立ち上がる。今いる村は最前線にあるものの攻略には関係ないサブダンジョンのそばにあるため、誰も来ない。それに万が一人が来てもヤタが知らせてくれるから、出し惜しみをする必要は無い。メニューを操作しつつタイマーを確認する。

 

 「今度は短剣か?」

 

 訝しむキリトをスルーし、タイマーの残り時間があと僅かになった所で装備の変更を決定し、跳躍する。

 

 「なっ!?お前まさか―――」

 

 オレも切り札―――射撃をもっと自在に使いこなせなくてはならない。背中に加わった重みを感じながらさらに距離をとる。

 

 「さっきの仕返しだ!」

 

 新たに背負った弓を引き抜き、カウントがゼロになるのと同時に矢を放つ。キリトには十分対策をとられているが、それでも一方的に攻撃できるメリットはデカい。距離を詰めるのに手間取ってしまえばその分自分が不利になる事を知っているからこそ、キリトは必死になって駆け出す。だが―――

 

 「弓スキル使わなくたってやりようはあるんだよ!」

 

 「だからって建物使った三次元軌道は反則だろ!?」

 

 止まることなく移動し続け、矢を射続ける。オレが今まで鍛え上げてきたスキルとステータスだからこそできるのであって、キリトには不可能な動きだ。弓スキルを使わないため決定打には欠けるが、ディレイが無いので捕まる事も無い。

 キリトの反応速度は人外じみているので、速く鋭い一撃を放つよりも全身を狙って大量の矢を射続ける方が有効だ。

 

 「くっ!」

 

 一度に複数の矢をまとめて放ち続けながら跳躍を繰り返すのは、オレ自身いつまでできるか分からない。だからこれはある意味で我慢比べだ。キリトが防御しきれなくなるのが先か、オレが自分の動きを続けられなくなるのが先か―――

 

 ~~~~~~~~~~

 

 「……オレの……勝ちだ……!」

 

 「ミスに見せかけて……ゼロ距離でスキルぶっ放すとか…………一歩間違えれば負けてたぞ?」

 

 「うっせ……勝ちゃいいんだよ」

 

 地面に大の字に寝ころび、荒い息を整える。今回は不意打ちが成功したので勝てたが、正直オレには手詰まり感が否めない。剣の腕ではどうやったってキリトには敵わなくなってきたし、弓だってただ射るだけでは切り払われてほとんど効かない。

 

 (……こんなザマで、サクラを守れるのか……?)

 

 以前一度だけ戦ったPoHの強さを思い出す。あの時はキリトと二人掛かりであったにも関わらずさばき切られ、ロクにダメージを与えられなかった。あれから強くなった自信はあるものの、ヤツに届くのかどうか確証が無い。

 今回使った、着地ミスを装って相手に突進系スキルを使わせ、ギリギリまで引き付けてから弓スキルを放つという不意打ちだって効くかどうか……

 

 (何か無いのか?何か……)

 

 考えれば考えるほど自分の無力さを思い知らされ、気持ちだけが焦っていく。気づけば手は硬い握り拳になっていて、震えていた。

 

 「行くぞ」

 

 「……」

 

 キリトの声に、黙ってノロノロと起き上がる。一体何があったのかと目で聞くと―――

 

 「ラフコフのアジトが分かったって、アスナからメッセージが来た」

 

 「ッ!?そうか……」

 

 ―――決戦の時が、間近に迫っていたのだった。




 今作では原作と違い、ラフィン・コフィン討伐戦の時期を変えました。時系列を間違えたとかではないのでご了承ください。
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