SAO~黒の剣士と遊撃手~   作:KAIMU

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 お久しぶりです……前回から二週間ほど経ってしまい、申し訳ありません。

 弟「ド○マオンライン楽し~」

 兄「カ○プロおもしろ~」

 みたいな感じで執筆すっぽかしてました……


三十九話 拒絶

 クロト サイド

 

 ラフコフ討伐戦から二日、オレはカルマ回復クエストを消化しカーソルをグリーンに戻した。

 クエストの内容を簡単に言えば、納品系である。まぁ、納品するアイテムはドロップ率の低い物が多いし、納品した後にNPCから半日以上もかかる説教を聞かなければならないという面倒くさい仕様なのだが。加えてオレの武器は弓のみだったので常に人目につかないように気を付けていたため、予想以上に時間がかかってしまったのだ。

 

 (キリトもハルも大丈夫だってメッセは来てたけどなぁ……)

 

 クラインからのメッセージで二人の様子はわかっている。しっかりしているといってもハルはオレよりも幼い。蘇生アイテムで助かったとはいえ、この世界での死を経験してしまったのだ。そう簡単に立ち直れるとは思えない。

 一方のキリトも守れなかった事を始め色々気にしているだろうし、しばらくはハルの傍にいるだろう。オレも今の二人には休んでいてほしいのが本心だ。

 

 「うぃーっす二人とも。帰ったぜ」

 

 無事にカーソルを戻せた事の報告と、キリト達の様子を見るために、おれは三人で共同で生活しているアルゲードのプレイヤーホームに戻った。二人に変な気遣いは逆効果になるだろう事は容易に想像できたので、極力普段通りの態度で接することにした。

 

 「あ……クロトさん……おかえりなさい」

 

 「お、おかえり……」

 

 普段よりも暗い二人の出迎えに、予想していたとはいえ今回も自分が何もできなかった事を痛感するが、オレはそれを押し殺して笑顔を浮かべる。

 

 「おう。心配かけちまったけど、もう大丈夫だぜ」

 

 二人の視界ではオレの頭上に見えているだろうカーソルを指さしながらそういうと、二人も少しだけ表情が和らいだ。

 

 「お、お茶出しますね。兄さんも手伝って」

 

 「ああ。クロトはアイテムの整理とかしてこいよ」

 

 「OKだ」

 

 二階へ上がり、自室に入る。部屋に備え付けられている倉庫へストレージ内の素材アイテム等をしまい、ポーション等の消費アイテムを取り出す。

 

 (コイツも持っときゃ良かったぜ……)

 

 ソードブレイカーを持つならば使わないだろうと思って倉庫に入れていた、普段愛用している短剣を取り出した時にそんな事を思ったが、作業する手を止めずに整理を続ける。僅か数日だというのに、腰に加わった重みがひどく懐かしかった。

 

 「また頼むぜ」

 

 つい短剣にそんな事を言ってしまい一人で苦笑したが、気を取り直して作業を終わらせ、一階へと降りた。

 リビングに入り、ハル達が出してくれたお茶を飲んで一息つく。

 

 「その……クロト、俺」

 

 「気にすんな」

 

 「……まだ何も言ってないだろ」

 

 討伐戦での事でキリトが謝ってくる事は分かっていたので、遮るように言ってやる。あの時はハルが殺されてブチ切れていたのだから仕方がなかったし、いつまでも引きずるのはオレの性分じゃあ無い。それを指摘すると、キリトは納得がいかない様子ながらも謝る事をやめてくれた。

 

 「そういえば、明日の昼過ぎにフィールドボス攻略会議があるんだが……クロトは、参加するのか?」

 

 代わりに、こちらを気遣うような目で見ながら最前線の情報を教えてくれた。どのみちオレから聞くつもりだったのでこれはありがたい。

 

 「ああ、オレはするぜ。ついでにキリトが休む事も伝えといてやるよ」

 

 「……悪い。フロアボスまではそうさせてもらうよ」

 

 キリトは申し訳なさそうな顔をしたが、今のオレはそんな彼の顔を見たくなかった。そのため、意識して明るい声で返してやった。

 

 「別に今の層の攻略、丸々休んだっていいんだぜ?」

 

 キリトの真似ではないけれど、ちょっと悪っぽくニヤリとしてやれば、すぐさま同じように笑ってくれた。

 

 「おいおい……LAを譲る気はないぜ?」

 

 「オレもその気は無ぇよ」

 

 笑いあいながら、互いの拳を軽くぶつける。ほんの数日前まで普通にやっていたやりとりが、とても懐かしくて、心地よかった。

 

「………悪ぃ、けっこうクタクタだからもう寝るわ」

 

 急に疲れが噴き出してきたのか、今日はもう何かをする気になれなかった。その為オレは、まだ昼過ぎではあるものの休む事にした。

 

 「はい、何かあったら言ってくださいね」

 

 「あ、ああ……クロト、大丈夫なのか?」

 

 ハルは多少固さがあるものの笑みを浮かべたが、それとは対照的にキリトは気遣うようにオレを見ていた。

 

 「お前じゃあるまいし……ソロでボスに突撃とかしねぇよ。心配すんな」

 

 今の二人に負担はかけられない。その為オレはいつも通りの笑みを浮かべて自室へと向かった。

 

 「……違うんだ……俺が言いたかったのは―――」

 

 後ろ手にドアを閉める時にキリトが何か言っていたが、オレの耳には聞こえなかった。本当は歩くのも億劫な体を無理やり動かして自室に戻り、ベッドに倒れこむように入った所でオレの意識は途切れた。

 

 ~~~~~~~~~~

 

 六十一層主街区 ”セルムブルグ”

 

 翌日、昼頃まで泥のように眠っていたオレは今、会議に遅刻しそうになっていた。転移門を出ると、眼前に広がる白亜の城塞都市とそれを囲む湖の光景には目もくれずに街の中央へと跳躍を繰り返す。

 この街は”アルゲード”と比べて道や建物の配置がきちんと整理されているが、街の端から中央部へいくにつれて段々と高くなっている。だがやはりというか、道に従って進むよりも、途中にある建物を飛び越えながら直線で進んだ方が手っ取り早いのだ。オレ的には。

 約一分ほどで、オレは会議の会場となる街一番の規模を誇る宿屋へと着く事ができた。

 

 「はぁ……はぁ……間に合った、か?」

 

 視界の端に表示されている時計を見ると、ちょうど午後一時になったところだった。次いで会場にいる人達へと視線をむけると、見知った者達が目に映った。

 

 「どうやら無事にカーソルを戻せたようだね、クロト君」

 

 「……まぁな」

 

 エギルやクラインといった知り合いや、アスナと一緒にいるサクラに声をかけたかったが、それよりも先にヒースクリフがいつの間にか目の前に現れて話しかけてきた。ボス戦に於いては非常に頼りになるのだが、こういう風にこちらにあまり配慮しない所にはついムッとしてしまう。その為少々ぶっきらぼうな返し方をしてしまった。だが彼はさして気にした様子もなく、にこやかな表情を浮かべていた。

 

 「時にクロト君、今日はキリト君と一緒では無いのかね?」

 

 「アイツはしばらく休みだ。今のアイツを最前線に引っ張り出そうとする程、おっさんも鬼じゃないだろ?」

 

 「これは失礼した。確かに今の彼には休息が必要だったね」

 

 キリトとハルに何があったのかについては、多分アスナが報告してあるんだろう。事情を察してくれたようで、おっさんは少し頭を下げて謝罪してきた。こうもあっさり自分の非を認めるのは流石大人と言うべきなのだろうが、彼が頭を下げるイメージが全く無かったので少々面食らってしまった。

 

 「さて……それではフィールドボス攻略会議を始めよう。今回のボスは水棲型だが、海岸付近の砂浜までは上陸してくる事が確認されている」

 

 KOB団員が壁に貼り付けた、記録結晶で撮影したであろう写真には上陸したボスの姿が遠目に映っていた。

 

 「水龍型か……」

 

 「ま、今回は四層と違って船に乗る必要は無いから移動は楽っちゃあ楽なんだがな」

 

 「エギルか。確かにあそこの水上戦はキツかったなぁ……」

 

 当時はレベルや軽業(アクロバット)スキルの熟練度が低かった上に足場が船だけだったので、敵に思うように剣を当てられず苦労したものだ。もっとも、ベータテスト時とは大きく様変わりしていたのにもとても驚いたのだが。

 

 「ボスが一定時間毎に湖と陸を行き来することは分かっているが……パターンによってその時間も変化すると考えていいだろう。リンド君」

 

 「偵察戦では、短くても十分、長くても十五分程度で移動するのを確認した。だがこれはHPゲージ一本を削るまでのパターンであり、二本目では別のパターンがあると思われる。加えて今回のボスは雷ブレスを使うので、麻痺には十分注意してほしい」

 

 ん~中々面倒くさそうなボスだな。こっちの移動範囲は制限されているうえに麻痺……下手したら撤退も危うくなる。

 

 「元気そうでよかったぜ、クロの字」

 

 「クライン……キリト達が世話になったな」

 

 「気にすんなよ。初日にお前ぇらからレクチャーしてもらったから、今のおれらがいるんだしよ」

 

 ヒースクリフやリンドが中心になって会議を進めているのを聞きながら、オレはエギルとクラインの二人と言葉を交わしていた。

 今までよくやっていた事を繰り返すのは非常に心地良くて、もうラフコフとの事は終わったのだと実感できた。

 

 「なぁ……サクラは、大丈夫だったか?」

 

 「そういや少しばかり落ち込んでたぞ。何があったのかは分からんが……」

 

 「そうか……」

 

 事前にラフコフに情報が漏れていたとはいえ、討伐戦の事は基本的に参加した本人以外で知る者はいない。エギルは参加していなかったので、討伐戦での事を知らないのだ。

 

 「ま、クロの字が行きゃあ一発で元気になると思うぜ。サクラさんの笑顔っていつもおれらの励みになってるんだしよ」

 

 「……手ェ出したら犯罪だぜ、クライン?」

 

 またクラインが鼻の下を伸ばしながらしょーもない事を言い出したので、きっちりと釘を刺しておく。もし本当に手を出したらデュエルでボコボコにしてやるつもりである事も言外に伝えれば、彼は慌てて顔を引き締めた。

 

 「わ、分かってらぁ。……けど、後でフォローしとけよ?アスナさんがついてるとはいえ、サクラさんも大変だったんだしよ」

 

 「言われなくてもそのつもりさ。本当ならすぐにでも話がしたいんだし」

 

 もう、この想いを抑え込む必要はなくなったのだ。この会議が終わったら……いや、ちゃんとサクラに笑顔が戻ったと確信できたら、この気持ちを伝えよう。ずっとずっと想い続けてきた、大切な彼女へ。

 

 「おいクロト。何考えてるのか知らんが、顔が緩んでるぞ」

 

 「っ!?う、うるせぇ……」

 

 ヤバイヤバイ……攻略会議中だってのに、オレは何考えてたんだ?

 

 「まさか……ついにヘタレのクロの字が告は―――」

 

 「お前のニヤニヤした顔とかマジでキモイわクライン」

 

 生暖かい目で余計な事を口走る野武士を黙らせるために片足の小指を思い切り踏んづけてやる。悶絶する彼を無視してマフラーをを引き上げて口元を隠して深呼吸し、心を落ち着ける。

 

 「―――ボスが湖に移動してしまった場合、我々には攻撃手段が無い。現時点でボスが回復行動をとる事は無いが、HPバーが一本になった時もそうだとは限らない。もしボスが水中で回復行動をとるようになった場合は撤退も―――」

 

 「―――いや、その必要は無いだろう」

 

 珍しく他人の話を遮るように、おっさんは口を開いた。静かながらもはっきりと聞こえる声に、誰もが耳を傾けた。

 

 「クロト君」

 

 (拒否権は……無ぇみたいだな)

 

 真鍮色の双眸をまっすぐこちらへ向けるおっさんに少々辟易しながらも、ウィンドウを操作して弓を装備する。

 

 「……アンタが見たかったのは、コイツだろ?」

 

 せめてもの抵抗としてため息を一つつくが、おっさんは相変わらずの無反応だ。討伐戦で明かしてしまった以上、そう遠くない内にこうなるだろう事は想像できていたが……それでもやはり数十人から一斉に見られるのは居心地が悪い。

 

 「エクストラスキル射撃。スロットにセットするだけで投剣スキルにプラス補正が入って、加えて弓で専用のソードスキルが使える……出現条件は不明だ」

 

 「クロト君はいつ頃入手したのかね?」

 

 「……今年の始め。五十層攻略の後ぐらいだったな」

 

 周囲のどよめきや、未知のスキルへの好奇や羨望、そして嫉妬などの視線を務めて無視してポーカーフェイスで情報を公開する。これでまたしばらくは情報屋に追い掛け回されると思うと、気が滅入る。

 だが、射撃スキルの入手条件に至っては全くと言っていいほど心当たりが無い。キリトの二刀流も同様であり、それ故にほかにも同じスキルを入手した奴が出てこないものかと思いながらひたすら隠し続けてきたのだ。

 

 「……ふむ。情報屋のスキルリストに無いあたり、ユニークスキルの可能性もあるが……今はそうも言ってられまい。ボスが湖に移動した場合、クロト君にはメインのアタッカーを務めてもらおう。その場合はサクラ君が指揮するタンク部隊が護衛を―――」

 

 「―――待ってください団長!」

 

 突如、KOBの内の一人が立ち上がった。アイツは確か、討伐戦前に絡んできた奴らの一人だったはずだ。

 

 「何か不服かね?」

 

 「不服も何も、認める訳にはいきません!この男は―――」

 

 また妬みかよ……どうせまた、いつも通りビーターだ何だって文句つけてくるんだろう。いい加減飽きて―――

 

 「―――この男は殺人鬼なんですよ!!」

 

 ―――あ……

 

 彼の叫びが、心に突き刺さった。討伐戦でラフコフをポリゴン片へと変えた瞬間が、鮮烈に蘇る。

 

 「アスナ君の報告では、君をはじめ多くの者が彼に助けられたのだろう?それを仇で返すのかね?」

 

 「あの男は自分を敵と共に射殺そうとしたんです!でなければ自分のすぐ側に矢が飛んでくる筈が無い!!」

 

 それが、きっかけだった。広がった波紋はすぐに全体にいきわたり、誰もがオレに殺されかけたと口を開く。

 

 「ちょ、ちょっと貴方達!彼以外にも殺してしまった人がいるでしょう!?彼らまで差別するというの!?」

 

 「じゃあ何故彼だけ平気な顔してここに来たんですか!?レイを始め多くの者が一人殺しただけでも満足に戦えなくなってるというのに、コイツは十人以上は殺していた!!」

 

 「そ、それは……」

 

 遠くで、アスナが何かを言っている。体中が冷たいものに包まれていく。

 

 「殺す覚悟が無かったおれらのツケを代わりに払ってくれたんだぞ!それをなんつぅ言い方してんだテメェ!!」

 

 「おいクロト!しっかりしろ!!」

 

 近くで、クラインとエギルが叫んでいる。手足の感覚が消え失せ、立っているのもやっとだった。

 

 (違う……!オレは、ただ守りたくて……!)

 

 飛び交う怒声に押しつぶされ、声が出ない。否定したいのに、口が動かない。人殺し、殺人鬼と罵られる度に見えない刃が幾度も心に突き刺さり、抉っていく。

 

 (サク……ラ)

 

 揺れて焦点の定まらない視界の中、愛しい少女の姿を探す。ただただ彼女に縋りたくて、救ってほしくて―――

 

 「……!」

 

 「ぁ……」

 

 ―――目が、合った。その瞳には恐怖の色が、浮かんでいた。

 

 「……!!」

 

 震えながら、彼女は目を逸らした。顔を背けた。

 

 ―――拒絶、されたのだ。

 

 それが分かった時には、オレはその場から逃げ出していた。誰かが引き留めようと伸ばした手を、制止の声を振り払って。

 

 (あぁ……そっか。オレ……)

 

 逃げながらも思考は働き、自分が彼女に怖がられた訳を何となく理解してしまった。それと同時に、自分の中で大切な何かが崩れていく気がした。

 

 ―――オレは、平気で人を殺せる化物だ。

 

 そんな自分が、堪らなく怖かった。




 これ今年中にクロト達くっつけられるかな……?リズ編に行くのも危ういかも……
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