SAO~黒の剣士と遊撃手~   作:KAIMU

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 新年明けましておめでとうございます。今年も本作をよろしくお願いします。


 デートの続き……無理でした…………(涙)


四十三話 最悪な出会い

 クロト サイド

 

 サクラとデートした翌日、オレとキリトは四十八層主街区”リンダース”にあるプレイヤーショップ―――リズベット武具店へと来ていた。この店はサクラとアスナがお世話になっているとの事で、彼女達の剣はここの店主渾身の物だという。

 何故オレ達がこの店に来たのかというと、キリトの二本目の剣を手に入れる為だ。彼の愛剣、エリュシデータは一月前から使用していてなお最前線でトップクラスの性能を誇るという魔剣だ。しかしそれが災いして、二刀流スキル使用時には左手の剣の性能が足らずに足を引っ張てしまい、非常に扱いにくくなっているのだ。その為エリュシデータと同等の性能の剣が必要なのだが……いかんせん魔剣クラスの剣を打ち上げるとなると、素材―――特に核となるインゴット―――もそれ相応のレア物でなくてはならないのだ。

 だが、それも最近になってようやく目星がついた。後はそれを入手して、剣を打ち上げてもらうのだが……

 

 「……本当にいいのかよ、キリト?」

 

 「紹介してくれたアスナ達にはちょっと悪いけど、まだハルをフィールドに出したくないんだ……」

 

 インゴットがあるのは当然ながら圏外で、今回の場合はマスタースミスがパーティー内にいないと入手できないのではないかと言う噂があった。一月前にラフコフにハルを殺されかけたキリトは、まだハルを圏外へ連れ出すのに強い抵抗があるのだ。

 かといって今までこの手の状況でハルを頼り続けてきたオレ達に他の鍛冶屋の伝手がある筈もなく、困っていたのだ。だがキリトは、昨日アスナに半ば強引にクエスト攻略に付き合わされた時に上手くこの店を紹介してもらったのだ……オレとサクラは昨日のデートの途中で、過疎層にいた物好きなプレイヤー達に正体がバレてしまってそれどころじゃなかったけど。もう彼女とのデートは迷宮区とかに一緒に潜るといった攻略デートくらいしかできそうにないとあの時悟った。

 

 「さ、手早く済まそうぜクロト」

 

 「へいへいっと」

 

 昨日の事を思い出していたオレの意識を呼び戻すと、キリトは店の扉を開けて中へと入った。オレも続けて入ると、きちんと整理されて並べられた武器と、NPCの店員が目に映った。

 

 「いらっしゃいませ」

 

 「えっと、店主を呼んでほしいんだ」

 

 挨拶をしてくるNPCに、キリトは迷うことなく用件を伝える……つーかキリトよ、少しは棚の武器にも興味を示そうぜ?何か掘り出し物とかあるかもしれないし。

 

 「言ったろ?手早く済まそうぜって」

 

 「さっさと帰ってハルに会いたいってだけだろ?」

 

 「まぁな。遅くなって心配かけたく無いし」

 

 仕方がないとは言え、キリトもハルも前よりもブラコンになっちまったなぁ……こりゃアスナも大変だな。

 

 「―――リズベット武具店へようこそ!!」

 

 NPCに店主を呼んでもらってから少しの間棚にある武器を眺めていると、店内に明るい声が響いた。ようやく店主が来たのだと思い、そちらに視線を向けたオレは……硬直した。

 歳は多分オレやサクラと変わらないくらいの女の子が、ウェイトレスみたいな恰好をしているのはまだいい。圏内で作業する職人プレイヤー達の腕を支えているのは各種のスキルであって恰好は関係ない。そのためどんな服装をしていても特に気にした事は無かった……ハルは気分の問題だって言って作業時にはツナギ(のような服)を着ていたけど。オレが驚いたのは、店主らしき少女の首から上だ。

 

 ―――だってその髪が、現実世界ではありえないピンク色だったのだから。

 

 染料系のアイテムを使えば髪の色を変えられるのは初期からあったが、最前線でそんな事をしている人はまず見なかった。オレが硬直したのは、この事を半ば忘れていたのもあるだろう。だが一番の理由は―――

 

 (……コイツ、リアルでコスプレとかいけんじゃねぇの……?)

 

 そのありえないピンク色の髪が似合っていて、違和感が全く無かったからだ。というかよく見ると目の色もいじってあるらしく、ゲームやアニメのキャラにありそうなダークブルーになっていた。しかもこっちも結構似合っている。

 

 「……あぁ、オーダーメイドを頼みたいんだけど」

 

 (え?お前なんとも思わねぇの……?)

 

 しかし相棒はそんな彼女の容姿に全く驚くことなく、しれっと用件を伝えた。アイツだってあんな恰好のプレイヤーに会ったのは初めての筈だっていうのに、何故あんなにスルーできてしまうのだろうか?

 

 「あの……最近金属の相場が上がっておりまして……かなりお値段が高くなってしまうのですが……」

 

 「いや、予算は気にしなくていい。あと金属だって五十五層のヤツを取りに行く所から頼みたいんだ」

 

 「そ、そう言われましても……」

 

 マイペースに話を進めるキリトと、少々困り顔の店主。ま、そりゃそうだよな……理由があるとはいえ、初対面のプレイヤーと一緒に圏外に行くなんてのは危険過ぎる。特に女性プレイヤーは命以外の意味でも。

 

 「えぇっと…………アスナ達に紹介されたって言えば信用してくれるか?」

 

 「……はああ!?いきなり何言ってんのよアンタ!」

 

 キリト……それは確かに事実だけどよ……今のお前が言ったって信用されないだろ。現に店主は素っ頓狂な声を上げているうえに口調が変わっている……いやこっちが素なのか。さっきまでのは営業用って感じだったし。

 

 「カァ!」

 

 「痛っ!?いきなり何するんだヤタ!?」

 

 「お前なぁ……ちゃんと証拠とか用意しとけよな……」

 

 我慢しきれなかったヤタが、オレがずっと被っていたフードから飛び出してキリトをつついて止めた。そしてオレは仕方なくフードからマフラーへと装備を変更して素顔を晒した。

 

 「あ……あ、あん……」

 

 効果てきめんといったところか、店主はオレの顔を見るなり大口を開け、目を見開いた。どーせ「アンタが遊撃手!?」みたいな事を叫ぶのだろうと思い、聴覚を守る為に耳を塞ごうとして―――

 

 「アンタかぁーー!アンタがサクラの男かああぁぁ!!」

 

 「ぐへぇ!?」

 

 ―――店主に両手で首を絞められ、宙づりにされた。

 

 「ここん所ず~~っと惚気話聞かされてたこっちの身にもならんかゴルァァァ!」

 

 しかも思いっきり揺さぶられるというオマケ付きで。現実世界の体は寝たままなのに、激しく揺れる視界にマジで酔いそうになる。というか、サクラの惚気話にうんざりしたからその彼氏であるオレに八つ当たりって……オレからすれば理不尽以外の何物でもない。

 

 「ちょ、落ち着け!」

 

 店主の態度の変貌ぶりに呆気に取られていたんだろう、キリトが漸く動いて店主を止めてくれた。……キリトの付き添いで来ただけなのにこんな理不尽な目に遭うって、今日は厄日かよ……

 

 「―――はぁ……はぁ……」

 

 「クロトがいるんだから、少しは信じてくれたか?」

 

 オレがロクな目に遭っていないというのに、キリトはまたしれっと話す。すると店主の少女は乱れた呼吸を整えながら、不承不承といった表情でうなずいた。

 

 「それじゃ、五十五層に―――」

 

 「―――その前に、アンタはどんな剣が欲しいのよ?具体的な目標値を示してもらわないと、本当に金属取りに行く必要があるのかどうかわんないじゃない」

 

 営業口調はどこへやら、店主はすっかり素の口調でキリトに突っかかった。だがキリトはその言葉を聞いて、ニヤリと口の片端を釣り上げた。

 

 「なら、この剣と同等以上の性能って事で」

 

 彼は鞘に収まったままのエリュシデータを背中から外して、店主に手渡す。鍛冶プレイヤー達は必然的に筋力値が高いので、マスタースミスともなれば普通の攻略組の武器を持つ事は可能だ。だがキリトの剣、エリュシデータはアホかと突っ込みたくなるくらいにSTR要求値が高く、普通の両手武器以上に重いのだ。

 

 「ちょ、重た!?」

 

 幸いにも店主は多少よろける程度で済んだようだが、それでも両手で持つのがやっとの状態だった。彼女の驚く表情を見て、キリトはやや誇らしげな顔をしていた。

 

 「エリュシデータ……こ、こんな魔剣クラスの武器なんて……初めて見たわよ」

 

 カウンターに剣を置き、ポップアップメニューからその圧倒的性能に度肝を抜かれていたようだった店主だが、ウィンドウのある一点を凝視して固まった。つーか、今度は何だよ。

 

 「作成者……ハル……?…………アイツかああぁぁぁ!!」

 

 本日二度目の叫びが、店内に響き渡った。確かに鍛冶屋の中じゃハルは結構な知名度を誇っているが、ここまで驚くような事だろうか?

 

 「大げさだな…………それで、納得してくれたか?」

 

 「い、いいじゃない……あたしの最高傑作ならどうよ!」

 

 アレ……?なーんか店主の後ろに炎が上がっているような気がする。

 キリトはキリトで、あえて店主の対抗心を煽っているようにも見える。店主がカウンターの後ろの壁に置いてあった片手剣をキリトに手渡し、彼は何度か素振りをすると、おもむろに口を開いた。

 

 「……少し軽いな?」

 

 「そりゃ、使ったのがスピード系の金属だったからだけど……下手なパワータイプの剣よりも頑丈よ」

 

 元々キリトは重い剣を好む。戦闘で重い攻撃を連続で叩き込むのが彼のスタイルなので、武器も重い物……所謂パワータイプの物になるのだ。五十五層のインゴットもパワータイプの物だと聞いているが、キリトは店主の剣で満足するのだろうか……?

 

 「頑丈って言うなら……試してもいいか?」

 

 「え?別にいいけど……どうやって?」

 

 「こうやって」

 

 キリトはエリュシデータの柄を左手で持つと、剣先をカウンターに置いて水平にした。そのまま右手に店主の剣を握って振り上げる。

 

 「ちょ!?そんな事したらアンタの剣折れるわよ!」

 

 「流石によせってキリト!!」

 

 「大丈夫。エリュシデータ(こいつ)は折れない、さ!」

 

 オレ達の制止を聞かずに、彼はバーチカルを発動。店主の剣がエリュシデータの腹にぶち当たり―――アッサリ折れた。

 

 「……だからよせって言ったじゃねぇか……」

 

 店主の剣が。店内の隅に落ちた刀身は、一拍置いてポリゴンへと変わり果てる。

 

 「ウギャアアァァァ!!」

 

 悲鳴を上げた店主の少女が、キリトから折れた剣を奪い取って状態を確認する。例え破損した武器であっても、スキルを鍛え上げてきた鍛冶プレイヤーなら修復できる場合もある……破損が酷かったり、修復する前に耐久値がゼロになったりしたら無理だけどな。

 

 「修復……不可能……」

 

 がっくりと項垂れる店主と、彼女の手の中でポリゴン片に変わる剣。刀身の大半を失った時点で分かってた事ではあるが、それを彼女に言うのは酷ってモンだろ……こりゃ弁償だな。

 

 「何すんのよアンタはぁ!折れちゃったじゃないのよー!!」

 

 「あ、いや……まさか当てた方が折れるなんて思ってなくって―――」

 

 「―――それフォローになってねえからな!?」

 

 むしろ火に油だ!とツッコミを入れる前に、ブチッと何かが切れる音が聞こえた気がした。

 

 「折れたのはあたしの剣がヤワっちかったからって事かああぁぁぁ!?」

 

 「そ、そんな事は…………ある、かな?」

 

 「オレに振るな!」

 

 怒り心頭の店主に近距離から怒鳴られたキリトは、何故かオレの方を見た。

 今まで一緒に色々な事をしてきたとはいえ、こんなとばっちりだけは御免だぞ!オレ何も悪い事してねぇのに何でこんな道連れにされなきゃなんねぇんだよ!?

 

 「―――ああもう、こーなったらやってやろうじゃない!後で思いっきりふんだくってやるから覚悟しときなさい!!」

 

 「どーぞ、三十万だろうが四十万だろうが好きなだけふんだくってくれ」

 

 「言ったわね!後でお金足りませんでしたとかだったら他の客に売りつけてやるんだから!!」

 

 キリト……お前が今そうやっていられんのもハルが金銭管理してるお陰だろ……アイツのお陰で無駄遣いせずにしっかり貯金できてんだし。

 毎日稼ぎの一割を金庫に入れる事と、金庫からお金を出す時はハルにしっかり目的を言う事。この二つがハルの定めたルールであり、オレもキリトと一緒に守っている。いや~、ちょっと気を付けるだけで貯金って案外たまるんだよなぁ。

 

 「そういえば、まだ名乗ってなかったな。俺はキリトで、こっちが相棒のクロトとその使い魔のヤタ。とりあえず剣ができるまでよろしくな」

 

 「リズベットよ。よろしくキリト」

 

 「……いきなり呼び捨てか。まぁいいけどさ……リズベット」

 

 「お前等なぁ、折れた剣の弁償が先―――」

 

 「―――その分も後で纏めてふんだくったるわ!もしこいつが払えなかったら、アンタが代わりに払いなさい!!」

 

 さっきと言ってる事違うぞ、なんてツッコミができる筈も無く、店主―――リズベットは早速メニューを開いていた。多分戦闘用の武装のと各種アイテムの確認だろう。オレ達は既に準備してあるので問題無いが。 

 はっきり言って、最悪なパーティーの組み方だった。道中だってこの調子で口喧嘩が絶えないと思うと、オレ一人で仲裁できそうな気がしない。

 

 (こんなんだったら、アイツにも同行頼めばよかったか……?)

 

 最前線のすぐ下の層でトレジャーハンターをしている知り合いが、脳裏に浮かんだ。お宝マニアな所があるものの、攻略組と遜色無い腕を持っているし、この場にいてくれたなら一緒にキリト達の仲裁をしてくれただろうし……

 

 「カァ……」

 

 「無い物ねだりしたってしゃあねぇよなぁ……」

 

 思わず零れそうなため息をのみ込んで、オレは店を出たキリト達の後に続いた。




 リズが何故かネタキャラっぽく……本当は健気ないい子なのに、作者が書いたらこうなっちゃいました。

 リズファンの方々、誠に申し訳ございません。
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