SAO~黒の剣士と遊撃手~   作:KAIMU

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 どうも、KAIMUです。

 これからは、土日が更新日になりそうです……平日更新ってキツイ(涙)


二話 デスゲーム

 キリト サイド

 

 

 (なんだ!?一体何が起こっているんだ!?)

 

 自分やクロト達のアバターが青い光に包まれた時、俺は驚いた。この青い光の現象は知っている。アバターを一瞬で別の場所に転送する転移エフェクトだ。そして転移エフェクトを発生させるには特別なアイテムや装置が必要だ。

 しかし、俺達はそんなものは使っていない。俺は、”何も使っていないのにも関わらず転移エフェクトが発生したこと”に驚いたのだ。

 エフェクトが終了し、目を開けると―――

 

 「ここは………はじまりの街…か?」

 

 この世界にログインしたときに降り立った場所、”はじまりの街”中央広場だった。

 

 「兄…さん?」

 

 「っ!ハル!みんな!」

 

 呼ばれて振り向くと、ハル達がいた。その事に安堵しつつも周りを見ると、続々とプレイヤー達が転移してきた。彼らの声に耳を傾けると、

 

 「これでログアウトできるのか?」

 

 「さっさとしてくれよ」

 

 「GM出て来いよ!」

 

 どうやら俺達以外にもログアウトできないことに気づいたプレイヤーはいるようだ。彼らは何処かホッとしていたり、苛立ちから声を荒げたりと様々だ。かく言う俺も、言い知れぬ不安が拭えずにいた。

 

 「兄さん……」

 

 「大丈夫だ。俺がいるから、な?」

 

 ハルが不安げに呼んできたので、そう言って頭を撫でて安心させようとする。尤も、俺自身を落ち着けるためでもあったが。

 

 「しっかし、こりゃぁ何だ?一体何人集まってんだ?」

 

 「多分、全プレイヤー……一万人近くじゃないか?」

 

 一方で、クラインとクロトは今なお増え続けているプレイヤー達を見てそう言っていた。

 俺も改めて見渡してみると、確かに千人や二千人をゆうに超える数のプレイヤー達がいることが分かった。だが………

 

 (何故全プレイヤーを集める?ログアウト不可がバグなら、その場でアナウンスおよび強制ログアウト、サーバーの一時停止が普通なのに………)

 

 「おい、上を見ろ!」

 

 誰かがそんなことを言った。つられて上を見ると―――

 

 「システム…アナウンスと………ワー……ニング?」

 

 ハルが囁くような声量で、上空に表示された文字を読んだ。そう、上空に文字が表示されているのだ。それが俺の不安を煽る。

 

 (これはログアウトできないことへの謝罪じゃない……?)

 

 漠然と、そう思った。言い知れぬ不安、または嫌な予感。根拠は無いが、それが頭から離れない。

 そうこうしている内に、上空が警告表示で真っ赤に埋め尽くされる。しかも、表示と表示の合わせ目から血を思わせる赤い液体が垂れてきた。正直に言ってグロい。そして液体は俺達より十メートルほど上空で集まり、一つのアバターを作った。

 

 「あれGM?」

 

 「何で顔無いの?」

 

 作られたのは真紅のローブを纏ったアバター。ベータテストで何度か見たことのあるGM用のアバターだ。しかし顔が無い。ベータ時代なら、男性はひげの豊かな老人、女性は眼鏡をかけた少女だったはずだ。そしてデカイ。広場の隅から見上げても分かるほどに巨大だ。

 

 「こりゃなんかヤべぇぞ、キリト」

 

 クロトの言葉には同感だ。俺がそう思っていると―――

 

 「プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ」

 

 (”私の世界”?一体何を………)

 

 「私の名は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の存在だ」

 

 「なっ!?」

 

 「マジか……」

 

 俺は驚き声を上げ、クロトは何処か納得したように呟いた。ハルとクライン、それに多くのプレイヤーは呆然としている。

 

 「諸君らはすでに、メインメニューからログアウトボタンが消失していることに気づいていると思う。しかし、これは不具合ではない。繰り返す、不具合ではなくソードアート・オンライン本来の仕様である」

 

 「し、仕様だと……」

 

 クラインが割れた声で囁いた。ハルは俺の服の裾を掴んできた。怖いのだろう、すごく震えている。少しでも安心させたくて、俺はハルの手に自分の手を重ねた。その間も茅場は話を続ける。

 

 「諸君らは今後、このゲームから自発的にログアウトすることはできない。また、外部からのゲームの強制停止もありえない。もしそれが試みられた場合―――」

 

 やめろ、そこから先を言うな。

 

 「諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される」

 

 脳の破壊。それはつまり、現実での”死”だ。それが分かったらしく、ハルは俺にすがり付いてきた。ハルがいるから上辺では平常心を保てているが、内心では叫びだしたかった。

 

 「脳を…破壊する?…ハハッ、あいつ言ってることおかしいんじゃねぇか?たかがゲーム機だぜ?ナーヴギアにそんなことできる訳ねぇだろ!そうだろ、キリト!?」

 

 クラインが、後半は悲鳴を上げるような声で俺に聞く。だが、その答えを知っているからこそ、話したくは無かった。特に、ハルの前では―――

 

 「いや…可能だぜ、クライン」

 

 クロトが、俺の代わりに答える。

 

 「クロトッ!!」

 

 「不安を煽りたくねぇっていうお前の気持ちは分かる。けどな、そうやって目を背けてたらいつか取り返しのつかない事が起きるぜ?」

 

 「っ!?」

 

 淡々と返したクロトに、俺は何も言えなくなる。そのままクロトは説明を続ける。

 

 「ナーヴギアの原理は電子レンジと同じだ。リミッターさえ外せば、脳を破壊できる。その上内臓バッテリーもあるから、電源引っこ抜かれたって問題ねえんだ」

 

 「マジかよ………」

 

 クラインが力無く座り込む。そこでまた茅場の声が響く。

 

 「より具体的には、十分間の外部電源の切断、二時間以上のネットワーク回線の切断、ナーヴギアの停止、解除または破壊の試みのいずれかが実行された場合、ナーヴギアの脳破壊シークエンスが開始される。実際に警告を無視したプレイヤーの家族友人等がナーヴギアを解除しようとした例が少なからずあり、その結果―――」

 

 一拍の溜めの後

 

 「―――既に二百十三名のプレイヤーが、現実世界から永久退場している」

 

 茅場の周りには、ナーヴギアによる死亡を伝えるニュースの画面が幾つも表示される。おそらく本当に死んだのだろう。

 

 「現在あらゆるメディアが、多数の死者が出ていることを含めて繰り返し報道している。よって、諸君らのナーヴギアが解除される危険性は既に低くなっているだろう。諸君らは安心して、ゲーム攻略に励んで欲しい」

 

 「ふざけるな!ログアウト不可の状況で、のんきに遊べって言うのか!こんなの、もうゲームでも何でも無いだろうが!!」

 

 俺の叫びなどどこ吹く風というように、茅場は説明を続ける。

 

 「しかし、充分に留意してもらいたい。今後、ゲームにおいてあらゆる蘇生手段は機能しない。HPがゼロになった瞬間、諸君らのアバターは永久に消滅し、同時に……諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される」

 

 視線を左上―――自身のHPゲージへと向ける。このゲージが空になったら、死ぬ。そう考えたとき、ベータテスト中に死んだ瞬間がフラッシュバックする。

 

 (もう、あの時とは違う……あれが、本当の”死”になるんだ……!)

 

 「諸君らが解放される条件はただ一つ。このゲームをクリアすればよい。現在諸君らがいるのはアインクラッド最下層。そこから迷宮区を攻略し、その最上階にいるフロアボスを倒せば、次の層が解放される。それを繰り返し、第百層にいる最終ボスを倒すことができれば、その時点で生存している全プレイヤーのログアウトを約束しよう」

 

 「クリア……百層だとぉ!?おい、キリト、クロト!ベータじゃどこまで行ったんだよ!?」

 

 「落ち着け、クライン」

 

 「二ヶ月で、十層のボスを倒して終わった……それも、何十回と”死に戻り”を繰り返したうえで……な」

 

 クロトが落ち着かせ、俺が答える。

 

 「マジ…かよ………そんなんできる訳ねぇだろ!!」

 

 後半は茅場に対しての叫びだ。だがその声が届くはずは無く、まだ話は続く。

 

 「では、最後に一つ。諸君らのストレージに、私からのプレゼントを入れておいた。確認してくれたまえ」

 

 全員がその言葉に従って、ストレージを確認する。

 

 「手鏡?」

 

 誰かが呟く。オブジェクト化してみると、何の変哲も無いただの手鏡が現れる。そこに写っているのも自分のアバターで、おかしなところは何も無い―――

 

 「うおっ!?」

 

 「な、何!?」

 

 「今度は何だよ!?」

 

 クライン、ハル、クロトの順に声を上げ、アバターが光る。

 

 「う、うわ!?」

 

 俺も例外ではない。あまりの眩しさに目を閉じる。光が収まると―――

 

 「ハル…?」

 

 「兄さんっ!?」

 

 現実のハルがいた。周りを見ると―――

 

 「お前、誰だよ?」

 

 「おめ……いや、あなたはどちらさまですか!?」

 

 クロトと同じ格好をした髪の短い女の子(?)と、クラインと同じ格好をした挙動不審気味な野武士面の男がいた。

 

 (これは………まさか!!)

 

 改めて手鏡を見る。

 

 「俺だ………」

 

 癖のない、サラリとした黒髪。やや長めの前髪の下にある、コンプレックスと言える女性のような中性的な顔立ち。そう、現実世界の俺が写っていた。前髪をそっとかきあげると、あの醜い傷跡まであった。ということは………

 

 「もしかして……クロトとクライン、か?」

 

 「て事はお前ら、キリトとハルか!?」

 

 どうやらその姿が二人の現実での容姿のようだ。とりあえずクラインはほっといて

 

 「クロト………お前、ネナ―――」

 

 「ネナべじゃねぇ!!オレは男だ!!!正真正銘、れっきとした男だっつーの!!次言ったらガチでぶっ潰すぞテメェ!!!」

 

 マジギレされた。というか、俺やハルよりも女顔のヤツなんて初めて見た。そのくせ声は男らしく低いから慣れるのは時間がかかりそうだ。そして周りには肥満体型の男、ガリガリに痩せた男、女性の装備を着けた男、男、男―――九割程が男だ。確か手鏡を使う前の男女比は七:三くらいだったはず……約二割もネカマが居たのか。多いな。

 

 「けどよぅ、何だってこんな事――」

 

 「どうせすぐに言うだろ。アイツが、な」

 

 クロトが不機嫌そうに言う。

 

 「諸君らは今、”何故?”と思っているだろう。何故SAO及びナーヴギア開発者である茅場晶彦はこんなことをしたのか?と」

 

 茅場はそのまま続ける。

 

 「今の私は、何の目的も持たない。この世界を作り、観賞するために私はSAOを、ナーヴギアを作った。そしてそれは、既に達成せしめられた。………以上で、ソードアート・オンライン正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の、健闘を祈る」

 

 最後にそう締めくくると、茅場(正確にはGMアバター)は現れる時とは逆の順序で消えていった。しばらくは誰も声を上げる事無く呆然としていたが―――

 

 「いや……いやあぁ!」

 

 誰かが悲鳴を上げた。そしてそれを合図に約一万人が然るべき反応を示す。

 

 「何だよ……何だよこれ!!」

 

 「出せ!ここから出せぇ!!」

 

 「こんなの困る!この後予定があるのよ!!」

 

 「いやああぁぁ!帰して!帰してよおおぉぉ!!」

 

 怒号、悲鳴、絶叫。皆がそれぞれの思いを叫ぶ。つまりパニック状態に陥ったのだ。

 

 (このままじゃマズイ!はやくここから離れないと!)

 

 「お前ら、こっちだ」

 

 クロトは冷静に、人気の無い路地裏に俺達を案内してくれた。そのため、俺も頭を冷やすことができた。

 

 ~~~~~~~~~~

 

 「さて、これからどうするか………お前なら分かるよな、キリト?」

 

 「ああ。今から次の村へ向かうんだろ」

 

 「そうだ。んでクライン、ついてくるか?」

 

 「ど、どういうことだ?」

 

 まだ混乱から立ち直りきれていないのだろう。クラインは、ゲーマーならすぐに分かる話でさえ理解しきれていなかった。ハルにいたっては俺にしがみついたままだ。説明はクロトに任せ、俺はハルをなだめるのに専念した。

 

 「いいか、MMORPGってのはプレイヤー間のリソースの取り合いだ。加えてオレ達が得られるリソースも限られている。そんな状態で生き残るには、誰よりも多くのリソースを獲得して、ひたすら自己強化をし続けなきゃならないんだ。時間が経てば経つほどパニックから立ち直るプレイヤーは増えるハズ。それはつまり、リソースを取り合う相手が増えて、自分が不利になっていくって事だ。そうなったらこのあたりにポップするmobはすぐに狩り尽くされちまう」

 

 クラインもここまで説明を受けると、やっと俺とクロトが言いたいことに気がついたらしい。

 

 「だから、ライバルの少ない今のうちに拠点を移すってか?……おめぇらが言いたいことは分かった。けどよ……」

 

 クラインも納得した表情をしている。だが、彼は首を横に振った。

 

 「悪いな。さっき、前のゲームで知り合ったダチがいるって言ったろ?まだ広場のどっかにいる筈だ……置いて、いけねぇ……」

 

 「そうか……なら、ここで別れるか。何かあったら、メッセージ飛ばしてくれ」

 

 クロトもすぐに引き下がった。そして―――

 

 「キリト、お前も残れ。」

 

 淡々と、クロトは俺に告げた。

 

 「な、何言ってんだ!?俺だって―――」

 

 「戦えない荷物を抱えた三人パーティーよりも、ソロのほうがずっと楽だ。それとも何だ?そんなにガタガタ震えたハルも置いていくってのか?」

 

 「っ!!……そ、それは………」

 

 「できねぇだろ、どっちも。だから――」

 

 「大…丈夫………僕は、大丈夫だから………ついて…行くよ」

 

 「ハル………」

 

 「兄さんが一緒なら……がんばれるから」

 

 そう言ってハルは弱弱しくも健気に微笑んだ。その気持ちに応えるために、俺も腹をくくろう。

 

 「…分かった。ただし、キリトの言うことを良く聞いとけよ。…それとキリト、荷物担いで戦えんのか?」

 

 「ああ。ハルは絶対に俺が守る。そして何があろうと現実に帰してみせる!!」

 

 「オーケー、そんだけデカイ事言ったんだ。ちゃんと守れよ?」

 

 「もちろんだ!!」

 

 「僕だって、ただ守られるだけの荷物じゃないって事、クロトさんに証明してみます!」

 

 ハルも結構落ち着いたようだ。震えている様子も無い。

 

 「じゃあな、お前ら。俺のことは気にすんな!お前らに教わったテクで何とかしてやらぁ!」

 

 「ホントにできんのか?ビギナーのお前が」

 

 「言ったなこの野郎!見てろよ、いつか必ず追いついてやっからな!!」

 

 「おう!じゃあ、またなクライン」

 

 クロトとクラインはここでも軽口を叩き合う。そして俺達はクラインに背を向け走り出す。と―――

 

 「クロト!キリト!ハル!おめぇら、案外カワイイ顔してんな!結構好みだぜ、おれ!」

 

 「クラインテメェ!次会ったらぜってぇぶっ飛ばすからな!覚えてろよ!!」

 

 「男に”カワイイ”は褒め言葉じゃねえ!次会ったらクロトと一緒にぶん殴るからな!!」

 

 「クラインさんも、その野武士面のほうが、アバターの時よりも十倍似合ってますよ!!」

 

 そう言って今度こそ走り出す。ちらりと後ろを見てみると、クラインはもういなかった。それが俺に、この世界で最初の友人を切り捨てたのだと実感させる。そのことに対して言葉にできない悲しさがこみ上げ、少し涙が滲んできた。

 

 「兄さん……きっとまた、会えるよ。だから……行こ?」

 

 ハルはそんな俺の気持ちを察し、手を握ってくれた………本当に、俺にはもったいないくらいよくできた弟だ。だからこそ―――

 

 (何があっても、ハルだけは絶対に帰してみせる!!)

 

 改めてそう誓い、俺達は”はじまりの街”を出た。




 グダグダで済みません。茅場の説明のあたり、ほとんどそのまんまですね……。

 次は”はじまりの日”をやって、少しオリジナルを挟みたいと思います。

 誤字、脱字、アドバイス等ありましたら、感想にてお願いいたします。
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