まぞは負けたいのに 家から出してもらえない! 作:女性上位敗北ものをスコレ
…勇者様は 狂ってしまいました。
…いや 元から狂っていたのかもしれませんね。
あの日 私達の村が灼かれた日から
…
…あの村は 優しい村でした 人魔を区別せず…皆で暮らしていましたね
ゆう……レルムさ…レルムくんは 私達の村で拾われた子供でした。
私の家が引き取って 姉として頑張って育てていました。可愛いレルムくんのために 頑張っていましたね
「おねえちゃん 僕は今日は畑のお手伝いしたんだよ〜
ふふん…つよつよれるむなので おねえちゃんよりつよいよ!」
「レルムくんは強いね〜 でもおねえちゃんも負けてないですよ〜!」
「わ〜!はなしてよ〜!」
けれど。
魔物を嫌う国……「リュミエール王国」にこの村は見つかってしまって。
人類の敵を匿う邪悪の村として 燃やし尽くされてしまいました。
「あっ…あぁ…えるぶむら…が……リュミエール……か…よ…そう…なんだ…
この世界は………平和な……………せ……い…じゃ………………ない………だ………………うっ…ぷ」
「放心しないでください!まだ見つかってない内に!逃げますよレルムくん!」
「おね………らめあ……おとうさんは おかあさんは むらのみんなは みすてられな」
「ダメです!もう助かりません!!!」
尻尾の触手は 淫魔が人を捕らえて快楽と共に消化するもの……らしく 普段使いようがなかったのですけど
無理矢理レルムくんを連れて行くのには役立ちましたね。
……レルムくんは きっと…すごく…辛かったでしょう
まだ あのときは…10歳ですよ?
「…これから どうします…?レルムくん。安全な所に逃げて 2人で暮らすというのも…」
「おねえ…………………いや ラメア。ダメだよ。
これから始まるのは 僕達の冒険。 ……あんな悲劇、起きて欲しくない。
……ここからは 僕の妄言だよ?
もし 人魔が諍うこの世界が 仕組まれたものだとしたら?
…僕は 人魔の仲を 取り持つために戦うよ。」
「何を…言ってるんですか?レルムくん…?」
「ラメア。」
…あぁ、思い返すと やっぱり狂っていたのですね。レルムくん。
この戦いを …この世界を 知っていたのでしょうか?
「…はい。何ですか」
「もし、良ければ。」
「はい」
「付いてきて。一緒に世界を旅して 世界中の人と魔物を救おう。」
…
「…おかしなことを言いますね。今 ここで私に襲われたら終わる程度の強さの貴方が旅しても 何も変わらないでしょう? 全てから逃げるほうが ずっと楽で…」
「逃げられない。」
「逃げられない 逃げることは出来ない そういう仕組みだから。」
「…僕は行く 明日にはここを出る……付いてくるのなら…付いてきて。」
付いて行く他 ありませんでした。
あの顔を見てしまっては
あの…後悔と言えぬ秘密の苦痛と涙に塗れた ぐしゃぐしゃの表情を。
ずっと 苦しかったからでしょうか…今 膝で寝ているレルムくんは 魘されているようで…
私には どうすればいいのか分かりません。
彼があの時 なにに苦しんでいたのか
この世界というのは どういう意味だったのか
5年間の戦いを生きていた彼が
……今のこの平和を 生きていけるのか
………ただかわいいだけの レルムくんになってくれるか
今は出来ることもないです。それでも レルムくんが悪夢に打ち勝てますように…
(ちゅっ…)
…レルムくんは 私達が護りますから。安心して良いんです。
護れるのは 私達だけ。