便利屋68 黄金将軍   作:まーろう

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29 通信X

「……こちらはイサミ。一般回線でかけている。ナギサ様はいらっしゃるか?繋いでくれ」

 

「……氷野イサミです。例の件について、ご報告があります」

 

「恐れながら申し上げます。遺産の鹵獲は失敗しました。ゲヘナは鍵を手に入れ、遺産の破壊へ動き出しています。ご期待に沿えず申し訳ございません」

 

「構内での戒厳令、そして正義実現委員会やシスターフッドへの待機命令──貴女から許しを頂いたにもかかわらず残念です。今後の外交の切り札になるはずでしたが……しかし遺産が悪用されかけていたことも含めて、全ての真相を知っておくことは、ゲヘナへの牽制にはなるでしょう」

 

「……本拠地の炙り出しには、鍵を押さえていたスペルが一役買ってくれました。はい……ですが、必要な犠牲でした。私よりも派閥の長にふさわしい振る舞いでした」

 

「……NASSはゲヘナ生の集団でしたが、学園側は無関係です。バットは遺産の捜索に送り込まれた、一介の風紀委員に過ぎません。貴女のご心配には及びません」

 

「取り急ぎのご報告は以上です、ナギサ様。それでは失礼します」

 

 

 

「……暗号化しろ」

 

「聞こえるか?こちらはコード・ネーム・レセント。緊急事態だ。至急伝言を願いたい。回収した鍵は偽物だった。本物はすでにゲヘナの手に渡っている。すぐにでも遺産の破壊へ動きだすはずだ」

 

「……そうだ、回収ユニットを動かせ。接続が断たれる前に、魔人をランプへ移し替えろ。我々の痕跡は一切残すな。今は制御できなくとも、近い将来に鍵を必要としない利用法が見つかるかもしれない。それまで厳重に保存しておけ。中身を抜いた衛星は用済みだ、宇宙を彷徨うデブリと何も変わらん」

 

「アリウスのシュウは二重(ダブル)だった。こちらの情報は一切与えなかったが、その判断は間違いではなかった。だが彼女が私を裏切るとは、いささか予想外だった。愚かだな……大人しく百鬼夜行で暮らしていればよかったものを」

 

「……ああ、遺産自体は脳のように自分で物を考えられる。しかし現実で活動する協力者──代行者の存在が不可欠だった。最初はコガネかと思っていたが……代行者は別にいた。AIの利益のために動いていた者……もっと早く気づくべきだったな。黒猫の獣人やスペルは、それで始末されたんだ。あの用心棒の手で」

 

「……そうだ、コガネが気まぐれに引き入れた便利屋68のおかげだ。彼女たちがうまく立ち回ってくれた。ゲヘナは鍵を手に入れて満足している。NASS対策班は解体された。アリウスも、トリニティも安心しきっている」

 

「先方も事態は把握しているだろう。怪しい城は連邦生徒会に爆破され、学校的懸念はきれいに消滅。

 

 それでいい、誰も私が百花繚乱の雇われ工作員だとは気づいていないからな」

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