魔法少女×勇者!!!~愛の魔法と勇気のメカ、掛け算すれば無敵です!!~   作:タナト

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ついに次回から戦闘に……長かった


第14話 対話

 

「あ、まっ、待ちなさい!!」

 

 ワンテンポ遅れて聞こえてきた声も、一実は無視した。まだ玄関には通学バッグがある。その中の財布さえ確保できれば、それでOIDOへと連絡を取ることができる。

 出来のよくない頭をフル回転させて、次の手を考えながら、制服姿の彼女は駆け出す。ただ、父の足ならすぐに追い付かれるとも思った。

 

(お父さん、来ないな……)

 

 しかし、予想とは裏腹に玄関にも、その先の道にも、追いかけてくる様子はなかった。

 

(お父さん、信じてくれたのかな……)

 

 それは極めて都合のいい解釈かもしれないが、今の彼女は、シンセリーのためにも無駄な後ろめたさを抱え込むわけにはいかなかった。

 

「公衆電話……どこだっけ?」

 

 やはり考えたのが出来の悪い頭だったのがいけないのか、彼女の計画は早くも行き詰まり始めてしまった。ただでさえ数を減らしている公衆電話。その具体的な位置までは記憶していなかった。

 スマホで確認することもできないので、少し遠いが一番近くの駅に行くことにする。

 

(どうしよう……もたもたしてたらシンセリーが……!)

 

 駅に行ってOIDOに連絡を取ってからどうする? 迎えを待つのか? それとも電車で移動する? 一実はこれからの行動について考えてみるが、どの方法も行き当たりばったりでグダグダになってしまいそうだった。もしもシンセリーの命が失われるようなことがあれば、それこそもう生きる気力がなくなってしまう気がする。そんなことを考えるほどに、彼女は追い詰められていく。

 

“ギューン!……キュキュッ!”

 

 一実は自分の後方から、自動車の駆動音とブレーキをかける音が聞こえた。

 

「碧乃一実さんですね!OIDOの者です。お迎えに上がりました」

 

 黒いバンから人影が降りてきて、一実に声をかけてくる。街灯が辛うじて照らす程度の暗さの道路では、その人物の姿は判然としない。それでもこのタイミングで一実個人を誘拐する人などいないだろうと考え、彼女はその車に駆け寄り、その勢いで乗り込んだ。

 

「碧乃さん、よく要請に応じていただきました。一刻を争うので、移動しながら状況を説明します!」

 

「は、はい!……う、うわぁ!」

 

 一実は黒い車の後部座席に座ったのだが、隣に座っていた職員が最低限のことだけを言うと、車は急発進した。おかげで一実は体勢を崩しかけてしまう。

 

「現在……シンセリーとエクスマインは3体の鋼魔と同時に戦闘中、その途中で管制室との通信が途絶しました。1体1体の戦闘力も高いようで、危険な状況に陥っていると思われます」

 

「それって無事かどうかも分かんないってことですか!?早く行かないと!」

 

「はい。現在、OIDO地下施設でノクストスの解凍と再武装調整を行っています。おそらく、それが終わるより我々が施設に着く方が早いでしょうから、あなたは勇者との情報共有後、すぐに巡航形態で現場に向かっていただきます……飛ばしますが、20分ほどかかってしまいそうです」

 

「大体分かりました……」

 

 大体の勇者には、空を飛ぶ乗り物に変形し、魔法少女を乗せて高速移動する機能がある。それと同じ機能がノクストスにもあるということだろう。魔法少女と勇者についてはやはり下地があるため、彼女はしっかりと状況を理解することができた。しかし、20分間は車の中でじっとする必要がある。それは彼女にとってつらい時間だった。

 

「あの、つかぬことをお聞きしますが、ご家族の了承は得られていますか?」

 

「え……?」

 

 唐突にかけられた質問。一実は目を背けたい心理から、別に後でもいい話題ではないかと感じてしまう。しかし、今は移動中……今は情報交換ぐらいしかやることがないのだろうと思い直し、正直に答えることにする。

 

「それが……家出みたいに飛び出してきちゃって……親から許してもらえたわけじゃないんです」

 

 シンセリーのピンチに比べれば些事だったが、それでも引っかかるものがある。組織としても無視できないことだとは考えているようだった。

 

「そうでしたか……分かりました。組織に頼んでフォローするように言っておきます」

 

 声から女性だと分かる隣の職員は、心なしか優しい声色で言ってくれる。それで生まれてしまったわだかまりを解きほぐせるとは思えないが、一実は少しだけ心が軽くなった。

 

 ※

 

「地下5階にて、作業中です。ノクストスに声をかけてあげてください。寝起きだと思うので」

 

「わ、分かりました……」

 

 目的の施設に着いたとき、一実はそんな指示を受ける。

 

(何がどうなっちゃうんだろう?)

 

 まさに秘密基地に入っていくようで、彼女は未知への困惑と興奮で胸がいっぱいになった。

 

“カシャ……!”

 

 その階に降りて、突き当たりの大きな扉の先に、その部屋はあった。

 

「寒っ!」

 

 凍結という話だったので、その冷気が残っているのだろうと一実は察した。

 

「悠夜さん!」

 

 その部屋の奥には、勇者形態の悠夜……ノクストスがいた。アームはパイプで固定され、何やら調整を受けているようだった。上から照らされる照明も相まって、どこか拘束されているようにも見える。

 

“ビィィン……”

 

 一実の接近に反応したのか、ノクストスのツインアイカメラに光が灯る。

 

「なんだ? 廃棄なら眠ったままやってく……君は? ……ん? シンセリーが……なるほど、それで君を戦場に出す気なのか?」

 

 何か通信を受けたのか、ノクストスは一実からの説明を受ける間もなく、状況を理解し出す。

 

「……!?まだ1週間ほどしか経っていないじゃないか!?準備できているわけがない。上層部は本当に君を出すつもりなのか!?……いや、君を巻き込んだ僕が言えたことじゃないかもしれないが……」

 

 鋼鉄のマスクに包まれた顔に表情はなかった。けれど、なぜなのか、一実には彼の中で様々な感情が渦巻いていることが伝わってきた。

 

「一実!君が、僕のためだとか、組織に脅されているとかで無理やり戦わされそうになっているなら言ってくれ!君が戦わなきゃいけない理由はない!」

 

 彼は自分の運命や、勇者としての使命よりも民間人である一実の身を案じてくれるようだった。一実は、目の前のロボットの中に温かい心があるのだと改めて認識した。

 そう分かると、彼女の心に勇気のようなものが、この人とならできるという確信が、湧き上がってきたのだ。

 まだ調整作業が終わるまで少し時間があるらしいので、一実は伝えておくべきことを伝えておこうと思った。

 

「悠夜さん?ノクストス?どっちで呼べばいい?」

 

 一実は、そのロボットとの距離を詰めながら質問する。

 

「え? ああ……どっちでもいい……君と違って、どっちも本名みたいな感じだから……でもそうだな……この姿のときはノクストスで……」

 

 ノクストスは突然の質問に最初きょとんとするような声を出すが、すぐに回答した。

 

「じゃあ、ノクストス……私……あの後、色んな人と話したんです。OIDOの人やシンセリーや友達と……」

 

「…………」

 

 一実はすぐそばまで近づいて、まだ霜のついているノクストスの頬に触れた。冷たかったが、自分の意思をしっかり伝えたかった。

 

「それで、気づけた。自分の一番強い願いに……」

 

「願い?」

 

 一実は訊き返すノクストスのカメラをまっすぐ見据えて、宣言した。

 

「うん!私、魔法少女になりたいんだって!」

 

「…………!」

 

「誰かのためでも、誰かに頼まれたからでもなくて、ただ自分のためになりたいの!」

 

「自分の、ため……」

 

 一実の言いたいことをまだ全部は飲み込めていなさそうなノクストスに対して、一実はすべてをさらけ出す。

 

「私は、シンセリーみたいに誰かの人生を照らせるような輝く存在になりたいから!」

 

 それは、自己承認欲求であり、自己実現に対する欲求である。当たり前の利己的な願いだった。

 

「これ……あの男の子が、あなたにって渡してくれたものなんだけど……」

 

 一実は、持ってきたあの絵を見せる。

 

「あの子はこれをくれたとき、ありがとうって、これからもがんばってって言ってくれて……とっても嬉しかった。誰かの役に立てたことが……」

 

 一実の気のせいかもしれないが、ノクストスの目がきらめいたような気がした。

 

「だから、これからもそういう自分でいたいって思った。だから……私を魔法少女にしてくれませんか? 自分勝手な願いだって分かってる。それでも、誰かを助けられる自分でいたから!」

 

“ガチャン!”

 

 精一杯の思いを少女が伝えたとき、ノクストスの腕の拘束が外れて、その絵を掴んだ。

 

「僕もずっと探していた。自分の生まれた意味を、役割を果たす方法を……それが君なんだな……」

 

 ノクストスは一実の目を見つめ返す。その願いに応えるように。

 

「僕を君の勇者にしてくれませんか?」

 

 交わされたその言葉は、2人が改めて結んだ契約だった。

 

“ガションッ!”

 

 調整作業が終わり、すべての拘束が外れて1人の勇者が復活する。

 

 




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