魔法少女×勇者!!!~愛の魔法と勇気のメカ、掛け算すれば無敵です!!~ 作:タナト
一実たち4人は、岩崎司令に案内され、応接室のような場所へ通された。どうやらこれからの対応について、落ち着いて話がしたいということのようだ。
途中、エレベーターに乗ったりもした。その途中で一実が階数を見ると、格納庫の階からだいぶ上がっても、表示は地下のままだった。よほど大規模な施設なのだと、彼女は体感的に理解した。
「司令……私たちもいた方がいいのですか?」
司令から促されて一実と悠夜が椅子に座ったとき、翼は尋ねた。
「ええ、あなたたちに関する話もする予定です。いてください。それに、その方が碧乃さんも安心できるでしょうし……」
「……分かりました」
そうして4人は横並びに長椅子に座り、机を挟んで司令と向き合う。
(悠夜と2人だけよりも味方は多くなるけど、それはそれでドキドキするな……)
そもそもこのような状況は、これまでの一実の人生では想像もできないようなものだったので、彼女は心の置き所が分からなくなっていた。
「さて、改めて碧乃一実さん、無理な要請に応えてもらい、ありがとうございます。もちろん星原隊員たちも。あなたたちのおかげでたくさんの人命が救われました。あなたたち以外には成し得ないような、素晴らしいことです」
司令は抑揚のないクールな声色で、しかしだからこそ飾りのないまっすぐな意思を一実たちに伝えてくる。その賞賛は一実にとっても誇らしいものだったが、面と向かって言われると、照れるというか恐れ多いというか、どう反応していいか分からず、うなずくぐらいしかできなかった。
「それで碧乃さん、これからも魔法少女として我々に協力していただけるという認識でいいですね?」
「はい……でも……」
一実は悩んで、自分なりの答えを組み立て、魔法少女になることを決意した。そして先ほどの戦いに自分の意思で参加して、勝利した。その事実は一実の意志を固くさせている。
ただ、それですべて問題なしと言えない問題が別のところにあった。
「分かっています。ご両親への説得は、私たちの方でサポートします。……今はあなたが、あなた自身の志で私たちの仲間になってくれるということが重要です」
喉に小骨が刺さっているような、すっきりしない感覚を覚えた一実だったが、迫力に満ちた司令相手にいちいち食ってかかるほどの図太さは、彼女にはなかった。
「今お話ししたいのは、あなたのこれからの処遇についてです」
これからの処遇……漠然とOIDOに入って魔法少女として戦うのだとは考えていたが、具体的に日々の生活がどうなっていくかというところまでは考えられていなかった。というか、想像もできないと言ってもいい。
「学校とか行けなくなるんですか?」
魔法少女は、それなりに厳しい訓練を積んで実戦に臨んでいると一実は聞いていた。それがどのようなものかまでは分からないが、普通に学校に行きながらこなせるものだとは思えなかった。
「いいえ、あなたにはこれまで通り、学校に通ってもらうことになります。その中で、適宜組織の呼び出しや出撃に応じてもらったり、それ以外にも専門の講義を受けてもらったり、身体トレーニングをこなしてもらうことになりますが……」
「…………!?」
それは学校をやめる必要があると言われるよりも、一実にとって辛そうな未来だと思えてしまった。マルチタスクの類が死ぬほど苦手な彼女。普通の学校生活を送るだけでひーひー言う羽目になっているところに、人の命に向き合うような仕事のための訓練ができるとは到底考えられなかったからだ。
「大丈夫?汗すごいし、顔色も悪いよ」
一実はひどいプレッシャーにさらされて、身体の方が反応を見せていた。それに気づいた悠夜が声をかけてくる。
「う、うん……大丈夫……あの……お言葉ですが、私には学校に行きながら訓練をこなせるような器用さはないと思います」
正直情けないことを言っているのは、一実自身も自覚している。彼女も魔法少女という役割に対してなら、限界を超える勢いで挑む覚悟がある。だが、二足の草鞋を履いてうまくやれると思えるほど、自分を信用できない。むしろ、これから挑む魔法少女という仕事に真剣でいたいからこそ、学校に行かないという選択は将来が不安になるものだと考えていても、魔法少女に専念するのは逃げではないとも思っている。
「大丈夫です。トレーニングも座学の類も、気休め程度で収まります。むしろ、これからも学校生活を送ってもらうことこそが肝要なのです」
「……?」
どういうことだろうか?一実としては、魔法少女という役割を担う上で必要な訓練というのは、片手間でこなせるようなものではないと想像していた。
「……?」
シンセリーは、翼はどうしているのだろうかと視線を送ってみると、彼女もしっくり来ていないようで、不思議そうな顔をしていた。
「魔法少女の能力において重要なのは、訓練で得た身体能力や戦闘技術よりも、心と他者とのつながりです。あなたを社会から隔離して専門の訓練を集中的に受けさせるよりも、これまで通りの生活を勇者と一緒に送ってもらいながら、自分を取り巻く社会について見つめ直してもらう方がよいと考えているのです」
司令は4人に対して一気にまくし立てる。勇者という名前が出たからには、いま語られていることは一実にだけ向けられているというわけではなく、悠夜にも向けられているものだと彼女は解釈した。実際は、それよりも対象が広かったのだが……。
「すみません、司令……私でも話が見えていません。碧乃さんはなおのことだと思います。もう少し、具体的に説明していただけませんか?」
自分はこれからどうなるのか、何をすればいいのかがいまいちピンとこない一実に対して、翼が助け舟を出してくれる。というか、言葉通り彼女自身も司令の言いたいことがつかめていないようだが……。
「つまり、私としては碧乃さんの学校に勇者2名、そして星原隊員を編入させ、サポートを受けてもらおうと考えています。そして碧乃さんにはそこで生まれた余裕を使って、魔法少女に必要な知識や技術を身に付けてもらいたいのです」
「私もですか!?」
「俺もですか!?」
さすが相棒同士の2人である。まったく同じタイミングで聞き返す。そこに込められたテンションというかニュアンスは、だいぶ違うようだったが。
「……?」
むろん、抱えている疑問がさらに複雑になったのは、ほかの2人も同様である。
「はい、いい機会だと思いまして。勇者2人には、あなたたちが守るべき社会というものがどんなものか、直接その中に入ることで学習してほしいと考えているのです」
「僕たちが、学校に……!?」
一実が悠夜の顔を盗み見ると、その瞳がきらりと輝いたように見える。司令の提案に魅力を感じているように見えた。朝陽も似たような反応をしている。そう思えるのは彼らを形作る技術の賜物か、それとも単に彼らの情緒が豊かだということだろうか?そんなことを一実は考えていた。また、ロボットが人間の学校生活を過ごせるのかという疑問はあるものの、2人が乗り気ならそれがいいのかもしれないとも思った。
「飛躍しすぎだと思います。百歩、いえ千歩譲って朝陽と悠夜が学校に行くようになるとしても、私まで付き合って行く理由が分かりません!」
しかし状況はそう単純でもないようで、翼の方が抗議の声を上げる。一実の耳に届いたその声には、若干のいら立ちが混じっているような気がした。
「翼、あなたには前から言っていたでしょう?訓練に打ち込むのもいいけれど、私としては普通の女の子のように学校に行って、あなた自身の幸せな人生を送る準備をしてほしい。これもその一環です。これはミサト教官や、あなたに近しいスタッフたちの共通の願いよ」
司令の呼び方が、星原隊員から翼に変わる。そこには何かプライベートに関する意図が隠されているように一実は感じた。
(やっぱり翼さんは学校に行ってないのか……先輩がそうなのに私にできるとは思わないけど……)
「私は……」
翼は何か込み上げてくるものを、押しとどめるような苦しそうな声を出していた。しかし、そう感じても事情を知らない一実には何も言うことはできなかった。
「翼のことは後でゆっくり話すとして……とりあえず碧乃さんにはこれから、正式にOIDOに加入してもらい、私たちの寮で勇者と共同生活を送ってもらいます」
「悠夜さんと、ですか?」
司令は直近で一実のやるべきことを告げた。そこから先は彼女にとって未知の世界すぎて、驚くことすらできなかった。
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