魔法少女×勇者!!!~愛の魔法と勇気のメカ、掛け算すれば無敵です!!~   作:タナト

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少し遅刻しました。申し訳ございません。


第24話 展望の話 後編

 

「はい。翼も暮らしているビルの部屋に、悠夜と一緒に暮らしてもらいます。そうしていただければ、トレーニング的なサポートも、その他生活的なサポートもスマートに行えますからね」

 

「つ、つば……星原さんとですか!?」

 

 もっと気にするべきところがあるはずだが、一実はその部分に強く反応してしまう。

 

「……ええ。同じ場所にいてもらえると、出撃の管理もしやすいですからね。親御さんと離れて暮らしてもらうことになりますが、そこは大丈夫ですか?」

 

「は、はい。そこは大丈夫だと思います」

 

一実は親元を離れて暮らした経験などなかったが、そもそもが家出同然でここに来たことと合わせると、そのくらいの覚悟はあった。ただ、気になることが別にある。

 

「異性との2人暮らしとなるとハードルが高いように思いますが……言い方は悪いですが、家政婦ロボットと一緒に暮らすぐらいにカジュアルに考えてもらえると良いと思います」

 

「某ネコ型ロボットみたいなものだね」

 

 ふと一実が視線を送ったとき、悠夜はそう言って笑った。

 家政婦ロボット……一実は道具扱いの言葉だと感じてしまったが、悠夜本人は気にしていないようである。

 確かに某メガネの少年と自分には共通点があると一実は思っている。そんなところで子守ロボットがいてくれれば、多少なりとも学校生活にプラスの影響があるとも考えられる。

 

「ちょうど、一実さんの通っている学校には高等部があるようなのでそこに編入させるという形にもできますしね」

 

「はあ……」

 

 確かに、正直に言って悠夜は中学生扱いするには大人っぽすぎる。高校生でしっくりくるぐらいだ。

 

「僕の役目の1つには一実のボディガードもある。同じ学校にいれば、何かあってもすぐ駆け付けられる!」

 

 一実には、悠夜のそんな言葉から、彼がこの件に乗り気であることがうかがえた。

 

「悠夜さんは学校に行きたい?」

 

「もちろん一実の意志次第だけど、僕自身の願望を言うなら、正直、行ってみたい!」

 

 そう答える悠夜の瞳は、とてもキラキラしていた。

 

「一応、悠夜のステルス能力を活かして、表面上学校生活に影響のない形であなたを護衛してもらうこともできます」

 

 本格的に一実が心を決める前に、司令は代案を提示してくる。

 話を聞くに、学校生活を送る自分の近くに悠夜が張り付いていることは前提条件なのだろうと一実は察する。鋼魔は魔法少女が授業中だからといって待ってはくれないだろう。だからこそ一実は学校をやめた方がいいのではと考えているのだが、悠夜が乗り気ならば話はまた違ってくる。

 

「悠夜さんが学校に行きたいなら、私はそれでいいです」

 

 どんな学校生活になるのか分からず一実の中には不安もある。しかし、心を持ったロボットである勇者が人とともに学びたいと思ってくれているのならそれはとても良いことだとも思うのだった。

 

「ならば、それで各種手続きとご両親への説明をさせてもらいます。……翼とは、あとでゆっくり話しましょう。今日はさまざまなことがあって疲れたでしょう。この施設に部屋を用意しました。明日の午後に自宅へ送るので、それまで休んでください」

 

 そう話すときの司令の声が一実にはどこか優しく思えた。これがこの組織全体の雰囲気ならきっと信用しても大丈夫だと彼女は思った。

 

 ※

 

「それじゃあ、今日はここでお別れだね。さっきは助けに来てくれて本当にありがとう。あなたみたいな人と知り合えて、本当によかった。これからもよろしくね」

 

 応接室を出た後、別れのときが来たらしく、翼は一実の方に向き直って、差し出した手と一緒にそんな言葉をかけた。

 

「あ……う、あ……わ、私、星原さんに……いえ、星原さんと並び立てるような立派な魔法少女になれるように、全力で頑張ります!」

 

 似たようなことが前にもあったはずだが、憧れの人と正面から交流することに一実はまだ慣れていなかった。彼女は慌てながら、あなたを手伝える存在になると言いかけたが、途中で言い換えた。きっと翼が望んでいるのはそういう存在ではないと思ったし、どこまでも添え物であろうとするのは、悠夜に対しても失礼だと感じたからだ。

 

「星原さんなんて堅苦しい呼び方はやめて、翼でいいよ」

 

「そー、そー。俺のこともただ朝陽って呼んでくれよ。仲間になるんだから」

 

 フレンドリーに接してくれと翼もその後ろの朝陽も言ったが、当の一実にとってはそうもいかなかった。

 

「い、いきなり、それはハードルが高いかもです!せめて、翼さんと朝陽さんと呼ばせてください!」

 

 一実にとっては信仰しているに等しい存在とすぐに気の置けない仲になるというのは、土台無理な話であった。

 

「でも、僕のことは、この姿のときも呼び捨てで呼んでくれよ。僕たち一心同体みたいな存在にならないといけないんだから」

 

「そ、それはそうだよね。よ、よろしくね、悠夜……!」

 

 悠夜に関してはその言い分に納得できたようで、一実は照れながら彼を呼び捨てにする。戦場で背中を預け合うようなことをした間柄とはいえ、今の悠夜の姿は超絶イケメンの男子高校生、といった容貌であり、同性の同級生と会話するのすらドキドキしてしまう一実にとっては、気さくに会話するというのも1つの試練に等しかった。

 

「なーんか寂しいけど、今はそれでいいや……じゃあ、お休み……ゆっくり休んでね」

 

「じゃあ、またなー!」

 

 一実の悠夜との扱いの差に不満を少しだけ見せた翼だったが、とりあえずそれでいいと思ってくれたようで、朝陽と一緒に別れの挨拶をしてくれた。

 その笑顔に曇りの類はなく、一実はさっき見せた険しい表情は気のせいだったのかと考えた。

 

 ※

 

「うわー、シンプルだけど立派な部屋……地下にあるってことを考えると秘密基地感があっていいかも!」

 

 悠夜の案内によってたどり着いたその部屋は、ビジネスホテルの一室のような場所だった。過度な装飾もないが、快適に過ごすための設備は過不足なくそろっている、そんな部屋であった。今度与えられる部屋というのもこんな感じだろうかと彼女は想像してみる。

 

「ねえ、一実……休みたいなら今日は出ていくけど、2人だけで話したいことがあるんだ……もう少しおしゃべりしてもいいかな?」

 

 悠夜は頭をさすりながらためらいがちに提案してくる。

 

「う、うん!もちろんいいよ!私もそうしたいし!」

 

 一実は喜んでそう応えてみせる。実は彼女は戦闘中に分泌されたアドレナリンが残っているからか興奮状態で、疲れの類を感じていなかった。それもあって、彼女自身も彼のことをもっと知りたいと思うぐらいの元気は残っていた。

 

「あの、僕はちょっと特殊な勇者でさ……普通の勇者はマッチングする魔法少女が決まってから造られるんだけど、僕の場合はそれが決まる前に製造されたから、パートナーがいない期間がだいぶ長かったんだ」

 

 悠夜が話す彼自身の事情は、それこそまさに一実の知りたいことでもあり、彼女は彼の一言一句、そして表情までも取り逃さないように話に集中する。

 

「それで、一実と会えて初めて本当の勇者になれた。だから、一実と会えて本当によかったと思ってるんだ。君と出会えて、僕は居場所を手に入れることができたって思うんだ。……だから、なんていうか……僕と出会ってくれてありがとうって伝えたくて……」

 

 自分でも何を伝えたいのかまとまっていないのか、あるいは単に照れているのか、悠夜は目を泳がせて言葉を詰まらせながら、それでもしっかりと自分の感情を一実に伝えてくる。

 

(特殊な勇者……いろいろ複雑な事情がありそうだけど、自分の居場所を探してたっていうのは私と同じだな)

 

 自分のいるべき場所、まわりや社会に受け入れてもらえるような役割が欲しいと思うこと。そんな気持ちを互いに持っていたから、自分たちは出会ったのかもしれないと一実は思った。

 

「私もね。あなたと出会って、魔法少女って役目を背負うことができて嬉しいって思ってるよ。私も今まで、人に迷惑をかけるばっかりで、人の役に立ったりはあんまりできなかったから」

 

 明日向き合うことになる両親に言ったことを、一実はまた繰り返す。それが客観的に見て、正しいと言える使命への向き合い方なのか彼女には分かっていない。

 

「私たち、お互いと出会ってお互いがなりたいものになれたんだね」

 

「うん」

 

 正しいかどうかは分からないけど、お互いと出会ってなりたいものになれた。今はその事実を大事にしたい。2人は言葉を交わさずともそう考えていた。

 

 

 




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