魔法少女×勇者!!!~愛の魔法と勇気のメカ、掛け算すれば無敵です!!~   作:タナト

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リメイク前もこの辺の設定は同じだったりします。


第31話 異次元の脅威

 

「初めまして!私は、妖精界から派遣された技術交流官、レミア・コ・ネゴシウムです!

よろしくお願いしますね!」

 

 一同は、講義室のような部屋に移動した。

 一実はそこで、教官とは何もかも真逆な存在と対面させられる。

 彼女の目の前に現れた何者かは、顔つきは成人女性のようだが、背はその半分ほどしかなく、耳が尖っている。それでいて、その背丈に合わせられたスーツをまとい、メガネをかけている。常識と非常識を併せ持った落差、そして女性のまとうふわふわした雰囲気と、そのそばから発される教官のヒリつく威圧感。その2つのすさまじいギャップにさらされて、席に座らされた一実はクラクラしてしまっていた。

 

(妖精界?ってことは目の前の人って妖精なの?私、夢とか見てるんじゃない!?)

 

 一実は目の前で展開する脈絡のない現実に、夢を見ているのではないかと疑ってしまう。だが幸いなことに、相手はそんな一実の困惑を理解しているようだった。

 

「急に私みたいな者が現れて驚いたでしょう?心配しないでください!ちゃんと理解できるように一から説明しますからね!」

 

「よ、よろしくお願いします……」

 

 レミアと名乗った何者かは、本当にふわふわした声と空気で一実を包み込んだ。その柔らかさは、一実の絡まった心をほぐし、反射的に返事を返させてしまうほどのものだった。

 

 

 

「一から教える、と言った手前あれですが、まずは前提となる知識を確認させてください。あなたは鋼魔をどういう存在だと認識していますか?」

 

 レミアはそれこそ学校の授業をするように、一実に問いかけた。

 

「え、えっと……異世界からやってくる、人を食べちゃう怪物……ですかね……」

 

 一実は自分の中にある漠然とした情報を1つ1つつなぎ合わせてまとめてみる。と言っても、その情報源は他ならないOIDOのホームページだった。

 

「はい、よく勉強していますね。正解です」

 

 勉強が苦手であり、勉強方面にいい思い出がない一実は、そんな褒められ方をされたことで一気にレミアへの好感度が上がってしまう。

 

「より詳しい情報をお伝えしますね。鋼魔とは私の住む世界、妖精界の存在です。妖精界はこの世界と表裏一体の世界です。一方が乱れれば、もう一方も乱れてしまう」

 

 本当なら異世界などというものが存在することから、一実は疑うところであろうが、もともとそういうものだと認識していたため、特に引っ掛かりなく呑み込むことができた。

 

「約3000年前、妖精界に鋼魔なる怪物が現れました」

 

“カシャ!”

 

 レミアが話し始めるのに合わせて部屋が暗くなり、投影機が作動する。スクリーンに映っているのは、伝承の内容が描かれている古そうな絵画であった。

 

「現れた鋼魔は、鋼魔獣という分身を使役してすべての命を喰らい尽くす勢いで、妖精界全域に侵攻し、多くの生命が失われたと言います」

 

 スクリーンにさまざまな化け物が映る。

それらが自分も戦った鋼魔ということだろうか?こちらの世界の人工物こそ取り込んでいないが、どことなく似ている気がして、一実はそんなことを想像してみる。

 

「しかし知性ある妖精たちは、魔法を用いて対抗するすべを探しました。その果てに生まれたのが、魔法少女と勇者に関する魔法だと言われています」

 

「じゃあ、妖精界にも魔法少女がいたんですね」

 

 一実は勝手な思い込みで、別の世界から流れてきた技術で生まれたのが魔法少女……というふうに考えていた。実際はその別世界で、魔法少女と勇者というフォーマットがすでに完成しており、しかもその歴史も長い。

 

「はい、そうなんです。……しかし、前の世代の魔法少女と勇者は、激しい戦争の末、鋼魔本体を封印することと引き換えに全滅したと伝わっています」

 

 レミアは深刻な顔をしてその場面を解説する。スクリーンには何やら黒い球のようなものが描かれた絵が映っていた。

 

「全滅って……」

 

 その事実は一実を戦慄させるには十分だった。絶対的な希望の光だと思っていた魔法少女と勇者。鋼魔という脅威は、それらが命を投げ出してやっと抑え込めるようなもの……だとしたら、いずれ自分も?

 そんな想像が脳裏に浮かんで一実は背筋が凍る思いだった。

 

「大丈夫だよ、一実。僕たちは負けない……僕たちは、先代から受け継いだものをさらに次の次元へ進めている。それがあれば僕たちは勝てる。……信じて」

 

 一実が恐怖していることを察して隣に座っている悠夜が声をかけてくれる。

 

「何があるの?」

 

 それが強力な武器なのか、魔法なのか。希望になるものがあるならぜひ教えてほしい。一実はすがるものを求めていた。

 

「ふふん♪それは後でのお楽しみ!」

 

「……???」

 

 一実にしてみればそれなりに切実な質問だったが、悠夜は珍しくはぐらかしてくる。

 

「ともかく、僕たちはそれなりの準備をしているし、そうでなくても前の世代よりも魔法が洗練されているし、科学と融合したことでできることも増えてる。だから、大丈夫だよ」

 

「悠夜……」

 

 一実は結局、それとは何なのか聞き出すことはできなかったが、彼が言うならそうなのだろうと信じることができた。振り返って視線を送った翼もまたうなずいている。

 

「おほん……いったん、話を戻しますね。先の戦いで施された封印は『黒の牢獄』と言われ、現在まで鋼魔本体を最後の決戦の地にとどめ続けています」

 

 咳払いをしたレミアは一同の注目を自分へと戻す。スクリーンには先ほど映った黒い球がクローズアップされている。それが『黒の牢獄』なのだと一実も分かった。

 

「あの、だったらどうして鋼魔がこの世界に来るんですか?」

 

 一実は挙手をして質問する。原理が魔法なら、どんな封印かは彼女には見当もつかない。しかし、封印が封印として機能しているなら、なぜ鋼魔が、それも別世界までやってくるのか説明がつかない。

 

「当然の疑問ですね。説明しましょう。黒の牢獄は極めて強力な魔法結界だと考えられていますが、その詳細は不明です。周囲の時空間を歪めるほどの力場が発生しており、中のものを外へ出しませんが、逆に外からの干渉もできません。中で魔力が蠢いているのを辛うじて観測できる程度です」

 

「時空を……」

 

 一実には想像もつかないワードだ。それを自分と同じ魔法少女が作り出したというのか?その魔法少女がすごいのか、それとも自分にもそういう力が眠っているというのか。彼女は何か壮大なものに相対している気分になる。

 

「現在、鋼魔はその時空の歪みを利用して、こちら側……人間の世界に干渉しようとしていると考えられます。封印が強く、今は種をまく程度のことしかできていませんが……今後、干渉は侵攻と言える程度に深刻化していくと予測されています」

 

「種?」

 

「はい……鋼魔の種です。最初は無害ですが、周囲の生物や空気中の魔力を取り込んで、やがて私たちが本体と区別して鋼魔獣と呼ぶ脅威に成長していくもの……」

 

「鋼魔獣……」

 

 それが多くの魔法少女や自分が戦った存在ということか。一実はスクリーンに映し出されている画像と合わせて理解した。

 

「奴らの目的は、自分たちのリソースになる魔力、生命体を取り込むこと……人間の世界に混乱を起こし、それに対応している妖精界側にも、自分たちに有利な変化を起こそうとしていることだと考えられます」

 

「…………」

 

 難しい話だったが、一実は辛うじて飲み込むことができた。最初、レミアは鋼魔を人間を食べる存在と表現した彼女を肯定した。それは単純に、活動するための食事をすることに還元できるということなのだろう。

 

「……!?……そういえば、その……現れた鋼魔獣の中には、その……倒せなくて逃げちゃったやつがいたはず、ですけど……」

 

 一実は話を聞いているうちに思いついてしまった。ただ、翼たち、頑張っている魔法少女たちを責めてしまうことになりかねないので、彼女はためらいがちに発言する。

 

「うん、その通り……私たちが向き合うべき現実。私たちの力不足の尻拭いに力を貸してもらえると嬉しいかな」

 

 一実が振り返ると、暗い部屋の中に自嘲する翼の顔が辛うじて見えた。彼女は発言を後悔したが、向き合うべきことであることは翼が言った通りのため、取り消すことができなかった。

 一実の記憶では、シンセリー・テルスとエクスマインのペアが単独で対応した場合、取り逃がした例はなかったはずだが、他のペアが対応した場合や、複数のペアが協力する必要があった個体は、取り逃がしてしまったり、撃退するのがやっとだったこともあったはずだ。

 

「はい、そのような個体はこの世界のどこかで、より高度な戦略のためのリソースとして蓄積されていると予測されています。深刻な問題です……」

 

 レミアは眼鏡の奥で深刻な目をして言った。

 

「混乱を避けるため、公表こそされていませんが、近年、世界中の失踪事件の件数が急増しています。鋼魔獣として脅威認定される前に、こちらが感知できない規模で人を吸収しているケースが確認されています」

 

「そんな……っ!?」

 

 一実は胃がねじれるような恐怖に襲われた。テレビで報道されるレベルの脅威以外に、すでに鋼魔の魔手は現実の至る所に伸びているということなのか。彼女はその事実と、そんな現実を自分が知らずにいたこと、今も知らない人々がいることに、言いようのない恐怖を覚えた。

 

「正直に言って、そのような小さな脅威1つ1つには対処が追いついておらず、今後も対応できないと考えられています」

 

レミアは神妙な声で重々しくその事実を告げた。

 

「そんな……じゃあどうすれば……」

 

 一実は魔法少女として鋼魔と戦っていれば、救われる人がいると考えていた。だが、それでは助けられない人が多くいるという。その事実にどう向き合っていけばいいのか、彼女には分からなかった。

 

「OIDOには方針があります。我々の究極目的は鋼魔の根本を断つこと。そのために封印への干渉手段を探し、かつその内部にある鋼魔本体を今度こそ完全に消滅させるだけの力を蓄える必要があります。残念ですが、それまでは出てきた鋼魔を確実に撃破する対症療法に甘んじるしかありません」

 

「…………」

 

 一実は自分の向き合わなければならない現実の、真の重大さの輪郭を認識しはじめ、押しつぶされそうになった。

 




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